ナラティブガンダム
ならてぃぶがんだむ
カタログスペック
素体/A装備/B装備/C装備
頭頂高 | 21.0m/27.0m/21.0m/21.0m |
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本体重量 | 25.1t/88.0t/29.4t/26.8t |
全備重量 | 40.2t/193.6t/72.0t/51.5t |
ジェネレーター出力 | 2,980kW/5,070kw/3,280kw/2,980kw |
スラスター総推力 | 104,000kg/304,000kg/108,200kg/104,200kg |
概要
アナハイム・エレクトロニクス製の多目的試験用モビルスーツ。その素性は謎が多く、アナハイム・エレクトロニクス社フォン・ブラウン工場が、同社グラナダ工場からサイコフレームの提供を受けた後にRX-93 νガンダム以前に急造したサイコフレーム試験機、νガンダム以前にサイコフレーム非搭載の通常機体として開発された後にサイコフレームの試験用母体として一時的に使われたことがある試作機、μガンダムと同世代の失敗作など諸説ある。型式番号は通常則から外れたRX-9が与えられている。
ミネバ姫殿下の「ラプラス宣言」を経て、しかし特に大きな騒乱や変化の無い“安寧”にあった宇宙世紀0097年に、ルオ商会(の財力と政治的影響力を用いたミシェル・ルオ)の命によって近代化改修を受け、「ナラティブガンダム」として再ロールアウト。サイド4(後のフロンティア・サイド)の片隅で展開されていた『不死鳥狩り』作戦の増援として、軍参謀本部の正規ルートから特殊部隊「シェザール隊」へと“捻じ込まれ”、フェネクス捕縛の切り札となるべく実戦に立った。
パイロットは、こちらもまたルオ商会の意向により子飼い軍人であるヨナ・バシュタ少尉が専属として務める。
機体解説
近代化改修を受けてはいるが、基礎設計はRX-90と同世代、すなわち宇宙世紀0090年(以前)のため、宇宙世紀0097年時点では「高性能機」とは言えないレベルである。
加えて上腕部、大腿部、更にはコクピット周辺の装甲が無く、ムーバブルフレーム及びコア・ファイターのキャノピー(クリアグリーンの部分)がむき出しとなってしまっている。武装面においても「多目的試験用機(データ取得用)」をベースとした経緯から、ナラティブガンダム本体が内蔵しているのは頭部バルカン砲二門のみ(ビームサーベルさえ装備していない)という貧弱な構成となっている。そのため、劇中では「やせっぽち」と呼ばれる場面もあった。
このハードウェア・スペックの不足をカバーするため、ルオ商会(ミシェル・ルオ)は予め想定したフェネクス捕縛作戦内容(戦術)に沿った単一機能特化のオプションパーツを調達し、随時換装、運用する手法を採った。
コクピットブロック
前述で触れたとおり、ナラティブガンダムはΖ系列機同様のバーティカル・イン・ザ・ボディ方式コア・ブロック・システムを採用しているため、宿命として全天周囲モニターを内装できず(ZZガンダムのような擬似全天周囲モニターも用いられていない)、第一世代モビルスーツ同様の三面モニターが据えられている。シート部もリニアシートではないが、こちらは近代化改修時に後述の「サイコスーツ」に完全対応した固定具を各所に増設する事で、パイロットへのG負荷を可能な限り緩和する措置としてある。
その他第一期MSとしては革新的な点として、コントロールスティックの代わりにコントロールシリンダーによって機体を操作する仕様が挙げられる。
ソフトウェア
経緯は不明だが、オペレーティングシステムには宇宙世紀0096年時点では『UC計画』を請け負ったアナハイム・エレクトロニクス社ですら、「ビスト財団が独自開発したブラックボックス・システム」とまで語っていたNT-Dが追加インストールされている(パイロットには秘密裏に)。
当該ソフトウェアによりナラティブガンダムは、一定以上の感応波を感知すると自動的に戦闘モードが変更され、パイロットさえも『システム』の一部として取り込んでニュータイプ/強化人間を撃滅するためだけの戦闘稼働を開始する。なお、NT-D起動時にはシステムの特徴的機能のひとつであるサイコミュジャックもアクティブとなる。
サイコフレーム
本機を解説した資料によっては「『不死鳥狩り』作戦時には、サイコフレームは非搭載」とされているが、NT-D稼働時には後述のサイコスーツ以外に、コア・ファイターそのものが赤く輝いているのが確認できる。
サイコスーツ
搭乗者のニュータイプ能力を補うために用意された、専用のウェアラブルデバイス。パイロットスーツの上に、サイコフレームを組み込んだ大型ウェアラブルデバイスを全身に装着する。外観通りかなりの重量があり、ヨナの筋力では、ルオ商会スタッフの補助がなければ歩行すらままならない。このため、緊急時には強制排除が可能となっている。
なお当然ながら、このスーツも「サイコフレーム協定違反」となる。
装備
ナラティブガンダムはルオ商会の力を借りて、各種装備に換装して運用される。初期のA装備が最も重装備となっており、外観はA装備→B装備→C装備と移行していくにつれて、武装がシンプル化するのが特徴。
A装備
型式番号 | RX-9/A |
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ナラティブガンダムが大型兵装を装着した状態。一見するとアームドベースにナラティブが埋まっているようだが、言わば『竹馬に乗って、両手で物干し竿を持っている』状態のため、四肢の可動範囲は広く、AMBACもある程度機能する。
推力重量比そのものは低下している(素体2.6倍→A装備1.6倍)が、巡航形態をとって大型ブースター類全てを後方に向ける事で爆発的な加速力を得られる。これによって、一分間弱の短時間であればフェネクスに“直線軌道限定で追いすがる”事が可能。
以下は、装備及び装備箇所。
複合特殊兵装「サイコ・キャプチャー」
両腕に保持して装備する特殊複合兵装。ユニット自体にジェネレーターを内蔵しており、ビーム砲、あるいは大型ビームサーベルを先端から発することもできる。
最大の特徴は、後部のクローパーツを先端まで移動、展開。そこからフェネクスの感応波に干渉するキャプチャー・フィールドを発する事で、フェネクス機能停止状態に陥らせる「サイコ・キャプチャー」である。更にキャプチャー・フィールドは、フェネクスが放つ『時を巻き戻す』かのようなサイコ・フィールドを相殺、防御する事も可能と、極めて優秀なサイコミュ兵器となっている。
脚部スラスターユニット
膝から下に「履く」ようにして装備する、大型スラスター。股関節を中心に一定の可動域を有しているため、(パイロットが圧死しなければ)急制動のAMBAC肢として機能する。
五連装中型ミサイルポッド
サイコ・キャプチャーユニット最後部に三基ずつ、計六基を装備するが、同時発射可能なのは上部に位置している一基×二ヶ所のみである。
発射時は前面カバーがパージされ、撃ち尽くしたポッドはリボルバーのように回転、次のポッドが上部に移動してアクティブとなる。
大型ブースター
89式ベースジャバーのプロペラントタンク兼ブースター。腰部背面のコネクターに補助フレームを装備し、そのフレームに四基が接続される。可動域を持たないため純粋に直線加速用であり、推進剤を使いきった物はパージする。
B装備
型式番号 | RX-9/B |
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ミシェルが『本命』として用意した装備。スペースコロニー内、しかも市街戦を想定した構成となっている。
100万人単位の非戦闘員が住まうコロニー内では、戦闘行為そのものが原則禁止であり、万が一外壁に穴を空けるような事があれば、如何なる理由をもってしても「鬼畜以下」の烙印を押されるため、特に正規軍のMSは“敵より先に戦闘開始の挙動を見せる”(例:ビームライフルを相手に向ける)だけでも弾劾・処罰の対象となるほど繊細な配慮を要求される。
裏を返せば、高機動・高威力武装を有するMSにとって圧倒的不利を背負わざるを得ない地形であるため、もしフェネクスを誘き寄せられれば、“人智を超える”スペックの大部分を封殺でき、捕縛成功率が大きく高まる。
以下は、装備及び装備箇所。
有線式遠隔攻撃端末
端末二基、ケーブルリール、追加スラスターをパッケージングしたユニットを、バックパックに覆い被せるようにして装備する。カタログ値の通り、ユニット重量に対してスラスター推力は申し訳程度の増加のため、機動性そのものは低下する。
ヨナが「インコム」と呼称していた(認識していた)攻撃端末は、ケーブルを介して推進剤が供給される仕様となっており、宇宙空間は言うに及ばずコロニー地表(円周部)の疑似1G環境下でも単独飛行可能な推力と、手動でビーム出力を下げられる=高出力解放バレル式メガ粒子砲を備えた、サイズに見合うだけの高機能を誇る。この高い推力のため、軌道変更用補器……リレーインコムを必要としない。(後年において、ザンスカール帝国がロールアウトした高性能第二期MSコンティオの「ショットクロー」に近い仕様である。)
ただし、大型ゆえの慣性モーメントの不利、及びスラスター配置の限定から、攻撃端末としては運動性が高くはなく、シェザール隊との模擬戦、シナンジュ・スタインとの実戦いずれにおいても、簡単にあしらわれてしまった(そもそも宇宙世紀0090年代後半は、ファンネル自体が『時代遅れ』になりつつあったのだが)。
- 秘匿機能
シェザール隊はおろか、パイロットであるヨナにさえ秘匿されているが、NT-D起動時にはケーブルをパージした上で、バレルを分割・四つ又クロー形態に変形し、キャプチャー・フィールドを展開可能な、フェネクス捕縛用無線端末モードへと移行する。
なお、ケーブルを切り離すと推進剤供給が途切れるため、当然ながら稼働時間が非常に短くなる。
四連装小型ミサイル
下記の小型シールド側面に一基ずつのランチャーが内蔵されており、両腕を合わせて計四基のランチャーを装備する。コロニー地表に直撃しても(ミラー付近でなければ)外壁までダメージを与える事の無い、低威力実弾武装。
無論、小説版『機動戦士ガンダム』で語られている通り、「低威力」の配慮などというものは爆発に巻き込まれた、或いは建造物の崩壊に圧し潰された人間にとっては何の慰めにもならない。即ち、コロニー住民の保護が最優先となる地球連邦軍機は、確実に敵機に、しかもジェネレーターを爆発させない箇所に当てられる場合を除いて、発射すべきではない。
小型シールド
両前腕コネクターに装備する。シールド機能よりも、ミサイルポッドとしての役割の方が大きい。
連結することで大型シールドとして運用可能なギミックを有するが、ミサイル発射口が向かい合わせになってしまうため、全十六発を撃ちきってからがドッキングの前提となる。上述の通り、コロニー内では小型ミサイル一発の発射ですら細心の注意を払う必要があるため、劇中では使用できなかった。
ビームサーベル
腰部背面のコネクターにサーベルラックを接続、二基をマウントする。パイロットが、敵機のジェネレーターを爆発させないで無力化させられるだけの高度な技量を有していないならば、最も使用を控えるべき武装。防御のための鍔迫り合いもまた、サーベルを構成する超高熱のメガ粒子が飛散するため、周囲の住人の避難が完了した事を確認してからでなくては、原則避けなければならない。
C装備
型式番号 | RX-9/C |
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予め用意していたA、B装備を損壊させた上、サイド6・メーティスコロニーでの戦闘行為という「重犯罪」への関与によって、シェザール隊に身を寄せられなくなったミシェルが切った『奥の手』。
予め収集していた「RX-0 ユニコーンガンダム」の予備フル・サイコフレームに、最低限の加工を施し、ナラティブガンダムの装甲未装備箇所、及びメンテナンス用の装甲スライド部を全開にして生じた“隙間”へと、増加装甲として着込ませることで、「単機に可能な限り多量のサイコフレームを積載させる」というRX-0コンセプトを踏襲させた装備である。元々の装備プランには存在しない兵装で、「C装備」と言う名称も便宜的なものであり、ダマスカス内で装着を行っていたルオ商会側の整備員は「サイコ・パッケージ装備」と呼称している。
様々な“機能”を発揮するとは言え、あくまでも内部フレーム用部材であるサイコフレームを、外装として用いた歪な仕様ではあるが、それ故にナラティブガンダムの高い拡張性を証明した姿と言える。
以下は、装備及び装備箇所。
ビームサーベル
バックパック上部両端をスライド展開させ、生じた隙間にホルダーを装着、二基をマウント。劇中より、アイドリング・リミッター機能の搭載が確認できる。
劇中の活躍
サイド4近傍の暗礁宙域で作戦「不死鳥狩り」を行うシェザール隊の増援として、A装備でローズバッドから発艦して登場する。フェネクスに匹敵する推力で追い縋り、各種武装を駆使して追い詰めるが、ハイメガ・キャノンの威力が非常に高い事からフェネクスを無傷なまま捕獲したいヨナは使用を渋り、通信用ワイヤーで多少の呼び掛けをした程度でフェネクスには逃げられてしまう。
サイド6(後に「所在は不確か」と設定変更)の18バンチ・学園都市メーティスにて、B装備に換装して出撃したナラティブガンダムは、サイコフレーム搭載機同士を戦わせてサイコフレームの共鳴現象を起こしフェネクスを誘き出すというミシェル・ルオの思惑により、サイコフレーム搭載機であるシナンジュ・スタインと激突することになる。
救援に現れたフェネクスが飛来したのに合わせて、搭乗者のヨナには知らされていなかったNT-Dシステムが発動、ケーブルから切り離され無線となったインコムがサイコ・キャプチャーでフェネクスを捕獲した上で破壊しようとする。
意に反した暴走はヨナの怒りを買い、フェネクス破壊こそ回避できたもののジオン共和国軍が持ち込んでいたハルユニットのコントロールを乗っ取る。そのまま合体してサイコ・フィールドを発生させながら両腕のメガ粒子砲を放ちコロニーを破壊しようとするが、フェネクスが『UC』での1号機のように胸部装甲に右の掌で接触し、リタ・ベルナルの説得を聞いたヨナが正気に戻った事で暴走が収まり、分離した。
その後、作戦失敗及びマスコミ対策の偽装としてC装備に換装される。ルオ商会に装備コンテナごと回収される手はずだったが、Ⅱネオ・ジオングとの決戦で出撃。救出したフェネクスの手を取り、伝導したかのようにサイコフィールドの波動を放った(この時サイコフレームもフェネクスと同じ青に変化した)
Ⅱネオ・ジオングとの決戦で機体は破壊されたが、間一髪ヨナはコアファイターで脱出しており、フェネクスへ移譲させると役目を終えた。
外部出演
スーパーロボット大戦
ゲーム初出演。18年12月にB装備で実装。
最高リアリティのSSRではあるのだが、『バランス型』の構成のため、尖った性能の方が有利な本ゲームでは、ややパッとしない。サポート役としては優秀なため、メインアタッカーを他に任せれば、活躍の場は多い。
2018年11月30日にHGUCで発売。A装備でのキット化となる。当該キットでは、樹脂強度の限界によりサイコ・キャプチャーの展開ギミックが、アニメとは異なる仕様となっている。
さらにB装備への換装パーツが、プレミアムバンダイ限定で発売。ナラティブガンダム本体は同封されていないため注意。
物語上、重要なキーとなるC装備のHGUCは、(一般的な)劇場公開期間の終了した、2019年3月に発売となった。
余談
装備のシンプル化
「装備」の項で触れた通り、ナラティブガンダムは初期のA装備が最も重装備となっており、そこから順にシンプルな構成へと換装していく。
これは『機動戦士ガンダムNT』監督の吉沢俊一氏が、今までのガンダムシリーズでは時系列が進むにつれて主役ガンダムの装備がパワーアップしていたのと真逆になるような、新しい挑戦をしたいという事で考案し、取り入れた演出である。
プロデューサーインタビュー
劇場公開前のインタビューにおいて、『機動戦士ガンダムNT』のプロデューサーである小形尚弘氏(サンライズ第一スタジオプロデューサー)は、『フェネクスとナラティブの性能差』について、単純なサイコフレームの搭載量としてはフェネクスに大きく水を開けられているが、性能的には設計思想が全く別系統の機体であるため、一概にナラティブガンダムが不利というわけではない、と語っていた。
そして劇中ではその言葉の通り、ナラティブガンダムB装備は時機に圧倒的優位となる状況を作り上げる戦術によって、事実上フェネクスの捕縛に成功している。
その他にも、フェネクスがサイコシャードを一刀両断にするなど、まさしく「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではない」事を示すシーンが数多く見られた。
サイコフレーム発光色
C装備の発光色は、通常は「ナラティブガンダムはユニコーンガンダムの弟」という脚本家イメージにより赤色が採用されている。
また、フェネクスとの共闘において一時的に青色に変色するのは、監督による演出アイデアで決定された。
名称
脚本を担当した福井氏はインタビューにおいて、「ナラティブ」の名称は「定義するもの」「ニュータイプというものを囲い込んで捕まえるもの」という意思を込めて、ミシェルが名付けたんだ“と思います”としている。
小説版では「神話」を意味しており、フェネクスを捕らえるということは正に人が神の領域に踏み込むのと同義であるとしてミシェル・ルオがそれに対する戒めを込めてそう名付けたとされる。