概要
一年戦争後にジャミトフ・ハイマンが発足した、地球連邦軍内部の特殊部隊。
ジオン残党軍の掃討を名目に設立されたが、スペースノイドを軽視した地球至上主義を掲げ、強引な手段による暴徒鎮圧や反地球連邦運動の取り締まりを行った他、部隊に所属する人員、特にティターンズの中枢に近い人間には与えられた権限や地球至上主義の影響もあって尊大な態度を取る者もおり(無論、それらは一部のメンバーに限られ、大局的な視点で物事を見渡す者も在籍していた)、それによる連邦軍兵士や民間人とのトラブルも多く見受けられた。
その結果、親スペースノイド派である別の軍閥組織エゥーゴと対立。グリプス戦役と呼ばれる騒乱が勃発する事になった。
戦後はグリプス戦役での行動から「連邦軍の皮を被りジオンまがいのことをした反連邦テロリスト」「地球を汚染するアースノイド」の急先鋒のようなイメージが持たれているが、ジャミトフの真意は「戦乱を利用して増えすぎた人口を減らすことで地球の環境汚染を食い止め、人類を管理する」というものであったらしく、むしろ旧ジオンのギレン・ザビに強い影響を受けていた事が伺える。
ジャミトフがティターンズを発足させたのは、自らの理念を達成すべく政治的・軍事的横車を押し通すのに必要な自由に動かせる私兵集団を得るためであり、「ジオン残党の掃討」という理念はあくまでもそのための表向きの方便であったとも言える(一応、ジャミトフもジオン残党勢力を危険視はしていた)。
中心メンバーを強硬なアースノイド至上主義者で固めたのもその一環だったが、一方でバスク・オムを始めとする組織内の過激な武闘派が独断で30バンチ事件やグラナダへのコロニー落としといった行き過ぎた残虐行為に走ることについては、ジャミトフ自身も頭を痛めることになり、完全にコントロールできていたとは言い難かった。
部隊名はギリシア神話に登場するティーターン神族に由来しており、「大地の子ら」の意味合いを含む名は、彼らのエリート意識と地球至上主義とを如実に表していた。
部隊章は猛禽類に星をあしらった図柄をモチーフとしており、ティターンズの頭文字である「T」を意匠化した物でもある。
軍服は黒と赤を基調としたデザインのものを着用している者が多いが、ヤザン・ゲーブルやパプテマス・シロッコのように独自の改造を施したものを着用する者も多い。
ノーマルスーツは連邦正規部隊やエゥーゴと共通のデザインだが、こちらも黒を基調としたカラーリングで纏められている。
運用するモビルスーツ、モビルアーマー、艦艇もその時代の最新鋭の物が優先的に配備されているが、同時に部隊に相応しい機体を開発するべく「TR計画」などのモビルスーツ開発計画も独自にすすめていた。ただし、ジオン系の技術者を排除して開発を進めさせた結果、ガンダムMk-Ⅱのように先進的な技術が盛り込まれはしたものの、画期的とは言い難いMSの開発に留まってしまった面も見られた。
また、初期に運用された機体に見られる紺色を基調とした「ティターンズカラー」と呼ばれる独特なカラーリングも有名。
威圧的な黒服をまとい、選民思想の強い武闘派右翼で、逆らう者には毒ガス攻撃も厭わない残忍さを持つ悪の組織・・・等々、ナチス親衛隊が意識されたデザインといえよう。
ティターンズの歴史
設立の経緯
宇宙世紀0083年に勃発したデラーズ・フリートの反乱(デラーズ紛争)は、地球連邦政府にジオン残党に対する脅威を認識させ、ジャミトフ・ハイマンはこの社会背景を利用して地球連邦軍内部にジオン残党狩りを目的とした精鋭特殊部隊を設立する事を提唱し、対ジオン残党特殊部隊「ティターンズ」が誕生する。
そして、本来ならガンダム開発計画に充てられる筈だった資金を用いて最新鋭の装備や優秀な人材を集め、組織を拡充させていった。
勢力の拡大
ジャミトフは地球に住む人々の心に残る一年戦争の記憶とスペースノイドへの恐れを利用し、「スペースノイドが第2のジオン公国を生み出す恐れがある」と説きティターンズの必要性を主張。部隊拡充の為の予算を獲得していった。
同時に、ジャミトフは大陸復興公社とインターナショナル国債管理公社(何れも地球連邦内の賭博組合)の総裁を務めていた事もあり、そこから資金を調達していたともされる。
翌年のU.C.0084年を描いた漫画『機動戦士ガンダムカタナ』ではデラーズ紛争時の観艦式襲撃の不祥事を隠蔽した連邦に反感を抱き結成された派閥、「シン・フェデラル」による連邦への謀反なども起き、この闘争によりいくつかの連邦派閥が消滅した結果、権力がティターンズに集中していったとされている。
デラーズ紛争の記憶も新しい社会情勢を味方に付けてティターンズは連邦軍内部で勢力を徐々に拡大し、一時はその全権を掌握するまでに至るが、その作戦行動には強引なものも多く、やがて毒ガスを注入しコロニー1基の住民を皆殺しにすることで抗議デモを鎮圧した「30バンチ事件」などに代表される非人道的な作戦も厭わないようになる。そして、その結果スペースノイドによるティターンズへの反発の機運は強まり、「エゥーゴ」に代表される反対勢力を結束させていくことになった。
衰退と敗北の道へ
宇宙世紀0087年3月2日、ティターンズが開発した新型モビルスーツ「ガンダムMk-Ⅱ」をエゥーゴが奪取した事をきかっけに、約一年間に及ぶグリプス戦役が勃発する。
この戦役は当初こそ宇宙で小競り合いが行われていた程度だったが、両者の争いはエスカレートしていき戦線は地球にまで拡大、これに対してティターンズは次第に過激な活動を行うようになっていき、地球至上主義を掲げながら地球の汚染も厭わない作戦にも手を染めるようになる。
それでも情報の隠蔽などによって地球連邦での影響力を確保し続けていたが、シャア・アズナブルが地球連邦議会を占拠して行ったダカール演説によって、過去に行った殺戮行為や議会への不正献金などの実態が明るみに出た事を契機に、政府や連邦軍への求心力を失っていく。
また、ティターンズは本来ジオン軍残党の掃討を目的に設立された組織であったが、紛争中期にはエゥーゴに対抗するべくその理念をも捨て、火星と木星の間にあるアステロイドベルトから地球圏へ帰還したジオン軍の残党組織「アクシズ」と共闘を持ちかける。しかし、アクシズとは数度の戦闘と会談を経て決裂。最後の会談においてアクシズ摂政ハマーン・カーンは「地球連邦軍はティターンズと手を切りたがっている(=ティターンズが力を失っている)」と発言し、ティターンズに協力しない姿勢を示される事になった。
そして、グリプス戦役末期にはエゥーゴ・アクシズとの三つ巴の戦いのどさくさの中で、シロッコによってジャミトフが暗殺されてしまうと、組織トップの座を巡るバスク・オムとシロッコによる内部抗争が勃発し、主要人物のほとんどが死亡してしまう。
最終的にバスクを抹殺したシロッコが全権を握ったが、その時点でティターンズには既にエゥーゴとアクシズの両軍に対抗できるほどの戦力は残っておらず、更にトドメとばかりにエゥーゴが奪取したコロニーレーザーの攻撃を受けて宇宙艦隊は戦力の大半を喪失した上ティターンズを牛耳ったシロッコも戦死。これによってティターンズの戦力は壊滅。組織も事実上崩壊し、グリプス戦役は終結する事となった。
グリプス戦役後
小惑星ペズンに駐留しダカール演説以降も親ティターンズ派の姿勢を崩さなかった教導団「ニューディサイズ」の蜂起や、ティターンズ残党のニシザワ中佐率いる「テルアビブ分遣艦隊」による地球核攻撃未遂など、戦役終結直後もその思想を受け継ぐ組織やティターンズ残党による騒乱は続き、これによってエゥーゴ、地球連邦軍は疲弊。結果としてアクシズ改め「ネオ・ジオン」による地球侵攻の手立てを整える事になる。
そして、戦後、元ティターンズの兵士は地球連邦軍の暗部としてそれを隠すため、あるいは局限された一部構成員に責任を擦り付けるために裁判に掛けられ不当な処罰を受ける士官も数多く見られ、中にはティターンズ出身というだけで僻地へ飛ばされた者も少なからず存在している。
さらに、戦後は連邦軍の一部であった事すら認められていないケースも見られ、第二次ネオ・ジオン抗争期にはシャア・アズナブルやアムロ・レイ、ブライト・ノアから反地球連邦運動呼ばわりされていた。
それを象徴するかのように本組織が独自に開発した機体の殆どは後継機が作られる事なく、歴史の闇に消えていった。(尤もこれはティターンズ製だからという理由だけではなく、一番は整備性や生産性に欠けるティターンズ製MSよりオプションパーツであらゆる作戦に対応できるMSを主力機として用いる軍政に変えたも大きいが)
残存したティターンズの戦力の一部は自分たちを体制側が切り捨てたのを許せなかったり、戦後の処罰を恐れたなどの理由で脱走。彼等が本来討つべき対象としていたはずのネオ・ジオンやジオン残党側に迎合し、ジオン軍の一部隊としてその後の戦乱を戦ったものもおり、残存のティターンズ所属機がネオ・ジオンで運用されている姿がネオ・ジオン占領下のダカールやグレミーの反乱などで確認されている。
特に火星圏へ逃れた一派は「レジオン」と呼ばれるジオン残党軍に接触。その戦力の殆どがティターンズ系の機体で纏められるという珍しいケースが見られた。
構成人員
最高司令官はジャミトフ・ハイマン。
軍事的な指揮は総司令官のバスク・オムが執る。
代表的な部隊には、このティターンズ・テスト・チーム(T3部隊)やパプテマス・シロッコのジュピトリス隊がある。
組織の理念上構成員のほとんどは地球出身者(アースノイド)であるが、ごく稀にスペースコロニー出身の者が加わり、末期には木星船団のシロッコまでも見境なく傘下に加えた。
中には一年戦争・デラーズ紛争を戦い抜いたベテランやガンダムのパイロットを経験した者もごく僅かながら含まれているので、世間からは「エリート部隊」として認識されている。
ティターンズの軍人は連邦軍人に対して一階級上の扱いとされる規則があり、ゆえにエリート意識が強く横柄な人間が目立ち、更には実戦や現場の状況を理解できない所謂「温室育ち」と揶揄される人物も多い。その事もあって連邦の正規士官とのトラブルも多く、中にはティターンズ兵士が暴力沙汰を起こして咎められなかったケースまで存在している。こういった階級と実績の伴わないティターンズ兵らを連邦のベテラン士官であるライラ・ミラ・ライラ大尉やブラン・ブルターク少佐らは「勉強だけ出来る馬鹿」「ヒヨッコ」と、一応ティターンズも連邦の一部体の為協力したが批判している。
一方でダカールの防衛隊は民間人とトラブルを起こした連邦兵を諌めたり、利害が一致したエゥーゴと休戦して、市街地で暴れ回ってる自軍部隊を制止するなど良識的な人物が多く、更にコンペイトウ駐留部隊は穏健派として知られ、その傘下であるT3部隊を筆頭に上記のような横暴な態度を示す事は少なかった。
また、地上部隊所属のドナ・スターは乗機のバイアランと共に宇宙へ異動になった際、移送途中で連邦軍高官を狙ったテロに遭遇。上層部の待機命令を無視し独断で救援活動を行った他、一年戦争でガンダムタイプに搭乗していたフォルド・ロムフェローとエイガーも、ズム・シティを標的にしたジオン残党のテロを阻止するために独断で貢献している。
こうした人物もいることから、グリプス戦役での専横は部隊上層部の暴走が招いた物であり、誰もが正規軍やスペースノイドに偏見を持っていたわけではないことが伺える(それでもグリプス戦役で敗れた事によって、十把一絡げに『悪逆非道』のレッテルが貼られてしまっていることは否めない)。
また、情報操作により作戦行動を秘匿していた事もあり、グリプス戦役期に於いてその事実を知りエゥーゴへ転向した者も多く、エマ・シーンなどが代表的な例として挙げられる。
主要戦略拠点
グリプス
サイド7宙域のスペースコロニー。
かつてのV作戦の中心地であり、ガンダム等のモビルスーツを極秘裏に開発していた他、ホワイトベース隊のメンバーが居留していた場所としても知られる。
シャア・アズナブル少佐(当時)麾下の部隊がV作戦用の一連の兵器を受領に来たホワイトベース入港を偵察した際、交戦状態に陥ったため1バンチコロニーは中破したが、戦後に修復されてグリーン・ノア1(グリーン・オアシス)の名称を得て通常の居住区画として、主に軍関係者や軍人が居住した。
そして復興時にサイド3より密閉型コロニー2基を移動させ、そのコロニーを繋ぎ合わせるという荒技を用いて2バンチコロニー「グリーン・ノア2」を建造。こちらには主に造兵工廠および軍事拠点が存在した。
なお戦後の復興事業は一年戦争当時ですら1バンチが建造途中だった事もあってか大きく遅れていた様で、エゥーゴの潜入作戦が行われた当時でも2バンチまでしか建造されていなかった。
グリプス戦役中盤、ティターンズはグリーン・ノア2を分離し、コロニーレーザー(グリプス2)として改装。グリプス戦役終盤はこれを巡りエウーゴ、ティターンズ、アクシズによる争奪戦が展開された。
ジャブロー
南アメリカのアマゾンの奥地にある地下基地で当初は総帥のジャミトフもここにいた。
しかし、エゥーゴの降下作戦に備えて主な将校はほとんど宇宙に上がっており、施設の破棄とエゥーゴ殲滅をかねて核爆弾が地下に仕掛けられていて最低限の戦力しか残されていなかった。
このことは、味方であるティターンズ降下部隊ですら知らされておらず残存部隊と合流して始めて知らされた。
エゥーゴはガルダ級輸送機のアウドムラとスードリを奪って脱出した。防衛部隊や一部の士官などもこれに便乗するなどしてかなりの数が脱出したが、わずかに残ったシャトルに詰めかけるなどしてマウアーや強引に乗り込んだジェリドといった者たち以外の多くの兵が取り残され、脱出出来なかった(シャトルは定員オーバーのすし詰め状態で発進。何とか乗り込もうとしていた一部の兵はタラップや入口から振り落とされ、転落死したか爆発に飲み込まれたと思われる)。
コンペイトウ
サイド1宙域に浮かぶ宇宙要塞。かつてのジオン軍の重要拠点であるソロモン。
宇宙世紀0083年の観艦式襲撃事件の後も重要拠点として運用されており、ティターンズ穏健派の拠点とされたが、グリプス戦役に於いてはコンペイトウ駐留の連邦士官の叛乱とエゥーゴ艦隊による攻撃を受けて撤退を余儀なくされた。
ティターンズの技術本部が置かれている場所でもあり、ティターンズによるガンダム開発計画「TR計画」が進められており、計画遂行の為の実験部隊としてティターンズ・テスト・チームが発足。実戦や演習を以って各種データが収集された。
初期のティターンズに於いてはコンペイトウで各種装備の評価試験を行った後、実戦配備が行われる形式が取られていたが、ガンダムMk-Ⅱ強奪以降はその方針は転換され、各工廠・研究所の独自開発の乱発を招く事になった。
ニューギニア基地
グリプス戦役初期に核自爆で喪失したジャブローに替わる地球上での戦略拠点の一つ。
バーザムやマタ・ビリなどの開発も行われていたが、アウドムラ・ケラウノスを中心としたカラバの攻撃によって陥落。
キリマンジャロ
ニューギニア陥落後の地球での戦略拠点。
山全体が要塞化されており、宇宙港も有するなどジャブロー同規模の軍事拠点であった事が示唆されていたが、ダカール演説後、エゥーゴ・カラバ連合軍による攻撃で陥落。総帥のジャミトフも陥落直前に逃亡。
ここを失ったことでティターンズは地球上の拠点を失い、戦いの場は宇宙へと移っていった。
ゼダンの門
かつてのジオン公国の宇宙要塞にして一年戦争最後の激戦地となったア・バオア・クーを改称したもの。広義には本要塞とグリプス及びその周辺宙域を指す。核パルスエンジンの増設による独自航行が可能となり宇宙に於けるティターンズの要衝となるも、ハマーン・カーンによってアクシズを衝突させられ崩壊。
ここを破壊されたことでティターンズは宇宙の拠点をも失い、グリプス戦役は終局へと向かう事になる。
デビルズ・ネスト
グリプス戦役終結後、ティターンズの元高官達が秘密裏にMSやそれらの武器を格納していた巨大倉庫。
この施設は廃棄処分扱いとなったティターンズ機を密かに保管し、ジオン残党や地球圏の武装組織に売り捌くための施設であった。
トリントン基地の近郊に位置する山塊地帯に設けられていたが、宇宙世紀0090年代に入っても表立った査察等は行われていなかった。しかし0094年、特務部隊「フレスベルグ隊」と連邦の教導隊「レイヴン隊」、及びフル・フロンタルが宇宙から派遣したネオ・ジオン親衛隊によって攻撃作戦が展開され、壊滅に追い込まれた。
代表的な所属モビルスーツ
主な所属人物
エマ・シーン(離反してエゥーゴに所属)
レコア・ロンド(エゥーゴから離反)
連邦軍からの協力者
元アルビオン隊
関連項目
ブルーコスモス、アロウズ:アナザーガンダム版ティターンズと呼べる腐敗した地球連邦軍の組織
月外縁軌道統合艦隊アリアンロッド:上記2組織と同じだが、結果的に勝ってしまった組織。