概要
くも膜下出血とは、脳卒中の一つで、脳を覆う膜の内側に出血が起こる病気である。
「くもまく」は「蜘蛛膜」と書くが、常用漢字ではないため「くも膜」と記載される。
脳を覆う膜は、硬膜・くも膜・軟膜と三層あり、くも膜と軟膜の間をくも膜下腔という。
このくも膜下腔に出血が起きるのが、くも膜下出血である。
出血場所は、血管の分岐点にある脳動脈瘤が破裂する場合が多い。
出血が起きると、頭蓋内の圧力が急激に高まり、脳に大きなダメージを与える。
くも膜下出血は突然起きることが多く、激しい頭痛や、吐き気・嘔吐が見られる。
特に激しい頭痛に関しては、後頭部をバットで殴られたような痛みと表現される。
そして、発症した人の三分の一は死亡するという死亡率の高さを誇る。(発症した50%という話もあるが、こんな点を誇らんでもええが。)
故に、著名人でも若くしてこの病で亡くなった人は少なくない。
血圧が急上昇することで引き起こされることもある。
上記のものは体内の現象で自然に起こるものであるが外傷性と言って、頭を強打した後に起こる場合もある。
この例としては、2018年に熊本市内の高校の野球部で練習中に頭部にデッドボールを受けた選手が翌日死亡した事件がある。
命をとりとめたとしても、片麻痺や言語障害、高次脳機能障害などが残存する場合が多い。
また、発症後に性格変容が起こりやすく、だいたい性格の嫌な部分がより目立つようになるとか…(まれに、性格が柔らかくなる人もいる)
ともかく非常に恐ろしい病気である。
もし発症したら?
とにかく一分一秒を争うレベルで応急手当てをし、救急車を要請をしなければならない。
周囲に家族や人がいる場所であればまだ助かる可能性がやや高まるが、家で一人でいる時に発症して助けを求める余裕もなく意識を失ってしまい「出勤してこないので心配して尋ねてみたら既に死亡していた」例は少なくない(有名人ではDOUBLEのSACHIKOがこれで命を落としている)。
なので、身近で突如倒れた人がいたらとにかく心臓マッサージをすること。
AEDがあればそれも活用しよう。
もちろんプロの医療者でも検査機器がないと正確な病名は判定できないが、救急車到着までの間とにかく心臓を動かし続けることが肝心。
確率としては厳しいが、心臓が動いていれば一縷の望みはある。
残念ながら救命できなかったとしても、家族が集まるまでの時間が稼げる場合も少なくはないので遺された人たちのケアの意味でも大事である。
治療
開頭手術により、動脈瘤にクリップをしてしまう。
手術後も状態が要観察なので、ICUに長くいることになる。
社会復帰まで至れるのは1/3ほどと言われるが、なんにせよ一刻も早い受診と治療にかかれるかどうか、出血を起こした場所の良し悪しでも大きく予後が左右される。
予防
確実な予防法はないが、脳ドックなどで検診を受けなにがしかの脳疾患が起こる前段階で発見することで早期の治療が可能になる。
また、めまいや吐き気、ものの見え方がおかしい、頭痛がどんどんひどくなると思ったら早期に受診することが大事。
頭痛持ちの人でも「いつものと何か違う」と思ったら油断せず受診しよう。
季節の変わり目に多くなると言われているので、寒暖差が激しい時期には温度調節をこまめにし、急激な血圧の上昇を避けるようにしよう。
高血圧・喫煙・過度の飲酒はリスクを上げると言われている。
まずは禁煙をすることが第一。
遺伝については不明な点も多いが、若い人の発症のほとんどが脳動脈瘤の奇形が原因であり、そのような形の血管を作りやすいという遺伝があることが考えられる。
そのため、血縁者で過去に脳卒中患者が出ている人は特に普段の生活態度に注意を払い、喫煙は絶対に止めること。深酒もしないように心がけて休肝日を設け、定期的な検診を受けよう。
万一発症した時にどのように対処すればいいか、家族も含めて予備知識を持つことが大事である。
また、過労や血行が悪いこともリスクを上げると言われているので、他の病気の予防も兼ねて睡眠を十分取り、適度な運動を行うことも大事。
漫画やイラストを描く人は、根を詰めすぎず他の病気の予防の意味でも時々作業中に立ってストレッチをすることをおすすめする。
遺伝や生活習慣的にハイリスクになっていると、ものを持ち上げたり気圧の変化といった一見些細なことがダメ押しになって発症することがありうる。
ストレスも原因の一つと言われているので、悩み事はなるべく早く解決し、特にブラック企業勤務の場合は早期に転職してまともな職場に移るといったことも大事である。
夏場は熱中症から発症することもあり、暑い時期にはこまめな水分補給や帽子をかぶるなどの熱中症対策を十分行うことも大事である。
コミックマーケットやスポーツ応援のような過酷な環境下から帰宅した後に具合が悪くなった時は早めに受診すること。
(参照togetter 真夏に甲子園地方予選を観戦後、熱中症からくも膜下出血を発症し亡くなった女性の事例コメント欄にも同様の体験談あり)
夏場の注意も必要であるが、夏場は脳梗塞が多く、冬場は脳出血とくも膜下出血が多いという。
夏場は、体から水分が抜け、血液が濃くなり、その結果として血管が詰まりやすくなる。
冬場は、寒さから血管が縮まり血圧が上がり、その結果としてに血管が切れやすくなる。
外傷性の防止にはやはり高所作業などの危険な場所ではヘルメット着用をはじめとした安全対策が原則である。
とはいえ、上記の高校生死亡事故の場合はヘルメットの下側に当たった可能性も指摘されており、ヘルメットの構造の改善も絶えず行なっていく必要がある。
くも膜下出血を発症した著名人
※助からなかった者には†
- KEIKO(globe):2011年に発症、現在も高機能障害で休養し闘病中
- 星野源 2012年に発症
- 米良美一 2014年に発症
- SACHIKO(DOUBLE)†
- kami(MALICEMIZERドラマー)†
- 小林カツ代(料理研究家)†:発症後は一旦一命をとりとめたものの、後遺症により9年の療養の後死去。
- 吉田栄勝(レスリング指導者、吉田沙保里の父で師匠)†
- 木村拓也(元野球選手、プロ野球コーチ)†
- 首藤剛志(アニメ脚本家)†
- 南田洋子(女優、長門裕之の妻)†:認知症を患った上に発症し死去。
- 金田一春彦(言語学者)†
- 伊藤俊人(俳優)†
- 吉村よう(声優)†
- 田宮五郎(俳優)†
- 坂野義光(映画監督)†
- 上野博文(T-BOLANベーシスト)2015年に発症
- 小成たか紀(漫画家)†
- ハヤブサ(プロレスラー)†
- 方倉陽二(漫画家)†
- 多々見良三(医師、政治家):大相撲の地方巡業で舞鶴市市長として挨拶に立った時に発症、病院長時代の部下であった看護師らが観客として居合わせたため手当で一命をとりとめた。
- いっこく堂:外傷性くも膜下出血。
- 武梨えり(漫画家)
- 笠井亮(日本共産党所属の政治家)
- 神足裕司(コラムニスト)
- ntmP(歌い手、ボーカロイドP)†
- ジャニー喜多川(ジャニーズ事務所社長)†
- 伊集院静
- 蟹江栄司(声優)†
- 中村秀利(声優)†
- 古谷静佳(声優):交通事故による外傷性
- 松尾銀三(声優)†
くも膜下出血を扱った作品
くも漫。(中川学)
発症時、バットで殴られる描写があり、痛みが本当に激しいのだと感じられます。
外部リンク
参考Togetter
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