宇宙要塞ソロモン
うちゅうようさいそろもん
ジオン公国軍の宇宙要塞。元々はルナツーと同じく資源採掘用にアステロイドベルトから運ばれてきた小惑星だったが、一年戦争前に軍国化したジオン公国が軍事用の要塞に改装した。
旧サイド1宙域に位置し、宇宙世紀0079年の一年戦争時にはア・バオア・クーと月面のグラナダ基地と共に、ジオン公国の本国サイド3を守る重要拠点の一つとなり、ドズル・ザビ中将が率いる宇宙攻撃軍の根拠地となっていた。
何度か地球連邦軍はアンタレス作戦などと言った作戦で攻略を試みたが失敗に終わっており、まさに難攻不落の要塞であった。
だが12月の戦争末期にオデッサ作戦成功から勢力を盛り返した連邦軍が宇宙での反攻に打って出始めるとソロモンは必然的にターゲットとなった。
これに対してジオン側ではソロモンこそが連邦軍の次の標的である可能性が高いとの見方でこそギレン・ザビ総帥とドズルの意見は一致していたが、ザビ家内の派閥抗争で前線への効果的な戦力集中が為されず、ドズルはア・バオア・クーから兵力を回してもらう事を望んでいたがギレンから送られたのはモビルアーマービグ・ザム1機のみで、連邦軍のソロモン侵攻の際は機動突撃軍司令官キシリア・ザビ少将の根拠地であるグラナダから間もなく実戦投入可能予定のニュー・タイプ部隊も含めた援軍が送られるというお茶を濁した防衛作戦となっていた。そしてこの防衛作戦は連邦軍がソロモン攻略にかかるとしても難攻不落のソロモンは長期間持ち堪える事が前提となっていた。
またソーラ・レイの使用も公王デギン・ザビが心情的にも政治的にもスペースノイドの故郷ともいうべきコロニーを兵器として使う事に躊躇しており、ドズルは現場指揮官らしく「ソロモンに落ちろと言うのか、父上は!」と不満の声を上げている。
チェンバロ作戦
12月24日、ティアンム提督率いる地球連邦軍第2連合艦隊による攻略作戦「チェンバロ作戦」が開始され、激しい攻防戦が展開された。当然連邦軍側には第13独立戦隊ことホワイトベース隊も第3艦隊に属して参加している。
ソロモンは衛星ミサイルや浮き砲台を全方位に張り巡らせた鉄壁の防衛ラインを敷いており、対する連邦軍はこの困難な戦いに際して、まずサイド4の残骸に隠れてソロモンに接近したワッケイン大佐率いる第3艦隊がパブリク突撃艇部隊によるビーム撹乱幕を張ってからの艦艇・MSの総力をあげた牽制攻撃を行い、その間に連邦軍本隊はサイド1の残骸に隠れ、要塞攻略の為の新兵器ソーラ・システムの敷設作業を行っていた。
その後に漸くティアンムの本隊の存在がジオン側に確認され、これまでの第3艦隊のみの連邦軍の攻撃がティアンム本隊の主攻から目を逸らす為の陽動攻撃であろうと推測していたドズルは、ティアンムの本隊が発見された事からその推測を立証し、同時に第3艦隊がグラナダかア・バオア・クー、もしくはサイド3攻略を目指す連邦軍から目を逸らす囮では無く、ソロモン攻略こそが連邦軍の目的である事も完全に確信でき、この敵主力に対して予備として待機していたグワジン級戦艦グワランを中核とする主力艦隊を派遣する。
この折に参謀のラコック大佐からグラナダの第7師団への増援要請を進言されるが、ドズルは「キシリアにか? ふん。これしきの事で、国中の物笑いの種になるわ」とプライドの高さと、キシリアに借りをつくる嫌悪とも、これまで連邦軍の攻撃を跳ね返して来たソロモンと将兵への絶大な信頼とも取れる言い方で拒絶している。
だが、設置の完了したソーラ・システムによる攻撃は、その存在や運用時の威力の情報がジオン側にはこれまで察知されていなかった事もあり、ドズルにとって予想外のもので、その発動によりソロモンはまず第6スペースゲートが繋留艦隊もろとも壊滅し、その後は要塞設備と守備部隊の双方に甚大な被害を受けた。
また攻撃に向かった主力艦隊はソーラ・システムによって大打撃を受けたか、免れたのかは定かではないが、ソーラ・システムの攻撃後も健在で戦闘を行っていたグワランは、ティアンムの主力艦隊に叩かれたのかガトル第2、第6戦隊と共にソロモンからの無線への応答が途絶している事から主力艦隊も大きな損害を受けたと思われる。
そして均衡が大きく崩れ、戦力をズタズタにされて大穴が空いたソロモン防衛線の惨状にドズルは出撃していたMSをソロモンに戻らせ連邦軍を要塞本体まで引き付けて叩く水際迎撃作戦に切り替えた。
この相手の後退に乗じてホワイトベース隊のガンダムが要塞に突入し、この報に戦果拡大の為に本隊からもMSが戦線に投入された。
この折に漸くソロモンから増援要請が出され、キシリアの命でサイド6からはシャア・アズナブル大佐のザンジバル級機動巡洋艦ラグナレクが、それより遅れてマ・クベ大佐がグラナダから第7師団を率いてソロモンに向け出撃するも予想以上に早いソロモンでの戦況悪化により何れも遅すぎ、救援が間に合う事はなかった。
刻々と悪化する戦局にソロモン陥落も考慮して妻子と侍女たちを脱出させたドズルは、要塞内にも連邦軍が侵入する状況にもはや持てる戦力全てを投入するしかないと判断し、現場の将兵に必要な指示を与え、「決戦はこれからである」と叱咤激励して後に自らビグ・ザムに搭乗し残存する艦艇・MS全てを率いてソロモンより打って出て連邦軍中央突破を図るが、更にソーラー・システムの第二射が放たれ、ジオン軍戦力は壊滅的な打撃を受けたうえ、ここが勝負所と見たティアンムの命令で連邦軍本隊の艦隊も本格的に参戦する。
ここに至って形勢を覆せない事を悟ったドズルは要塞の放棄を決意。残存部隊、更にはビグ・ザム搭乗員に対しても撤退を命じると、ただ一人ビグ・ザムで殿として撤退する部下達を援護すべく連邦軍へ突撃。連邦軍旗艦タイタンを撃沈してティアンム提督を戦死させ、その他多くの敵を撃破するがホワイトベース隊のスレッガー・ロウ中尉の特攻とアムロ・レイの駆るガンダムの手により撃破され、ドズルも戦死した。
この時、撤退するジオン部隊へ追撃を行った部隊が第302哨戒中隊のアナベル・ガトー大尉の獅子奮迅の活躍で壊滅しており、この撤退戦によりガトーはソロモンの悪夢の異名を持った。
時に12月25日である。
コンペイトウへ
その後地球連邦軍に占領されたソロモンは「コンペイトウ」と名付けられ、連邦軍のジオン侵攻作戦「星1号作戦」の橋頭堡となる。だがコンペイトウに着陣した地球連邦軍の各艦隊が戦力の再編制と要塞施設の修理修繕を行っていた頃、ザンジバル隊のエルメスによる長距離遠隔攻撃を受けて周辺にいた数隻の艦船が撃破された。連邦側はエルメスから放たれたビットを視認出来ず「ラ・ラ」という音と共に突然爆発が起きたと錯覚したため、ソロモンに巣食う悪霊の仕業と噂されるようになった。また同じ頃にブラウ・ブロやサイコミュ高機動試験型ザクによる襲撃も行われたがいずれもガンダムの活躍で撃破され、そしてエルメスもまたガンダムによって討ち取られたのであった。
戦後の観艦式において
一年戦争終結後もコンペイトウことソロモンは、地球連邦軍の一拠点として使用されていた。
周辺宙域には先のソロモン戦で発生したMSや戦艦の残骸がデブリとして散乱して暗礁宙域となっており、その中に無人警備衛星を潜ませている。(手を着けていないのか残骸の中にパイロットの遺体まで放置されている)
また、周辺宙域を複数の管制区に分割した防衛体制を取っていた。
宇宙世紀0083年11月10日、地球連邦軍は自らの威信を世界に示す為の一大イベント「観艦式」をグリーン・ワイアット大将を観閲官としてコンペイトウで開催した。しかしこれに対してジオン残党軍最大勢力のデラーズ・フリートはこれの襲撃を敢行し、連邦軍と各所で散発的な戦闘を始めた。
連邦軍側もデラーズ・フリート側のシーマ艦隊のシーマ・ガラハウ中佐からの情報でこの計画を察知しており、観艦式を利用してデラーズ・フリートを誘き出してこれを一網打尽にする計画であったが、前の襲撃はあくまで陽動に過ぎず、本隊である連邦軍から奪取した核兵器搭載機ガンダムGP-02に乗るガトーはその間に暗礁宙域を突破して観艦式の為に整列している連邦軍艦隊主力の頭上に辿り着き、ワイアット大将が乗るルナツー方面軍第二守備艦隊旗艦バーミンガムに向けて核弾頭を放ち、艦隊の3分の2(実質的に連邦軍が保有する艦艇の過半数)を撃沈、もしくは行動不能に追いやり、これにより観艦式は台無しとなり、連邦軍の面子は丸潰れとなった。(尚、この核攻撃を生き延びた者達は連邦軍によって事件をデラーズ紛争ごと抹消された事に怒り、後にシン・フェデラルと言う組織を結成して、反連邦運動を行っている)。
それ以降
それ以降もコンペイトウは連邦軍の基地として機能しており、グリプス戦役時にはティターンズの一拠点として運用されており内部ではガンダムTR-1を始めとするTRシリーズの開発が行われていたが後にエゥーゴの攻撃と基地内のシンパの手で陥落した。その後の第1次ネオ・ジオン抗争でも連邦軍の鎮守府の一つとして運用されている。
宇宙世紀0090年代には周辺宙域に残骸が残りっぱなしかつ観艦式襲撃の苦い記憶から連邦上層部から忌避される注目度の低い場所であり、扱いがあまり良くない。とはいえ宇宙世紀120年代でも要塞である模様。