概要
2001年放送。全49話。キャッチコピーは『新世紀、凛凛』。
鎌倉時代中期の鎌倉、京、博多、大元を舞台に主人公・時宗が生まれる前に起きた宝治合戦から時宗の死までの陰謀が渦巻く時代を時宗の死後32年経過した時代(時宗の孫・高時が執権に就任した頃)の時宗の正室・覚山尼(祝子)の回想という形で描く。前半は鎌倉に渦巻く権力争いと異母兄弟の対立が主な軸であり、後半は蒙古襲来を中心に描かれる。番組ディレクターが「作中人物は全員悪役と思ってもよく、純粋な性格として描かれた主人公・時宗ですら例外ではない」とコメントするほどにドロドロした人間模様が展開される。
原作は『写楽殺人事件』の高橋克彦。『炎立つ』と同じく脚本と並行して執筆された。脚本は朝ドラ『ひまわり』や『きらきらひかる』を手掛けた井上由美子が担当。
平均視聴率は18.5%、最高視聴率は最終話で記録した21.2%。
初めての試み
- 大河ドラマで初めて鎌倉中期を取り扱った作品。この作品以前に鎌倉時代を取り扱った作品は過去にも存在していたが、中期はこの作品が初めて。
- 平成になってから初めて北条時宗を取り扱った実写作品。
- 脚本を担当した井上氏はこの作品が大河ドラマ初脚本。
- 大河ドラマ史上初めて、狂言師が主演を務めた作品。また、和泉元彌はドラマ出演5作目(狂言以外の演劇活動全体だと8作目)にして連続ドラマ初主演となる。ちなみに連続時代劇出演もこれが初めて。そんな彼が時宗役に抜擢されたのは演出家曰く、「和泉氏と時宗には共通点が多く、今の時代で常に家を意識する数少ない日本人である」からとのこと。その和泉氏も「父親への反発以外は似ている」とコメントしている。また、脚本家の井上氏も和泉氏の『俳優としての経験の薄さ』から「和泉氏が俳優として成長していく姿と時宗が作中で成長していく姿を重ねられる」とコメントしている。
- このドラマの元寇シーンはCG(実際には数艘しかない蒙古の船団を特殊撮影で大船団に見せている)を駆使したダイナミックなもので、その出来栄えはドラマ終了後もNHKの歴史番組で元寇を取り扱う際に再現VTRの一部として再利用されるほどのもの。
登場人物
記事のある人物はリンク先も参照。
- 北条時宗 (演:小池城太朗→浅利陽介→和泉元彌)
- 主人公。
- 北条時輔(時利) (演:太田光輝→東海孝之助→崎本大海→渡部篤郎)
- 時宗の異母兄で時宗と対をなすもう一人の主人公。
- 北条時頼 (演:渡辺謙)
- 時宗の父で鎌倉幕府第5代執権。物語序盤の主人公。
- 涼子(涼泉尼) (演:浅野温子)
- 時宗の母。作中では「毛利季光の娘で北条重時の養女」という史実の正室と継室がまぜこぜになった設定。宝治合戦で父を殺したとして時頼を激しく恨んでいたが、彼が毒を盛られて死ぬ間際に和解を果たす。時頼が亡くなった後もしばらくは出家を拒否し続けたが、二月騒動で時宗が時輔を討伐しようとした際に「そなたの罪を償う」として出家する。
- 安達泰盛 (演:柳葉敏郎)
- 有力御家人。第1話の宝治合戦からずっと登場し続けた。肉体言語を多用し、時頼から「御家人の中でも一二を争うほどの戦上手」と評される武闘派。その信頼度は時頼が幼き日の時宗に「戦が起こったときは彼を頼るように」と言い聞かせておくほど。
- 平盛綱 (演:宗近晴見)
- 平頼綱(八郎) (演:北村一輝)
- 時宗に仕える御内人。
- 祝子(覚山尼) (演:吉谷彩子→児玉真菜→西田ひかる→十朱幸代(語り兼任))
- 北条貞時 (演:金子雄→小池城太朗→佐保祐樹)
- 時宗の嫡男。
- 松下禅尼 (演:富司純子)
- 時宗の祖母。
- 讃岐局 (演:篠原涼子)
- 時輔の母。時輔の不遇ぶりに不満を抱いている。最期は安達の館に自害同然で火を放ち、焼死する。
- 祥子 (演:黒川芽以→ともさかりえ)
- 小山長村の娘で時輔の妻。献身的に時輔に尽くす。二月騒動で夫と引き裂かれたことに強い恨みを持ち、時宗を殺そうとするが頼綱によって返り討ちにされる。
- 北条時利 (演:清水響→中野勇士→鈴木藤丸)
- 時輔の嫡男。母の死後、姉共々時宗によって引き取られ貞時と兄弟同然に育つ。流浪の民となった実父とは何度か再会するが、時輔は彼に対してひとりの民と武家の子の関係として振る舞い、決して自分が父であることは知らせなかった。
- 梨子 (演:牧瀬里穂)
- 長時の妹で泰盛の妻。
- 禎子 (演:寺島しのぶ)
- 摂関家に通じる飛鳥井家の娘で頼綱の妻。夫同様の野心家。
- 北条宗政 (演:松川真之介→川原一馬→比留間由哲)
- 時宗の同母弟。兄・時宗を尊敬している。作中では元寇の際は2回とも博多へ赴く。文永の役ではてつはうの攻撃により負傷し、隻眼になる。その時の怪我がもとで、博多から帰還してからしばらくはその事がフラッシュバックしてパニックに陥ってしまうようになるが、最終的には克服している。弘安の役で博多湾に流されてきた時輔を救出した際、不意打ちしてきた蒙古兵の攻撃によって死亡した。その遺骨は時輔によって鎌倉へ運ばれ、危篤から意識を取り戻した時宗の元へ運ばれた。
- 北条重時 (演:平幹二朗)
- 極楽寺流の祖で長時、時茂、義政、梨子の父。
- 北条長時 (演:川崎麻世)
- 鎌倉幕府第6代執権。だが、実質的には時頼の傀儡状態だった。
- 北条時茂 (演:羽賀研二)
- 長時の弟で六波羅探題北方。作中では珍しい、史実通りに若くして病没した人物。
- 北条義宗 (演:宮迫博之)
- 長時の子で時茂の死後、六波羅探題北方となる。弓の名手で二月騒動で時輔の討伐を命じられた際は時輔の左腕を射抜いたが、最終的には討ち取らずに逃がす。のちに泰盛と頼綱の派閥争いにおいて板挟みになり、さらには時輔を逃がした件もあり精神的に追い詰められて自害という結末を迎えることになる。
- 北条義政 (演:渡辺徹)
- 長時、時茂の弟で政村の死後、鎌倉幕府連署となる。甥の義宗が第43話で自害し果てた後は出家し、表舞台から姿を消す。
- 北条政村 (演:伊東四朗)
- 鎌倉幕府第7代執権。長時と時宗の代では連署を務めた。
- 北条実時 (演:池畑慎之介)
- 幕府の重鎮で扇の要。第42話で病死するまで幕府のよき知恵袋として活躍する。その知識は時頼から幼き日の時宗に「人の心に迷いし時は実時殿じゃ。ただし、相手に聞く耳がないと知れば口を閉ざすゆえ、日頃の学問を怠るでない。」と言い聞かせておくほど。
- 時宗に自分の病を見抜かれたことから、時宗が病を抱えていることに気付いた数少ない人物でもある(時宗は「儂は壮健じゃ。10年でも20年でも生き抜いて、この国の安泰を見届ける。」と返し、自らも病の身であることは明かさなかった。)。
- 彼の死後、泰盛と頼綱の対立が表面化することになる。
- 北条顕時 (演:山口馬木也)
- 実時の子。実時とは前妻(顕時の母・離縁後に自害している)との離縁及び政村の娘との再婚が原因で確執があり、一時期は酒に溺れて荒れていた。この確執は長きに渡り、引きずられることになる。最終話では病により隠退した時宗に蒙古国内で身内の反乱が起こったことにより日本を襲えなくなったことを報告し、時宗を涙させる。
- 北条時広 (演:石橋蓮司)
- 幕府の重鎮。時宗のよき相談役で、無学祖元を紹介した。ちなみに作中では最終話まで登場し、時宗が亡くなるその時まで長老として健在だったが、史実では文永の役の翌年に亡くなっている。
- 北条時章 (演:白竜)
- 名越北条氏。反得宗。妹や弟に比べて冷静沈着。二月騒動で名越北条氏が攻められた際、自害。
- 北条教時 (演:鈴木祐二)
- 時章、桔梗の弟。反得宗。兄に比べて血気盛んな性格。時宗の妻子に刺客を送り、二月騒動を引き起こす。
- 足利泰氏 (演:西岡德馬)
- 足利家の当主。
- 足利頼氏(利氏) (演:厚木拓郎→安藤一平→尾美としのり)
- 泰氏の子で時輔の烏帽子親。母は時頼の妹。足利家の中では穏健派。最期は師氏によって強制される形で毒殺される。
- 足利家時 (演:内山昂輝→俊藤光利)
- 頼氏の子。
- 桔梗 (演:原田美枝子)
- 時章の妹で足利泰氏の前妻。得宗家によって離縁させられたことを恨んでおり、作中で不審な行動(教時に刺客を送るように命じる、その首謀者として時輔の名を挙げる等)をとり続ける。
- 最期は師氏によって殺害される。
- 高師氏 (演:江原真二郎)
- 足利家の執事。足利家に害をなすものは例え身内であろうと手にかける。
- 少弐資能 (演:野口貴史)
- 鎮西奉行。蒙古襲来の際は老体に鞭打って奮戦するも、弘安の役にて戦死する。
- 少弐景資 (演:川野太郎)
- 資能の子で蒙古襲来時の実質的な大将。
- 竹崎季長 (演:うじきつよし)
- 九州御家人。文永の役での手柄を幕府へ直訴しにやってきた。石築地の策は彼によって九州にもたらされる。
- 菊池武房 (演:小西博之)
- 九州御家人。
- 日田永基 (演:ダンカン)
- 九州御家人。文永の役では一番名乗りをするが、そこをてつはうで攻撃されて爆死する。なお、実際は戦死していない。
- 九条頼経 (演:宇梶剛士)
- 宗尊親王 (演:相ヶ瀬龍史→吹越満)
- 鎌倉幕府・第6代・征夷大将軍。長時や名越北条氏、足利家ら反得宗の面々と手を組んで得宗家を倒そうともくろむ。が、最終的には出家させられ、失意のうちにお亡くなりになる。この際、鐘の音とともにくしゃくしゃになった彼の顔の静止画が5秒間流れた。
- 惟康王 (演:小阪風真→山内翼→藤沼豊)
- 鎌倉幕府・第7代・征夷大将軍で宗尊親王の子。父が追放されたのち、3歳で将軍になった。その際に自分の両親が鎌倉にいない理由を時宗から説明され、「まろはお前が嫌いや!」と時宗の頬を扇でひっぱたく。その後も将軍としてたびたび登場する。
- 近衛基平 (演:宮内敦士)
- 関白。六波羅探題南方時代の時輔と交流する。作中での彼の最期は時の帝・亀山天皇の目の前で自害という、普通なら絶対にありえない最期だった。ちなみにこの時、病(時輔に「勝手に朝議を開かれた」とあたるシーンで吐血している。)で余命いくばくもないという描写もある。
- クビライ・カアン (演:バーサンジャブ)
- モンゴル帝国第5代皇帝。
- 佐志房 (演:藤竜也)
- 水軍松浦党の頭領。謝国明の友人。史実及び原作小説では文永の役の際に3人の息子共々戦死しているが、ドラマでは文永の役後も少しだけ生き残り、時宗に木刀で斬り合わせることによって文永の役で戦死した者達の言葉を聞かせに行く等、復讐に生きるようになる。最期は元の大都にてクビライを暗殺しようとして返り討ちにされる。その遺灰は桐子によって一握りを残し、海に撒かれた。
- 佐志直 (演:大澤佑介→小林元樹→高畑雄亮)
- 佐志房の長男。
- 佐志勇 (演:常盤祐貴→工藤幾未→吉守京太)
- 佐志房の二男(養子)。高麗生まれ。
- 佐志留 (演:田中大河→森脇史登→衣笠友章)
- 佐志房の三男(養子)。
- 桐子 (演:磯部詩織→邑野未亜→木村佳乃)
- 天野常世 (演:宇崎竜童)
- 時頼達が諸国漫遊の旅で出会った貧しい武士。鉢ノ木伝説の人物。
- 謝国明 (演:北大路欣也)
- 宋出身の博多商人。
- 美岬 (演:藤あや子)
- 謝国明の妻で謝太郎の母。蒙古の使者である藩阜達をもてなした際、大元への怒りを爆発させた勇の攻撃から藩阜を庇って殺される。
- 謝太郎 (演:松重豊)
- 謝国明の子。神出鬼没の商人で、時宗と時輔の決闘を2人以外で唯一目撃している。様々な人物と繋がりがあり、長時暗殺の際に泰盛を八郎のところに案内したり、八郎を時宗のところへ連れてきたりと随所随所で活躍を見せる。なお、原作小説ではドラマ以上に大活躍をしている。
- 日蓮 (演:奥田瑛二)
- 日蓮宗の開祖。このドラマでは思想家として描かれている。温厚な性格として描かれる本作の時宗を本気で怒らせた数少ない人物。
- 無学祖元 (演:筒井康隆)
- 宋出身の僧侶で円覚寺の開祖。第33話あたりから体の不調を感じていた時宗に余命宣告をした。その後も時宗に煩悩を捨て己が道を進むように進言する等、終盤の時宗の心を支えた。
- チャブイ (演:シュウレンホアル)
- クビライの后でチンキム皇太子の母。夫に看取られて逝去した。
- 藩阜 (演:錦野旦)
- マルコ・ポーロ (演:ダリオ・ポニッスィ)
- ベネチア商人でクビライの側近。日本語に堪能で時輔と会話する。
- アフマド (演:アブリミティ・イスマイル)
- クビライの部下で宰相のイスラム教徒。史実では大悪人。
- チンキム (演:アヤンガ)
- 金方慶 (演:戴書華)
- 高麗軍の武将。今作では藩阜が罵られるが、史実では彼が問題(日本人捕虜を磔にして殺害するなど)を起こしている。
オープニング
全編フルCGで構成されており、『時宗が夢の中でまだ見ぬ大陸に思いをはせる』というのがコンセプト。動画の1:27~1:42部分は毎回ストーリーに合わせて荒れ具合が変化する。
冒頭の石碑に刻まれた文字は『クビライが生涯で戦ってきた相手の名前』であり、『北条時宗』の文字以外はすべてモンゴル文字(それに合わせ、今作の題字もモンゴル文字風となっている)。
特徴的なテーマ曲は栗山和樹の作で、女声ヴォーカルはモンゴルのオルティンドー歌手・ナムジリーン・ノロヴバンザドによるもの。なお、ノロウバンザド氏はドラマが放映された翌年末に亡くなっている。
余談
- ドラマ放映の前年末に放映された第51回NHK紅白歌合戦で、和泉氏は『翌年の大河ドラマ主演俳優』として史上初めて司会(白組担当)に抜擢される。また、審査員として時頼役の渡辺氏、桐子役の木村氏が、応援ゲストとして涼子役の浅野氏が出演。
- 番組のポスターや当時販売されていたテレホンカード等に掲載されていた時宗の写真は甲冑姿(メイン画像参照)であることが多いが、劇中で時宗がこの甲冑を着用したのは全49話のうち、第27話『ご謀反許さず』の終盤から第28話『あの兄を討て!』にかけて起きた二月騒動における名越兄弟討伐シーンのみでほとんどは着用しない状態での登場だった。ちなみにこの甲冑は撮影中に誕生日を迎えた和泉氏にプレゼントされた別注品(櫃箱に和泉家の家紋が入っている。ちなみに値段は400万円とのこと。)で、ドラマ終了後は和泉家の『時宗部屋』のオブジェとなっている。毎年、端午の節句になるとお飾りのひとつとして出されているとのこと(『ダウンタウンDX』出演時の和泉氏本人発言より)。
- 史実で若くして病没した一部の人物の死因が変更されている。また、一部の人物は史実よりも長く生きている。また、主人公である時宗をはじめとした大多数の人物が最後まで剃髪した姿を見せずに退場している。
- 時宗の死後に起きた霜月騒動と平禅門の乱は後日談として、覚山尼のナレーションでその顛末について少し触れられる程度の扱いだった。
- ドラマ放送の翌年には舞台化される。ストーリーは原作小説とドラマを掛け合わせた内容となっている。時宗役の和泉氏、謝国明役の北大路氏はこの舞台版にも引き続き同じ役で出演。