〝夢の果て〟
るふぃのかたったことば
『ONE PIECE』の主人公、モンキー・D・ルフィの夢は「ひとつなぎの大秘宝」を見つけて"海賊王"になることであるが、これは「海賊王におれはなる」というONE PIECEの代名詞ともいえる台詞にもあるとおり、読者はもちろん作中のキャラたちにとっても周知の内容である。
しかし、ルフィにとって関係性が深い特定の人物達しか知らない、更なる夢がある。
それこそが、ルフィの〝夢の果て〟である。
この言葉が作中で初めて語られたのは、59巻の第574話〝ポートガス・D・エース死す〟での、マリンフォード頂上戦争で死亡する間際のルフィの義兄エースの台詞。
赤犬の攻撃からルフィを庇ったことで致命傷を負った彼は、ルフィの〝夢の果て〟を見れないことが唯一の心残りだと語り、「お前なら必ずやれる…!!!」とつぶやきながら息を引き取った。
この詳細は、ルフィとエース、そしてもう一人の義兄であるサボと過ごした幼少期にまで遡る。
幼少期、ゴア王国で暮らしていたルフィ、エース、サボはそれぞれ自らの夢を高らかに宣言した。
サボ
「広い世界を見て おれはそれを伝える本を書きたい!!」
エース
「世界中の奴らがおれの存在を認めなくても どれ程嫌われても!!!」
「”大海賊”になって見返してやんのさ!!!」
「おれの名を世界に知らしめてやるんだ!!!」
ルフィ
「ししし…!! そうか よーし」
「おれはなァ!!!」
エース・サボ
「は?」
ルフィ
「なっはっはっはっはっはっ」
エース
「…お前は… 何を言い出すかと思えば…」
サボ
「あははは 面白ェな ルフィは!!」
「おれ お前の未来が楽しみだ」
この時にルフィが語った内容は描写されておらず、現在も分かっていない。
ここでルフィが語った内容が〝夢の果て〟としてファンによって考察されるようになった。
夢の果てを考えるようになったきっかけは、ルフィの恩人であるシャンクスの娘であるウタと新時代を誓いあったことである(アニメ1029話及び1030話を参照のこと)。
ただし、ルフィが夢の果ての全容を考え思いついたのは、ウタが赤髪海賊団を離れたあとのことであり、彼女がその内容を聞く事は最期までなかった。
物語開始から24年前(新世界編開始より26年前)、後に"海賊王"と呼ばれるゴール・D・ロジャーは「最後の島」へ行き、前人未到の偉大なる航路制覇を夢としていたが、その夢が叶った後にやりたい事を当時ライバル関係にあった白ひげ海賊団船長のエドワード・ニューゲートおよび2番隊隊長の光月おでんに語っている。
ロジャー
「"莫大な財宝"が噂される『最後の島』に政府が『行くな』っつってんだ」
「お宝の噂も真実味が増す!!」
「辿り着けば名実共におれ達は世界一の海賊団だ!!!」
おでん
「世界一…」
ロジャー
「そうさ!! そしたら おれはよ…!!」
ニューゲート・おでん
「は??」
ロジャー
「ははは」
ニューゲート
「グラララララララ!!」
「何言ってやがるロジャー!! ガキでもあるめェし!!!」
おでん
「………!!」
おれは固まっていた |
今日2度目のド肝を抜かれた 何なんだコイツは!! |
この様子は、前述のルフィ、エース、サボと全く同じ構図になっている。(よく見ると、「ロジャーとルフィ」、「ニューゲートとエース」、「おでんとサボ」のそれぞれで、額の絆創膏の位置が完全に一致している。)
エースとサボ以外に、ルフィの〝夢の果て〟を直接あるいは間接的に聞いた人物の反応を以下にまとめる。
シャンクスの場合
ルフィはエースとサボに宣言する前に赤髪のシャンクスにも自らの〝夢の果て〟を語っていた。
この言葉を聞いたシャンクスは涙を流して笑ったとのことだが、後にシャボンディ諸島で隠遁生活を送っていたシルバーズ・レイリーによれば、トレードマークの麦わら帽子と左腕を失った理由と合わせて、ルフィのことを嬉しそうに語っていたという。
「レイリーさん おれァ本当に驚いたよ!!!」
「〝東の海(イーストブルー)〟に…!!!」
「ロジャー船長と同じ事を言うガキがいたんだ………!!」
「船長の 〝あの言葉〟を…!!!」
ヤマトの場合
こちらはルフィ本人ではなく、ワノ国に漂着したエースから伝え聞いている。紆余曲折を経て2人は和解して酒を酌み交わしたのだが、会話の中でエースは自分に弟がいることを話し、そしてその弟の〝夢の果て〟について口を滑らせてしまう。
「今のはナシだ!!忘れろ!!いやとにかく絶対に笑うな!!それはおれとサボが許さねェ!!」
「それが弟の〝夢の果て〟なんだ!!」
「他人には笑わせねェ!!俺たちは信じてんだ!!」
「あいつは本気でやれると考えている!!」
「ぼくは 笑わないよ…!!!」
エースには笑うなと言われたが、「おでん漫遊記」を愛読し、おでんに憧れていたヤマトは「海賊王が言った言葉」として知っていたため、笑うことなく涙を流し、その弟のことを褒め称えた。
なお、幼い頃は呆れていたエースだが、この時点でルフィなら「本気でやれる」と考えていたようである。
麦わらの一味の場合
ワノ国を出港した麦わらの一味が世界経済新聞で「参謀総長サボがアラバスタ国王ネフェルタリ・コブラを暗殺」のニュースを知ると、ルフィは「絶っっっっ対!!ウソだ!!!ビビの父ちゃんを殺したりするか!!!サボはそんな事しねェよ!!!」と真っ向から否定。
アラバスタまたはマリージョアに行こうと喚きだすが、ゾロに「エースの時は明確な危機までエースの人生を尊重したはずだ。なのにビビにはそうしないのか?ビビをなめてんのか?」と咎められ、ふて腐れながらも落ち着きを取り戻す。
そしてサボが犯人ではないことを決して疑わず、幼き頃に義兄たちと交わした誓いを一味の全員に明かす(ルフィ本人は、仲間達には既に言ったものと思い込んでいた)。
その台詞が冒頭のものであり、やはりその描写はカットされている。ルフィの〝夢の果て〟を聞いた一味の第一声は以下の通り。
「!?」
「は?」
「ん? 今… 何と?」
「えェ??」
「ヨホホ♪ 面白すぎます それ!!」
「おい いやいやお前…!!」
「わはは いいなそれ 最高だ!!」
「だははは おいチョッパー 頭診てやれ!!」
「………」
「わあ~~…!!」
内容はやはり読者には明らかにされていないが、ウソップの「そんな事できるわけねェだろ」という否定に対して、ルフィにとっては「『海賊王』になったらできるかもしれねェ」ことらしく、仲間たちは以下のような感想を述べている。
ジンベエ 「(大笑いしながら)この船に乗ってしまったからにゃあ他人事じゃないのう!!」
チョッパー「その夢いいな~」
ナミ「あんたらしいけど…」
フランキー「そりゃ『海賊王』にくらいならねェとムリだな!!」
因みにアニメ版でのこのシーンでは「ウィーアー!」を穏やかにアレンジした挿入歌が挿入されている。
その他
上記の人物の他に、ワノ国出航後のサニー号にはカリブーも乗っていたが、樽に閉じ込もっていたため外の会話がよく聞こえていなかった模様。
読者の間ではカリブーにも聞こえていたのではと考察されていたが、その状況を汲み取ったのか107巻のSBSにて「樽の中まで声は届いてないのです」と作者直々に否定された。
前述の通り、ルフィ、そしてロジャーの語った夢の果てについては徹底して明かされていない。
さらにそれがひとつなぎの大秘宝のように形あるものではなく、あくまで一個人の頭の中にある夢であるため、考察は考察を呼び、ONE PIECE最大の謎であるとする声もある。
ルフィはそもそもが子供っぽいキャラクターであり、その彼が今よりさらに幼い頃に語った夢であること、一味の中では最も子供のような感性を持っているチョッパーが目を輝かせていることから常識では到底実現不可能なものであり、子供が語るような荒唐無稽な夢であるのは確かだろうと考えられている。
さらにルフィの人物像から、『世界を平和にする』だとか『この時代を変える』といったことであるとも考えにくい。
そのような高尚なことであれば、人に笑われるようなものであるはずがないし、悪名を轟かせることは好んでもヒーロー的に祭り上げられることは嫌う彼の人物像とは大きく乖離している。一方でFILM REDでは、ウタに海賊王になりたい理由を問われた際には、「新時代を作るためだ」と言っている。
現在物語は最終章に入り、世界政府との戦いが激化しているが、今のところルフィには世界政府と本格的に敵対する理由がないため、ルフィの夢の果てを叶えるには海賊王になるだけではなく、世界政府と戦わなければならない理由付けにもなっているのではないか?という考察も存在している。
また、夢の内容を他に誰に伝えたかロビンに聞かれたとき、「シャンクスと…」と間があったことから「ウタにも言ったかどうか考えていたのでは?」と想像していたファンもいるが、前述のとおりウタには語っていない。
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