※この記事では旧馬齢表記(現在の表記よりも+1歳)を用いる。
3頭の概要
- オグリキャップ(Oguri Cap、1985~2010、牡・芦毛)
父:ダンシングキャップ、母:ホワイトナルビー、母父:シルバーシャーク
勝鞍:有馬記念(88・90)、マイルCS(89)、安田記念(90)、高松宮杯(88)、毎日王冠(88・89)など
表彰:1988年度最優秀4歳牡馬、1990年度最優秀5歳以上牡馬・年度代表馬、1991年顕彰馬選出
岐阜県の笠松競馬出身。笠松で圧倒的な戦績を残し1988年(4歳)に中央競馬に移籍。地方競馬出身という出自と、当時は軽んじられていた芦毛の馬体、その先入観を覆す中央デビュー後の連戦連勝により、一躍競馬界を超えて日本社会全体にオグリブームを巻き起こし、バブル期の第二次競馬ブームを牽引した。
1988年に同じ芦毛の優駿タマモクロスと「芦毛頂上決戦」と評された激闘を演じ、タマモクロスが引退した1989年は後述2頭との三強を形成。そして衰えたと見られた1990年、引退レースの有馬記念で復活勝利を挙げ、「芦毛の怪物」の異名を後世に不動のものとした。
- スーパークリーク(Super Creek、1985~2010、牡・鹿毛)
父:ノーアテンション、母:ナイスデイ、母父:インターメゾ
勝鞍:菊花賞(88)、天皇賞・秋(89)、天皇賞・春(90)、産経大阪杯(90)、京都大賞典(89・90)
騎手:田原成貴、武豊など
左前脚に難があったため幼駒時はセリで買い手がつかない苦労を味わい、「今はか細い小川(creek)でも、やがて大河に育て」との願いからスーパークリークと名付けられた。
下痢や左前脚の骨折で皐月賞・日本ダービーには間に合わず、クラシック三冠最後の一つを目指し挑んだ1988年菊花賞では出走馬中最下位の獲得賞金実績からGⅠ初制覇。この時鞍上を務めた、後に日本を代表するジョッキーに成長する武豊に初のGⅠをもたらした事績でも知られる。
1989・90年には天皇賞秋春制覇を達成。90年10月の京都大賞典で同レースの連覇を達成したが、左前脚の状態が悪化し同年限りで引退した。
- イナリワン(Inari One、1984~2016、牡・鹿毛)
父:ミルジョージ、母:テイトヤシマ、母父:ラークスパー
勝鞍:東京王冠賞(87)、東京大賞典(88)、天皇賞・春(89)、宝塚記念(89)、有馬記念(89)
表彰:1989年度最優秀5歳以上牡馬・年度代表馬
騎手:宮浦正行、武豊、柴田政人など
イナリワンのみ世代が1つ上である。地方競馬の大井競馬出身。小柄な馬体にパワーを秘め、蹴癖のためケガを防止する目的で馬房の壁に畳が貼られたエピソードなど、気の強い馬だった。5歳までを大井で戦い、1988年末の東京大賞典勝利により中央競馬への移籍を決意。
1989年、移籍3戦目の天皇賞・春で、JRA初勝利をGⅠで飾り一躍注目を集め、さらに宝塚記念も制してGⅠ2連勝。秋の始動戦・GⅡ毎日王冠ではオグリキャップに敗れるも名勝負を演じる。三強が顔を揃えた年末の有馬記念ではスーパークリークをハナ差制して春秋グランプリ制覇を達成、同年の年度代表馬を獲得した。
7歳となった1990年も現役を続行するが、宝塚記念4着を最後に脚部不安で復帰できず、有馬記念当日に引退式が行われた。
平成三強全対決
※3馬のうち2頭以上が出走したレースのみ記載。
年月日 | レース名 | 格 | オグリ | クリーク | イナリ | 勝ち馬(2着馬) |
1988/12/25 | 有馬記念 | GⅠ | 1着 | 失格 | - | (タマモクロス) |
---|---|---|---|---|---|---|
1989/10/08 | 毎日王冠 | GⅡ | 1着 | - | 2着 | |
1989/10/29 | 天皇賞(秋) | GⅠ | 2着 | 1着 | 6着 | |
1989/11/26 | ジャパンカップ | GⅠ | 2着 | 4着 | 11着 | ホーリックス |
1989/12/24 | 有馬記念 | GⅠ | 5着 | 2着 | 1着 | |
1990/04/29 | 天皇賞(春) | GⅠ | - | 1着 | 2着 | |
1990/06/10 | 宝塚記念 | GⅠ | 2着 | - | 4着 | オサイチジョージ |
関連の深い馬
1984年生まれ(イナリワンと同世代)
- タマモクロス(Tamamo Cross、1984~2003、牡・芦毛)
「平成三強」の前年、1988年(昭和63年)にオグリキャップと「芦毛頂上決戦」を競った「白き稲妻」の異名を取る優駿。
オグリキャップが笠松で走っていた1987年に中央競馬でデビューしたが、身体は小さく、当初ダートを中心に出走するもほとんど勝てなかった。
しかし、87年秋に芝に転向すると覚醒。1988年にかけ、阪神大賞典・天皇賞春・宝塚記念など、破竹の7連勝。同じく中央移籍後連戦連勝を続けていたオグリキャップと、第98回天皇賞(秋)での「芦毛頂上決戦」に挑み、最終直線でオグリを突き放しこれを制した。
続くジャパンカップではアメリカからの遠征馬ペイザバトラーに敗れ2着も、オグリ(3着)には先着。引退レースの有馬記念では最終直線でオグリとの叩き合いに敗れ2着。1988年の年度代表馬に選出された。
1985年生まれ(オグリキャップ・スーパークリークと同世代)
- サッカーボーイ(Soccer Boy、1985~2011、牡・栃栗毛[尾花栗毛])
父ディクタス、母父ノーザンテースト。1987年の阪神3歳ステークス、1988年のマイルチャンピオンシップの勝ち馬。距離適性の近いオグリキャップとの対決が期待されたが、結局(お互い最適距離とは言い難い)88年有馬記念が最初で最後の対戦となった。同レースでは4着入線も、スーパークリークの進路妨害失格により3着繰り上がり。
オグリは89年にマイルCS、90年に安田記念を獲るのだが、気性の荒いサッカーボーイは1989年に故障続きで一走もできないまま引退し、得意距離でオグリと十全に渡り合うことは叶わなかった。
引退後は種牡馬としてナリタトップロードやヒシミラクルなどを輩出し、また甥(全妹ゴールデンサッシュの産駒)にステイゴールドがいる。
- ヤエノムテキ(Yaeno Muteki、1985~2014、牡・栗毛)
父ヤマニンスキー、母父イエローゴッド。1988年の皐月賞馬であり、平成三強と最も多くのレースを戦ったGⅠ馬でもある。
オグリとは8走、クリークとは5走、イナリとは4走の対戦歴があり、三強同士の対戦数よりも多い。GⅡでは順調に重賞勝ちを積み重ね、GⅠでも高い確率で馬券に絡んでいたが、三強に対しては対戦成績が奮わず、グッドルーザーの感があった。
だが、三強すべてに先着した経験のある数少ない馬である。(もし、89年に一度でも三強を下してGⅠを獲得していたら、こんにちの評価は「平成四強」だったのかもしれない。)
90年の天皇賞・秋ではオグリキャップを破り、皐月賞以来2年半振りのGⅠ勝利を挙げた。同年の有馬記念7着をもって、オグリと同時に現役を引退。
その他
- ホーリックス(Horlicks、1983~2011、牝・芦毛)
89年のジャパンカップに参戦し優勝したニュージーランドの競走馬。1レースで平成三強をまとめて倒した唯一の馬である。この時の勝ち時計は当時の芝2400m世界レコードであった。
引退後は母国で繁殖牝馬となり、豪メルボルンカップ勝ち馬ブリューを産んだほか、娘たちの牝系から多数の活躍馬が生まれている。その功績から、2010年にニュージーランドの競馬殿堂入りを果たした。
ウマ娘
競走馬を擬人化したメディアミックス作品『ウマ娘プリティーダービー』には3頭とも登場する。
オグリキャップは純朴で天然気味な性格であり、日常はとんでもない健啖家ぶりばかりが目立つが、その内に怪物とも評される強烈な闘志を秘める。スーパークリークは他のウマ娘にもトレーナーに対しても母性あふれるお世話好きの娘。イナリワンは小さな体にパワーを秘め、大井競馬出身を反映してか江戸っ子口調で話す。ゲーム版では、オグリキャップとスーパークリークがリリース時点でプレイアブルキャラクター(ガチャキャラクター)として実装済。
特に3名がクローズアップされているのは、オグリキャップを主人公とする漫画『ウマ娘シンデレラグレイ』である。上に挙げたタマモクロス、ヤエノムテキの他、サクラチヨノオー、バンブーメモリー、メジロアルダンなど、同世代のライバル馬たちをモデルとしたキャラクターも登場する。サッカーボーイに相当する役割はディクタストライカのキャラクター名で登場している。
pixiv上では『シンデレラグレイ』関連のファンアートが多く、平成三強にタマモクロスを加えた4名の集合で描かれることが多い。
類例
1973年生まれの3強。3頭とも年度代表馬に選出され、3頭が顔を揃えたレースでは全てワンツースリーを決めている。
1990年生まれの3強。「新・平成三強」とも。93年のクラシック三冠競走で一冠ずつを分け合った。
関連項目
武豊:平成三強の3頭すべてに騎乗経験のある騎手。