桑名仁
くわなじん
『LOST JUDGMENT』に登場する横浜・伊勢佐木異人町で長年「便利屋くわな」という屋号で活動している男性。43歳。
“表と裏を知り尽くしている”と自負するほどの情報通で、料金設定は高めだが警察にも言えないような依頼でも受けると売り出しており、基本的に飄々と立ち回るが、芯が強く負けず嫌いな部分があり、己で決めた仁義を通そうとする性格。
本編では、八神が城崎さおりからの依頼を受け、数日前に腐乱死体で発見された教育実習生・御子柴弘の詳細について捜査している中で知り合う。八神が探偵と分かると、よそ者の同業者に地元で騒ぎを起こされたのが癪に障るとして、出会ったその場で大喧嘩になったものの、海藤正治や杉浦文也の仲裁もあり和解。その後は事件に積極的に関わるため、杉浦たちが開業した探偵事務所「横浜九十九課」の事務所に度々現れるなどして、交友を深めていく。
杉浦とは横浜九十九課設立時からの顔馴染みで、同業の先輩として挨拶を交わした間柄。海藤とは気が合うようで、初対面で「気持ちのいい野郎」と気に入られ二人で仲良く飲みに行っており、八神を訪ねて初めて横浜九十九課に顔を出した際は海藤と将棋を指していた。しかし八神とは根本的に反りが合わないのか、交友する様になってからも互いに反骨心を剥き出し、刺々しい言い合いを展開している。
LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶 便利屋 伊勢佐木異人町
この作品の根幹に関わる重大なネタバレがあります。
「人を…幸せにしない真実に、価値なんてあるのか…?」
実は桑名仁という名前は偽名であり、本名は「喜多方悠(きたかたゆう)」。
のちに誠稜高校の教師となった澤陽子や、いじめにより飛び降り自殺を図った楠本充の高校時代の担任をしていた、黒河学園の元教師である。
彼は充がいじめを受けていた当時、本心からいじめを見抜くことができず、いじめの実態を単なる高校生同士の悪ふざけ程度の認識しかできなかった。
そんな中、充のいじめを看過できなかった澤からの必死の訴えを受けて、いじめの内情を探るためにクラスに隠しカメラを仕掛けたことで、悪ふざけでは済まされない、複数の生徒から充が受けていた壮絶な仕打ちを知ることになる。
だが時既に遅し。充はその日のうちに飛び降り自殺を図り、意識不明のまま十三年間の昏睡状態に陥ることになる。
証拠は押さえているもののどうにもできず、喜多方自身はいじめを放置した教師として、生徒と学校から全ての責任を負わされる形で教職を追放される。
その後は、遠縁となっていた義理の叔父である「セイレーン」のマスターの助けを借り、裏社会でも動くことのできる情報網とコネで異人町で便利屋を営む。仕事の態度は至って真面目で、近所からも気のいい相談役として評価されている。
その一方で、いじめ被害により自殺した中高生の"復讐"を行う一種の断罪者(パニッシャー)となり、全国を廻りながらいじめ被害者遺族に接触しては、その加害者を調べ出して制裁を与える「慈善家」としての顔も持つ。手口も非常に巧妙で、警察にも証拠を掴ませないままこれまでに7名もの元いじめ加害者たちを殺害してきた。
一見無関係に見えた江原明弘とも実は裏で繋がっており、彼の依頼を受けて御子柴弘の殺害等々をお膳立てしたのは他でもない桑名である。(江原曰く復讐を進められた者の中にはやはり許されない事だと断る者も居たそうだが、その者たちから桑名の情報が警察に漏れた事は一度もない、これは復讐をするしないに関わらず桑名の考え方自体は理解できないものではないからだとのこと)
無論こんな事をしてもいじめが無くなる訳ではなく、いじめは人間の本能に近いものであり絶対に無くなることはない。しかし、劇中で桑名は「どうせ汚れるからってトイレを掃除しないようなもの、誰かが手を汚して綺麗にしないといけない」「法が代わりに機能してくれんなら俺だってやりたくない」と語っている。(本人的には自分に実態があてられるのは悪くない展開らしく、いじめ加害者を誰かが裁いていると世間にも知ってもらえると語っている、ただしそのときには別の名前で姿も変えているだろうとも言っている)
当然、楠本充を昏睡状態に追いやった元教え子たちの事も最初から許す気がなく、充の母・楠本玲子に「主犯格の川井信也はもう過去のことは忘れて忌々しいほど能天気に過ごしている」と密告。激昂した玲子からの依頼を受けて川井を拉致、彼女の前に差し出して復讐殺人を遂げさせている。
そして川井以外のいじめ実行犯たちに対しては、前述の証拠のカメラ映像で脅して川井の拉致に協力させ、その後川井の死体(倉庫の奥に冷凍保存して隠してある)をネタに強請るという二重の罠で手駒にし、"教育"と称して自身の汚れ仕事に協力させていた。ちなみに江原が起こした痴漢事件の被害者である間宮由衣もいじめ実行犯の1人であった。
自分の裏仕事に感づいているであろう元教え子の澤陽子を遠ざけていたが、探偵として澤に情報提供をしつこく求めていた八神を疎ましく思い、大金を払って横浜流氓の白面をけしかけたり、直接接触して行動を監視したりしていた。その為、八神の仲間の中では一番桑名と意気投合していた海藤も、自分が初めから御子柴殺しを追う八神へ接触する為に利用された(海藤曰く「ター坊の添えもん」)だけと知った際には憤慨していた。
ところが、桑名自身も与り知らぬ所で事態は大きく動いていた。
今や厚生労働省の事務次官として押しも押されもせぬ国民人気を築いていた楠本玲子。その弱みを握り裏から操ろうと目論む権力者達が江原の事件をきっかけに、玲子の川井殺害、ひいては玲子と桑名の繋がりに気づいたのである。
鍵を握る桑名の身柄を確保すべく、権力者達は公安の潜入捜査官・相馬和樹率いる半グレ集団「RK」を異人町に派遣。結果、澤陽子が彼らの情報収集に利用された挙句殺害され、桑名は犯人に仕立て上げられてしまった。
「真実を覆い隠そうとすれば、新たな犠牲が生まれる」
八神は事件の関係者達に、澤陽子の死を復讐が招いた結果として向き合うよう訴えかける。
一方で、今桑名が捕まればその真実が闇に葬られてしまうため、桑名の逃亡を支援しRKと戦うこととなる。
だが相手は日本最強の情報機関である公安。逃げ続けるのは不可能と判断した(これについては桑名も同意している)八神は、楠本玲子を自首させることで公安が桑名を追う理由を無くそうと目論むが、桑名は反発。「法がいじめ加害者を裁かなかったから、誰かが裁かなければいけない」「充君のことで散々苦しんだ楠本さんが、これ以上裁きを受けるのは間違っている」と。
それでも八神の説得に心を動かされた玲子は、自首を決意するが……
作中3度戦うことになり、「神室町流」を自負する八神の我流格闘術に匹敵する程の実力、八神との戦いは殆ど互角で終わっている。
オーラは紫がかった白色、八神と同じく拳法をベースとした「神室町流」に似た格闘術で戦う。今作では多人数戦の「円舞」、タイマンの「一閃」、カウンターの「流」という3つの戦闘スタイルを切り替えて戦う八神と同じく、ライバルキャラらしく桑名も同様のスタイルを意識したバトルスタイルを取り、1戦目では「円舞」、2戦目は「流」を多用し、3戦目ではすべてのスタイルを使う。繰り出す技の性質に応じて攻撃時に軌跡の色が変わる。
戦闘曲は1戦目は通常ボス戦の曲、2戦目は「Dig in Your Heels」、そして3戦目は「Unwavering Belief」。2戦目はトランスを思わせるテクノチックな曲調、3戦目は壮大なオーケストラに加え、体力を半分まで減らすとギターをメインとした激しい曲調に移行する豪華な構成となっている。
曲名はそれぞれ「自分の意見に固執する」「揺るぎない信念」という意味であり、
八神と桑名、それぞれの譲れない信念がぶつかり合う戦いに相応しいものとなっている。
- 通常コンボ
最大5回派生する弱攻撃。4撃目は相手を大きく怯ませ、トドメに強力な足払いを放つ。
3撃目のミドルキックからカウンターに派生可能。
- ダッシュ攻撃
走り込みながら相手を蹴りあげる技。弱は飛び膝蹴り、強は二段蹴りになる。
八神の一閃ダッシュ攻撃に相当する技。
- ラッシュコンボ(一閃)
正面に放つ強力な高速7連撃。途中で通常コンボに派生する事が可能。
序盤は使わずオーラ後に放つようになる。
- スウェイ攻撃(円舞)
スウェイから繰り出す攻撃。前方はブラジリアンキック、左右は後ろ回し蹴り、後方はスライディングになる。
八神の避舞倒撃に相当する技。
- 起き上がり攻撃(円舞)
ダウンした状態から繰り出す、起き上がりながらの足払い。
八神の昇雲旋脚に相当する技。
- ジャンプ攻撃(円舞)
空中へジャンプした直後に急降下で蹴り落とし、相手をバウンドさせる。
八神の△舞空脚に相当する技。
- 強攻撃(流)
瞬速で間合いを詰めながら肘を入れ、相手を吹き飛ばす。
- 掴み(流)
走り込みながら相手を掴んで後方へ投げる。
- カウンター(流)
構えを取って相手の攻撃を受け流す。直後に放つ背後からの掴みは地面へ押さえつける技になる。
受け流し後の攻撃は、強攻撃、ダッシュ攻撃など様々
- モータルアタック
相手を地面に押し倒した後に踏みつける。
なお、前職でも担当教科は体育などではなく、Final Chapter での彼のセリフによれば「俺は元国語教師だ」とのことで、なぜ彼が八神とも張り合えるほどの格闘技や体力を身につけているのかについての明確な説明は本編中に無い。便利屋となって裏社会へと身を投じるにあたり猛特訓したのか、それとも若い頃から個人的な趣味で鍛えていたのだろうか。
飛び降りによって昏睡状態に陥っていたいじめ被害者の楠本充が目を覚ましたために、楠本玲子は心変わりを起こし桑名の情報を公安に売ってしまう。裏切られた事を知ってなお、桑名は息子のそばにいたい玲子の心情を汲み、彼女を庇う策に打って出た。玲子の殺人の証拠である川井の死体をエサに相馬たちRKをおびき寄せ、助けに来るであろう八神達に相馬を捕えさせて黒幕を引きずり出そうとしたのである。
結果、八神によって相馬は倒され逮捕されるが、桑名は最後に死体を爆破し証拠隠滅するつもりでいることを八神達に明かす。八神がそれを決して認めないことなど分かりきっていながら。「止めるつもりならお前らごと爆破する」と脅す桑名だったが、彼がそんな事を出来る人間ではないと知っている八神は動かない。結局桑名は起爆ボタンを押すことが出来ず、八神との一対一の決闘に及び、敗れる。
その一方で、最後まで自分を慮ってくれた桑名をこれ以上苦しめないため、澤陽子を巻き込んでしまった責任を取るため、そして息子に失望されないために楠本玲子は過去の殺人を警察に自首することを決意。力尽きた桑名の前に現れて謝罪した後、現場に駆け付けた警察に連行されていった。
しかし、桑名は川井の死体こそ置いていくが、過去に殺した人間の証拠と映像が無い事から警察が逮捕する理由がないと告げ、何もかも八神達にバレてしまった際は「桑名仁」という名前も捨て、闇の中に生きていくと伝えた。そしてこれからも学校でいじめ加害者が出れば殺しさえもすると…
八神も、桑名の「証拠がない」という言い分を認めて見逃すしかなかった。
仮にこの場で警察に逮捕させても警察内部にいる黒幕である公安の坂東秀美によって、澤先生殺害という捏造された事件の主犯に仕立て上げられ、口封じに殺害される形で真相が闇に葬られる事が目に見えていたからだ。
いじめをしても法によって裁かれない加害者と、いつまでも心が救われない被害者とその遺族…。
八神もそれが少しずつ変わっていっていると桑名に伝えた。
そして最後に桑名は、今まで殺してきた全てのいじめ加害者の遺体のありかを匿名通報で警察に伝え、彼なりのケジメを付けたが、以降彼がどうなったかは分からない。
ただ、今作の2年前に起きた様な、ラスボスの狂信者に刺殺される事はなかった。
横浜での腐乱死体発見から始まる本作の一連の事件の中核となった人物であり、八神が本編のストーリーにおいて最後に戦ったことからも、本作のラスボスと言える。
しかし、前作のラスボスは分かっている限りでは、狂気的な性格だけの純粋な悪役だったが、桑名は自らの過ちを悔やんだ末に加害者に裁きを与えようと歪んだ正義を掲げた人間性になってしまったことが分かる哀しき悪役とも言える。
また、前作のラスボスが私利私欲を満たす為だけに行動し、その身勝手さゆえに終始八神と敵対し続けていたのに対して、本作のラスボスである桑名は、あくまでも自分の正義と信念を貫くために行動し、お互いの素性が明らかになった後でも時に八神と共闘し、場合によっては行動も共にするなど、ラスボスと言う以上に、主人公のライバルとしての側面が強い。
実際に、八神とは子供じみた言い合いや張り合いが目立ち、八神自身も桑名の正義には一定の理解を示し、桑名もまた「俺とお前は同じ」と評した。
また、八神同様に前職が共に「先生」と呼ばれるもので、現在は探偵に近しい便利屋を稼業とし、お互いにある事件がきっかけで社会からの信用を失い大きな挫折を経験したり、ついでに愛煙家で自宅の台所も汚しがち等、とにかく八神との共通点が多い。
劇中で八神とそりが合わない場面が多いのは同族嫌悪なのではないかと言う声も。またお互いに隠しカメラを使っていじめの証拠を手にしているのだが八神はそれを使っていじめを阻止しいじめっ子を改心させたのに対して桑名はいじめを阻止できずいじめられっ子が自殺未遂を起こしたという違いもある。
その結末を含んだ評価はプレイヤーの中で賛否両論となり、「桑名の言い分も理解できる」「死んで欲しくない」などの意見がある一方で、「犯罪者を野放しにするのはどうなんだ?」「すっきりしない結末」と真っ二つに分かれている。
当時の総合監督・名越稔洋はこの結末に「スタッフの間で怒鳴り合いの喧嘩の様なこともありました」とインタビューで語っていた事から、スタッフ達も桑名の末路に賛否両論だったと明かしている。
彼がこのまま闇の中で生き続けるのか、それともいつか何処かで裁きを受けるのか、はたまた既に殺害されているか、それは今後続編が発売されるか、そしてその中で描かれるのかどうか次第であると言える。
澤の教え子の1人である香田真美も充同様にいじめ被害者であったが、自殺に走る前に八神達に救われる、自分を苦しめた相手に謝罪されて和解する、一連の事件解決後に街中でいじめを目撃して仲間や通行人に支えられながらいじめ加害者に立ち向かう……など、まるで桑名と対比させるために作られた様な設定を持つキャラクターとも言える。
ラスボス(龍が如く) パニッシャー 復讐者 ライバル 哀しき悪役 教師
夜神月…少年漫画の主人公で、法で裁けない人間を、自らの歪んだ正義で処断するキャラ繋がり。ただし、こちらは桑名とは違い、相応の報いを受けている。
白樺康隆…本作のDLC『海藤正治の事件簿』のラスボス。性格は全く異なるが、桑名同様に強い信念と正義を持っている。ただ行動自体も異なり、死の偽造や愛する人を守るために鍛えて強くなった比較的善良な人間性。
ちなみに白樺戦は、ストーリー上の敵を既に倒しており、決闘のような雰囲気となっているため、相馬を倒した後の桑名戦と近いものがある。
トラウーマ…同じ俳優が声優として演じたラスボス繋がり。ただし、こちらはアニメ映画でのキャラである。
ちなみに、前作のラスボス役の俳優も同シリーズの映画の敵役として登場している。
鴨ノ目武、怨み屋さん…こちらも復讐代行でいじめ加害者を処断した人物であるが、いずれも死よりも残酷な罰で制裁した上に被害者を見捨てた教師にも裁きを与えていた。
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