「お前だけの 決闘じゃないということがなぜ分からん? 子どもは 親の言うことを聞いていればいいんだ!」
CV:金尾哲夫
概要
ベネリットグループ御三家の1つ、ジェターク社こと「ジェターク・ヘビー・マシーナリー」のCEO。グエル・ジェターク、ラウダ・ニール兄弟の父親。グエルが正妻の子で異なるファミリーネームを名乗るラウダは愛人(妾)の子とされる(グエルとラウダのそれぞれの母の詳細については後述)。
PROLOGUE時点ではCEOの息子にして部下だったが、本編ではCEOを務めている。
人物像
同族経営のジェターク社を剛腕でまとめ上げてきた豪傑であり、野心的な経営者。
デリング・レンブランやサリウス・ゼネリと異なり、PROLOGUEから本編にかけて見た目に加齢があまり見られない扱いが多いが、PROLOGUEでの初登場シーンでは(推定30歳台)、長子のグエルに似た精悍な顔つきであった彼も、PROLOGUE公式サイトの立ち絵では一転して老け顔となっている。デリングとサリウスはそこから21年後とされる本編では総白髪になって、殊更加齢を感じさせるデザインになっているだけであり、ヴィムも同程度に老化していると見てよい。
ちなみに彼の父(グエルとラウダの祖父)である先代CEOとは顔立ちは似ているが、かなり恰幅の良い体形である。
優れた実績の裏で人体実験等の非道を行っている描写は特に見られず、グループの他社CEOと大きく異なる様子を見せる。
経営者として
デリングの冷酷さや軍人上がりの経歴を嫌っている節があり、野心家なのも相まって、自らがベネリットグループの頂点に立つべく彼の暗殺を画策する。
だが、極端な成果主義故に思慮に欠け性急に成果を求める余り、他の意見を蔑ろにして一方的な采配を振るってしまい、それ以上のものを失ってしまう状態に陥るなど、ワンマン経営者特有の弱点も備えている。
後述のダリルバルデのオート制御の限界や、パイロットとの相性についても十分に把握もせず〈決闘〉に出した結果敗北すると、疑問符が上がる経営姿勢である。良くも悪くも自社の製品を過信している。
また、あくまでも『デリングを蹴落としグループのトップになりたい』野望の元に行動している為、ミオリネの奇策によって策略が破綻するや、サリウスやペイル社はそれなりの収穫があった中、ヴィムどころかジェターク社だけ赤っ恥をかく結果になってしまい、次第に長男と同じく御三家におけるピエロ役を押し付けられる羽目に……。
父として・人格面
子供(特にグエル)に対しては束縛がひどく、『1人の人間』よりも『親の所有物』と考えている傾向が見られる。あくまでも会社の利益を優先するため、子育ての観点に立てば理不尽な叱責を加える場面も多々あり、1人の親として良識のある人物とは言い難く、端的に評せば「独裁的な権威を振りかざす一昔前の父親像」そのもの。
しかしながら、他の生徒達がそれぞれの保護者達から受ける非人道的な扱いが明らかになるにつれ、一応親としての自覚を窺わせ、スパルタ式ながら自分の後継者として成長させようとしているヴィムは「(相対的に)真っ当に見える」と評価されている。また、少なくとも自ら子供に会おうとする作中数少ない親である(たとえそれが頬をひっぱたく意図だとしても)。
サリウスから「がさつな男」と評され、グラスレー寮の生徒からも「横暴」とみなされており、作中での評価は低い。
演者の金尾も2022年12月18日配信の公式ラジオ特別回『グエラジ』にて、彼とジェターク家に対して「愛情がない訳ではないものの普遍的な(機能不全を起こし強権支配の)家庭と父親」 と評している。
ヴァナディース事変の前に「アーシアン風情が出しゃばるからこういうことになる(一部抜粋)」と発言していた先代CEO同様にアーシアンへの差別感情が強い。(表向きは)弱小企業のシン・セー開発公社も本業にちなむ「採掘屋」と罵り、グエルやラウダにも差別思想が受け継がれている。シャディクに対しても「養子」と生い立ちを愚弄していた事から、自身の血統に強い誇りがあるようだ。
ライバルを蹴落としてきた自信を備え、血統への誇り・実技の経験や後述する実践能力を生かして実績を上げてきた自負等が、彼の傲慢さの根幹なのだろうか。
グエルとラウダのそれぞれの母について
インターネット番組『Season1ととのうSP』において公開された設定画では、正妻(グエルの母)と愛人(ラウダの母)両名に見限られ、自分の元に残されたまだ幼いグエルとラウダを男手一つで育ててきたことが明かされた。設定画だけでは詳細は分からないが、グエルの母とラウダの母が結託してヴィムを捨てたのだろうか?
息子達の肩を抱きながら涙ぐみ「女に捨てられてメソメソするなよ〜」と自嘲気味に話している絵もあり、離婚の経緯は流石の彼も多少はダメージがあったらしい。
更にその設定画の中では3人で笑い合っている描写もあり、少なくとも現在ほど親子関係は機能不全に陥っていなかった模様。
動向
(本編での)初登場は第1話。長男グエルが『ホルダー』であり、ミオリネ・レンブランのフィアンセ、つまりグループの後継者と目される立場である点を固定化させるため、デリングの暗殺を目論むものの、グエルがスレッタ・マーキュリーに敗北して婚約者の地位を失い、計画の変更を余儀なくされた。
しかしエアリアルにガンダム疑惑がかけられたのを利用して勝敗を無効化し、グエルを呼び出して平手打ちを見舞い叱責を加える。
その後、事前にプロスペラとコンタクトを取り何食わぬ顔で審問会に参加。難色を示すデリングに対し、彼女のパフォーマンスに合わせ「エアリアルに用いられている技術が、モビルスーツ産業の起爆剤になる(要約)」と主張を後押しし、更に運良くペイル・テクノロジーズのニューゲンも技術提供を求めたのも追い風になり、デリングを渋々ながら説き伏せるのに成功。それによりヴィムは、再び長男を『ホルダー』に挽回させんと動く。
審問会を終え、戦闘支援AIを搭載した最新鋭機・ダリルバルデをグエルに(またもビンタと叱責を与え、強制的に)受領させた後、再びプロスペラと密会。
それを終えると学園で次男のラウダと合流し、ジェターク寮の生徒らを使いスプリンクラーを利用した戦闘への干渉を行い確実な勝利を収めようとしたが、スプリンクラーはミオリネにより停止、戦闘支援AIはブラフに引っかかって誤判断を連発する未熟さを露呈し、機体が大ダメージを負う事態に陥る。グエルがAIの干渉を遮断して独力で操縦し盛り返したものの、結局は惜敗に終わる。
汚名返上に失敗したばかりか、真剣勝負にこだわるグエルのプライドを踏みにじり、更にはヴィムの側に立ったラウダと、グエルの兄弟仲に亀裂を入れてしまうなど、思惑が悉く裏目に出てしまった。
グエルの2度の敗北からグループ内融資の減額が検討され、厳しい立場にある中、そのグエルはスレッタを巡るイザコザから、決闘禁止の命令を無視し、ラウダのディランザを勝手に持ち出してまでエラン・ケレスと戦った末に敗北してしまう。事ここに至り、ヴィムは一方的にグエルをジェターク寮から退寮させ、遣いを介し「卒業までの学費を払うのは最後の情け」だと言い放つ。
これによりグエルはキャンプ野宿を強いられる羽目に。
その後は上記の通り、ペイル社の策略に加担するが、ミオリネの新事業プランと、それを認めたデリングの後押しによって失敗。
『地球寮VSグラスレー寮』の6vs6の決闘を見守るグエルに連絡をするや、退学の目途が着いたと宣告。様々な反論を一蹴し、「ジェターク社の関連企業への就職口」を彼の意を問わずに勝手に用意した。一応「俺のやり方を学べ」と話しているため、現状見捨てるつもりはないようである。
しかしこれに従えなかったグエルは出奔し、行方不明になった。当然探しはしたが、偽名を使っていた事もあり消息を知ることはできなかった。
決闘から二か月後、GUND-ARM Inc.の運営を見守るデリングの方針を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるサリウスに近付き、(ヴィムにとっては2度目の)暗殺計画を持ち掛けた。
プラント・クエタに赴き、真意を押し隠しつつデリングにサリウスの謀反を伝える二枚舌ぶりを見せるが、「長男」の所在を尋ねられると逆上し、遂に面と向かってデリングを罵倒しながら詰め寄った為に部屋から追い出されてしまう。
しかしそれは計算の内で、「やはり乗っては来ないか」と呟いていた事からすると、デリングから何らかの失言を引き出すのが目的だった様子。もう一つの目的である発信機は、部屋を追い出される際にボディガードに仕込んでおり、それを目印としてデリングを暗殺する様、共謀していたシャディクに連絡する。ところが「俺がプラント・クエタを出てから2時間後に決行しろ」と言ったにもかかわらず、シャディクはその通信直後に「フォルドの夜明け」に攻撃命令を出した。彼は最初からデリングだけでなく、ヴィムもこの機に乗じて消してしまうつもりだったのである。
「あの養子野郎、裏切ったな!」と激昂した彼は、部下の制止を振り切ってディランザ・ソルに搭乗するが……。
余談
- エアリアルを巡る審問会ではミオリネが現れる直前に立ち上がって発言しようとしており、彼女が現れなくとも結果はともかくその後のデリングを説得する筋書は同じだったと思われる。
- pixivに投稿された作品は作中の言動をネタにしたものやジェターク家で揃っているものが多く、彼の単独イラストは少ない。
関連項目
ジェターク家
- グエル・ジェターク:正妻の子。第3話でヴィムが株を急降下させたのとは対照的に、一気に視聴者からの印象を変えた。
- ラウダ・ニール:妾の子(とされる)。こちらも第9話の発言で、良くも悪くも視聴者の印象を変えた。
ALERT
父さん、どうして俺にネタバレしてくるんだ?
兄さん、今は視聴に集中して!
※ネタバレ注意!!
※以降から第12話以降のネタバレが記されます! ネタバレが嫌なユーザーはブラウザバックを強く推奨します!
お前だけの視聴じゃないということがなぜ分からん? 子どもは親の言うことを聞いていればいいんだ!
ALERT
顛末
「グラスレーの若造にこれ以上舐められてたまるか!」と叫んだ彼は、襲撃直前に警告を受けていた輸送船が保安宙域に滞在していると聞き、それを敵船と判断した上で、巡回艦隊を呼び戻す事をオペレーターに命じ、出撃する。「俺はライバルの頭を直接ぶっ叩く事で勝ち上がって来た男だ」と不敵な笑みを見せており、腕には相当な覚えがあるようであった。
僚機3機と共に輸送船を発見し、「俺を敵に回した事、後悔させてやる!」と息巻いて攻撃するも、敵MSが現れ僚機が撃墜されてしまう。それが自社旧型のデスルター、しかもおそらく横流しされたものと気づき、「我が社のモビルスーツを使ってよくも!」とますます怒り心頭に。
- このデスルターはジェターク社にテロ支援の疑いの手が向くようシャディクの手によりフォルドの夜明けに提供された旨公式サイト「デスルター」の項目で説明されている。
さらに輸送船から発進してきた増援のデスルターを追撃。何故かその相手は逃げ惑い、発砲を躊躇うなどの不可解な動きを見せたが、容赦なく攻撃を浴びせたところ、相手は満身創痍ながらマニューバで回避しつつ捨て身で突っ込んできた。ヴィムは銃剣で迎撃するも、わずかに身をよじらされて頭部の破壊にとどまり、逆に返す刀でコクピットをヒートナイフで貫かれてしまう。
その時、敵機と接触通信回路が開き、相手の声が聞こえてきた。
「お…俺だ!ヴィム・ジェタークの息子、グエル・ジェタークだ!敵じゃない!」
何と相手はグエルであった。家出して消息不明になっていたグエルは、ボブと名乗って、建築関係の企業でアルバイトをしながら真の自立を模索していた。ところが仕事でプラント・クエタに向かっている途中、乗っていた輸送船が「フォルドの夜明け」にハイジャックされる。戦闘が始まった混乱に乗じ、彼はテロリストのデスルターを1機奪って脱出し、プラント・クエタに向かおうとしていた。そこをヴィムに見つかり、お互いが誰なのか知らないまま戦ってしまったのだ。
「グエル…か?……無事…だったか……捜したんだぞ……」
同士討ちになった恨み言を言うでもなく、行方知れずになったのを叱るでもない。映像がつながって映し出されたヴィムの顔は、血まみれで瀕死の状態ながら安堵の笑みを浮かべていた。
本編では横暴な態度ばかり描写されていたが、彼もまた、息子を愛するごく普通の父親だったのだ。
「脱出しろ、父さん!俺が今そっちに…!」
グエルの叫びも空しく、ディランザ・ソルは火球に包まれた。その反動で飛ばされてゆくデスルターの中で、グエルは腸も裂けんばかりに慟哭するしかなかった……。
CEOに就任し一線を退いていたとはいえ、ブランクを考慮してもそれなりのパイロット技能を示しており、首長たる彼が立場を理解し、蛮勇を見せなければ命を落とす事はなかった。自業自得ではあったが、様々な偶然が重なった上の悲劇的な結末であった。
そもそもデリングへの下克上にこだわらず、息子達と対等に向き合えればある程度悲劇は回避出来たと思われ、『グエラジ』の出演及びコメントが皮肉と言わざるを得ない。
さらに皮肉なことに、彼の死の真相を何らかの形で知ったシャディクによって最悪な形で暴露されてしまい、極秘開発していたMSと併せてもう一人の息子ラウダに疑心を植え付けてしまうことになった。ただしその疑念は「父親の殺害」以上に「そんな大事なことを教えないほど自分は信用できないのか」というものであり、父親の死自体は割り切っている節がある。
真の余談
- 決着の際に頭部を狙う動きを見せた事から、アスティカシア開校前からベネリット(前身のモビルスーツ評議会)内でも〈決闘〉による取り決めがあった可能性も否定出来ない。
- 過去の手癖から頭部を狙ってしまい敗北、対するグエルは頭部を破壊され死に物狂いでコクピットを狙った事から、〈決闘〉と実戦の違いと前者の展開の終焉を暗喩している可能性がある。
- MS戦だけ見れば、蔑ろにしてきた息子と親子喧嘩を繰り広げた末に刃物で刺されて死ぬという妙に現実的で生々しい末路である。先述の『グエラジ』もこの点を踏まえるとまた違った見方が出来るかもしれない。