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概要

アメリカ合衆国の政治(アメリカがっしゅうこくのせいじ、英語:Politics of the United States)は、アメリカ合衆国(以下米国)の政治に関する事象。1607年5月にアメリカはイギリスの植民地として統治され、1776年7月に独立を宣言してからは13州が独立した対外的主権を有していた。1781年3月に連合規約が締結されてからは緩やかな連邦共和国に移行し、1787年9月に憲法が制定されてから現在まで続いており、2024年1月現在でも依然として1度も変化していない。

行政

大統領

米国では国家元首である大統領が行政府の長で、主席外交官として外交の責任を有すると共にの最高司令官である。連邦議会に対しては解散権を持っていないが、そこで可決された法案に対して拒否権を有している。具体的には拒否する理由を明記した文書を添えた上で法案を議会に差し戻せるが、その法案が両院の3分の2が賛成して再び可決されると拒否権を発動できない。

2021年1月からジョー・バイデンが現職大統領(第46代)を務めており、ワシントンD.C.にある大統領官邸で執務を行っている。2025年]1月には再選したドナルド・トランプ氏が第47代大統領としてホワイトハウスに入る予定。大統領は4年に1度実施される大統領選挙で投票を誓約した選挙人投票で選出され、そこを挟むので一応間接選挙制となっているが、実際は直接選挙とほぼ変わらない。ただし、憲法修正第22条の規定によって、大統領に3回以上選出されることは禁止されている。

選出

選挙人の選挙方法は各州ごとに決められているが、「勝者総取り方式」という1票でも得票が多かった候補がその州の選挙人を全て獲得する方式を導入している州が多いため、総得票数で敗北しても獲得した選挙人の数で勝利して当選する事例が稀に発生する。

事象共和党の大統領候補民主党の大統領候補その他の大統領候補勝者
1824年アメリカ合衆国大統領選挙--ジョン・クィンシー・アダムズ、アンドリュー・ジャクソン、ウィリアム・クロフォード、ヘンリー・クレイジョン・クィンシー・アダムズ
1876年アメリカ合衆国大統領選挙ラザフォード・ヘイズサミュエル・ティルデン-ラザフォード・ヘイズ
1888年アメリカ合衆国大統領選挙ベンジャミン・ハリソングロバー・クリーブランド-ベンジャミン・ハリソン
2000年アメリカ合衆国大統領選挙ジョージ・W・ブッシュアル・ゴア-ジョージ・W・ブッシュ
2016年アメリカ合衆国大統領選挙ドナルド・トランプヒラリー・クリントン-ドナルド・トランプ

副大統領

憲法修正第25条規定によって、大統領が死亡・辞任・免職などで欠けた場合は副大統領が大統領権限を代行、連邦議会上院議長を兼務する。2021年1月からカマラ・ハリスが現職の副大統領(第49代)を務めており、ハリスは女性・黒人系・アジア系(インド系)初の副大統領である。大統領選挙で大統領候補は自らの副大統領候補を指名してペアで選出され、大統領候補と一心同体で一戦を交えることから、両者はランニングメイトと呼ばれる。

副大統領から大統領に昇格した事例

以下の9例がある。

年号大統領に昇格した副大統領昇格する前の大統領理由
1841年4月ジョン・タイラーウィリアム・ヘンリー・ハリソン病死
1850年7月ミラード・フィルモアザカリー・テイラー病死
1865年4月アンドリュー・ジョンソンエイブラハム・リンカーン暗殺
1881年9月チェスター・アーサージェームズ・ガーフィールド暗殺
1901年9月セオドア・ルーズベルトウィリアム・マッキンリー暗殺
1923年8月カルビン・クーリッジウォレン・ハーディング病死
1945年4月ハリー・トルーマンフランクリン・ルーズベルト病死
1963年11月リンドン・ジョンソンジョン・F・ケネディ暗殺
1974年8月ジェラルド・フォードリチャード・ニクソン辞職

大統領府

米国では連邦政府に於いて、大統領の指揮下に設置される行政機関総称である連邦行政部が存在する。外交政策中心となるNSC国家安全保障会議)・大統領の経済政策を助言する経済諮問委員会や国家経済会議・予算管理と行政府全体を統括する行政予算管理局・対外通商業務を扱う通商代表部・大統領の身の回りの世話をするホワイトハウスオフィスなどの機関がある。

またここに大統領補佐官が存在し、首席補佐官を筆頭として安全保障・経済・内政・人事・報道・演説など各分野ごとに担当補佐官が設置されている。その任命は大統領の一存で執行出来るが、上院承認は不要である。

各省

米国には連邦行政部に属する以下の機関が存在し、その長官(Secretary)は大統領に指名されて上院に承認される。この15省の長官達が閣僚と呼ばれているが、長官はその名の通り、あくまで大統領を補佐する立場である。

キャビネット

大統領・副大統領・15省の長官でキャビネット(内閣あるいは大統領顧問団)を構成するが、これは憲法に規定されていない慣習上の制度であり、閣員は何の法的な地位・権限は無い。日本英国の様な議院内閣制国では内閣はそれ自体が行政権を有するが、米国内閣はそうではばいので、議院内閣制の国での内閣に相当する機関は米国では大統領であるといえる。

情報組織

国家情報機関は人的な諜報活動を行うCIA(中央情報局)、通信諜報活動を行う国家安全保障局が存在する。要するに前者は昔ながらのスパイ映画の様な活動を担当し、後者は自らの通信を保護しながら外国の通信を傍受・分析・解読するといった活動を主に担っている。現代ではやはり後者の方が重要であるらしく、予算・職員の数では国家安全保障局が遥かに巨大で、そこの信号情報収集量は世界各国の情報機関の中でも最も多いと見られている。

政党

米国には共和党民主党という2大政党が存在し、当初は民主党が保守・共和党が革新という思想だったが、20世紀以降は入れ替わって現在では共和党が保守・民主党が革新と目されている。大統領と連邦議会議員は2大政党から選出されるのが大半で、別にそこの候補でなくても選挙に出馬出来るが、2大政党は強力な集票力があるのでそこの候補以外が当選するのは困難である。

2大政党以外の候補が当選するのは大統領選挙では事例がなく、連邦議会選挙に至ってはごく少数の事例に留まる。これらの政党は総称で第3政党と呼ばれているが、どこも極めて弱小なので国民には馴染みが薄い。米国の政党は規律が弱い上に同じ党員同士でも考え方はかなり異なる場合があり、議会内での投票は党議拘束がないため、与野党共に賛成・反対が入り乱れることはザラである。

立法

連邦議会

米国立法府は上下両院で構成される連邦議会で、どちらも解散総選挙の様な制度は存在しない。任期は下院議員が2年・上院議員が6年で、それが満了しことに伴う選挙のみがある。上院議員は州の大小・人口を問わず50州から各2人ずつ選出される州の代表議員である一方で、下院議員は人口比で割り出した選挙区ごとに小選挙区単記制で選出され、配分数は10年ごとに実施される国勢調査で調整される。下院議長は下院議員の中から選出され、上院議長は副大統領が兼務する。

法案は両院に承認されてから大統領が署名して成立するが、両院で全く同じ法案が可決される事例はほとんど無く、両院を通過した後に両院協議会で調整してから大統領に送付されるのが一般的である。上下両院は対等な関係にあり、日本と違っていずれかの議院が優越する制度は無い。

弾劾

大統領が重大な犯罪を犯したと認められる場合、連邦議会にはこれを弾劾する権限がある。下院が過半数の賛成で訴追を決めると上院で弾劾裁判が開催され、上院の出席議員の3分の2以上が賛成すれば弾劾が決定される。ただし、弾劾が成立した事なは無く、上院の弾劾裁判にかけられたのはアンドリュー・ジョンソン(1868年3月)とビル・クリントン(1998年12月)の2人のみで、いずれも有罪になっていない。1974年8月にウォーターゲート事件で辞職したリチャード・ニクソンは、下院で弾劾手続きが開始された時点で自ら辞職したので弾劾されていない。

司法・警察機構

裁判所

米国には司法府である連邦裁判所・それを統括する連邦最高裁判所・各州に州裁判所が存在するが、両者の関係は日本での最高裁と下級裁判所の様なものでは無い。連邦裁判所が扱う裁判は憲法解釈・連邦法に関する事件・あるいは州を超える程度の事件のみである。州法に関する事件は州の最高裁判所が下した判断が最終審で、それを連邦裁判所に控訴出来ない。

連邦裁判所裁判官は大統領任命と上院承認を受けるが、州裁判所の裁判官は選挙で選出されるため、そこは官僚制である日本の裁判官とは大きく異なる民主的な点である。故に米国裁判官立候補者は集票力を有する政党の協力を得ることが多く、政治的な党派性が見られる。ちなみに、米国の裁判所は基本的に陪審制であり、一般市民から無作為に抽出された陪審員が事実問題を認定するが、この点も民主的な裁判を象徴している。

警察

憲法規定で警察権は原則として各州の固有の権限であるため、各州は州警察を保有している。州は多くの場合は州内にある自治体に警察権を付与しているので都市警察が主な活動単位となり、日本の創作物にも良く登場するニューヨーク市警察・ロサンゼルス市警察と言ったものがそれである。連邦政府が保持する全国的な警察組織としては、司法省が管轄する連邦捜査局が存在し、ここは主に複数の州を跨る事件を取り扱っている。

保安官

米国には警察と似て非なる組織に保安官(シェリフ)が存在し、六芒星のバッジを装着して悪党を倒していく拳銃の名手という西部劇でのイメージが強い人達である。これは州下部行政単位である郡が設置していることが多く、郡内で州法の司法権を行使する存在である。保安官権能は州や自治体ごとに様々なので一概にはいえないが、警察と廷吏の役割を果たす、被告・被疑者拘置や囚人の収監を担当する、民事執行権限を有していることが多い。

例えばロサンゼルスではここの市警察が被疑者を逮捕した場合、市に属するロサンゼルス郡の保安官(1850年4月創設)に身柄が引き渡されて拘置される。基本的に警察活動は市警察が担うので、保安官が警察活動を実施することは基本的になく、業務が広い保安官は単独では身が足りないので保安官代理を雇用する事が多い。

地方自治

米国は連邦共和国であるが故に各州が極めて強大な権限を有しており、日本の都道府県の様な地方自治体というよりは1国の独立主権国に匹敵するほどだが、首都であるワシントンD.C.は連邦政府の直轄地区なので州に含まれない。州は憲法・連邦法・条約の範囲内で独自の憲法・法律を制定出来るのみならず、軍隊・警察といった武力組織も連邦政府から独立して保有している。

政治システムは州ごとに異なるが、民主主義の共和国である事が憲法で義務付けられている。いずれの州も公選された州知事をトップとする州政府が統治し、公選された議員で構成される州議会を立法府としながら、独立した裁判所を保持するという点で一致している。

州政府

州政府の長である州知事はいずれの州でも州民の選挙で選出され、任期は州ごとに様々であるが、2 - 4年である。副知事・州務長官・検事総長・会計検査官なども選挙によって選出され、選挙によらない州政府職員は基本的に知事が任命する。

州議会

州の立法機関は州議会であるが、ネブラスカ州議会だけが一院制を採用している。それ以外の州議会は全て両院制で、いずれの州でも州議会議員はその州の住民による選挙で選出される。

州裁判所

州裁判所は連邦裁判所の対象では無い問題を管轄し、州内の民事訴訟の大半・刑事訴訟(州法・地域法・家族法違反による)・州憲法に関わる問題などを扱う。各州ごとに最高裁判所や下級裁判所を保持しているが、下級裁判所の構成は州によってかなり違いが見られ、民事・刑事で分ける州もある。また全ての州で軽犯罪・少額訴訟を取り扱う市町村・郡の裁判所が設置されており、州裁判所の裁判官は選挙で選出される。

州兵

各州が保有している軍隊で、州兵陸軍と州兵空軍が存在する。平時は州知事を最高司令官として主に州内の治安維持に動員されているが、連邦軍の予備兵力ともされている為、連邦議会が非常事態を議決するとアメリカ連邦軍の一部隊として大統領が召集できる。

郡(カウンティ)

州と市町村の間の行政区分として郡が設置されており、郡は国内に3,000以上ある。多くの州ではカウンティというスペルであるが、ルイジアナ州ではパリッシュ・アラスカ州ではバローという。コネティカット州ロードアイランド州では郡は行政機能を有さないが、それ以外の州では有する為、運営する管理委員会と郡委員会構成員・郡議会・保安官・裁判官・治安判事・検視官・会計検査官・査定官・検察官などは公選される。

主に道路関連業務(建設・補修・ゾーニング)・出生と死亡・土地の所有権を移転するための記録管理・有権者登録・農村での法執行などを担うが、郡によってはそれ以外の行政機能も州政府と分担して担う。一部州では郡が公立学校区の単位にもされているが、多くの州では学校は別個の行政組織の下に設置されている。

市町村

米国市町村は郡内か郡から独立して存在し、公選された市町村長と市町村議会が運営する。それぞれ独自の行政権限を有しており、その規模は人口が100人にも満たない都市からニューヨークのような人口が800万人を超えて複数の郡に跨る巨大都市まで様々である。

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