オレは「正しい」と思ったからやったんだ
後悔はない…
こんな世界とはいえ オレは自分の『信じられる道』を歩いていたい!
詳しい概要を聞きたい…!
漫画『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』にて、もう一人の主人公とも言えるブローノ・ブチャラティの台詞。
この台詞が使われる場面は、主人公達の運命を大きく動かす別れ道でもある。
この言葉を使うに至ったのには、彼(ブローノ)が過酷という言葉をも軽いと思える吐き気を催す世界で生きてきたからこそ、そんな「運命」とか「宿命」のような人生でも失わず希望を持ち続ける彼の精神(ココロ)から出た格言だったのだろう。
これは自他の利害よりも、己が正しい信じる道のために自己犠牲も厭(いと)わず、そのためにどんな苦難も乗り越えてやる覚悟と、その茨の道で霞み消えてしまうような危うさも承知で立ち向かおうとする意志の顕れである。
言わば―
- あくまでも『読んでもらうため』それ以外はどうでもいいと、リアリティを追求する漫画家
- 『納得』したいだけ。『納得』は全てに優先する若者
といった行動に通ずる歩み方なのだろう。
また『信じられる道』という言葉だけをみると「自分の欲望に準ずる」といった意味合いと思われるだろうが、
人によりその解釈は違えど、本台詞【こんな世界とはいえオレは自分の『信じられる道』を歩いていたい!】に至るまでの事柄を考えると―
- どんな障害があろうと己の心に従う清らかさ
- 特にこれを実行する己とは、誰かに対して尽くす慈(やさ)しさ
- どうなろうと自分の心に噓をつけない正しさ
- どうなるか分からない逆境も受け入れる勇気
- 逆境の中で、どうあるべきか迷う事があろうと、悩んだ末に決めたその判断を尊重する意思
- どんな結果になろうと『信じられる道≒勝利への道』へ向かおうとする意志
といった、誰でも「何か」に進む道中で抱くであろう、ひとつの別れ道であり覚悟の顕れなのかもしれない。
確かなことは、目の前の現実に立ち向かい、乗り越えてやろうとする精神が、そこにはある。
また似たような行動に「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」が次章に登場し、こちらは善行と思っての悪行であり、それはドス黒く【己が指し示す道】を受け入れさせる、いともたやすく行われるえげつない行為。
本思想とは、自分の『信じられる道』を「相手に選択する余地」の有無があるかなどの違いがあり、真逆のような精神が顕れている。
こんな「世界」について
ブローノ・ブチャラティが言う「こんな世界」について振り返ると、それは他の仲間たちも各々で体験した、ジッパーで閉ざしてもいとも容易く開いて見え隠れするような表裏の社会に対峙する「世界」であり―
彼(ブローノ)はネアポリス郊外の村で、漁師の息子として生を受けた。父親から受け継いだ「やさしさ」の精神を持つ彼(ブローノ)は、幼少期から父親の仕事を手伝い、母親との会話を楽しみにする日々を過ごした。だが7歳の頃に両親が離婚する際、どちらの親と暮らすか決断する事になる。母親は要領がいい、きっと誰か新しい男を捕まえられるだろうし、そうで無くとも一人で生きていくことはできるだろう、しかし、父親は不器用な男だった、きっと一人になったら落ちぶれて惨めな死を迎えてしまう。彼(ブローノ)は独りになった父親の将来を心配し、母親の薦めをやわらかく断った。母親は息子の優しさを誇ると同時に、この『人の悲しみを知りすぎるやさしさ』が将来不幸を招いてしまうのではと心配した。
少年時代のブローノは漁師である父親の仕事を手伝い、互いを支えあう質素な生活だが、他人からみれば幸福とはこういうことのような日々を過ごした。だが彼(ブローノ)が12歳になったある日、父親が麻薬の売買を目撃してしまい凶弾に倒れてしまう。
幸い父親は一命を取り留めるも、少年時代の彼(ブローノ)は麻薬密売の口封じで父親を消しに来る者がいると読み、闇夜に紛れ寝静まった中で襲ってきた刺客を待ち伏せで返り討ちにし、12歳にして人殺しを決意する意思を実行した。
(アニメ版より)この時のブローノは更なる「報復」がある事を悟り、自身と父親の身を守るため、町を真に支配していたギャング組織「パッショーネ」へ忠誠と奉仕を誓い、入団を決心をして正義と信じる組織と関わりがあるリストランテの戸を開いた。こうして「麻薬」からも町の人々を守るギャングとして行動するようになったのである。
(アニメ版より)年月が経ち、銃撃の後遺症で闘病の末に天へ召した父親の厄災の原因である憎き「麻薬」を、入団したギャングが仕切ってる事を知る。しかも『あろうことか、このネアポリス(まち)で・・・・禁じ手じゃあなかったのか!?』と、自分の故郷(ネアポリス)で過去の厄災の元凶が蔓延していた現実に、怒りの形相で憎き「麻薬」の入った袋を握り潰して激昂するブローノ。
たが彼(ブローノ)は、すでに正義と信じていた組織の悪辣さ凶悪さを身をもって知ってしまった時点の事で、後戻りは出来ない立場を承知だったからこそ、善良と思っていた相手に心から裏切られつつも、憎き「麻薬」を流通させる最悪の組織の為に働く矛盾を受け入れた。
彼(ブローノ)は澄み渡る青空のような清い志を胸にしながら、既にそう選ぶしかないヒドイ現実に屈し、それは「生きながら死んでいく道」を歩く日々を過ごすのであった。
(アニメ版より)そんな吉凶の境を歩き続けるような危うい道で、それは「生まれて来た事自体が悲しい」とも思えるような人生なのかもしれない。自分の手が届く距離だけでも『信じられる道』を歩もうとしてか、組織構成にならいチームを作ろうとしていた時期に、彼が行きつけのリストランテで正々堂々と食い逃げをしようとする獰猛で堕ちぶれてしまった頭がキレる青年や、
汚職政府機関に染まってしまい一生消えることの無い罪の十字架を背負う結果に堕ちぶれた元お巡りさんと巡り会う(因みに、その場所は『振り返ってはいけない小道』のような暗い路地裏の小道から出た場所での事だった)。
彼らに、黄金に光り輝くであろう原石を埋もれさせてはいけない、そんな「何か」を感じたのか、相手を一人の人間と見定めて手を差し伸べ仲間に引き入れた。
(アニメ版より)ある日には、彼(ブローノ)が馴染みのリストランテで食事中、仲間の青年が残飯を漁り飢えを凌いでいた薄汚い小僧を連れてきたのをみて、それが自然で人として当たり前かのように、空腹だった彼へ自分に運ばれて来たスパゲティを食べさせた。その後、彼(ブローノ)は目の病を患っていた少年を然るべき医療機関で手厚い看護を受けさせ、寛解後に相手を一人の人間(ガキ)として社会の「正しさ」を説き、対する小僧(ガキ)の『(自分の子どもに無関心な親御がいる)家には帰りたくない・・・俺をあんたのところで仕事をさせてほしい』と、浅はか(マンモーニ)な申し出に「甘ったれを良しとしない世界の厳しさ」を真剣(マジ)に叱りつけた。だが少年は、この時に初めて真の人情と漢気をギャングの男から学び、ブローノと別れた後は一人の男として決意を宿して、彼(ブローノ)に秘密で同じギャング組織へ入団したのだった。また数奇な事に少年は自分(ブローノ)のチームへと入る事になった。
(アニメ版より)またある日に彼(ブローノ)は、正当防衛だが銃撃戦の真っ只中で拳銃を持ったチンピラ3人を、奪った拳銃によって返り討ちで殺害し、しかも無傷で生還するも逮捕される妙な男を知る。釈放を出引きし(ブルスケッタもイケる)オススメのリストランテで食事しながら逮捕された不幸な男と対話する中で、この男に「何か」引かれるモノがあったのか自分のチームへ加入の誘いを持ち掛けようとしていた。その最中に他の仲間たちと4……いや自分(ブローノ)を入れて5人で会食しようと提案し、そして話を続けようとした矢先、奇しくもこれが運命でツイてると感じたような笑顔と共に男(ラッキーボーイ)はあっさり仲間入りを承諾した。
信頼できる仲間が集った時期に、いつものリストランテで花屋を営む父親からの信じられない依頼で、なんとも「妙な形をした丸い石」が憑いてくる現象(まるで奴隷にはめられた足枷に鎖で繋がれた丸い重石が何処までも屈伏させるまでついてくるような存在)に遭ってしまうが、仲間の協力もあって命からがら生き延びた。
この後にあった、もう一つの依頼を遂行中に、汗がウソをついている『味』のする少年を質問から拷問にかけたら、それは己の人生を賭けたくなる凄みと気高き覚悟、黄金のような夢との運命的な出会いであり、
その少年を仲間たちがいるリストランテに案内し、吉の方向へ向かってるかのような矢先に、この町で50年暮らしている善良なお婆さんから相談を受け、改めて厳しい凶と向き合うことになった。
また時を同じくして、思いがけない一報から新たな一歩を進もうと(途中には萎むような固くなるような障害を突破しつつ)隠し玉を披露すると同時に、新たに出来た夢への道のりに出会った。
この夢のような道のりを守る護衛任務は、他も魅了し付け狙う輩(チーム)との衝突があって、何よりも『困難』で「幸運」と「覚悟」なくしては乗り越えれなかった者達と死闘をくぐり抜けた。
漸く待望の目的地へ到達し、先の不安を和らげようと護衛してきたモノを柔らかく手で包み込むが、数瞬の出来事で、希望と思われた道のりはまたしても絶望への道のりだった事を知る。
信じていた組織から、今度は(文字通り)大切な手を切られる、心の底から裏切りを受け―
吐き気をもよおす『邪悪』とはッ!
なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ……!!
自分の利益だけのために利用する事だ…
てめーだけの都合でッ!
ゆるさねえッ! あんたは今 再び オレの心を『裏切った』ッ!
悲しくもかつて彼の母親が心の中で懸念した事は実現してしまい、彼は自らに任務「護衛の続行と障害の暗殺」を課すも、想像以上の『邪悪』に即死級のパンチを受け、命からがら護衛対象の奪還は遂行してその場を脱出した。
だが彼は既に瀕死で生死の境を彷徨っていた。駆けつけた新入りの奇妙な奇跡体験ほんのちょっぴり生き還ることを天に許してもらった彼は、自分の『信じられる道』を歩むことを決意した。
無事を祈ってはやれない「苦難の道」が、この後にも続く「世界」ながらも、ブローノ・ブチャラティは芯の所で変わらず宿す「やさしさ」の意志で、目の前の現実を許せず自分が正しいと思った『信じられる道』を歩み続ける清い覚悟を仲間たちに示すのだった。
実力からいって、次の項目はコレかな
この台詞を言い放った時点では、弱点さえ分からず強敵から逃げるだけだが(先刻のように負けて今度こそ死んでしまう可能性が高いながら)、自らに課した任務「護衛の続行と障害の暗殺」を必ず果たす覚悟【組織への裏切り】を対する5人の仲間たちに宣言するのだった。
だが、この時の覚悟は自他も認める「彼が勝手にやった事」であり、また一人だけでは到底かなわない強大で凶悪な相手に「助け」は必要な状況でもあり、まだ彼らのリーダーであるブローノは―
- こんな自分だが【組織への裏切り】に着いていく道
- この時点なら【組織への裏切り】を歩まない道
の別れ道を仲間たちに指し示すのだった…。
お前らどうかしているぞ!完全に注意するんだぞ!!
上記の別れ道を前に、古参の仲間で一歩だけ一番前にいた青年が言うように、(もしかしたら現実でも)ほとんどの人間なら出会ったばかりでよく知らない相手のために、窮地へ自らの命を運ぶ道に進んではならないのだろう。
更に今回は、死ぬ事よりも恐ろしい事があるかもしれない道すじで、無謀に選んではならない危険な道のりでもあった。
これは人としての「正しさ」や「理想」とも思える道でも、もし選べば命の危険を伴う領域への道程なのかもしれない。そんな道を前にして、一番長く苦楽を共にした仲でも一歩だけ踏んでいた身を翻して背を向けてしまう青年がいるように、現実世界でもこの彼みたいな判断が起こりえる悲しい現実なのだろう…。
この道はドス黒い神父が言うような、安っぽい感情で動けば自らの破滅は目に見えるような状況であり、
その道へ行けるのは、自らを男爵と名乗る男が言うような、人間の「怖さ」を知り我が物とする「勇気」のすばらしさがなければ進めない道のりなのかもしれない...。
この時点では、まだチームリーダーであるブローノ・ブチャラティは、たとえ孤立し一人であろうと、たとえ負けて死んでしまうような結果になるような道でも、相手の為に尽くす事を諦めず進む覚悟だった。
そこに利害は関係なく、己の意志のみで動ける尊さから、もしかしたら本人に自覚はないかもしれない芯から相手の幸福を願う行動なのだろう。
これは自他共に認める勝手な行いであり、かつどのような道に進もうと後悔はしないという、雲が登り行く朝日に照らされ短い時にだけみえる黄金の空みたいな清らかさと、そんな時は瞬く間に過ぎ去ってしまうような儚さが伴う夢を合わせ持った精神の現れなのかもしれない。
更にこの時は、先ほども述べた一人だけでは到底かなわない強大で凶悪な相手に「助け」は必要な状況であっても―
ただし おれは おまえたちについて来いと「命令」はしない………
いっしょに来てくれと「願う」こともしない………
オレがかってにやった事だからな………
だからオレに義理なんぞを感じる必要もない
だが ひとつだけ偉そうな事を言わせてもらう
オレは「正しい」と思ったからやったんだ
後悔はない…
こんな世界とはいえ オレは自分の『信じられる道』を歩いていたい!
弱点さえ見つければ… 今は逃げるだけだが
ボスは必ず倒す
『弱点』は必ず見つける!
大切なのは結果ではなく、そこに至るまでの道すじで、そういことならそういことでいいと、心で感じて行動するひとつの覚悟の現れなのだろう
余談も行く!行くんだよ~!!
チョッピリした注意事項だが、本台詞を原作通りに表記したければ、カッコつけで【オレは「正しい」と思った】や【自分の『信じられる道』を】の表示をよ~く見てよぉ、文字入力すると良い(ベネ)。
この台詞が言われた後、悲しくも他の仲間たちと違い道を閉ざしてしまった青年は、作者・荒木飛呂彦が始め彼を【主人公達の裏切り者】として構想を練っていた人物だった。だが「もしこのまま進めば、もっと暗い展開になる」と思い直し、やむを得ず離脱という方針を採ったため、主人公達と道を分かつ事になったのである。
これもあってかアニメ版では「組織の上を目指しましょう」といった【組織に正直者】として行動し、これに反する場面で「正しいバカにはなれない」と、本心では付いていきたくとも一歩を踏み出せないような、原作よりも人間味を感じさせる彼のアニオリ展開が多い。
外伝小説では、この一歩を踏すことができない彼の活躍と共に、この別れ道に立たされた時の心情も綴られている。
関連の項目に敬意を評します
作中
護衛チーム トリッシュ・ウナ レオーネ・アバッキオ グイード・ミスタ ジョルノ・ジョバァーナ ブローノ・ブチャラティ ナランチャ・ギルガ
自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪・・・本台詞と真逆のような黒い思想。他人からみれば悪行だが、当人は善行と本気で思っている状態。
人間讃歌 黄金の精神 吐き気を催す邪悪 真実に向かおうとする意志
本作『黄金の風』の外伝小説。これは一歩を踏み出すことができなかった仲間が遠回りの道のりで覚悟を見い出し、己の『信じられる道』へ半歩を踏み出す物語。
- トリッシュ、花を手向ける
上述の外伝小説で新書版以降の出版で書きおろしされた短編。これは彼が最後に完遂した任務の後について、チョッピリだけ寄り道する物語。