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概要編集

くも膜下出血とは、脳卒中の一つで、脳を覆う膜の内側に出血が起こる病気である。

「くもまく」は「蜘蛛膜」と書くが、常用漢字ではないため、報道などでは「くも膜」と記載される。


脳を覆う膜には、上から硬膜・くも膜・軟膜と三層あり、くも膜と軟膜の間をくも膜下腔という。

このくも膜下腔に出血が起きるのが、くも膜下出血である。


「脳卒中」の一つである以上、基本的には体の中で自然に出血が起こったものを指す。

血管の分岐点にある脳動脈瘤が破裂することで出血する場合が最も多い。動脈瘤は基本的に先天性のものが多いが、高血圧が長年にわたって慢性的に続くことで発症することも少なくない。

このほかにも、生まれつき動脈と静脈の接続部分に畸形がある場合や、まれに血栓が脳の動脈に詰まることで動脈の流れが弱まり破裂する、という場合もある。


出血が起きると、頭蓋内の圧力が急激に高まり、脳に大きなダメージを与える。短時間でも症状が進みやすく、重篤な障害が残ったり、亡くなってしまうことが大半である。


くも膜下出血は突然起きることが多く、血圧が急に変化することで激しい頭痛や、吐き気・嘔吐といった症状が見られる。

特に激しい頭痛に関しては、後頭部をバットで殴られたような痛みと表現される。

年齢は40〜50代が多いとされるが、それより若い世代にも見られる。また、脳卒中の中では珍しく女性の方が発症率が高い。


また、発症した人の三分の一、一説には半分もの割合で死亡するという死亡率の高さで知られる。

著名人でも若くしてこの病で亡くなった人は少なくない。


また、外傷性と言って、事故などで頭を強打した後に起こる場合もある。例としては、2018年に熊本市内の高校の野球部が練習中、頭部にデッドボールを受けた選手が翌日死亡した事故が挙げられる。


命をとりとめたとしても、片麻痺や言語障害、高次脳機能障害などが残存する場合が多い。

また、発症後は高次脳機能障害の症状の一つとして、性格変容が起こりやすいと考えられている。情緒が不安定になって怒りっぽくなったり、逆に極端に涙脆くなったりといった変化(感情失禁)や、記憶が曖昧で注意が散漫になる、「自分は病気であり、治療が必要な存在である」という病識が欠如した振る舞いが見られる人もいる。


ともかく非常に恐ろしい病気である一方で、発症から治療までが速く、なおかつ適切な治療が受けられれば30〜40%の人が後遺症なく日常に復帰できるという側面もある。


もし発症したら?編集

とにかく一分一秒を争うレベルで応急手当てをし、救急車の要請をしなければならない。

周囲に家族や人がいる場所であればまだ助かる可能性がやや高まるが、家に一人でいる時や、家族が寝ている時間に発症、助けを求める余裕もなく意識を失ってしまい命を落としてしまった、というケースは少なくない。「連絡したが返事がなかったので心配して訪ねたところ既に死亡していた」ということはたびたび見られ、著名人でも、音楽ユニット「DOUBLE」のSACHIKOがライブの前日に倒れ、連絡が取れずスタッフが部屋に行った時にはもう既に亡くなっていたという事例がある。


少しでも治療が遅れれば死に直結するため、身近で突如倒れた人がいたらとにかく心臓マッサージAEDの活用などの救急救命措置を行うこと。

もちろんプロの医療者でも検査機器がないと正確な病名は判定できないが、救急車到着までの間とにかく心臓を動かし続けることが肝心である。迅速な措置が生存率を大きく向上させ、予後を良くする。


治療編集

症状からの診察及びCTMRIや、血液造影剤を利用した検査によって診断がなされた後、速やかに治療が行われる。

入院・手術が前提であり、場合によっては脳卒中センターなど脳外科治療に特化した医療機関に搬送されることとなる。

治療にあたっては、傷付いた動脈を修復する手術が行われる。

鼠蹊部(足の付け根)の血管からコイル状のワイヤーを動脈瘤の中に挿入し、血液を固まりやすくすることで動脈瘤を塞ぐ「血管内コイル塞栓術」や、「ステント」と呼ばれる金属製のチューブを動脈瘤の破裂部分に留置し、動脈瘤を避けて通る新しい血管を作る「血管内ステント留置術」が一般的である。

ほかにも、動脈瘤の根っこ部分をクリップで挟み、血液が瘤の中に入らないようにして治療するクリッピングも用いられる。ただし、クリッピングは開頭が必要である。

また、発症前の段階ですでにある動脈瘤を塞いで破裂を防ぐための治療も行われている。


手術後も状態が安定するまでは絶対安静であるため、ICUに長くいることになる。

社会復帰まで至れるのは1/3ほどと言われるが、なんにせよ一刻も早い受診と治療にかかれるかどうか、出血を起こした場所の良し悪しでも大きく予後が左右される。


予防編集

確実な予防法はないが、定期的に脳ドックなどで検診を受け、病気を発症の前段階で発見し、早期の予防・治療に努めることが重要である。遺伝や生活習慣からリスクが高い人は些細な行動が引き金となって発症に至る危険もあるため、リスクを把握しておくのは悪いことではない。

また、完全に出血する前の前兆として、めまいや吐き気、ものの見え方がおかしい、頭痛がどんどんひどくなるといった症状が見られる。このような症状があったら、体が動くうちに早期に受診することが大事である。

脳出血が原因の頭痛は偏頭痛などの慢性的な頭痛とは全く異なるものだと言われているため、頭痛持ちの人でも普段の頭痛と違うと思ったら受診した方が良い。


寒暖差が激しい季節の変わり目に多くなるため、こまめな室温・服装などの調節をして、体温や血圧を一定に保つのも予防の一つである。

夏季は熱中症(脱水や体温の急激な変化)が引き金となって発症することもあるため、暑い時期にはこまめな水分補給や帽子をかぶるなどの熱中症対策を十分行うことも大事である。

コミックマーケットやスポーツ応援のような過酷な環境下から帰宅した後に具合が悪くなった時は早めに受診すること。(参照togetter 真夏に甲子園地方予選を観戦後、熱中症からくも膜下出血を発症し亡くなった女性の事例コメント欄にも同様の体験談あり)

冬季は寒さから血管が縮まって血圧が上がり、血管が切れやすくなるため、脳出血のリスクが高まる。また、寒い脱衣所から暖かい浴室に入ることなどで起こるヒートショックにも注意が必要である。


高血圧喫煙・過度の飲酒は発症リスクを高める。

特に中年以上の年齢層は危険性が高く、呼吸器や心臓の疾患を引き起こす危険もあるため、禁煙が望ましい。ヘビースモーカーチェーンスモーカーでどうしてもやめられないという人も、喫煙の回数やニコチンの量を少しずつ減らしていくことが求められる。


両親や兄弟が脳卒中を発症したことがある人は発症率が高いという調査結果があり、遺伝的に脳動脈瘤が出来やすい、血管に奇形が起こりやすい家系があると考えられている。また、生活習慣の類似も要因の一つとなる。もし家族に発症した・リスクが高いと診断された人がいる場合は注意すること。

万一発症した時にどのように対処すればいいか、家族も含めて予備知識を持つことが肝心である。


また、過労や睡眠不足、血行不良などを抱えている、精神的なストレスが溜まっていることもリスクを上げると言われているので、睡眠を十分取り、適度な運動を行うことが(他の病気も含めて)予防となる。

ことPixivユーザーは根を詰めて作業する人も多いと思われるので、作業中は同じ姿勢で長時間過ごさないよう、適宜休憩を挟み、ストレッチなどで血行を良くするのがよい。


外傷性の防止には、特に高所作業などの危険な場所ではヘルメット着用をはじめとした安全対策が原則である。

とはいえ、上記の高校生死亡事故の場合はヘルメットの下側に当たった可能性も指摘されており、ヘルメットの構造の改善も絶えず行なっていく必要がある。


くも膜下出血を発症した著名人編集

※助からなかった者には†

くも膜下出血を扱った作品編集

くも漫。(中川学)

発症時、バットで殴られる描写があり、痛みが本当に激しいのだと感じられます。


外部リンク編集

参考Togetter編集

同人作家さんをはじめ無茶しがちな人はこんな兆候があったら『くも膜下出血』を疑うべし、という話に震える人々

脳卒中でも心臓マッサージをするの?→医療クラスタの見解「当然だ!何故なら…」の理由が怖い【救急救命ノウハウまとめリンクあり】

クモ膜下出血で搬送された話【代表的な徴候、他の皆さんの体験談なども収録】:祖母や友人がかつて同じ病に倒れたため情報収集をしており、その予備知識で自身が発症した際に早い対処が可能だった女性の体験談。

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