「ずっと、夢をみていた」
「たった一人の人間と戦う夢」
「再戦を」
プロフィール
概要
モンスターでありながら高い知性と人と変わらぬ心を持つ異端のモンスター『異端児(ゼノス)』の一人。種族は『ミノタウロス』だが、赤銅色の皮膚をしている通常のミノタウロスと違って、アステリオスは黒い皮膚をしているので、作中で深層に出現する黒い犀型のモンスター『ブラックライノス』の亜種ではないかと考察されていた。
その正体はベルがLv.1の時に戦った片角のミノタウロスの生まれ変わり。「雷光」を意味するアステリオスという名前も前世で最後に見たベルの魔法【ファイアボルト】から付けたもの。異端児編ではベルの好敵手として、再び彼に戦いを挑む。
ちなみに筋骨隆々の雄なのにやたらとヒロインっぽい行動が多く、作者によると異端児編における猛牛(ヒロイン)は彼とのこと。
人物像
口数は少なく、低い声音と静かな語調から何処か『武人』を彷彿させる。彼の持つ願望から常に闘争に餓えており、相手が強ければ強いほど喜ぶ戦闘狂の一面がある。逆に弱者や臆病者には全くの無関心で、作中で格下の冒険者たちと戦った際はこんなの闘争ではないと失望している。
前世で自分に臆することなく立ち向かったベルの姿が印象に残っており、自分に怯えて逃げ出す冒険者を「ベルと同じ冒険者だが中身は全く違う」と酷評した事もある。
仲間達と人間は基本的に殺さないと約束しているらしく、冒険者と戦う時は死なない程度に手加減をする(もっともアステリオスは強すぎるので、作中でアステリオスに叩きのめされた冒険者達は、全員傍から見て生きているかどうかわからないぐらいズタボロにされているが)。
一方で、自身の決闘に横やりを入れようとする無粋な相手に対しては、殺しこそしないが躊躇なく叩き伏せる。そして、同胞達を傷つけた者に対しては、たとえ相手が人間であろうとも一切容赦なく殺す。
他の異端児達が地上や人類に強烈な憧憬を持っているのに対し、アステリオスの願望は『夢の中で見る人間との再戦』、すなわちベルとの再戦と決着こそがアステリオスの憧憬であり願望。言わばアステリオスは「異端の存在の中でも更なる異端の存在」といえる。
人間関係
最強の好敵手。彼ともう一度戦いたいという願いから異端児として再び生を授かる。幾度も死闘を繰り広げているベルとアステリオスだが、そこに怒りや憎しみ、そして嫌悪感といった負の感情は一切なく、己の全てをぶつける事が出来る唯一無二の存在だと思っており、いずれ来る決着に備えて互いに邁進し続けている。
前世の師とも言うべき存在。自分とベルが出会う切っ掛けをくれた人物でもある。彼に対してはわずかだが記憶に残っているようで、オッタルと対面した際は懐かしさの様な感情を抱いている。オッタルの方も、アステリオスがかつて鍛えた片角のミノタウロスの転生した姿である事に気付いた際は、内心かなり驚嘆していた模様。
同胞達。アステリオスにとって闘争への餓え以外の感情を抱かせてくれる存在で、仲間意識や大切に思う感情も持ち合わせており、彼らが窮地の時は必ず駆け付けている。一方で、闘争を求める自分の存在が仲間たちの「人類との共存」という夢を壊しかねない事も理解しており、彼らの邪魔だけはしないよう気を使っている。
作中の活躍
本編登場前
ダンジョン深層にある『黒鉛の迷宮』で生まれて間もなく、「異端の存在」である自分を許せなかった同族のモンスター達と無限の闘争の日々を送るも、遂に限界を迎えて倒れてしまうが、自身と同じ『異端児』に救われそのまま彼らの仲間となる。
同族ではなく『同胞』である彼らとの触れ合いを経て、自分の中で餓え以外の感情が芽生えていくことになる。また、仲間たちから自分の中にある餓えの正体が、前の自分が見た『夢』であり『憧れ』、そして『願い』である事を教えられる。最初こそ意味は分からなかったものの、いつも夢の中で見ていた「光」の存在に気付き、再びそれと相まみえる事が自身の餓えの真実であると気付く。
その後、同胞達から知恵や強さを教わり、武器も得た事で、自ら深層へと戻る道を選び、再び自身を狙うモンスター達との無間の闘争へと身を投じる。自らの満たされない餓えがいつの日か満たされる事だけを望んで…。
本編
深層での武者修行を一段落させ、仲間達との合流地点である『異端児の隠れ里』に帰還するが、アルルとヘルガから仲間達が【イケロス・ファミリア】の襲撃を受けたと聞き、同胞達を助けるべく中層へと移動を開始する。
ダンジョン18階層の『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』に到着した際は、その圧倒的な力を以って【ガネーシャ・ファミリア】の団長であるシャクティを始めとしたオラリオの名だたる冒険者達を倒していき、リューもトドメを刺す寸前にまで追い詰めるが、仲間に呼ばれたので彼女を見逃す。
仲間達から渡された『ダイダロス・オーブ』を使って【イケロス・ファミリア】の拠点である人造迷宮『クノッソス』へと乗り込むと、クノッソス内を逃げ回っていた【イケロス・ファミリア】の団長にして同胞たちを苦しめた元凶であるディックスを文字通り叩き潰す。
その後、同胞たちを追って自分も地上に進出し、窮地に陥っていた仲間達を救うべく【ロキ・ファミリア】相手に単身で渡り合うも、アイズによって片腕を切り落とされて追い詰められてしまい、その場はフェルズや【ヘルメス・ファミリア】の助けを借りて逃亡する。
地上に身を潜めて数日後、『異端児』のダンジョンへの帰還作戦が開始されると、自身も一部の同胞を引き連れて彼らをダンジョンに逃がす為に、遭遇した冒険者達を蹴散らしていくが、自身の追い求める憧憬が近くにいると感じたアステリオスは一人地上に残る事を決意する。そうして憧憬を探している内に、フレイヤの命を受けたオッタルが目の前に現れる。
オッタルに何処か懐かしさを感じる中、今の自分の状態では勝てる相手ではないと察しながらも、圧倒的強者と出会えた喜びから彼に勝負を挑もうとするが、オッタルに「この先にお前の求めるモノがいる」と言われ、その言葉に導かれる形で突き進んでいた先で、遂に自分が追い求め続けていた憧憬を見つけることになる。
ようやく出会えたベルに自分の夢と名前を教え、生まれた時からずっと宿していた願いを彼に告げる。
「ベル、どうか」
「再戦を…!」
ベルも傷だらけになりながらも自分を求め続けたアステリオスの願いを背くことは出来ず、この再戦を承諾。再び「出会い」を果たしたベルとアステリオスによる再戦が幕を開ける。
【ロキ・ファミリア】との戦いで既に瀕死の身でありながらベルと渡り合い、最終的にかつての死闘の再現の様に、互いの最大の一撃を持って突貫する。そして、ベルの『英雄の一撃』を正面から打ち破り、二人の再戦はアステリオスの勝利となる。
重傷を負って倒れるベルに「これで戦績は1勝1敗、次こそは決着を付けよう」と伝えて、ダンジョンへと帰還する。その後は同胞達と再会し、フェルズに傷の治療と仲間が回収していた片腕も治してもらった。
二人の戦いはオラリオにいる多くの民衆や冒険者、そして神々が目撃する事になり、皆がその壮絶な戦いに目を奪われ、結果的に『異端児』を巡る事件によって一度は地に堕ちたベルの名声は、強大な怪物にたった一人立ち向かった冒険者として再び讃えられる事になる。また、この再戦と敗北はベルにとっても特別なものとなり、大きく変わりだす切っ掛けとなった。
『異端児』を巡る騒動が終結後は、ベルとの決戦に向けて深層への修行に戻ったが、外伝『ソード・オラトリア』の都市崩壊を目論む『都市の破壊者(エニュオ)』との最終決戦『狂乱の戦譚(オルギアス・サガ)』において、異端児陣営の強力な援軍として呼び戻される。深層の階層主に匹敵する力を持つ『精霊の分身(デミ・スピリット)』をただの突撃で粉砕し、オッタル同様たった一人で『精霊の分身』を蹂躙してみせた。
戦いの中で【英雄願望(アルゴノゥト)】の大鐘楼の音色を聞いて、ベルも同じ戦場にいる事を察し、彼のもとに向かおうとするが、その場は同胞達に制止されて仕方なくベルの元に向かうのを諦める。ベルが強くなっていることを肌で感じながら歓喜し、自分も決着の為に更なる力を付けると誓い、『精霊の分身』にトドメを刺した。
能力
仲間たちの誰もが認める最強の『異端児』。技や駆け引きはまだ未熟だが、能力の高さが通常のモンスターの領域を超えており、彼と戦った【ロキ・ファミリア】からは深層の『階層主』と同格と見なされている。オラリオを代表する冒険者たちを悉く払い除けた事もあって、『異端児』を巡る騒動の後、ギルドはアステリオスの潜在能力をLv.7と定めた。
作中では「Lv.5の中でも最上位の実力者であるシャクティ率いる【ガネーシャ・ファミリア】の精鋭部隊を単身で壊滅させる」「Lv.5のディックスを瞬殺」「Lv.6のベート、ティオネ、ティオナの三人を同時に相手した際も互角以上に渡り合う」「Lv.6のアイズに右腕を切断されてもなお戦闘を継続し、アイズのエアリエルの防御を破壊する」「深層の階層主に匹敵する『精霊の分身』をほぼ単独で討ち取る」など、圧倒的実力を見せている。
また、ミノタウロスの『咆哮(ハウル)』には相手を威圧する力があり、通常のミノタウロスの咆哮はLv.1の冒険者を怯ませる程度だが、アステリオスの咆哮はLv.3は足が竦み、Lv.2は腰が抜け、Lv.1や『神の恩恵』が刻まれてない一般人は意識を失う程の力がある。その為、Lv.3以下の冒険者ではアステリオスと満足に戦う事すら出来ない。
現時点でも作中最強クラスの実力を誇るアステリオスだが、アイズ達の推察によると、その実力は未だ成長途中で、さらに強くなると判断されている。そもそも異端児編の時点では生まれて3ヶ月ぐらいしか経っていないので、力も技もまだまだ向上するに決まっている。
装備
- 両刃斧(ラビュリス)
アステリオスのメイン武装。彼の怪力に耐えられているので、かなりの業物と思われる。日々闘争を繰り返しているので、常に血に濡れている。
- 雷雷丸(かみなりいかづちまる)
雷の斧型の魔剣。【ロキ・ファミリア】との戦闘の際は、これを使用してティオネ、ティオナ、ベートの3人を退けた。ベートのブーツでも吸収しきれない程威力が高いが、アイズによって右腕ごと切り落とされて失う。
実はオラリオの最高鍛冶師である椿・コルブランドが外伝でレヴィスに殺害されたハシャーナ・ドルトリアの為に作った武器なのだが、巡り巡ってアステリオスの手に渡った(経緯は未だに不明)。因みに名前が奇抜な理由は、魔剣の腕に関しては自分よりも上のヴェルフのネーミングセンスを真似た為だが、やはり後悔したらしい。アステリオスの手から離れた後はリヴェリアによって、椿の手に返された。
時を超えた約束
『メモリア・フレーゼ』の2周年イベント『アルゴノゥト』にて、ミノス将軍と呼ばれるミノタウロスが登場するが、アステリオスはその生まれ変わりである事が判明する。
ベルの前世であるアルゴノゥトと死闘を交わし、互いを好敵手と見なすが、最後はアリアドネが介入したこともあって戦闘不能に陥ってしまう。動けなくなった体で尚もアルゴノゥトとの戦いを求めるミノス将軍だったが、止めを刺される直前に彼から一つ約束をされる。
「ここでお前を討つ!私一人ではなく、姫と二人で!本当に申し訳なく思う!」
「だから──また会おう我が敵よ!」
「生まれ変わり、次にまた巡り合った時、今度は一対一で!私達の決着を!」
「約束だ、『好敵手』よ!」
この約束を聞いたミノス将軍は笑みを浮かべ、雷哮の如き雄叫びを上げながら消滅した。
アルゴノゥトとミノス将軍の戦いから数千年の時が経ち、生まれ変わった2人は再び巡り合い、約束通り一対一の戦いを行う。ベルとアステリオスには前世から続く、とても強くて奇妙な縁がある。二人の雄には、到底断ち切ることの出来ない運命の糸で結ばれているのだ。
『夢』と出会い、『願望』に辿り着き、『再戦』へと至る。
英雄は回帰し、猛牛は吼え、好敵手の契りを果たす。
『約束』はここに。
さあ、決戦を───自分達の『冒険』の続きを。
余談
- ダンまちはミノタウロスがきっかけで生まれた物語
元々ダンまちは作者が主人公とミノタウロスとの戦いを書きたいと思ったのがきっかけで生まれた作品で、作者によると片角ミノタウロスとの激戦を書き終えた時から、ベルの好敵手は彼しかいないと思ったほどらしい。ちなみに声優も片角のミノタウロスと同じ杉崎氏で、アニメスタッフの粋な計らいを想起させる。
- ヒロインと呼ばれる由縁
作者や読者から冗談まじりにヒロイン扱いされているアステリオスだが、作中の彼の目立った行動を振り返ってみると
・生まれ変わってもベルのことが忘れられず憧憬として求め続ける
・ベルとの再会の際は咆哮を上げながら空から降ってくる
・念願だったベルとの再戦に横槍を入れようとした他の冒険者たちを、邪魔するなと言わんばかりの咆哮をあげながら殴りとばす。
・ベルが抱えていた迷いと苦悩を消し去り新たに強くなる覚悟と目標を見出させる。
・『異端児』の件で非難を向けられていたベルの汚名を結果的にそそいだ。
・ベルと共に『異端児』と世界の運命を変える
・クノッソス戦でベルが同じ戦場にいることを察すると、敵をそっちのけでベルの元へ向かおうとする。
等、やってる事を振り返れば本当にヒロインっぽく、まさに猛牛と書いてヒロインと読む存在と言える。
- 接戦だった理由
異端児編にて当時Lv.3だったベルと再戦したアステリオスだが、作者によるとこの時のアステリオスは【ロキ・ファミリア】との戦いでHPが9割ほど削がれていた上に、約五日間地上で孤立してほぼ補給なしで非常に弱っていたとのこと(もっとも、この状態でもベル以外のLv.3なら瞬殺できるほどの実力は有しているが)。それに対してベルはステイタスが限界突破してLv.4並みの身体能力だった上に、片角のミノタウロスとの戦い並みに研ぎ澄まされていたため、この戦いではLv.差を覆してほぼ互角の戦いを繰り広げた。
- ヒント
本編11巻の終盤でベルがLv.1の時に戦った片角のミノタウロスの生まれ変わりであることが判明したアステリオスだが、本編を振り返ってみると「ベルがLv.2になった頃からアステリオスの目撃情報が入る」「アステリオスがディックスを追い詰める時の描写と片角のミノタウロスが【ソーマ・ファミリア】のカヌゥを追い詰める時の描写が酷似している」「ベルと片角のミノタウロスの死闘を目撃したベート、ティオネ、ティオナ、そして片角のミノタウロスを鍛えたオッタルが何かに気づく」など、実は正体が判明する前からそこかしこにヒントは散りばめられていた。
- オッタルとの共通点
奇妙な師弟関係に当たるアステリオスとオッタルだが、二人の特徴や出来事を並べると
・寡黙な武人
・筋骨隆々の巨漢
・牛と猪という高い突進力を持つ動物の特徴がある
・ベルのことをよく理解している
・ベルに完全敗北を与えている
・作中最強クラスの実力者で、ダンジョンで最も過酷とされる『深層』での単独活動も可能
など、師弟だけあって二人には共通点も多い。また、ただ純粋に強さと勝利を求めて邁進し続けるアステリオスとオッタルの『武人』としての生き様はベルにも多大な影響を与えており、ベルの強さと勝利を求める冒険者としてのルーツは二人から始まったとも言える。
- 予告
アニメシリーズ1期第9話Web予告にて、まさかのセリフ付きで出演。多くの視聴者の腹筋が崩壊することとなった。「正々堂々戦ったから悔いはない」「むしろ清々しい」と語っているが、実際は当記事を読んで貰えれば分かる通り、悔いありまくりである。尤も当時は、まだ原作も8巻発売前で異端児編も始まっていなかったが。
それもその筈、この予告に登場したミノタウロスの正体は「アーニャ・フローメルによる物真似」であり、アステリオスの本心など知る訳が無いのであった。
このセリフが好評だったのか、後に声を担当した杉崎氏は、晴れてアステリオス役として第3期で正式出演する事になった。
尚、アニメ8話で遂に名前が明かされ、アイズと戦う事になり、『ヒロイン同士の修羅場』等とコメントされた。しかも作者の大森藤ノ先生から。
関連タグ
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 異端児(ダンまち)
椿・コルブランド:アステリオスが持つ雷の魔剣の製作者。後にすぐ疑いこそ晴れたものの、この魔剣に関して椿はリヴェリアに問い詰められるハメになった。
アステリオス:本作に登場するアステリオスの元ネタで、ギリシャ神話に登場するミノタウロスの本名。
ゼギオン:地下迷宮に住まう魔物の武人。こちらもアステリオス同様主人公のためにひたすら強さを追い求める求道者である。ただし戦う動機は主人公に対する忠誠のため、どちらかといえばオッタルに近い。崇拝しすぎてオーバーフィルタがかかるのが玉に瑕だが・・・。
ちなみに、推定ではあるが彼も実年齢は1ケタだったりする。