プロジェクトA子
ぷろじぇくとえーこ
1986年公開の長編アニメーション映画。配給は松竹富士。
タイトルはジャッキー・チェンの映画『プロジェクトA』のパロディとなっている。
タイプの異なる3人の美少女が、あまりにもしょうもなさすぎるきっかけからセーラー服とパワードスーツで災害級のバトルを繰り広げ、巻き込まれた周囲の人々がエラい(あるいは悲惨な)目に遭う、という当時のアニメ作品において重視され出していたメッセージ性や芸術性を、あえてぶん投げて、とにかく娯楽性に特化させる事を目指したスラップスティックナンセンスバトルパニックSFギャグコメディ。問答無用で様々な属性・要素・パロディを総ブッコミした、1980年代のアニメ映画としては画期的に偏りまくった内容と方向性で、当時の大友やマニア層の人気を得た。現在に言うところのカオスアニメの嚆矢のひとつと見られる事もある。
なお同時上映は『くりいむレモン』シリーズの全年齢向け作品『旅立ち 亜美・終章』であった。なぜそうなったかというと、実は本作は、元々『くりいむレモン』シリーズの1本として企画されていたためである。
映画としては興行的にふるわなかったが、宮崎駿を怒らせ後述する「セーラー服と機関銃発言」を引き出した作品として有名になったこともあり、マニア人気を受け続編のOVAやドラマCDが長期間(約5年ほど)に渡り複数作、発売されている。また原画に菊池通隆、摩砂雪などが参加しているほか、動画で貞本義行や前田真宏らが参加するなど、今見ても作画スタッフは超豪華である。
宮崎駿をガチギレさせた上で、業界の今後を憂うためとして抗議のための記者会見(表向きは新作のプロモーション会見)まで開かせた作品としても有名。
映画興行が奮わなかったのは、この宮崎監督の記者会見にも一因があると見られる場合がある。
この会見を受けてしまった西島監督は第1作の成績速報が出た当初は「営業妨害をされた」と泣きながら憤慨したとか(もちろん実際には上述のように、それすらもはね除けて愛される作品となったのだが)。
もっとも、これは本作のプロモーションで西島監督が宮崎作品や押井作品に対して「芸術性やメッセージ性に全振りしたアニメばかり作って、そればかり評価されるようになると、バカをやるような作品(今に言うところのカオスアニメ)が評価されなくなり作り手がいなくなってしまう。そういう部分から生まれるはずの発想と発展が失われれば、アニメにおける創作的な部分が硬直して将来的に何も作れなくなるかもしれないと思った」と危惧を表明して「宮崎さんや押井さんが作れないものを出したい」(正しくは両名が「蔑んでいてあえて作らないもの」をあえて作って出したい、そうする事で「制作側の発想幅や視聴側の選択肢や業界の多様性をきちんと確保したい」という意図)という、挑発的と誤解されるコメントを発したせい。正直、言いたいことは解らない事もないが、このメッセージ(雑誌記事発言)は言葉のチョイスがとってもマズく(あるいは雑誌側が話題作りのため、そうなるように発言内容を調整した可能性もあるのだが)そのせいで損をした発言である旨は否めなかった。
そして例の対抗会見時に宮崎監督が発した「セーラー服が機関銃撃って、走り回ってる様なものを作ったら絶対ダメなんです」という言葉は大監督の名言(金言)として知られる一方で同時に女の子が銃器を持って兵隊をぶん殴ったりレジスタンスを脅したりする映画を否定する発言とも取られた(もちろん監督にそんな意図は無かったろうが)結果ブーメラン発言だと突っ込まれて迷言ともなった。
あと、この発言はそのものズバリな映画とその主演とその原作者のファンもガッツリ敵に回して騒動が飛び火。後々にも(特に広報担当が)苦慮する羽目になった。結果として件の映画の興行収入は前作の興行収入を大きく割り下げ、監督の意気込みと意図に反して歴代ワースト興行成績を叩き出してしまった。この意味でも、おもいっきりブーメランな自爆を演じる羽目となっている。
………まぁこの当時は、西島監督はもちろんのこと、宮崎監督もまた青臭く、若かったのである。いや、かなりマジで。
この時の宮崎監督の発言の主旨は「ニッチでマニアックな内容で少量ではあっても確実なトコロから人気と成果と儲けをキチンと取るやり方は『作り手として志が低い』行為だからやめろ。あまつさえ、そんなセコいやり口しかできないくせに他の人に噛み付くんじゃない。きちんと老若男女全ての人が楽しめるものを作れ」というものになる。
もっとも宮崎監督が非難した「志の低いセコいやり口」は、のちのバブル崩壊と失われた30年(平成大不況)と未曾有の少子化と価値観の多様化(グローバル化・ダイバーシティ化)の真っ只中にあって、皮肉なことにモノ作りのメインストリームとなってしまう。
さらに「老若男女が楽しめるものを」という部分に関しては、その後アキバ系文化の世間への拡散受容や、本作を楽しんでいた世代が高齢化して往年のコンテンツを支えていく形が常態化する事で、老若男女がセーラー服が機関銃撃つ作品を楽しめるような時代になっていったという逆の方向で解決がされてしまった。
その他メイン
A子、B子、C子のそれぞれの設定は、「くりいむレモン」時の企画においては、本編のそれらとは異なるものだった(詳細はそれぞれの当該記事を参照)。
また、彼女ら三人に加え「E子」も登場予定だったらしい。
舞台となる学園は、本編中では「グラビトン学園」だが、初期設定では「UG学園」。
学園独自の防衛機構を有しており、校長はその総司令官。無能そうな外観なれど、その気になれば町一つを消せるほどの権力と軍事力を有している。
UG学園の防衛機構は、生徒会長の下に数々の部隊や科が設定されており、構成員は学園生徒。
パトロール用エアバイクや空中戦車、重パワードスーツなど、各種軍事兵器を揃えている。
防衛委員会傘下には、各中隊と、それを総括する「防衛クラブ」が存在。クラブ内でも指揮系統が整備されており、非常時には校舎そのものが某超時空要塞よろしく、巨大ロボットに変形する。
更に、作中の日本政府にも「日本防衛軍」が存在。連合宇宙艦隊を擁している。
※このワルノリとも言える詳細な軍事設定は、80年代当時のアニオタの流行でもあった。
本編中では防衛軍を除き全て変更されたものの、このテイストは続編に持ち越された。
2作目以降では、学園周辺の町民たちで構成された防衛部隊が登場。巨大ロボも登場する(ほぼモブな扱いだったが)。本編中にはあまり出ていないが、初期の名残で詳細に設定されていた。
当時ラポート社から、本作のアンソロジーコミックが発売されていた。
その執筆陣の中には、本作を手掛けた森山ゆうじなどの他、萩原一至も名を連ねている。
一作目のノベライズは、講談社および角川文庫から発売。
講談社版は、ほぼアニメの内容を忠実にノベライズ化している(著:川崎智子)
角川版は、初期設定版のテイストを色濃く残した内容(著:越沼初美)。メインキャラクターたちはほぼ、完全な同性愛者になっている(口絵のキャラ紹介からして、A子は「C子とは恋人同士」と書かれている)。
濡れ場も存在(B子がC子を想い風呂場の中で股間を濡らす、A子がB子から差し向けられたアンドロイド少女を押し倒し性交する、など)。ストーリー及び内容も異なっている。
二作目は、角川より発売(著:団龍彦)。やはりこちらもアニメとは大きく異なっている。
※三作目以降は、ノベライズは書かれていない。
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