概要
レイテ沖海戦の際の西村艦隊。
正式には第一遊撃部隊第三部隊。西村艦隊の名は艦隊司令官・西村祥治海軍中将に由来する通称。編制は以下の通り。
1944年10月22日、これらの艦艇は栗田艦隊の一部として停泊地のリンガ泊地を出撃し、出撃地点のブルネイに向かった。しかし急な米軍の侵攻と、それに対する日本側の準備が後手に回ったことで、本土からの燃料が届いておらず、栗田司令長官が念のため手配したシンガポールからの油槽船が一日遅れで到着する状況だった。この為、突入予定日時が更に1日遅れた。
それでも尚、低速の扶桑、山城が指揮下にあるため、4つのルートのうち最も敵に早く発見される可能性の高い「スリガオ海峡ルート」を通らないと間に合わない状況だった。
栗田艦隊は部隊を二分し、主力は潜水艦の待ち伏せの危険はあるが、発見される可能性が低い「パラワン水道ルート」を、低速の扶桑、山城他で新たに第三部隊を編成してこの部隊が「スリガオ海峡ルート」を通るという挟撃作戦とし、ここに第二戦隊司令官西村祥治中将を指揮官とする第三部隊、通称「西村艦隊」が編制された。
この作戦は、西村艦隊と栗田艦隊が同時に突入するという敵戦力の分散を企図したものであったが、10月24日のシブヤン海海戦後、栗田艦隊から一時退避のため遅延の報告があり、計画は変更された(※俗に言う栗田ターンは10月25日のサマール沖海戦後の事なので注意)。
このため西村中将は夜戦を企図し、自らの艦隊のみでスリガオ海峡方面から突入を計画する。
しかし作戦は察知されており、米海軍は戦艦6隻・重巡洋艦4隻・軽巡洋艦4隻・駆逐艦26隻・魚雷艇39隻を投入して海峡北面を封鎖した。
10月24日深夜、スリガオ海峡に突入した西村艦隊は直後から米軍魚雷艇の追跡を受けたが、進撃を続けて海峡の突破を図る。
10月25日3時10分、米駆逐艦の放った魚雷が命中した扶桑は落伍し、火薬庫の爆発により船体が2つに折れて漂流した。
3時20分、満潮、山雲が米駆逐艦の放った魚雷に被雷し沈没した。朝雲は艦首を失い、退避。
3時23分、山城が米駆逐艦の放った魚雷に被雷。西村中将が山城から「各艦ハワレヲ顧ミズ前進シ、敵ヲ攻撃スベシ」と命令を発する。
3時51分、米軍の戦艦・巡洋艦は丁字で待ち構え、レーダー砲撃を開始。西村艦隊は甚大な被害を受けた。
3時55分、砲撃が集中し始めた最上は南方へ避退するが、4時2分、艦橋に砲弾が命中し、幹部と要員が全滅。
4時19分、山城が米駆逐艦の放った魚雷に被雷し沈没。西村中将以下、乗員の殆どが死亡。時雨は砲撃を受けて損傷し、部隊が全滅したと判断して退避。
4時20分、扶桑の艦首側が沈没。艦尾側もまもなく沈没した。
7時21分、米軽巡・駆逐艦の追撃で朝雲が沈没。
この海戦では生存者の少なさも特筆される。山雲の乗員は全滅し、満潮は艦長以下数名、朝雲は艦長以下30名が捕虜となったがそれ以外の乗員は戦死、扶桑・山城の生存者もそれぞれ10名を数えるのみだった。海戦直後はもっと生き残っていたが、鮫に襲われたり、投降を拒み自決したり、現地住民に殺されたりした結果、この数になってしまった。
最上は脱出したが操舵不能となっており、後続の志摩艦隊の那智と激突。後に空襲を受けて航行不能となり、曙によって雷撃処分された。
生き残ったのは時雨のみだった。
結局西村艦隊の乗員で生還したのは時雨の乗員と曙に救助された約700名の最上の乗員、捕虜として戦後帰還した満潮、朝雲の30数余の乗員だけだった。
レイテ沖海戦関連の書籍でも最も古いジェームズ・フィールドjr著「レイテ沖の日本艦隊」(初版発行は1947年、日本語訳初版発行は1949年)では、スリガオ海峡海戦での西村提督の指揮に対する評価は非常に低い。同著には生還した時雨の西野艦長が「西村司令官は戦死したことで、後の汚名に晒される事を経験せず良かった」という趣旨の発言をしたという記述があり、当時の海軍内にそういった風潮があった事を示唆している。
サミュエル・モリソンの「モリソン戦史」でも西村提督は手厳しく非難されている。
『艦隊これくしょん』の西村艦隊
ゲーム中で、西村艦隊に所属した艦娘を集める任務がある。
山城・扶桑・最上・時雨の4人を一つの艦隊に編成し、オリョール海にて勝利する任務と、この4人のグループに満潮を加えた5人を一つの艦隊に編成し、南方海域にて勝利する任務である。
また、朝雲が2014年11月14日から12月1日まで開催された発動!渾作戦、山雲が2014年12月26日のアップデートにより、実装された。
艦これのゲームシステムに於いて、通常艦隊は6隻編成のため一隻あぶれてしまうが、連合艦隊などで西村艦隊+αを再現した艦隊を組んでみるのも一興だろう。
出撃時の西村艦隊。後列左から扶桑・山城、前列左から最上・時雨・満潮。
帰還時。
提督としては、再びの悲劇を招かないようにしたい。
余談だが、2014年秋のイベント海域にて西村艦隊を編成してE-3を攻略したプレイヤーの動画が存在する。
そして……
2017年秋。
運営から一件の公式Twitterによる発表がなされた。
これに前後するように、運営からはツィートで「西村艦隊」「決戦」といったワードがたびたび登場するようになり、さらに西村艦隊のメンバーである満潮改二の実装、それに同期するように西村艦隊の面々に決戦前夜ボイスが実装され、朝雲・山雲姉妹には決戦仕様グラフィックが実装されるなど、雲行きは怪しさを増している。
艦これに携わる誰もが予見した。
雪辱の日は近いと――
11月10日には最上にも【スリガオ海峡突入】modeと山城・扶桑には【決戦前夜ボイス】
そして2017年11月17日のオンメンテをもって2017年秋季イベントが開始。それと同時に時雨改二・満潮改二にも【スリガオ海峡突入】mode/差分と【決戦前夜ボイス】が実装。
また、本イベント期間限定で「遊撃部隊」(7隻編成)が編成できるようになり、西村艦隊全艦を第3艦隊に編成する任務が実装された。
西村艦隊全艦突入準備完了。
運命の海峡を越え暁の水平線に勝利を刻め!!
あの海峡の先へ・・・
2017年12月11日をもって2017年秋季イベント捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)は終了した。
そこには、自身の怨念(と迷い込んできた同じ声の姫)を打ち払い、あの海峡を越えて先へ進んだ扶桑姉妹と時雨と西村艦隊の皆の姿があった。
「止まない雨は、ない」
時雨の頬を流れる雨は、喜びの雨へと変わった。
西村艦隊の皆と、提督と鎮守府の仲間と共に、スリガオの先へ
2018年冬季イベント「捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(後篇)」
再出動、西村艦隊!!
本懐を遂げた西村艦隊だったが、続く後篇で再び出番が回ってくることになる。
E-2「シブヤン海海戦」、E-4「サマール沖海戦」のギミックの解除に西村艦隊を突入させてその末端のマスで待ち構える艦隊に勝つことが条件となったのだ。
難易度にもよるが史実の西村艦隊メンバーを多く編成するほど確実にルートを固定できるため、再び7隻が結集し、ボス艦隊を炙り出すべく出撃した。
さらにE-4ではNPC友軍艦隊としても参戦!
他編成と比較しても最大火力を有する当たり編成であり、史実では叶わなかったシブヤン海を抜けた栗田艦隊本隊への支援という本懐を遂げることができた。
余談
捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)E-4の道中は夜戦マスが多数な上に駆逐艦やPT小鬼群がうじゃうじゃしているため、ダメコンを載せた潜水艦娘を敢えて編成することでデコイ役として使う事が可能であった。
特に伊13と伊14の姉妹は元々3スロで水戦を積むこともできるため、この役目をこなしつつ制空権争いにも参加しやすいとこの役目をこなすのに最適な立ち位置であった。
こうして西村艦隊を決戦まで守り通し、その勝利へと貢献した彼女達は誰ともなしにこう呼ばれるようになった。
「名誉西村艦隊」と。
ゲーム外での動き
艦これ内において、レイテ海戦、そして打倒スリガオの気運が高まる中、ある調査報告は告げられた。それは戦艦「武蔵」や重巡洋艦「インディアナポリス」を発見した「ポール・アレン」氏が【スリガオ海峡で旧日本海軍の戦艦山城や扶桑など、計6隻の船体を発見する調査を行っている。】というものだった。旧日本海軍等が見直される中での武蔵の発見やインディアナポリス発見と伊58特定が同じ年だった等、又しても運命を感じるような偶然が発生した。すでに海域を絞っており年内の発見を目指しているそうだ。もし発見されたならば2017年は西村艦隊にとって運命の年となる事だろう
・・・そして2017年秋季イベント「捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)」も佳境に入った2017年11月27日。戦艦「山城」が発見された。
→海外サイトよりhttp://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/2265713
そして・・・山城発見から数日後の12月7日、最上を除く5隻が発見されたようだ。おかえり。
このニュースはNHKでも取り上げられた。
この時の捜索で唯一発見できなかった最上も発見出来たことが2019年9月9日に公表された
→RV PetrelのFacebookページよりhttps://www.facebook.com/rvpetrel/posts/2578429078859224
リアルイベント・深海大サーカスでも西村艦隊が再びフィーチャーされる事となった。
また、時雨が主役であるアニメ第二期こと『いつかあの海で』では西村艦隊の結成から物語が始まる。当初は山城が不用意な発言で朝雲から顰蹙を買ったり、最上がやたらマイペースに振る舞っていたりするなど、まとまり切れていない様子が描かれたが、内面的には互いに信頼している事も描かれている。
当初から史実通りの囮艦隊である事がはっきりしていたため、「これが西村艦隊の最初で最後の戦い」とされていたが、その一方で山城と成田提督は西村艦隊が生還できるよう立ち回っており、その結果志摩艦隊や栗田艦隊と連携が取れたことで全員生還する事はできた。
しかし、その代償として時雨と最上以外は艦娘としての力を失ってしまい退役。これにより事実上西村艦隊は解体となり、時雨も二水戦へ異動する事となった。
関連イラスト
関連タグ
たけの子山城 西村艦隊メンバー主体のほのぼの系2次創作漫画。上記の秋季イベントもネタに組み込まれている。
米軍側参加艦艇(言及のある艦娘のみ列挙)
フェニックス…第77任務部隊第3群旗艦。時報で山城・時雨・朝雲に言及する。
ヘイウッド・L・エドワーズ…第77任務部隊第2群 第56駆逐戦隊。こちらも時雨に言及する。