日本の戦国時代(安土桃山時代)における、大名・武将である真田昌幸の異名であり、豊臣秀吉が彼の優れた謀略、軍略家ぶりを称して付けたものである。
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これについて、「比興」とは文字通り「卑怯」という意味も含む多くの意味を持つ言葉であり、「表裏」は仕えたふりをして次々と裏切っては主君を変えてきた経緯から、『老獪な食わせ者』(「食わせ者」は「一杯食わせる」などからできたもの)といった意味で付けられたもので、その才覚を褒めているような、嘲っているような、微妙なニュアンスが込められている。
しかし、これは主家である武田家を失い、その上に周囲を徳川家・北条家・上杉家といった強大な勢力に挟まれている状態で、小豪族の真田家が滅びずに生き残るためには、情勢の急激な変化に上手く対応しなければならなかった為であり、むしろ世渡り上手と賞賛されるべき意味合いを含んでいるとされている。
更に昌幸はそれだけでなく、日本の戦国時代を代表する策謀家でもあり、戦となればその知略を遺憾なく発揮し、第一次・第二次の上田城の戦いでは、徳川家康やその息子秀忠の率いた大軍を、僅かな兵力で撃退してしまった伝説はよく知られている通りである。家康は彼を「稀代の横着者」(狡猾な奴の意)と嫌忌し、三河後風土記では「生得危険な姦人」(腹黒く悪賢い人物)と畏怖していた。
徳川家にとって昌幸は、まさに煮ても焼いても食えない一筋縄ではいかない男であったのである。
秀吉が昌幸をこの異名で称したのは、そんな彼の「鬼謀」(常人の思いも及ばないうまい計略)ぶりから付けられた称賛のものとみて間違いないとされる。
戦国時代の人物の主な異名タグ
- 織田信長:第六天魔王
- 今川義元:海道一の弓取り
- 上杉謙信:越後の龍
- 北条氏康:相模の獅子
- 里見義堯:房総の狼
- 柴田勝家:瓶割り柴田
- 伊達政宗:独眼竜
- 最上義光:羽州の狐
- 毛利元就:謀神
- 長曾我部元親:鬼若子
- 島津義弘:鬼島津
- 黒田官兵衛:今世の張良
- 石田三成:鋭利なる吏僚
- 斎藤道三:美濃の蝮
- 真田幸隆:攻め弾正
- 真田幸村:日本一の兵
- 武田信玄:甲斐の虎
- 立花道雪:鬼道雪
- 立花宗茂:剛勇鎮西一
- 竹中半兵衛:今孔明
- 佐竹義重:鬼義重
- 龍造寺隆信:肥前の熊
- 豊臣秀吉:木綿籐吉
- 上泉信綱:上野国一本槍
- 長野業正:上州の黄班
関連タグ
乱世を泳ぐは愉快なものよ:これを象徴するフレーズ。