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遠野英治

とおのえいじ

『金田一少年の事件簿』File:6「悲恋湖伝説殺人事件」に登場する人物。

概要編集

CV:中原茂

演:大沢健


 File:6『悲恋湖伝説殺人事件』に登場する人物。

 金田一一の通う不動高校の前生徒会長で、現在3年生。眉目秀麗で成績優秀な好青年で、イケメンのため女子からの人気も高かったらしい。現生徒会長(←読者の9割が忘れている)である七瀬美雪を気に入っているらしく、金田一によれば「過去に告白して美雪に振られたとかどうたらこうたら」との噂。

 いつも左腕に革ベルトのアナログ腕時計を巻いている。

 原作&ドラマ版では金田一と美雪よりも身長が高いが、アニメ版では170程度の金田一と同程度の身長に描かれていて、パチンコ版でも頭身が下げられた。

アニメ版と某スピンオフでは、(後に登場するそっくりさんに似せたためか)昔の恋人を思い出して虚ろな表情を見せることや頼りなさげな表情を見せることが多い。

 美雪が従兄・橘川茂から「自分の代役となる男と一緒に行って欲しい」と譲ってもらったチケットで金田一は橘川の名を名乗って(「童貞を捨てる」という不純な動機で)向かった悲恋湖リゾートキャンプに参加し、殺人鬼ジェイソンによる殺人に巻き込まれてしまう。


 実は旅行を計画した観月旅行社社長の子息であり、顧客のイメージ調査のために同行したスパイであった。

 ジェイソンにより次々と旅行者が殺されていくことを憂い、自らただ一つの脱出手段であるモーターボートに乗り、近隣の村への連絡役という一番危険な役を買って出る。


 しかし、非情なるジェイソンの罠にかかり、顔を潰された見るも無残な死体に成り果てる。その衝撃的な死は、金田一の心を大きく揺さぶった…。























以下、ネタバレ注意























「その時思ったんだよ! 法で裁けないなら俺が手を下してやるってな!」



「螢子の命はてめえら100人の命より重いんだよ!!!」







 実は無残な死体は遠野によって殺された橘川のものであり、遠野こそがジェイソンであった。上記の「てめえら100人の命より」は、アニメ版は500人分(沈没したオリエンタル号の乗客数でもある)に、ドラマ版は1000人分に言い換えられた(病み度がアップしている)。

 10年前にジェイソンを名乗る刀丸猛人によって起こった猟奇殺人事件(終盤で彼は1年前に死刑が執行されたことが明かされている。余談だがこの事件での刀丸猛人の殺害人数は実に13人であり、地獄の傀儡師に次ぐ第2位である。ただし、刀丸の方は単一の事件での殺害数である)に着想を得た遠野は、フェイクニュースを吹き込んで参加者たちに脱獄した殺人鬼・ジェイソンの存在を植え付け、一人また一人と参加者を血祭りにあげていった。そして自分の替え玉を殺すことで容疑を逃れ、ターゲットを皆殺しにしようとしていたのである。

 しかし、参加者のイニシャルが遠野以外(※)全員「S・K」であること、部屋を荒らした後に食料品が全く手を付けられていないこと(拘置所からキャンプ場までの道のり20kmには食料を調達する術は無く、2日かけて徒歩でやってきたはずの刀丸が食料に全く手を付けていないのは不自然であった)、顔を潰された「遠野の死体」からは遠野が着けていた腕時計が外されていたことなどに気付いた金田一によりその正体が暴かれ、仕掛けた盗聴器の前で打った芝居にまんまと騙され、捕えられた。


※橘川の替え玉の金田一(H・K)と付き添いの美雪(M・N)は本来の招待客ではないため除く。



 遠野英治がこの狂気じみた殺人を行ったのには、3年前に起きた悲劇が起因する。

 幼い頃に両親と死に別れ、児童養護施設で小泉螢子という少女と共に暮らしていた英治は、観月旅行社の社長に引き取られて養子となり、螢子とは離れ離れになってしまった。養父母に扱き使われる螢子を憂いた英治は彼女を慰めるために船旅を計画した。

 しかしその日、螢子の乗った豪華客船オリエンタル号は、タンカー船竜王丸と衝突し沈没。他の乗客同様に放り出された螢子は、救命ボートにしがみつくも、その救命ボートは既に満員でこれ以上人を乗せたら沈んでしまいかねない状態になっており、カルネアデスの板の伝承のように何者かに腕を突き放され海に沈み為すすべなく息を引き取った。

 翌日、息絶えた螢子の屍を目の当たりにした英治は正気を失い、見殺しにされたかのような彼女の死が緊急避難による正当行為であることを警官から知らされて激昂。

 螢子が握りしめていたキーホルダーのイニシャルから「S・K」の名を持つ生存者を全員殺すことで復讐を達成しようと目論んだのである。普段から遠野が嵌めていた腕時計は螢子の遺品であるため、替え玉にした橘川の手首に嵌めることは出来なかった。

 皮肉にもこれらは、元ネタであるジェイソンの母・パメラや模倣犯のロイと同じである。

 ターゲットの一人である樹村信介(PN:いつき陽介)から「この野郎! ンな茶番劇で俺達を皆殺しにしようとしたのかよ!!」と詰られると開き直って逆上、更には「S・K」当人である医師甲田征作が螢子殺しを自白すると金田一に「そので甲田を殺せ! さもないとロッジごと爆弾で吹っ飛ばしてやる!」と脅迫する。


 その身勝手極まりない宣告に怒りが頂点に達した金田一から、「てめえの不幸しか見えてねえ大馬鹿ヤロー」「人殺しの罪を背負って一生懸命生きてきた甲田を殺して螢子が喜ぶわけがない」と詰られ、更に怪我(ジェイソン、つまり遠野が仕掛けたによるもの)を押して罪を重ねることをやめるよう懇願してきた美雪の姿を目の当たりにして慟哭。

 遠野は爆弾のスイッチを抱えて悲恋湖に飛び出し(原作では心の中の螢子に語り掛けながら逃走。アニメ版は窓ガラスを突き破って逃走し、ドラマ版では甲田の肩の辺りを斧で斬り付けて発狂しながら逃走した。原作版は誰かが追いかけてきたら爆破スイッチを見せつけて脅すなど、完全に理性を失ってはいない様子だった)、ボートごと大爆発して果てた。

 後には伝説通り、悲恋湖が真っ赤に染まっていた…。



 それから程なくして、金田一の元にいつきから一枚の写真が送られてきた。

 そこに写っていたのは、遠野と共にいる美雪にそっくりな少女と、と」と書かれたメモ書きだった。被写体の少女――小泉螢子は、遠野の血を分けた妹だったのである…。

 ドラマ版では原作のままだと放送コードに引っかかると判断されたのか、最初はお互いに実の兄妹だと知らずに交際していたという形でフォローされている(放送コードに関係なく、こっちのほうが伝説らしくて神秘的で好きという声も)。


 凶悪犯だが、橋の穴に嵌った金田一を引き上げて「何かつっかかってるみたいだけど?」と突っ込む時、最初の被害者・倉田壮一と共に金田一が河西さゆりにビビってあげた悲鳴に驚く時はデフォルメ顔で描かれ、美雪とも(^^)の顔で談話しながら食事をしている。

ラジオを止める演技とカラスが集まる木を蹴る演技、服装から顔の潰された遺体が倉田の物と気づく演技はものすごくしらじらしいが、美雪が悲恋湖に来て喜んだのと金田一と一緒に小林星二画伯が瀕死の美雪の絵を描くのを止めたのは演技ではなかった可能性もある。


 遠野が取り乱した時に、九条章太郎は遠野から身を守る為にパンダ柄のを持っていた。

 美雪の従兄・橘川(原作では美雪にセクハラする姿が描かれている)を殺害しに行くシーンが手が込んでいる理由(ドラマ版(は従兄設定ではないが)では金田一が罠にかかった美雪を見張らなかった遠野を威嚇したのを後悔するシーンが描かれ、アニメ版では橘川の死体を見て顔が引きつった後で「遠野さーん!」と叫ぶ金田一の姿が描かれた)、解決編で美雪が橘川よりも遠野を心配していた理由、遠野がイケメンと女性を殺害できずに終わった理由(螢子を見殺しにしそうな人物から殺害していったのだろうか?)はよく議論される。

 アニメ版は偽ニュースの声が遠野にそっくりだが、誰一人として突っ込んでいなかった。

遠野と後述の深山の声優も異なるなので無理はない。また、(金田一と美雪を除けば)初対面の人間と僅かな時間聴いただけのニュースアナウンサーの声が似ている事に気がつくのも難しいだろう。


 なお、公式スピンオフギャグ『犯人たちの事件簿』ではわざわざアナウンサー学校に通ったり、遠隔操作自動発火装置の作り方を一から学習したり、仮面を被ったまま動けるよう毎日100回も斧を素振りしたりと滅茶苦茶手の込んだ用意をしていたようで、水没した際には「無関係の人間を手に掛けるのは間違っていた」と悔悟していた。また、「S・K(そういうこと)!!」「俺のS・K(さつじんけいかく)」「S・KはS(すべて)・K(ころす)…!!」といったように、モノローグでやたらと「S・K」というアルファベット2文字になぞらえたセリフを発している。

 そしてこの作品では金田一に謎を解かれた後は逮捕された場合は留置所、死亡した場合はあの世でインタビューを受けるのが恒例になっているのだが、遠野の場合はあの世ではなく湖の底に沈んでいく途中でインタビューを受けており…。


「S(さらば)・K(きんだいち)……また会おう……」



関連項目編集

金田一少年の事件簿 事件簿の怪人 13日の金曜日

いや、そのりくつはおかしい

近親愛


幽霊客船殺人事件小説版第2巻(アニメ28~31話)。オリエンタル号沈没事件の真相が明かされる。遠野がこの顛末を知っていたら、この惨劇は起きなかったと思うと…。



ジェイソン・ボーヒーズ…元ネタである殺人鬼。




















更なるネタバレ注意























 悲劇の半年後、File:16『黒死蝶殺人事件』において、彼とそっくりな深山日影なる人物が登場する。声優は遠野とは異なり鈴木琢磨氏。ドラマ版では登場すらしない

 金沢で大火傷を負っていた所を蝶コレクターの班目紫紋に助けられ、背中に負った巨大な蝶型の火傷跡を見初められて彼の小間使いになった。半年より前の記憶が無いらしいが…?

そのため、「深山日影」とは本名がわからないことから紫紋が蝶にちなんで付けた愛称。


深山はサスペンダーの私服を愛用するなど、見た目以外にも遠野との共通点が描かれている。

アニメ版では、遠野に深山と恋仲になった斑目揚羽と同じ行動(窓ガラスを突き破って逃走)を取らせる、遠野と深山の髪型を同じにするなど、遠野と深山の共通点がより増やされており、遠野の状態で深山の「純朴な」顔付きになるカットが存在する(『犯人たちの事件簿』でも同様の表現がなされた)。


なお、深山が発見されたのは金沢だが、遠野が事件を起こし消息を絶ったのは長野(軽井沢)。自動車でも4時間はかかる距離だが……?


ちなみに上記の『犯人たちの事件簿』単行本5巻のあとがきによると遠野の生死(すなわちこの深山が遠野と同一人物かどうか)については原作の歴代担当の間でも意見が分かれているらしく、どちらとも解釈できる描写にしたのはそのためとの事。


しかし、その後の2021年現在において最新の「37歳の事件簿 公式ガイドブック」では、「ジェイソン・遠野英治の新たなる人生」と題した、深山と同一人物であると断定するコラムが掲載されている。

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