これ…概要です…
『機動戦士Vガンダム』第36話「母よ大地にかえれ」の劇中で起こった有名なエピソードを象徴する台詞である。
これ…エピソード解説です…
ザンスカール帝国は本格的な地球制圧の為、特別編成した艦隊を地球へ降下させ地上進攻を開始していた。
「地球浄化作戦(地球クリーン作戦、または巨大ローラー作戦とも呼ばれる)」と名付けられたこの進攻において、『機動戦士Vガンダム』と云う作品の最たる特徴とも言える「巨大なタイヤを装備したバイク戦艦」のみで編成されたモトラッド艦隊が投入された。
艦隊司令に就任したクロノクル・アシャーが率いる旗艦アドラステアを中心としたモトラッド艦隊は、まるで地均しの如く地上の建造物を巨大タイヤで次々と踏み潰し、住人を無差別に虐殺して行く。
この様な極悪非道な所業に対し、レジスタンス同盟リガ・ミリティアの抵抗が続いていた。
ウッソ・エヴィンの母であるミューラ・ミゲルもヴィクトリー系列のモビルスーツ開発者としてリガ・ミリティアで戦う身であったが、バイク戦艦アドラステアを旗艦とするモトラッド艦隊が月から発進する折、シャクティ・カリンの独断行動をカバーしていた所をカテジナ・ルースの駆るゲドラフに捕らえられてしまい、アドラステア艦内に監禁され人質の身となってしまう。
リーンホースJr.隊とウッソ達ホワイトアークのメンバーはミューラの救出を試みるものの、地球浄化作戦の最中にラステオ艦隊司令のアルベオ・ピピニーデンの策略でミューラは非人道的で破廉恥極まりない人質作戦に使われる事となる。
MSパイロットのゴズ・バールから「これからリガ・ミリティアに投降する」と騙されたミューラはモビルスーツ・ゾリディアの手に掴まれ生身のまま戦場に連れ出される。
クロノクルからミューラの回収を命じられたカテジナから「卑怯な人質作戦」を咎められたゴズ・バールはピピニーデンの策略によって自分が既に捨て駒にされていた事に気付いて次第に錯乱し、挙げ句にゾリディアは戦闘によって両足を切断され行動不能に陥りミューラを掴んだままモトラッド艦隊の旗艦アドラステアの砲塔の間に落下してしまう。
ミューラを救出せんとV2ガンダムで敵戦艦の砲塔間に擱坐したゾリディアまで接近し、ついに母と対面したウッソだったが、ミューラ本人が「ビームサーベルの粒子は強すぎて人を殺す」と言うように救出手段が見つからない。
- ゾリディアの胴体と砲塔が絶妙な硬さで挟まっているため機体を人質ごと回収することが出来ない
- ゾリディアのマニピュレーターが絶妙な握力で掴んでいるため人質を引っ張り出すことも出来ない
- ゾリディアの腕ごとビームで切断するには距離が近すぎて人質ごと蒸発させる危険性が高い
- ゾリディアの胴体をビームで切断すると付近のジェネレーターが核爆発を起こす
上記の様に不幸な事態が重なり、完全に詰んでしまっている状況にあった。
この場面で一番求められていたのは実体ヒート剣のようなゾリディアのチタン合金ネオセラミック複合材を切断出来るだけの非ビームの得物しかなかったのだが、V2ガンダムを含めリガ・ミリティアの主戦力であるモビルスーツ部隊はビーム兵装しか持っていなかった。
このためカテジナの妨害をくぐり抜けては何度もミューラの元に辿り着いても救い出せないという最悪のループが発生していたのである。
こうしてミューラの有効な救出手段が見付からずに状況は益々悪化するばかりであったが、更に不運は重なってしまい、最悪な事に先行していたバイク巡洋艦リシテアが嵌っていた溝から跳ね上がり、不幸にもその砲塔の直上に後輪が激突してしまう。
V2ガンダムのビームシールドでは巨大な質量には耐えられず、咄嗟に回避せざるをえなかったウッソは、巨大タイヤにモビルスーツごと押しつぶされ、宙に舞う母の首を目の当たりにしてしまう。
辛うじて回収できた母の遺品は、事故当時にミューラが着ていたノーマルスーツのヘルメットだけであったが、ヘルメットからは血が滴り落ち、画面には常に後頭部側が向けられていてヘルメットの中の様子はわからなかった。
「私のせいで…おばさまは…」と泣きながら自分を責めるシャクティに対して「誰のせいでもない」と庇ったマーベット・フィンガーハットがウッソに対して「そうよね?」と同意を求めたのだが、放心状態で虚ろな表情のウッソはマーベットに母のヘルメットを手渡しながら、ただ一言のみ返答するのがやっとだった。
「よく…わかりません…母さんです」
この直後、堰が切れたようにウッソはその場に泣き崩れた。
この事故の直後、ザンスカール帝国は停戦協定を表明。
後のエピソードで、これはわずか5分後の出来事だったことが判明した。
ウッソからヘルメットを受け取ったマーベットがそのズシリとした重みと、その中身にゾッと青ざめた表情を見せる描写もあり、おそらくはミューラの砕けた頭部そのものか、ウッソが事故現場から必死にかき集めてきた臓物や肉片の様な物が入っていたのだろうとファンの間では語られている。
なお、元凶の一人であるゴズ・バールは特に何をしたわけでもないのに気を失ったシーンを最期に映っていないが、間違いなくリテシアのタイヤにミューラごと巻き込まれて死亡したと見られる。
また、カテジナはこの戦闘の間「人質が死んでも渡すわけにはいかない!」と息巻いていたが本当に死ぬとは思っていなかったらしく、実際に死亡が確認されると激しく動揺していた。
もちろんTVで放映されたガンダムシリーズにおいて人が死亡する描写は数多く存在し、凄惨な死に様を思わせるものもいくつかあったが、このように直接的かつグロテスクに描写された例は極めて稀である。
これは大真面目な意味で公式が病気と悪名高いVガンダムの中でもトップクラスにショッキングな場面であった。
「これ」…実はアニメでは言ってないんです…
『機動戦士Vガンダム』のTVアニメ劇中で確認できる台詞の通り、本来ウッソは「これ」とは一切言っていない。
「これ……母さんです」 はことぶきつかさ氏が『機動戦士Vガンダム』放送当時にバンダイ刊行のアンソロジーコミックス向けに描いたパロディギャグ漫画『いけ!いけ!ぼくらのVガンダム!!』の中で使われた台詞である。
この台詞が登場するのは第3話「いけ!いけ!ぼくらのバイク戦艦!」の終盤。
原作アニメと同様にウッソがマーベットさんに母のヘルメットを手渡しながら言った台詞である。
「これ……母さんです」
「? !? どらどら げろっ!?ちょっとコレって…」
「うっ うっぷ げろげろーっ げぇ────っ」
漫画での描写を見る限りは間違いなくウッソが拾ってきたヘルメットに母さんの中身が入っており、ヘルメットの中を見てしまったマーベットさんとシュラク隊のお姉さんたちはあまりのグロさに盛大に嘔吐してしまう。
その夜、泣き寝入りしていたウッソだったが、夜中に件の血塗れのヘルメットをかぶったハロが現れてウッソは腰を抜かし、更にはTVアニメ版の劇中でスージィがウッソに言った「今夜は一緒に寝てあげるから」という台詞が律儀にもきちんと実践されており、寝室に寝相の悪いスージィのイビキが響き渡るという、全くありがたくない添い寝をされたウッソは泣きながら心の中で呟いた。
「──もう!!みんなしていぢめるんだから…」
こうして、ホワイトアークの夜は更けていった…。
TVアニメ版でトラウマになった人は是非『いけ!いけ!ぼくらのVガンダム!!』を読んでトラウマブレイクしてほしい。
これ…関連タグです…
ドズル・ザビ、フォウ・ムラサメ、エルピー・プル:過去の富野ガンダムで36話に戦死したキャラ達。何故か女性が多い。
ミキノ・カッシュ:機動武闘伝Gガンダムにおける主人公の母親つながり。本編より前に命を落としているがこちらの死因は黒幕の部下による射殺。息子達への愛情も真っ当などミューラとは対照的な人格者でもある。
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ:MSの得物が実体兵器ばかりなのでこんな事態は絶対に起こらないはずのシリーズ。
ヒイロ閃光に散る:こちらもトレーズの報告があと数分早ければウイングガンダムが自爆せずに済んだ(ただしこちらはトレーズがわざと遅らせていた可能性も高い)。この作品もシールドに衝角を持つウイング含め意外と実体刃持ちのガンダムが多いため鉄血同様このような事態は起こりにくいかもしれない。
トール・ケーニヒ(機動戦士ガンダムSEED):同じく、リマスター版でヘルメット越しに生首が飛ぶシーンがご丁寧に描き足される。
ストライクガンダム、インパルスガンダム:こいつらの持つ対装甲ナイフならよしんば助けられたかもしれない。