概要
本作の主人公で、世界を魔王の手から救った漆黒の髪に深紅の瞳を持つ勇者。
元々は異世界の住人であったが、愛の女神の手により勇者となって世界を救う為に転生する。
転生した先のクルツ王国バーデン村では、母と姉の3人で暮らしていたが、村が魔物の手により焼き討ちにされ、母親を無惨な形で殺される。その時に勇者としての力が覚醒し、村に駆けつけたブラウン将軍に見出される形で王都へと向かい、修行を積んだ。
そして、ヴェンデル、クリスティアナといった仲間達と共に魔王を倒し、世界に平和を齎した。
しかしその後、懇意にしていた村を襲って村人達を皆殺しにしたという無実の罪を着せられ、十字架に磔にされ、ギリシャ神話のプロメテウスの如く身体を切り刻まれて野犬やネズミに全身を喰われるといった残虐な方法によって処刑された。
死後、再び出逢った愛の女神に、自分が守ろうとした人間達の醜い本性を吐露し、人間達に復讐する為に自身を生き返らせる事を要求する。
自らの中に眠っている闇の力の存在に気付いており、それを解放させる事も同時に求める。
そして、女神から新たな肉体と闇魔法の力を得て再びクルツ王国を訪れる。
人物像
元々は正義感溢れる実直な青年であり、弱者に対して優しい性格であったが、多くの人間や一部の仲間から裏切られ無実の罪を着せられて大切な者達(家族や仲間、懇意にしていた村の村人)を奪われてからは怒りと憎しみで人格を変える程に心を歪ませ、非常に残忍な性格へと変貌した。
そして復讐の対象者達にとても勇者とは思えない程の残虐凄惨な報復を行い、彼らの苦しむ様子を見て楽しむ事を生き甲斐としている。
彼が行う復讐が残虐なものになっているのは「自身と家族や仲間達がやられた事をやり返す」というルールを独自に設けている為である。つまり、彼の復讐方法は復讐対象者達が嘗て行った行為そのものという訳である。それには復讐対象者達が行ってきたことを再現して自分のしでかした行いと向き合わせるという目的がある。
但し、このルールは絶対的なものではなく、場合によってはそれを破る事もやぶさかでない。と言うより、このルール自体、自身を裏切っただけのヴェンデルを騙すだけの罠であった(ただ、ヴェンデルには幻惑魔法をかけて幻の中で「死」を経験させているだけであり肉体的にはまだ生かしている。「自身を騙した奴を幻を使って騙し返している」のでルールを守り続けていると言えなくもない)。
復讐を果たし終えると、殺した相手の遺体を戦利品として人里離れた荒野へと持ち帰り、「復讐コレクション」として収集している。
また、自らの復讐を行う際に自分と同じく復讐心を持つ者や本来なら復讐対象であるはずの相手(国王)とも利害の一致で手を組むこともある。
身も心も闇に染まった彼だが、ヴィクトリアによって殺された姉の為に花を手向けたり、ノール村の村人達によって無惨にも殺されたモルトケ村の姉妹の為に墓を建て、奪われた懐中時計を奪還して墓に供えたり、復讐に利用する為とはいえアリンガム達によってこき使われていた奴隷魔族達を解放する等、弱者や無辜の民に対する優しさは僅かながら残っている(尚、姉妹の墓を建てた様子はコミックス4巻のおまけページにおいて確認できる)。
しかし、もはや正義の味方では無く「悪の敵」とでも言うべき立場である。
闇魔法
甦ったラウルが得た能力。
全てを破壊し奪う為のものであり愛の女神によって封じられていたが、ラウルが人間に復讐する為に解放してもらった事で使えるようになった。
愛の女神が危惧する程その闇なる力は万能かつ強大であり、あらゆる事を理不尽極まりない水準で行う事が出来る。
これまでに判明した能力は以下の通り。
- 人体を切断する
- 他人を拘束する
- 身体を石化させる
- 他人の身体や死体、物体を操る
- 幻覚を見せる
- 死体から記憶を読み取る
- 炎を出す
- 声を拡大させる
- 武器を作り出す
- 他人に変身する
- 結界を張る
- 攻撃を跳ね返す
- 手を触れずに相手の内臓を破壊する
- 傷を癒す
- 地中から氷柱を突き出させる
- 催眠をかける
- 死ななくなる呪いをかける
- 相手の魔法を解除する
- 異空間を作り出す
- 他人の魂を自分の体の中に取り入れる
- 魔法弾を放つ
- 映像を配信する
- 相手の魔力を奪う
- 遠くにあるものを召喚する
- 感度を高める
と、ほぼ何でもありのチート能力である。
但し、聖女の光魔法とは相性が悪く、闇魔法の力が浄化されるとの事なので、必ずしも無敵という訳ではないらしい。因みに、現時点で登場している人物で光魔法を使えるのは嘗ての仲間にして現復讐対象である聖女のクリスティアナである。
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小説2巻&コミック版60話以降のネタバレ
勇者二度目の死
自分や家族、仲間を裏切った人間達に復讐するために蘇った元勇者ラウルは、ヴィクトリア王女やヴェンデルといった救いようのない外道たちに引導を渡していった。そして、いよいよ元仲間で復讐対象者の聖女クリスティアナを裁判で有罪判決にし、彼女を火刑に晒した。ラウルは焼け死体となったクリスティアナの遺体をいつも通りコレクションとし、人里離れた荒野へと持ち帰ったが…
「うまくやってくれよ、元相棒」
と言い放った途端一本の矢が彼の胸を貫き、ラウルは地面に倒れる。(おそらく矢が飛んでくることを察していた模様)
「───驚いたな」
「こんなにあっさり倒せるとは」
彼の前に現れたのは、ヴェンデルとアリンガムに復讐する際、一時的に手を組んでいた魔王の妹である、テオドールだった。
彼女はラウルへの復讐を諦めてなく、光魔法を宿した矢を彼に放ったのだった。(上記にも記されている通り、闇の力を手にしたラウルの弱点は光魔法である)
復讐の怒りを向けるテオドールに対し、ラウルは「なら今すぐやってみろよ あ お前一人じゃ無理か」などと煽り続ける。そして、彼女によって十字架に磔にされ、嘗てヴィクトリアが自分を処刑した時と同じ方法で殺すことを選び、矢の時と同じく光魔法が宿った短剣を構えるが、ラウルと共に復讐した時のことを思い出し、躊躇うテオドールに対して、ラウルは
「どうした早く刺せよ。それとも刺せないのか?」
「あんなに意気込んでたのに」
「あんたの姉への気持ちはその程度のものだったんだな」
と彼女に姉の復讐をさせようと煽り続ける。
そして、彼女は腸が出るほど彼の身体を滅多刺しにし、そして群がってきた獣たちに5日間貪り食わせ、姉の復讐を果たしたのだった。
こうして人間達に復讐を果たすために蘇った元勇者 ラウル・エヴァンスは自身に復讐を希う魔王の妹によって二度目の『死』を迎えたのだった。
がしかし、光の中で目を開いた彼は、不敵な笑みを浮かべていた。
ラウルは処刑されたクリスティアナを地獄に招待する為に敢えてテオドールの手にかかって死んだのだった。
死後、再び白い世界に戻っていた彼は愛の女神と再会し、彼女を恐喝する形で死者を地獄へ招く馬車を用意させる。
馬車に乗った彼は審判の門の前の行列に並んでいたクリスティアナを見つけ、彼女を馬車に乗せて共に地獄へと向かう。
神々への復讐
地獄にて、クリスティアナに引導を渡したラウルは再び地獄の門前に戻るも、愛の女神から一度地獄の門を潜った者は二度と出られないと聞かされていたため、再び自分の前に現れた女神に地獄を司る神の殺し方を聞く。
実はラウルにとって、復讐対象者は人間だけでなく、自身を勇者として人間界に遣わせて自身を散々利用した挙句、見殺しにした神々も復讐対象であることが判明した。
そして、愛の女神を半ば脅し彼女の心臓を抜き取って記憶を読み取り、「神殺しの鎌」の情報を入手する。そして、手始めに地獄を司る神を次の復讐対象とし、彼のいる城へと向かうために自身を連行しに来た堕天使達を半ば脅迫した形で、彼の下へと案内させたのである。
地獄を司る神と、真の復讐対象者であった愛の女神への復讐を果たし終えると、堕天使達から新たな地獄を司る神として迎え入れられる。
また、愛の女神の血や心臓を体内に取り入れた影響からか、まつ毛が愛の女神のものと同じになる。
神の力
地獄編以降、新たに手にした能力。地獄を司る神や愛の女神から奪う事で扱えるようになった。
これまでに判明している能力は以下の通り。
愚民どもへの復讐
神殺しの力を手に入れたラウルは、今度はクルツ国民達に復讐するためこの世へ戻ってくる。
王都では洪水や疫病と言った災厄に見舞われ、多くの市民達が犠牲となっていた。
一部の市民がこれをラウルによる呪いだと考え出すようになり、ラウルに懺悔して許しを請う「ラウル教」の教徒となる。彼等は次第に過激な布教活動を行う様になり、王都に混乱を齎すようになる。
もう一方の市民は長い事ラウルの噂を聞かなくなった事からラウルは死んだものだと判断し、ラウルや暴走するラウル教の教徒達を憎み国王による国の立て直しを希望する「国王派」を形成していた。
しかし、ラウルにとって、「ラウル教」や「国王派」など、どうでもよく王都の市民たちも復讐対象だったのでどちらも裁くつもりでいた。
その結果、大半の国民が地獄堕ちとなり、残ったのはラウルの公開処刑に参加せず、普通に生活してた一部の国民達だけが許された。
ラウルは、ヴィクトリア王女の元婚約者だったエミールとその母親を始めとした残った市民たちを連れ、空を飛ぶ大きな船に乗せ、空中に用意した楽園へと移住させ、彼らに綺麗な環境の下で基本的に自給自足で生活をさせる。ただし、彼らを根っからは信用はせず、住民には週に一度、北の神殿において魂の穢れ具合を審判する義務をさせる。(ちなみに、拒めば速攻で地獄堕ちにすると半ば脅迫めいた発言をする)
不安を持ちながらも承諾をし、生活し始めた市民を見送った後、ラウルは残りの復讐対象者を片付ける為再び廃墟となった王都へ戻る、しかし、ある廃墟となった町に降り立ったラウルの前に、なんと死んだ筈のラウルの姉・クレアが姿を現す。
国家魔導士達と義兄への復讐
クレアの案内で生まれ故郷であるバーデン村に訪れると、同じく死んだ筈の少年補給兵隊とラウルの母が彼を出迎える。
村でラウルは少年達に剣の稽古を付けながら平穏な日々を過ごしていたが、それらは全て国家魔導士達によって見せられた幻であり、実際の姉達は国家魔導士達の黒魔法によって蘇った生きる屍であった。国王によるラウル討伐の命令に従い、国家魔導士達は墓から遺体を掘り起こし、生贄を使って遺体と魂を結び付けて遺体を動かしていたのだ。
幻の中で過ごしてすっかり衰弱したラウルに止めを刺そうとする国家魔導士達だったが、攻撃は全て防がれ、このまま放置して衰弱死するのを待とうとするもラウルは一向に衰弱死する様子を見せなかった。
実はラウルはとっくに国家魔導士達の作戦を見破っており、衰弱して見えたのも彼が国家魔導士達に幻を見せていただけだった。
国家魔導士達は作戦を切り替え、遺体を操ってラウルの身体を拘束し、クレアの身体を操ってラウルを剣で突き刺す。が、剣で刺された程度では死なないラウルは反対にクレアの身体を突き刺して動きを止める。そして、先程からラウルの大切な者達の遺体をいい様に操っていた国家魔導士達に対する復讐を始める。
杖を爆破して火だるまにしたり、身体をパンにしたり、幻惑魔法をかけたりして彼等を無力化した後、最終的には身体と魂を分離させて彼等を生きる屍に変える。
そして標的を国家魔導士達の協力者であり、一連の様子を物陰から見ていた義兄バーナードに切り替える。
バーナードはラウルのせいで妻であるクレアとお腹の子が殺されたと涙ながらに訴えるが、ラウルには彼の言葉が全く響かなかった。と言うのも、ラウルは彼が結婚詐欺師であり、クレアが教会で神官達に輪姦されていた時も彼女を助けずに不倫に走っていた事を知っていたのだ。
真実を暴かれて顔面蒼白になるバーナードに対し、ラウルはそんな彼の正体を知りながらもクレアは変わらずにバーナードを愛し続けていた事実を伝える。
それでもクレアを裏切り続けていたバーナードの事を許せなかったラウルは彼にクレアの幻を見せて飲まず食わずの状態で謝罪させるという罰を下す。