概要
水木しげるが『貸本版悪魔くん』の続編として、光文社『コミックBE!』に1987~1988年にかけて連載した漫画。
『貸本版』の正式な続編であり、『貸本版』の34年後の1997年が舞台となっている。前作から20年以上経ってからの続編の為、話を知らない読者をフォローするために『貸本版』のダイジェストが第0話「序章 これまでの悪魔くん」として掲載された。
本作連載当時、すでに山田真吾を主人公とした痛快活劇としての『悪魔くん』(週刊少年マガジン掲載)が完結していたのもあり、本作もどちらかと言えば『ゲゲゲの鬼太郎』のようなバトルアクションがメインとなっている。
しかし、連載からわずか半年で打ち切りになってしまい、貸本版悪魔くんは2度目の打ち切りENDを迎えることになってしまった。
終末観溢れるシビアで暗い世界観になっており、一部設定には『悪魔くん千年王国』からの流用(おそらく、貸本版でも割愛されただけで同様の事があったということなのだろう)が見られる。
なお、この『世紀末大戦』の世界においては、実写版悪魔くんは松下一郎とヤモリビトをモデルにした二次創作(作中作)という扱いになっている。
本作完結から半年後、『悪魔くん』はアニメとして生まれ変わることとなるのだが、それはまた別の話である。
あらすじ
時は1997年4月。『悪魔くん』松下一郎の死から34年が経過した日本は、かつて悪魔くんに召喚された小物悪魔・ロソンにより経済界が牛耳られ、格差が広がり食料すら配給制になる暗黒国家に成り下がっていた。
ホラー作家「毛呂山」に身をやつしていたかつての第一使徒・蛙男は、オカルト雑誌の編集者町田と共に奥軽井沢の水晶ピラミッドに向かい、復活した悪魔くんをメシアとして迎え入れる。目覚めた世界がロソンにより堕落しきっていることを知った悪魔くんは、再び千年王国建国を目指して革命を起こそうとするが、それを嫌う政財界や魔界の罠が迫る。
登場人物
悪魔くん一派
- 松下一郎:ご存じ悪魔くん。34年も死んでたのもあって、貸本版時代に比べ比較的性格が丸くなっており、主人公然としている。また、死んでいた間は天界で修行しており、本物の悪魔を凌ぐ程の魔力を身に付けている。
- 毛呂山:第一使徒。貸本版時代はたいして役に立たなかったが、本作では精霊魔術を会得しており、立派な戦力となっている。
- 家獣:悪魔くんたちの移動要塞。初出は『千年王国』だが外見が丸型であり、『千年王国』とは別個体ということになる。後にアニメ版や『ノストラダムス大予言』ではこちらのデザインが登場。過去の戦いで太平洋に没したが、三浦沖のロソン・ホテルに化けていた。
- 占い杖:初出は『千年王国』。扱いもそれに準ずる。
- 町田:オカルト雑誌の編集者で毛呂山の担当編集。見た目通りの凡庸な小市民であり、貸本版の佐藤にすら劣る俗物であるが、打ち切りのせいで裏切らずに済んだ。
- 灰怒羅:本作のヒロイン。山本魔州の一番弟子で、悪魔くんを狙う刺客であったが、度重なる失敗で見捨てられ、根は善良だったため悪魔くんの使徒になる。アニメ版にも登場するがこちらでは悪魔くんの味方にならないまま帰ってしまう。
- 視鬼魅:中国の道人。2000年間、洞窟の奥でメシアを待ち続けていたが、町田によって起こされ、悪魔くんの使徒となる。
ロソン一味
- ロソン:かつて『貸本版』で召喚された小悪党悪魔。悪魔くんが死んだのをいいことに会社を立ち上げ、日本経済界を牛耳っていた。
- リリス:ロソンの女教皇。日本人を金権の奴隷に仕立て上げようと目論む邪悪な魔女。本作ではただの小悪党だが、後にアニメ版で重要な役を担う。
日本国政府
- 竹久:内閣総理大臣。悪魔くんの抹殺を狙う俗物。SM好きの変態。過去に野党政治家を山本に呪殺させた依頼主であるため弱みを握られている。
- 武者小路:官房長官。対都市用ゲリラコマンド「レッドマフラー隊」の上官。
- 草木:国防長官。水木しげるの父親ではない。タカ派であり悪魔くん退治を歓迎している。
- 折竹:警察庁長官。八の字髭。もともと悪魔くんを嫌いではなかった為、草木による悪魔くん退治には不満を抱いているハト派。
- 山本魔州:隠言衆大僧正の悪徳坊主。自らを真の救世主と豪語する黒魔術師であり、金の為ならいくらでも人を殺す極悪人。アニメ版にも登場。
魔界
- サタン(真):貸本版に登場した石油王サタンの先祖。ルシファー、ベリアル、リヴァイアサンと共に魔界を支配する四大公。悪魔くんの抹殺を試み、竹下を山本から裏切らせる。
- ハワード・サタン:貸本版で悪魔くんに爆殺された石油王サタンの後継者。政財界の汚点を掌握している。ロソンとの交渉に失敗し、捕えられる。
- シェリキロン:四大公の送り込んだ刺客。巨大な蟹に変身して襲い掛かるが、家獣に倒される。
- シェルハビロン:四大公の刺客その2。火を食らう犬。子犬に化けて悪魔くんを立ちを襲おうとするも、灰怒羅の計略により爆死。
- アンドリアス一族:深海の邪神クルールに仕える深海人の一族。悪魔くんを滅ぼすべく、大津波を起こして数百万の民を虐殺、隕石を落として東京タワーを破壊、富士山を大噴火と破壊の限りを尽くすも、灰怒羅に弱点の音を見抜かれ、あっけなく全滅する。