本項目は『金田一少年の事件簿』File2「異人館村殺人事件」の根幹に関わるネタバレを含みます
演:東根作寿英(ただしドラマ版での本名は「神崎竜一」)
本物の小田切進を殺して成り替わり、異人館村での連続猟奇殺人を引き起こした「七人目のミイラ」その人である(ドラマ版では本物の小田切は登場せずただの偽名扱いになっている)。
六角村(異人館村)の住人たちにより焼き殺された「6人の少女たち」の唯一の生き残りであった六星詩織(ドラマ版では「神崎詩織」名義)が命からがら逃走した先で生んだ一人息子であり、詩織の手によりありとあらゆる殺人術を教え込まれ、異人館村に復讐するためだけの殺人マシンとして教育を受けていた。
その身体能力は『金田一少年の事件簿』内でもトップレベルであり、警官2名をいともたやすく撃破できるほどの格闘技に加え、射撃やナイフ術も会得している。ちなみに最初の犠牲者は母・詩織その人であり、彼女が「教えることは何もない」と称し自ら凶刃に体を晒した。
「小田切進」だった頃は猫を被り、気弱な教師を演じていた(公式ガイドブックでは金田一一が「オレは教師ってのは嫌いだが小田切は嫌いじゃなかった」とまで言っている)が、実際は自らを殺人マシンと称する程冷酷無残・残虐非道な復讐鬼であり、一連の殺人事件においてはトリックのために被害者を滅多切りにして解体しているのだが、(金田一によって正体が暴かれると)殺人を完全に楽しんでいたことを嘲笑しつつ語り、「人間を殺すのは虫やネズミをぶち殺すのと何の違いもねェよ」とまで嘯いた。
母を殺し天涯孤独の身となってからは、六星村の「時計の館」主人の時田十三の娘・時田若葉が不動高校に通っていることを知り、全く無関係な小田切進を殺害し成り替わった(本物の小田切は手の骨しか登場していない。若葉や霧子より悲惨な扱いかもしれない)。
若葉を復讐の道具として利用するため、彼女を口説き落とし、深夜に密会を行ってわざわざ自分でホテルを出る所を盗撮し身元を隠して公表。若葉を退学に追い込む(殺人ショーの事を明かしていなかった六星であったが、この写真撮影に関しては既に彼女に伝えていたようだ)。
この「創られた不祥事」にまんまと引っかかった十三は、若葉を故郷に呼び戻し連城久彦なる人物と強引に縁談を結ばせる。六星はこれを利用して彼女の結婚式に出席し、若葉が六角村に伝わる新婚の儀式に携わることになったのを使い、「鎧の館」主人の娘・兜霧子をニセの死体に仕立て上げるべく若葉と共謀して殺害、「首を切られた若葉の死体」を作り上げた。
そして六星は、「操られた道具」の若葉を絞殺してしまう。更に残る六角村の人々を悉く殺害し、復讐劇は完遂するかに思えた。
しかし金田一によりトリックは暴かれ、自分が犯人だと露呈した六星は開き直って最後の標的を射殺する(ドラマ版ではこの「最後の標的」は仕留め損ねている)と、七瀬美雪を人質に取り逃走を図った。
復讐の総仕上げとして村で栽培されていた大麻畑(ドラマ版ではヘロイン工場)に火を放つ。そして若葉の敵を討つべく襲いかかって来た連城にナイフで刺されるも銃撃して殺害。更に金田一にも発砲する。
しかし、トドメをさす寸前で背後から六角村の神父・風祭淳也に撃たれ、ほどなくして頽れる。息も絶え絶えの六星の耳に届いた言葉は、風祭こそが六星の「父」であった真実だった…。
「バカな女さ、騙されているとも知らずに、本気で俺を愛してたんだからな」
「本気で……命がけで……こんなろくでもない男をよ……」
殺害人数は母・連城・本物の小田切を含めて破格の10人であり、これは高遠遙一の教唆・毒殺を除けば事件簿の怪人史上最も多い。
一片の疑いの余地もない狂人であるが、単なる道具なはずの若葉に対し前述の台詞と共に涙を流しており、本気で愛していた事が判明した。
東京に向かう列車の中、金田一が見たのは、神父と少女の間に生まれた「竜一」がやがて成長し、同じ村の「若葉」と恋に落ちて結ばれる夢だったという…。
その悲しい夢を胸に抱きながら金田一が涙を流すところで物語は終わる。
ギャグ漫画『金田一少年の1泊2日小旅行』ではなぜか一命をとりとめていたらしく(「※原作では死んでいます」との注意書き付き)、100%死刑であろうが本庁への護送中に警官を倒して脱獄し、警視庁でたまたま護身術の稽古を受けていた金田一への報復に向かっている。元教師だった頃の性格は完全に忘れ去ってしまったようで、国語力まで低下していた。なお、原作を読み返して計算してみれば(詩織が生むのを死ぬ気で我慢していたとかそういう設定が無ければ)六星は27歳になるはずだが、作者が忘れていたのか「年齢不詳」と紹介されている。
剣持勇によれば「あのやられた警官2人は日本トップレベルの強さだからあの程度で済んだ」と言っているほど身体能力が高いようで、事実剣持はパンチ一発で壁にめり込まされていた。
美雪のベタな説得に心動かされそうになるも…?
犯人視点のスピンオフ作品金田一少年の事件簿外伝犯人たちの事件簿では、Fileシリーズの犯人たちの中で唯一登場しなかった。
その理由にとあるミステリーのトリックをパクっているためと言われているが、六星本人が使ったトリックではなく、時系列として本編から端折れる部分であり、この理由自体は推測の範疇を出ておらず、定かではない。
また、六星は金田一少年の犯人の中では唯一の標的全てを殺め、最後の仕事こそ本人の手で果たせなかったものの、その遺志を継いだ者によって果たされ、事実上は勝ち逃げに等しい結末を迎えた犯人でもある。標的の皆殺しに成功した犯人もいるが、その上で罪を逃れる事や謎が暴かれないことも目的とする犯人たちにおいて、目的さえ果たせばその後は何も考えてない=どうなってもいいと言う事情はあるが、茶化し、犯人が敗北するストーリーである犯人の事件簿において、六星はキャラクターとして使いにくいと言うのも否めない。
なお、「犯人たちの事件簿」では最も要望の多かった犯人を取り上げる企画「犯人総選挙」を一度実施しており、その投票先に六星も入っていたため、取り上げられる可能性はあったと言える。しかしながらこの総選挙では惜しくも高遠に敗れて2位に終わっている。
作者の船津氏は1位に選ばれた高遠を描くにあたり「トリックを遂行するに当たり全く苦労していないと見られるため、描くのに苦労した。本当は描きたくなかった」と語っており、同様に作中で被害者たちを文字通りバッサバッサと切り捨てていった六星の描写も似たようなものになると考えられることから、その点でも敬遠された可能性は高い。
また、同スピンオフでは本編にて彼の次回の事件に登場した犯人に「先に金田一殺せば良いんじゃない?」「そんな掟破りな犯人…見てみたいものね…」と言うまさに実際に金田一の命を狙い半殺しにした文字通り「掟破りな犯人」である彼への当てつけとも取れる台詞を言わせているのだが、それがこの件への自虐ネタだったのかは不明。
結局、その点も含めて事情は闇の中。