概要
戸塚慶文の漫画『アンデッドアンラック』に登場する漫画家。
作中世界の人気作「君に伝われ」(全101巻)の作者。
「安野雲(あんの うん)」という名前以外は、情報の少ない人物のようだが…。
関連項目
単行本5巻以降の内容に関するネタバレにつき、閲覧注意!
後に明らかとなった人物像は、名は体を表す通り詳細不明(アンノウン)の人物だった。
それは担当編集者からのみ知れる情報だが―
- 性別・容姿は不明
- 声音も不明で、打ち合わせは担当編集者が電話で伝えるだけの一方的という異様なやり取り
- 住所も本名も不明で、関係者も実際に会った事は無い…
なんともミステリアスな漫画家で、安野先生の作品「君に伝われ」の愛読者・風子も詳細を知らない人物だった。
さらに世界を相手にする組織でさえも、その情報網をもってしても探れない存在だった…。
そして…
第38話にて、正体不明だった安野雲(あんの うん)本人が登場する展開となった!
容姿
細身の背格好で長袖ジャージにクロックスを履き大雑把(ラフ)な恰好。左胸に漢字で「安野雲」の名札が刺繡されている。
無造作に伸ばした長髪で、一部を結んだ髪はアホ毛みたいになっている。年齢不詳の若々しい人物。中性的な美形で、第39話の惹句(じゃっく:連載時の扉絵や締めのコマなどにある相手を惹きつける煽り文)や作中で素肌をみせた時の様子から男性のようだ。
人物
一人称は「オレ」で、名前の「安野雲」はP.N(ペンネーム)で本名不明。単行本を101巻も創作するだけあって、制作意欲旺盛で不審者並の変人な第一印象がある。どういった意図があるのか、急なアポイントを取ってきた来客を前にしても自己優先な言動をする。
作中世界の事情やUMAの存在どころか、主人公たちが直面している事態・対峙する相手の事など、始めから終わりの事を何でも知ってるかのような物言いをする。初登場時点では主人公の男女を援助する行動を取る。
不可思議な事を有言実行するだけの実力も備えており、
初登場して間もなく、後述の具現化能力で創った大鎌で自分の左腕を根元からぶった切る異常行動をしても平然としている。更には「腕を切断して漫画を描けなくなるのでは?」と心配されても、本人はケロッとして「片腕あれば大丈夫」と左肩から出血しながら愉快そうに語っている。
良く言えばユーモラスな人柄に思えるが、背後からだったとはいえ手練れのアンディが顔のすぐ近くまで接近しても気付けない隠密さ、通話越しだが初対面である組織(ユニオン)の女ボス・ジュイスを手玉に取る狡猾さなどつかみどころがない所もあり、そもそも人間なのかも怪しい一層の不審者感を醸し出しているが…。
能力
UN【調査中】 -不【調査中】-
なんらかの否定能力を持っていると思われるが、その詳細は不明。
具現化能力(仮)
何もない虚空に漫画ペンで描いた絵を具現化する能力。作画の速さは文字通り一瞬で、本物と遜色ない再現度で対象を創造する。具現化するモノは、首切断台や大鎌などの物体、戦闘機・組織の通信機でもある証(エンブレム)といった機械、更には男主人公・アンディの片腕(しかも彼の不死能力が付与されている)、UMAオータムの爪など非生物・生物問わず具現化できる。
言わば具現化対象を本物そのままに複製しているような能力で、一度に創造できるのは一つまでらしい。
※以下、能力に関する重大なネタバレを含みます。閲覧注意。
「オレが知らない 最高のエンドを見せてくれ‼」
UN【調査中】 -不【調査中】-
他対象 強制発動型
ざっくり説明すれば、他人の認識から「自分」を否定する能力。
常時彼の発言・行動及びそれで起こった外的変化は自身以外の生物に感知されない。いくら彼が声をかけても触れても、他人がそれを認識することはない。作中では、彼が他人に触れようとしても、まるで幽霊(ゴースト)のようにすり抜けてしまう描写がある。
ただしこの否定能力には理屈(ルール)の抜け道があり、他人に彼自身だと思われなければ干渉が可能になる事がある。
これに関しては詳しく明言されていないが、彼はペンネームである『安野雲』として活動することで風子やその他の人物に話しかけることが出来ていた。
Gライナー
安野雲が所持している古代遺物(アーティファクト)の一つ。Gペン(付けペンの一種で、漫画やイラストをアナログで描く際の代表的な道具)の形をしている。最初に触れた者は、世界で起きる現行の周回(ループ)の過去と未来を全て見ることができる。
具現化能力はGライナーを介して発現されているが、このペン自体の能力かは判明していない。
魂の口径(ソウルキャリバー)
安野雲が所持している古代遺物(アーティファクト)の一つ。魂に干渉して物質に閉じ込める効果を持つ。回想の描写から推測するに、否定能力を利用して組織(ユニオン)に潜入して得た情報から、自力で探し出して手に入れたようだ。
過去(ネタバレ注意)
「彼らがいるから...オレは生きてる‼」
「だから今度は――ボクが助けるんだ‼」
第47話は、ある家族の物語から始まる。
少年の名は九能明(くのう あきら)。母子家庭で育ち、想像が大好きな子どもだった。漫画の読み聞かせで寝つく変わった子で、自身でもキャラを作り、話を作り、絵を描き、いつしか母は幼い我が子が創る物語を聞くようになった。明(あきら)は、それで笑顔になる母を見るのが好きだった。
彼が小学生の時、下校中に道端で古代遺物(アーティファクト)Gライナーを拾い、今回のループの過去や未来や世界のこと、全てを知る。この時はただの作り話だと認識しており、(いつもの想像が爆発したと思ったのか)「すげー‼何このお話!」と目を輝かせて興奮していた。
急いで母親にこの話をしようと帰宅するが、彼はGライナーを拾うと同時に否定者(ひていしゃ:世界の理(ルール)を否定する超能力者)にも選ばれてしまい、この時から誰にも認識されなくなり、一人の少年「九能明」は行方不明になってしまう。
否定者になった直後は急いで帰宅する場面だったため、明(あきら)はうっかり通行人をすり抜けても相手は子どもにぶつかって気づいていないだけと勘違いし、そのまま自身の変化に気づかぬまま帰路に就いた。記憶が鮮明な内にと、頭に浮かんだと思っていた登場人物たちをたくさん描き起こしていく九能明。明(あきら)は母が帰ってきた事に気づき、意気揚々と描いた絵をみせようとするが、自身の体が親の体をすり抜けてしまい、更に目の前にいる我が子の呼び声・服を掴む訴えに不可視・不可触・不知な現状から、ようやく不条理な現実を認識した…。
その後、九能明はしばらく認識されぬまま我が家で過ごした。目の前にいるのに否定能力で一歩通行な生活を送る母と子。ある時、母親の「どこかで(息子が)笑顔で生きていますように」「(息子が)大好きな漫画をたくさん描けていますように」という願いを聞いた一人息子は、家を出る事を決意。努力を重ね、読み切り漫画『君に伝われ』を脱稿し、認識されぬのを承知で出版社に投稿した。
この時にペンネームは皮肉を込めて「安野雲(UNKNOWN)」にしている。
すると名義が九能明(くのう あきら)ではなく「安野雲」だったため認識された上、努力が実り一発で本誌掲載に成功する。
この思い付きで動いた事が、自身の否定能力にある理屈(ルール)の抜け道を知るきっかけとなり、久しぶりに人の絆ようなものを実感し顔が綻んだ。
この他、九能明の頭には常に『風子やアンディ達の勇姿をいつか知ってもらいたい』という願いがあった。彼はいつもGライナーから得た知見(イメージ)から風子やアンディ達の姿に助けられており、いつしか『今度は彼らを助けたい』と考えていた。そうして決死の努力と葛藤しながらの覚悟をもって、独りだけど一人ではない不撓不屈(ふとうふくつ)な日々を過ごしてきたのだった。
Twitterの安野先生
公式Twitterでは本誌連載・関連情報の他、登場人物たちが低頭身(ミニキャラ)になったおまけ漫画(ラフイラスト)などの配信(ツイート)もあり―
- 自分で左腕を切った後の姿(しかも≪ピュー≫と出血したまま平然としている)で初登場。恒例の海苔ノルマについて「もしかしたら露出を防げてたかもしれない」と、正座する主人公達を前に突っ込みをしている構図だったが…
- その翌週には、↑とは逆に自分が海苔ノルマを継続させてしまったと反省する正座姿で登場した。その後は、お詫びというか本作の宣伝告知をするサービス精神を発揮した。
余談
名前だけなら、本作『アンデッドアンラック』の第一話冒頭で登場している。
色々と不明な有名漫画家だが、安野先生ほどではないものの現実世界でも奇怪と思えるような漫画家がおられる。
例えば―
- ある男性漫画家は、連載当時の時代では先行き不安だったが、後に伝説級の話題となった作品を創作した(ジャンルは「君に伝われ」の対極的で色んな意味で濃い漫画)。当の本人は数々の逸話があり、打ち合わせへ来た男は本当に作者本人だったのか、生存しているのか不明慮といった謎すぎるエピソードがある。
- ある女性漫画家は、当初先行き不安だった時期があったけど、後に社会現象にもなった鬼退治の漫画を描き話題となった。だが作者本人は、激しさコミカルな作風と相対して人見知りする方で、担当編集以外は会ったことすらないという。社交性はゼロとまで言われるような不安定さのある人物らしい。
という、漫画家とは想像だにしない機会を手にして酔狂な作品を創れる職業なのかもしれない。
参考
似た者たち(安野雲)
渚カヲル(GAINAX原作:新世紀エヴァンゲリオンより)・・・不思議系(ミステリアス)な雰囲気の美少年。初登場時から何かを知ってるような言動、つかみどころのない性格、実は超能力者などといった所が安野雲と似通う。一見は人間のようだが、その正体は案の定な存在だった。
臥煙伊豆湖(西尾作品:物語シリーズより)・・・自称「何でも知っている」と公言する妙齢のお姉さん。その情報網は常軌を逸したレベルで、ありとあらゆる事象・情報を認知している。一応は主人公たちの味方側であるような立ち位置だが、油断は禁物(実際、主人公の少年を刀でぶった切って即死させる予測不能の強行をした事がある)。
岸辺露伴(漫画:JO☆JO_ダイヤモンドは砕けないより)・・・某奇妙な冒険譚の世界で売れっ子の男性漫画家。(アシスタントを雇わず彼一人で)漫画原稿を下書きなしに制作でき、世界の理が崩れる不可思議状況の中でもインクが乾く前に絵が描けるほどの速筆。漫画にリアリティを求めており、新しい事や物珍しい事は自ら体当たりで実行する自己中心的な変人。だが律義で義理堅い性格でもある。超能力者でもあり、漫画ペンか能力で発現した分身で「人の記憶や能力を本(辞書)にして読んだり、その本へ言葉(エピソード)を書き加え実現させる事が出来る」能力を持ち、安野雲と似た所が多い。
関連項目2
世界(アンデラ) UMA(アンデラ) 否定者 古代遺物(アンデラ)
■■■■■エンド・・・安野雲(=九能明)が見たいであろう最高のエンド
似た者たち(九能明)
■ィ■■ュ■・・・世界の真実を途方もない経験で知っている本作の男女。安野雲(=九能明)は古代遺物(アーティファクト)からの知見(イメージ)と、違う道筋でだが世界の真実を知っている似通った所がある。
メレオロン(少年漫画:HUNTER×HUNTERより)・・・キメラアントという種族で人型カメレオンの男。陽気な性格だが、身内のために復讐を誓う人情家な所がある。超能力をもっており、制約付きで『誰にも自分の存在を気付かれないまま動ける』特質系能力者。彼のノリがいい性格や能力の性質が安野雲(=九能明)と似ている。
ゴースト/ニューヨークの幻・・・1990年公開のアメリカ映画。恋愛・ファンタジーなどいくつかのジャンルを含んだ作品(ラブストーリー)。主人公の男性が幽霊(ゴースト)となって最愛の女性の前に現れるが、彼女は彼の姿・声を認識することは出来ない…。それでも幽霊(ゴースト)の彼氏は不変の愛情と不屈の精神で現状を打破しようと動く姿勢・状況が安野雲(=九能明)と似ている。作品の事は知らないまでも、主題歌「Unchained Melody(アンチェインド・メロディ)」を聴いたことのある方はいるのではないか。