ヘファイスティオン(Fate)
へふぁいすてぃおん
我が名はへファイスティオン!
史上最も偉大なる征服王、イスカンダル第一の腹心なり!
『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』に登場するフェイカークラスのサーヴァント。
魔眼蒐集列車に乗り込んだエルメロイⅡ世とグレイの前に突如として現れた。
マスターはⅡ世の前に現代魔術科の学部長を務めていた魔術師、ドクター・ハートレス。
聖杯戦争以外の場という本来召喚されることがありえない状況で登場した特異な存在であり、イスカンダルの第一の臣下、ヘファイスティオンを名乗る金銀妖眼(ヘテロクロミア)の女性である。
触媒はかつてウェイバーがイスカンダルを召喚する際に使ったマントの切れ端を盗み出して流用。
何故かクラスを名乗らずにいきなり真名を名乗っているが、Ⅱ世はかつての聖杯戦争で見たイスカンダルの臣下達の中に彼女の姿が無く、完全に初見の存在であったことを不可解に感じていた。
正規のカタチでは無いとはいえサーヴァントであるため、並の魔術師では太刀打ち出来ない。歴戦の聖堂教会の代行者すら簡単に屠られてしまったほど。しかし魔眼蒐集列車では、その場にいたグレイが決意の末に「最果てにて輝ける槍」の真なる力の一端を解放したことで撃退に成功した。
ハートレスとは独自の信頼関係を築いており、ロンドンの地下に広がるダンジョン「霊墓アルビオン」を舞台にとある大魔術を行使すべく2人で暗躍しており、Ⅱ世達と激突することになる。
征服王イスカンダルの臣下の1人にして、幼い頃からの友人、「ヘファイスティオン」。
イスカンダルとは同い年であり、容貌は美しく武勇にも優れていたとされる腹心格であった。
主君が死亡する1年前にこの世を去り、イスカンダルには大いに嘆かれたと伝えられている。
聖杯戦争外で呼ばれたことからも分かる通り、彼女は正式な手続きで召喚された英霊ではない。
英霊召喚を目論んだハートレスは偽の聖杯で大聖杯の機能を間借りし、偽の令呪で自身を偽りのマスターとして彼女を定着させたが、流石に聖杯戦争本来の召喚枠を借りる事までは出来なかった。そこで彼は偽物を象徴するエクストラクラスを新たに追加で設定する事で、独自の枠の確保と共に、何もかもが偽物だらけの術式を成立させ、聖杯戦争外でのサーヴァントの召喚を成功させた。
そのクラスは「フェイカー」。本来であれば「英霊の偽物」や「影武者」の側面を当てはめるためのクラスであり、過去のウォッチャーやムーンキャンサーと並ぶ、前例なき異質な枠組みである。
そのため、英霊召喚のシステム上は「イスカンダル」が召喚されたが、クラス特性によりその影武者も務めていた事がある存在が現界している形という、さながらバグめいた状況になっている。
一人称は「私(わたし)」。
外見年齢20歳ほどの、古風で堂々とした武人肌の美女。アイシャドウや髪型といった違いこそあるが、衣装や後ろに垂らした長い三つ編みなど、イスカンダルの少年時代と似た装いをしている。
性格は誇り高く苛烈。基本的には冷静沈着だが、熱くなると戦闘を優先しがちになるのでマスターからは度々たしなめられている。"己の理想"に反する者には誰であろうと敵意や悪意を叩きつけるが、逆にシンパシーを感じた相手に対しては休戦時に話を聞いたりと当たりが柔らかくなる。
元が魔術師であるためか、自分達の時代とは異なる現代魔術師や時計塔の仕組み・情勢に対してもすんなり順応しており、譲れない一線以外では割と柔軟な考え方が出来るタイプな事も窺える。
因みに酒豪でもあり、サーヴァントであることを加味してもやたらと飲めることから生前から酒には強かったらしい。狂気を尊ぶ神への信仰を口にしているが、イスカンダルが天敵としているとある人物もその神を信仰している。これについては、彼女本人はどう思っているかは不明である。
ある理由から人類史にまともに刻まれた逸話を持たないため、サーヴァントとしての格は低い。しかし総合的には高い戦闘能力を保持している。これは単なる宝具やスキルの問題ではなく、魔術や白兵など戦闘で取れる選択肢の多さと、その中から最適解を選び出す嗅覚の鋭さのゆえである。
小剣による直接戦闘でグレイやカラボー・フランプトン、スヴィン・グラシュエートといった直接戦闘に秀でた面々と切り結んでいるが、彼女は本来魔術師であり、強力な神代の魔術を操る。
現代の魔術が一工程や一小節といった形式に縛られ、一時的に世界を騙すものに過ぎないのに対し、彼女の神代の魔術は神霊の権能の一部を借り受け、当然の権利として世界を書き換えるもの。たった一言で発動する魔術も、深度を現代の魔術に換算すると十小節の簡易儀式に相当する。
この神秘の強度ゆえに神代の魔術は段階どころか次元そのものが違うとされ、フェイカー自身も現代の魔術も術式自体はそう劣るものではないとしつつ、蒼崎橙子の魔術すら「脆(よわ)い」と評している。作中ではアッドが魔力を強引に吸収し続けることで魔術の発動を未然に防いだが、逆に言えば発動を許すことは「最初からほとんどない勝ち目を完全にゼロにするのと同じ」であり、最後まで封殺からの一発逆転を狙い立ち回っていた。そこからも神代の魔術の驚異が見て取れる。
さらにノウブルカラーの「強制」の魔眼まで所持しており、凝視した相手の肉体の自由をある程度奪い操ることができるが、相手に魔術的な力があればある程度抵抗は可能。また、生前の役割が形となったスキルで、マスターへの攻撃や呪いのターゲットを自身に集中させることができる。
ステータス
マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 |
---|---|---|---|---|---|---|
− ※ | B | C | C | B+ | D | B++ |
※ 作中におけるマスターはドクター・ハートレスだが、『事件簿』マテリアルにおけるステータス情報はマスター表記が「−」、真名は「なし」となっている。不正な方法で召喚されたからだろうか。
保有スキル
単独行動(B) | マスターからの魔力供給を絶ってもしばらく自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 |
---|---|
偽装工作(B) | ステータス及びクラスを偽装する能力。Bであれば、他のクラスやステータスを相手に見せる事も可能。 |
彼もまたイスカンダルなのだから(偽)(A) | イスカンダルの宝具やスキルを模倣するスキル。模倣したスキルは一段階ランクが落ちるが、その能力を変容する事すら可能。 |
高速神言(B) | 神代の魔術師である彼女は、その一言で大魔術を発動させる。 |
無銘の恩恵(EX) | 名を持たざる彼女ゆえのスキル。剣だろうが魔術だろうが呪いだろうが、主と認めた相手のダメージを自らに吸い寄せる事ができる。被ダメージ自体も、事前に対策を取っていれば大きく軽減する事が可能。 |
魔天の車輪(ヘカティック・ホイール)
- ランク:C+~A+
- 種別:対軍宝具
- レンジ:2~100
- 最大補足:100人
「我が忠誠は王の元に!この一時、雷の御名(ぎょめい)を貸し与え給え!いざ駆けよ!『魔天の車輪(ヘカティック・ホイール)』!!」
イスカンダルの持つ「神威の車輪」そっくりな戦車を展開するが、彼女の場合は神牛ではなく骸骨のワイバーンによって牽引されている。本家の「神威の車輪」や、それに伴った走法「遥かなる蹂躙制覇」から比べればランクは落ちるが、代わりに魔術を使った精密操作や自律操作が可能。
また、持ち主の魔力を注ぎ込むことによって短時間ならばランクを向上させることも出来るだけでなく、その量を更に過剰にすれば一瞬だけ本来の「神威の車輪」に匹敵させることも可能となる。
詳細は該当記事を参照。
Fate/Grand Order
2022年最初のイベント『復刻版:レディ・ライネスの事件簿 −Plus Episode−』に伴い、☆4サーヴァントとしてプレイアブル実装。クラスはフェイカーではなく類似したプリテンダーとなった。
詳しくはこちらの記事を参照。
生前
生涯を通し身を挺して仕えた主君であり、親しみと絶対的な信仰を抱くお方。
それ故、その最期と死後に起きた後継者達の争いには複雑な想いがある模様である。
再会は控えたいらしく、同じ場所に召喚された際は顔を合わせるのを避けている。
ギリシャ神話の酒の神。彼女が信仰する神であり、霊基再臨で彼の意匠が現れる。
なお、ディオニュソスはイスカンダルに加護を与えた最高神ゼウスの息子でもある。
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿
契約したマスター。Ⅱ世から盗み出したイスカンダルのマントの欠片によって召喚した。
あくまでも利害一致による関係だが、人間的な相性は悪くない。それ以降も義理立てから彼以外をマスターとは呼びたがらずに「フェイカー」という呼称を好んで名乗る様になった程であった。
生前の知人に似た雰囲気の、癪に障る存在。イスカンダルを召喚した事も、その最新の臣下になった事も、ついでに性格自体も気に食わないが、同時に大局を動かせる器であるとは認めている。
上記の男の従者にして内弟子。師匠との因縁から敵対関係であり、交戦することも多いが「誰かの影を追うもの」という共感から比較的寛容に接しており、いい戦士の素質があるとも思っている。
現代における最高位の魔術師のひとり。原作の終盤で遭遇した際に「現代の魔術師というものを試させてくれ」と彼女に戦いを挑んだ。後にその時の交戦の結果から(特に橙子を指して)「神秘としての次元が劣る現代の魔術が神代の魔術師に喰らいつけるのは、それとは別の所に執念を燃やしているからだ」という、かつて神代を生きた魔術師としての視点から強さへの見解を述べている。
- 担当声優の大地氏はヘファイスティオン役がオーディションで決まったことや、シリーズのファンでケイネスが好きなこと、同役に受かるわけがないと思い記念としてオーディションを受けたら受かったことを、ゲスト出演したエルメロイ教室便りにて語っていた。
- 奈須きのこ氏の初期構想においては第四次聖杯戦争のライダーは竜に騎乗するドラゴンライダーで、イスカンダルは指揮官のエクストラクラスとして登場する予定だったとのこと。また、後に「イスカンダルの女の子verを書いてみたい」という趣旨の発言もしている。
- これらの「ドラゴンライダー」「エクストラクラス」「女性のイスカンダル」などといった要素が変則的な形でこのキャラクターに取り入れられたらしい。
- 一部ファンからは「ヘファ子」という愛称が付けられている。
- 彼女の奉じるディオニュソスは酒神バッカスに相当する神性だが、フェイカーの扱う魔術においてはむしろ狂気に陥ったゼウス本人をさす。それは「万能にして狂気の神」であり、理性を打ち捨てた無限の混沌こそは、より魔術の源にふさわしいものである。
ヘファイスティオンと言うのは偽りの名乗り。ただしFate世界においてはヘファイスティオンという存在が架空だったとか、全く別の影武者がその名を借りているとかではなく、ヘファイスティオンという人物自体はイスカンダルの腹心の部下として存在した。では、この彼女は何なのか……
サーヴァントとして召喚されたこの彼女は「本当のヘファイスティオン」の双子の妹である。
元々彼女ら兄妹は、イスカンダルの母親であるオリュンピアスによって育てられた理想の将軍と魔術師だった。兄は表舞台でイスカンダルの敵と戦う最適な将軍として。そして妹は裏で魔術や呪術による攻撃から守る魔術師として。特に妹はイスカンダルという存在へ向けた呪い等の盾ともなるべく固有の名前を与えられず、ただ「イスカンダルの影武者」という役割のみを持たされた。また、この事情により彼女の容姿がイスカンダルのものとして流布され、低身長説が成り立った。
生前、イスカンダルは彼女にも名前を与えようとしたが、彼女自身が辞退した。故に彼女の正体、そして真名は「イスカンダルの影武者」以外の何物でもない。ヘファイスティオンと名乗っていたのは、他に名乗れる名がないと言うのもあるが、何より自身のクラスを隠蔽する為でもある。
もっとも、イスカンダルの代理ではなく部下として名乗る時は兄の名を借りる事もあったため「ヘファイスティオン」と言う名乗りも完全な嘘という訳ではないとの事らしい。またギリシャからの風習で普通の男なら「ヘパイストス」と名付けられるところを、アマゾネスの女王にすら同じ名前がいる「ヘファイスティオン」にしたのも、その性別や出身を曖昧にすることに加えて「ヘファイスティオン」という名前が、一説には「神に捧げ物をする」という意味を持っているためである。
生前の主君であるイスカンダルには絶対的な忠誠を抱いており、そのため彼の死後に起きた後継者戦争(ディアドコイ戦争)を苦々しく思っている。彼女が「王の軍勢」に現れなかったのは、王の軍勢、正確にはその呼びかけに応じる部下たちを憎んでいたからである。死後も王の元に集う絆を謳いながら、彼らは後継者戦争と言う醜い結末を引き起こして国を崩壊させた。彼女はイスカンダルが病死するよりも前に命を落としており、英霊として自身の死後の顛末を知ったことでそんな者達を憎んだのである。争った者たちは当然、そこに直接関わらなかった者、王の死後にその軍勢に加わりたいと願った者も例外ではない。そこには兄であるヘファイスティオンも含まれている。
史実伝承でのイスカンダルの体格や外見がサーヴァントのイスカンダルと大幅に違う点については作中でも指摘されていたが、これは影武者として振る舞った彼女の容姿(小柄、黒髪、オッドアイ)が本人のものとして伝えられたため、と解説された。影武者であるにもかかわらず本人と全く似ていないが、これは彼女が「呪術的な身代わり」という役割だったためである。尤も、ゼウスの加護を使う前の幼少期は美少年だったこともあり、幼かった頃は今よりは印象が似ていたらしい。
ちなみに『Fate/Grand Order』バレンタインイベントの個別シナリオではアレキサンダーの台詞の中に彼女らと思わしき「兄妹」への言及がある。他にもイスカンダルから諸葛孔明へのマイルーム会話で「ヘファイスティオンと会わせたら面白そう」という感想もあるが、これは兄妹どっちを指しているのかは不明。彼女があくまで「名無し」を貫いたことを考えれば兄の方を指していると思われるが、後述する兄の人柄を考えると「会わせたら面白そう」なのは妹の方だと考えられる。
彼女は「王の軍勢」の招集を受けるたびに拒否しているのだが、その流れについては「イスカンダルに呼ばれる」→「召喚直前、世界に後継者戦争などの基礎知識を与えられる」→「召喚が完全成立する前に拒否」となっている。これは召喚された英霊は聖杯ないし世界からその時代の知識が与えられるのだが「王の軍勢」によって呼ばれた英霊は後者(世界)扱いになるためである。
サーヴァントの例にもれず、事件簿で起こった出来事は他で召喚されるときには忘れている。
しかし同時に
などの場合はその限りではないことが『事件簿』マテリアルで示唆されている。
なお、兄である真のヘファイスティオンは自分が「イスカンダル第1の腹心」とは考えておらず、妹の喧伝を「イスカンダルの傍には常にヘファイスティオンがいる」という印象を与えることで敵の襲撃を減らそうとする情報工作の類だと認識している。そして妹が他の家臣との折り合いがよくないことについて何とか解決できないだろうか、と日頃胃を痛めていたらしく、現代風に言えばシスコンの気があったとのこと。そしてその懸念はある意味で死後に的中することとなったのだった。また、「王の軍勢」に呼ばれた時にフェイカーがいないことに真っ先に気づくのも彼である。
真のヘファイスティオンがサーヴァントとして召喚された場合、イスカンダルの一部の宝具とスキルを借り受けるスキル「彼もまたイスカンダルなのだから(真)」を保持することとなる。偽との相違はランクの減少が起きないことだが、反面フェイカーのような応用を効かせた運用は難しい。