概要
『ジョジョの奇妙な冒険』第5部「黄金の風」に登場するギャング組織「パッショーネ」の暗殺専門部隊。リーダーのリゾット・ネエロ以下、総員は初登場時点での死者を含め9名で、登場時点では7名。
劇中で出た組織図では『チーム(暗殺)』として記されており、他のチーム同様に上司として幹部の存在が記されているが、作中では登場しておらず、詳細不明。
原作ではブチャラティから「暗殺者(ヒットマン)チーム」と呼ばれたこともあり、TVアニメ版ではこちらの呼称が用いられている。ファンからは「暗チ」と略されることも。
海外表記では英語での「Hitman team」の他に、イタリア語で「La Squadra Esecuzioni」、通称「La Squadra」とも。
彼らは本編の2年前、ボスが自分たちに重要な縄張りを彼等に与えることは絶対にせず、暗殺という大きな危険と犠牲の伴う仕事の割に収入といえばボスからの報酬だけであったことに、「自分たちはもっと実力があるのに…… もっと収入をもらってもいいはずだ」と、麻薬の密売ルートを支配し多大な利益を独占するボスに反感を持っていた。
そんなある日、メンバーのジェラートが「罰」と書かれた紙を貼られた窒息死体で見つかる。
彼が密かにボスの正体に探ったことがボスにバレて「罰」として殺されたと察した他のメンバーは怒りを燃やし始めたが、行方不明になっていたメンバーの一人にしてジェラートの親友のソルベが後日、輪切りのソルベとして送りつけられたことで、恐怖を植え付けられた残りの7人メンバー達は一旦反抗を諦める。
しかし、後にボスに実の娘が存在するという情報を掴むと、その娘から辿ればボスの正体を暴けるのではないかと考えて再び組織へ反旗を翻すことを決意。そのためにボスの娘・トリッシュを拉致しようとし、ブチャラティ達(=ブチャラティチーム)を追跡して死闘を繰り広げた。
『ボスを倒す』という狙いはブチャラティ達と同じだが、目標の中に「麻薬ルートの独占」も含まれており、一般人すら巻き込む人殺しを平然と行なっている(しかしブチャラティチームも一般人を殺してないだけで、一般人をボコボコにしたり、銃突き付けたり、未遂だが街中に放火しようとしたり、目的の為に平気で車を破壊と大概)。同じギャングでもジョルノやブチャラティが目指す改革ではなく、あくまで莫大な利益を得ることだけが目的である。実際ナランチャからギャングでもなんでもないトリッシュを狙う行為を指摘された際は「くだらない『次元』の話」「何百億だぜ…何人死んだってちっとも変じゃあねえ金額」だと切り捨てている。
しかし、根底にあるのは殺された仲間の復讐である点や、暗殺を本業としているだけあって目的の為なら自らの身の犠牲にすら厭わない、メンバー各員の「覚悟」の強さは尋常ではなく、行く先々でブチャラティチームを苦しめた実力の高さや名言・名シーンの多さ等から人気が高く、ファンも多い。
最終的にはホルマジオ、イルーゾォ、プロシュート、ペッシ、メローネ、ギアッチョの6名はブチャラティチームとの死闘の末に戦死。唯一ブチャラティチームと交戦せず生き残っていたリゾットは、サルディニア島でボスに近しい人物であるドッピオと戦い瀕死まで追い詰めるも、ドッピオの策により全身にエアロスミスの機銃を受けて返り討ちとなり、このリゾットの死を以て暗殺チームは事実上全滅した。
メンバー
どうやら全員が「暗殺の訓練」を受けているらしい。
鉄分と磁力のスタンド『メタリカ』。暗殺チームのリーダー。
ものを小さくするスタンド『リトル・フィート』。猫好きだが猫からは好かれない。「しょうがねえなぁ~」
鏡の世界のスタンド『マン・イン・ザ・ミラー』。鏡使い。「許可しないィィィーーーーッ!!」
無差別に老化させるスタンド『ザ・グレイトフル・デッド』。兄貴の中の兄貴。「それよりは軽く済むッ!」
釣り竿型のスタンド『ビーチ・ボーイ』。マンモーニ。「『直線』だッ!」
成長、学習させるスタンド『ベイビィ・フェイス』。変態。「ディ・モールト」
極低温を操るスタンド『ホワイト・アルバム』。すぐキレる。「葉掘りってどういう事だッ!」
非常に仲の良いコンビで、チーム内で「デキてるんじゃあないか?」とまで言われていた。スタンドを所有しているかは不明。秘密裏にボスの正体を探ろうとした為、ボスの逆鱗に触れ始末された。
彼らの凄惨な死に様は他のメンバーに「ボスへの反逆が何を意味するのか」を知らしめる事態となった。
TVアニメ版における描写
原作ではシルエットの集合図で描写されたくらいで、チーム全員が一堂に会するシーンは一度もない。プロシュートとペッシが行動を共にしていたのを除けば、メローネとギアッチョが電話で会話した程度である。ホルマジオが『チームが受けた屈辱』について回想する場面で数名の姿が描かれるものの、この段階では全員シルエットのままだった。
TVアニメ版では、その回想シーンにおける描写が大幅に追加され、ホルマジオが暗殺を成功させてアジトに戻った際、リゾット以外全員が揃って会話する場面もあり、ファンを狂喜させた。
他にも、
- ペッシを「連れがミルクを飲んでいたら格好がつかない、そこまで考えろ」と叱るプロシュート(ただその後、ペッシはプロシュートの目の前でミルクを飲んでいる描写があり、仕事の上での警告に過ぎないと思われる)。
- ホルマジオの暗殺の仕事にメローネ、プロシュート、ペッシが同行している(ペッシはプロシュートが同行させた模様)。
- ホルマジオがペッシをからかってみせる。
- 女性客の脚を眺めて舌なめずりするメローネの変態性にホルマジオ、プロシュート、ペッシが引いている。
- ホルマジオの暗殺の凄惨な結果にペッシが腰を抜かす。
- 「リトル・フィートは、くだらないスタンド能力」と笑うイルーゾォと、ホルマジオが軽く煽り合う(原作でもホルマジオのスタンドが皆からくだらないと言われていた)。
- 尚、イルーゾォはソルベとジェラートの不在を聞くと「(ソルベとジェラートは)できてんだろ?」と二人の仲を揶揄しており、それを聞いたホルマジオは自身のスタンドの件とは打って変わって「てめえの方がくだらない」と即座に反論している(原作ではソルベとジェラートの仲は「できてるんじゃないか」と疑惑止まり)。なお英語吹替版のイルーゾォは「2人で甘い甘い愛を交わし合ってんじゃねえか?」とさらにきつい茶化し方をしている。
- メローネから今回の暗殺の報酬額を聞き、あまりの額の低さに「安過ぎだ」とキレるギアッチョ。
- ソルベは金にがめつく、分け前の話には必ず参加するので、姿が見えないのを不審がられる。
- ソルベとジェラートの行方を捜すメローネ、プロシュート、イルーゾォが、パソコン通信で連絡を取り合っている。
- ギアッチョが「自分達の実力は組織No.1なのに納得いかない」とキレる。
- ジェラートの死体の第一発見者がホルマジオになっている。またジェラートの死体があった部屋は血まみれになっており、ソルベの輪切りはここで作られた事実が暗示されている。
- ソルベとジェラートはお揃いのペディキュアをしており、それがきっかけでペッシは『謎の芸術作品』が、輪切りにされたソルベの死体だと真っ先に気付いた。そのあまりの残忍さに戦慄する暗殺者チーム。
- 葬儀の後、「2人の事はこれっきり忘れろ」とメンバーに命じながらも、最後まで教会に残って何かを思うリゾット。
等と、個人や関係性がより深く描写された。
尚、この回想の冒頭で「2年前 / ネアポリス」と表示されており、これによってペッシは最低2年は暗殺者チームに在籍していることになり、、またソルベとジェラートが処刑された一件が二年前のできごとであることが原作で明かされるより早いタイミングで視聴者に情報開示された。
これは(これまたアニオリで)ソルベを輪切りにしていた人物と同じ髪型をしているある人物が組織に入ってきた時期と一致する。
TVアニメ版の報酬に関する考察
上記のホルマジオによる暗殺は、議会に環境問題に関する議案を提起しようとしていた、恐らく議員である男をターゲットにしたものであった(ナポリはゴミ問題が深刻化しており、更に現実でも廃棄物の処分をマフィアが牛耳っている。この男はそれを止めようとして目をつけられたようだ)。そこでギアッチョが今回の仕事の報酬をメローネに尋ね、2000万リラと聞かされると「やっすいな、オイ!」とキレるシーンがある。
※リラはイタリアの通貨単位で、舞台となっている2001年まで使われていたが、翌2002年にユーロへ移行した。ちなみに原作の発表年は1995年から1999年で、数年未来の話を書いていたことになる。もし第五部の舞台設定が2002年以降であったら、アニメでの通貨単位はユーロに変更されていたかもしれない。
イタリア・リラの価値は米ドルや英ポンド、ドイツマルク等に比べてかなり安く、連載当時の日本円とリラの為替レートは1リラ=約0.06~0.07円程度で推移していた(参考までに、2002年時点で決められたユーロとリラの為替レートは1ユーロ=1,936.27リラ、同年のユーロと日本円の為替レートは1ユーロ=115円~125円の間で推移していた)。
原作で「ポルポの遺産が6億円」と表記されていた部分がアニメでは「100億リラ」に変更された事例からして、1リラ=0.06円と考えて良いだろう。そうするとこの2000万リラを日本円に換算すれば、約120万円になる。
そしてそれを山分けした場合、仮にソルベ・ジェラートも含めた9人で均等に分けると13万円ちょっと。リーダーのリゾットと実行犯のホルマジオが多めに取るとしたら、他のメンバーの取り分は10万円前後にしかならない。殺人まで犯してこんなパート社員の給料並の報酬ではギアッチョがキレるのも当然、としか思えないレベルで安過ぎる。他のメンバーも事前の情報収集や尾行などで働いているであろうから、報酬に不満を抱くのも当然である。
また原作中で「重要な縄張りは任せてもらえなかった」との記述がある事実から、ボスから渡される報酬以外の収入源も皆無か、あったとしても多くは望めなかったと思われる。
尚、イタリアの平均年収は200万円前後であり、貰っているとも言えなくはないが、仮に15万円が月収相当だと年収180万円にしかならない。暗殺の職務上メンバーの顔が割れるのは組織にとっても不都合なはずであり、隠れ家や食料など最低限のライフラインは組織が面倒を看ていると思われるが、闇組織の、それも命を直接やりとりするチームの金額としては、まったくもって割に合わないだろう(荒事なり抗争なりの報酬の相場なのだろうが、それこそ組織にとって暗殺者チームは、簡単に補充の効く兵隊かそれに毛が生えた程度にしか考えていない事実になる)
先述の、幹部だったポルポが死亡した際に、その遺産6億円=100億リラ相当の隠し財産を上納したブチャラティが、新たに幹部に昇格した事例から換算すれば、2000万リラとは、空いた幹部の椅子に座る為に必要な金額の500分の1でしかない事実がわかる。もっともペリーコロは「その金こそがその者にしかるべき頭脳と信頼がある証となる」とし、ボス自身も幹部の試練と呼ぶ等、幹部に必要な資質を持っているかの判断基準に用いられている為、暗殺者チームに限らず生半可な手段ではその金額には届かないであろう事実がわかる(実際ブチャラティは信頼があったからこそ、その金をポルポに任せられていた)。
ちなみにギアッチョは「ポルポは賭博を仕切ってウハウハ、麻薬を扱う連中も大儲け」ともこぼしており、その同列扱いからすればポルポの隠し財産が6億円なのはやや少ない感じもしなくはないが、いずれにせよ暗殺者チームからすれば羨望の的であり、不満と怒りの種である。
他のチームに比べて収入源に恵まれていない暗殺者チームにとっては、リゾットが幹部へ昇進し、自分達も新幹部リゾットの側近として出世する道すら実質的に断ち切られていると感じたとしても不思議はない。組織内での立身出世の希望も無いままに、はした金程度の報酬で危険で不愉快な仕事をやらされ続ける自らの境遇に不満を募らせていったとしてもおかしくない。
TVアニメ版での描写や小説版での暗殺事例を見るに、暗殺者チームの仕事とは政府要人の殺害や拘置所内部の囚人抹殺等、「単なるギャングの抗争の範疇に収まらない、公的権力を相手取った」”ヤバイ”仕事である。
現実的に考えると、そのような暗殺自体が買収や説得の類が不可能な場合に限る、交渉手段としては殆ど最後の手段であり、恐らくは賄賂で懐柔している警察にわざわざ捜査の口実を与える等、利益は少なくリスクだけはべらぼうに高い。組織が力をつけ、政界や警察にコネが効くようになれば必然的に暗殺の機会が減っていき、その場合は暗殺者チームは「ただ単に組織にとって不利な秘密を知る生き証人」になってしまう(そのような状況を、ポルポの刑務所での暮らしぶりが端的に示していると思われる。)
報酬額を上げること自体は可能だろう、しかし組織の拡大に比例して増える他勢力との抗争や荒事を担当している別の構成員達から不満が出かねない。ならば暗殺者チームに更に危険な仕事を大量に任せられるか?……悪循環そのものである。
無論、涙目のルカのような一般構成員と異なり、全員がスタンド能力者であるのは暗殺者チームの大きな強みではある。しかし、スタンド=不可視かつ超常的な力を持つスタンド使いの構成員が暗殺者チーム以外にも多数存在し、更に組織はそのスタンド使いを矢によって増やせる。
つまり、組織にとっては暗殺者チームを特別厚遇する必要はないのもわかる。仮に暗殺者チームが全滅したとしても、暗殺に適した能力を持つスタンド使いを補充すれば良いだけなのである。
そもそも強力なスタンド使いであるボスからすれば、スタンド使いでもない一般人を殺すのは造作もなく、「スタンド使いであればこのくらいできて当然」とボスが考えていたとしても不思議ではない。スタンドの能力自体、スタンド使い以外には認識できない代物であり、傍から見たらまず不可能犯罪としか思えないだろう(実際アニメでホルマジオが行った暗殺にしたって「被害者の腹が急に膨れたと思ったら中から車が出てきた」なんて証言したら、まず証言者の精神が疑われるに違いない。スマートフォンで撮影された画像でもあれば話は変わるであろうが、劇中の舞台である2001年ではスマートフォンはまだ存在しない。)。
このようにスタンド使いにとっては、一般人よりも暗殺へのハードルがかなり低く見られても仕方がない面があるのである。
ソルベとジェラートを粛清した後もチーム全体への監視なり連帯責任での処罰が行われなかった事が「黙って従えばよし、逆らった所で始末も後釜の用意も大した手間ではない(だからスタンド使いと言っても特別な好待遇は不要)」という組織(=ボス)の考えが見て取れる。
だからこそ、自身に直接繋がる「情報」たりうるトリッシュの存在を暗殺者チーム(特にDNA解析能力を応用できる可能性のあるベイビィ・フェイスを持つメローネ)に嗅ぎつかれたのは、ボスにとっては非常に大きな痛手だった。
もっともボスがドナテラ・ウナと交際していたのはパッショーネ組織前、母親への凶行が露見し村を出る直前の事柄であり、娘の存在自体を知らなかった為に仕方がなかったともいえる。
恥知らずのパープルヘイズ
ジョジョノベライズ企画「VS JOJO」により発行された小説『恥知らずのパープルヘイズ』。
本編の後日談のため、暗殺チームは名前や設定のみ登場する。
あくまで企画小説であるため公式設定ではないが、本作では以下の設定が書き加えられている。
- 本作登場のシーラEの仇敵がイルーゾォ。
- アバッキオの同僚警官を射殺したチンピラを、ギアッチョが任務で始末した事が示唆されている。
- 実は本編の背景で情報分析チームのカンノーロ・ムーロロがボスと暗殺チームの対立を煽るために暗躍していた。チームの冷遇に対して不満を抱くソルベとジェラートにボスの正体を探ることを唆し、その一方でボスには2人の造反を報告し、結果2人はボスに処刑された。また、暗殺チームがブチャラティチームの追跡に利用した焼却写真を復元したのも彼である。つまり小説の設定においては暗殺チームに降りかかった悲劇は文字通りだいたいこいつのせい。特にソルベとジェラートはボスと暗殺チームの対立を決定づけるための生贄にされたも同然であり、真相が暗殺チームに知られていたらボス以上に敵視されていたであろうことは間違いなく、実際麻薬チームのリーダーであるヴラディミール・コカキはそのことについてムーロロを糾弾するとともに強い殺意を向けている。
- パッショーネが流していた麻薬は全て、麻薬チームのマッシモ・ヴォルペがスタンド能力で製造していたものであり、麻薬の密輸ルート自体が初めから存在していなかったことになり、本編における暗殺チームの行動は全て無駄でしかなかったことにされてしまうという、極めて悲惨な扱いとなっている。
だが、それでも仲間を殺された以上いずれはボスに復讐する事になったと考えると、「運命の悲しさ」を感じずにはいられない。
ゲーム作品
PS2版「黄金の旋風」でも暗殺チームは登場するがストーリーとシステムの都合上リゾットは登場時点で既に死亡済み、メローネおよびベイビィ・フェイスに至っては出番がキング・クリムゾンされ影も形もない。
「オールスターバトル」や「アイズオブヘブン」と言ったお祭りゲーなどには誰1人プレイヤーキャラとしては参戦していなかったが、前者のリメイク版「オールスターバトルR」ではついにリゾット、ギアッチョ、プロシュート&ペッシの4名が参戦。(アニメ版放送後に発売されたのでCVはアニメ版準拠)。ファンを歓喜させた。
アーケードゲーム「ラストサバイバー」には、現時点ではリゾットのみ参戦している。
余談
暗殺チームの能力が暗殺に向いているかどうか議論されることがあるが、暗殺者の項目でも説明されているが暗殺とは端的に言えば要人殺害のことである。
そのため他人を巻き込もうが手段が丸分かりだろうが派手にやろうが基本的には暗殺という認識で、アニメにおけるホルマジオの暗殺シーンを見ても、暗殺を遂行する上での隠密性や被害規模の縮小についてはさほど重要視していなかったことが窺える(プロシュートが「ついでにツレの女も死んじまったがな」と指摘しているため、あまり好ましい形ではないのだろうが)。
というより、基本的にスタンド使い以外には見えないスタンドの多くには暗殺の適性があると言っていい。