真・救世主伝説。
光を失うな。
作品解説
正式タイトルは『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』。
2003年8月16日公開。テレビ本編とは全くリンクしないパラレルワールドが舞台。
当時「1万人のエキストラ」が大きく注目され、話題を呼んだ(エンドロールに記載される出演者の数が最も多い作品としてギネス世界記録にも認定)。
劇場版限定ライダーとして仮面ライダーオーガと仮面ライダーサイガが登場。また、テレビに先駆けて、量産型ライダーのライオトルーパーも登場する。
その他、主人公・乾巧に関する重大な伏線や、最強フォームの登場など、多くのテレビ本編における設定が本作で先行公開された。
迫力あるアクションシーンや秀逸な脚本、前述の通りテレビ本編とは異なる世界線の話である為、ある程度の知識さえあれば初見でも楽しめるといった理由から、平成ライダー劇場版の中でもとりわけ人気が高く、『仮面ライダーW』の劇場版『AtoZ/運命のガイアメモリ』と並んで、シリーズ最高傑作との呼び声も高い。事実、2019年に開催されたリバイバル上映企画『平成仮面ライダー映画・あの名作をもう一度!キャンペーン』(投票を通じて上位に選出された映画2本を劇場でリバイバル上映する企画)では、「もう一度スクリーンで観たい映画」部門にて堂々の1位を獲得。ファンからの高い評価を得ていることを再び証明する形となった。
ちなみに、『名探偵コナン』第596話には今作のポスターが登場している。
ストーリー
遠くない未来、どこかの国で。世界は人類のほとんどがオルフェノクと化し、スマートブレイン社に支配されていた。そんな状況で追い詰められた一部の者たちがレジスタンス組織「人間解放軍」を結成。ある者は救世主ファイズの帰還を信じ、ある者はスマートブレインが開発したライダーズギア「帝王のベルト」による一発逆転を狙い、またある者は解放軍唯一のライダー・カイザに頼り、レジスタンス活動を続けていた。
解放軍のリーダー・園田真理は、過激派の水原や傲慢な草加雅人などバラバラな戦士たちをまとめることに悩みながらも、辛い生活を送っている人たちのために仮面舞踏会を企画する。
一方、死んだとも行方不明とも思われていたファイズ=乾巧は、戦闘のダメージで巧としての記憶を失い、靴職人のミナとともに「タカシ」として暮らしていた。
果たしてファイズは帰還するのか。帝王のベルトとはどんな力を持つのか。
一万人のライダー部隊が迫る中、人類の未来をかけた最終決戦が始まろうとしていた。
本作限定の登場人物
生き残った人間たちで結成された人間解放軍のリーダー格で勇猛果敢にオルフェノクに立ち向かうが、その本質はどこまでも身勝手で周りを顧みない。名声欲しさにファイズギアや帝王のベルトを手に入れようと画策するも、現場を見咎めた木場勇治(ホースオルフェノク)に不意打ちとして手榴弾を食らわせたが、爆風で吹き飛んだ魔剣が腹部に突き刺さってしまい死亡という末路を迎えた。
演じているのは後にオリーブオイルの妖精として人気を博した速水もこみち氏。
- 野村
人間解放軍の武器開発を担当するユーモラスなメガネの男性。対オルフェノクスパイラル弾など数多くの発明品が存在するが、いずれも実用には至らず、対オルフェノクスパイラル弾に関してはオルフェノクには全然効いていない始末。
このキャラクターを象徴するアイテムとしてギア不適合者にも命と引き換えに変身を可能とするドリンク『変身一発』を開発。菊池啓太郎が服用してカイザに変身したが、啓太郎ではなく、ギアの方が灰化してしまった。
「世の中甘くないな。『変身一発』は一発でオシマイ、なんてな!」
- ミナ
本作のサブヒロインの1人である、生き残った人間たちが住むスラム街で亡くなった父親の後を継いで靴屋を営む少女。
ガサツでズボラなように見えてオルフェノクである木場勇治達にも友好的に接する優しい性格なのだが、その為に真理と啓太郎と野村以外の者達からは疎まれており、陰湿な嫌がらせを受けていた。
記憶喪失だった巧を匿っており、幼少期に友達がいなかった過去から、父親の知り合いの医師に頼んで『幼なじみの隆』としての記憶を巧に植え付けていた。
巧と過ごす内に彼に淡い想いを抱くようになったが、真理と一緒にダンスを踊る巧と、ライオトルーパーの襲撃で記憶を取り戻した巧が変身したファイズの戦いを見て、自ら身を引いている。
その後、巧に真実を話して、記憶を失う前の彼が持っていたというファイズブラスターを渡したが、ファイズギアの独占を企てた水原の凶弾から巧を庇って命を落とした。
仮面ライダーサイガの項目を参照。
- スマートブレインの黒幕達
村上社長よりも上位の地位にあると思わしき三人の男達。村上に立体映像で指示を伝えていたが、計画に失敗したと見なすと、スマートレディに村上の処刑を命じた。
正体は不明だが、演ずるのは過去に首領や幹部役を務めた納谷悟朗、飯塚昭三、加藤精三氏である。この頃はまだ大ショッカーの設定はないので多分関係はない。
- オルフェノク市民
本作では、スラム街に生き残っている人間を除き、街でデートしているカップル、親子連れすらもオルフェノクであるという異様な光景が堪能できる。
人間解放軍に関しては歯牙に掛けていないが、ライダーズギアの恐ろしさは理解しており、草加雅人が登場すると蜘蛛の子を散らすように逃げていた(つまり、ライダー達が「平和に暮らす市民を脅かす怪人」の立場に立たされている)。
一方、スタジアムで555の戦いを観戦していたオルフェノク達はエラスモテリウムオルフェノクやオーガ、サイガを応援していたが彼らの敗北および巧の威圧的な発言により何もできなくなった。
登場するオルフェノクに関してはオルフェノクの頂を参照。
新規登場怪人の数が歴代の中でも最も多いのも今回の見所であるが、モールオルフェノクやムースオルフェノクなど出番が一瞬だけという個体も多い。
なお、残った人類の総数は仮面ライダー図鑑によれば2439人であるとのことである。
この他、仮面ライダー龍騎から角替和枝女史、津田寛治氏、仮面ライダーアギトからは田口正将氏が出演している。
本作品限定ライダー
これらの仮面ライダーはテレビシリーズのジャンクションにも登場している他、ライオトルーパーは本編に少数ながらも量産されて登場する。
他媒体展開
『MASKED RIDER 555 EDITION -ロスト・ワールド-』の題で2005年10月号から2006年1月号まで掲載された。
仮面ライダーデルタが登場しない理由やオルフェノクが地球の支配者に成り得た理由などが独自に描写されている。
ファイズの青春ドラマ的な側面を強調した内容になっており、テレビシリーズから引用した設定も見られる他、読者にも共感が持てるように水原や草加雅人が本編よりきれいな性格になって登場する。
ただし、戦闘面は簡素で仮面ライダーサイガやライオトルーパーは登場しない。
用語
- 人間解放軍
生き残った人間達の中でオルフェノクに反抗する意志を持った者達が集まったレジスタンス組織。
移動にはバスを用いて、窓から銃撃を行う。
しかし、戦績は帝王のベルトを持ち、かつ人間を越えるオルフェノク達で構成されたスマートブレインの前では手も足も出ずに敗北を重ねている(ジャイロアタッカーをバズーカで迎撃してライオトルーパーを撃破しているシーンが確認できる。それはそれで凄いような)。
エラスモテリウムオルフェノク撃破後の動向は不明。
スマートブレインが開発されたファイズドライバーに似た『天』と『地』のライダーズギアで最新型。ファイズギアが当てはめられているのか『人』のベルトは無い模様。
その能力は非常に高い一方で、それに見合った実力を持つオルフェノクでなければ使いこなす事は不可能である。
HEROSAGAではデルタギアを基に開発されたという独自の設定が追加されている。
主題歌
「JustiΦ's」
歌:ISSA
余談
1万人のエキストラとして出演した著名人として、声優の福山潤氏、間島淳司氏、真田アサミ氏、ロックマンゼロのキャラクターデザイン担当の中山徹氏、トランスフォーマーシリーズのイラストレーターを担当する大島優樹氏が挙げられる。
また、1万人のエキストラのクレジットで「THANK YOU」という文字を作るなど粋なサプライズも見られた(ディレクターズ・カット版では「SEE YOU AGAIN」に変更されている)。
さらに、本作で野村を演じる大高洋夫氏とミナを演じる黒川芽以氏は本作以前に『テツワン探偵ロボタック』で共演していた。
関連タグ
聖書 創世記 失楽園 パラダイスロスト Paradise_Lost
アバレサマーはキンキン中!:同時上映のスーパー戦隊映画
ネガの世界:こちらはオマージュと思われる。
GOD_SPEED_LOVE:3年後に制作・公開されたテレビ本編とはリンクしないパラレルのライダー映画。こちらも人類が敵によって壊滅寸前にまで追い込まれており、強大な敵組織に反抗するレジスタンス組織が存在している。
パラダイス・リゲインド:同じくタイトルに「パラダイス」が付く555の映画作品。ただし、こちらは本編の20年後を描く正当続編。本作とは逆にオルフェノクが人類に狩られるという世界になっている。
アナザー・テスタメント:前述の「パラダイス・リゲインド」と同じ時期に井上氏が監修したアプリゲーム『戦姫絶唱シンフォギアXD』におけるコラボイベント。設定上ファイズの要素にコラボ先アニメや登場人物を当てはめた物になっている。
新初恋ヒーロー:19年後に製作されたスーパー戦隊シリーズの映画。本作とは似ても似つかぬ破天荒なノンストップコメディだが、実は脚本・監督・プロデューサーが全く同じ。
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