曖昧さ回避
- 漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する特殊能力。「スタンド能力」とも。本稿で解説する。
- 競技場・野球場などの階段式の観覧席。
- 屋台式の売店。
- カウンターで飲食させる店。また、カウンターに沿って並べた席。
- 物をのせたり、立てたりする台。
- 電気スタンド。
- ガソリンスタンド。
概要
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部以降に登場する能力で、漢字では「幽波紋」と表記される(「幽波絞」は誤記)。
「超能力」の概念に像を与え、目に見える形で表現したものである。超能力を具現化・擬人化した存在。立ち現れる姿は背後霊を思わせる。その外見は個々によって様々だが、召喚獣や怪人とでも呼ぶべき異形のものが多い。
一般的にいう「超能力で遠くの物を壊す」描写が、「スタンドの像が遠くの物をぶん殴る」という描写になるわけである。
名前の由来は、第3部では『傍に立つ』(Stand by me)からで、一巡後の世界(第7部以降)では『(困難に)立ち向かう』(Stand up to)から。
漫画分野において、いわゆる「異能力バトル」の先駆けと言えるパワーシステムである。
スタンドの定義
スタンドの基本的な定義は、以下の通りである。
- スタンドの姿はスタンド使いでなければ見ることはできない。
- 物質と同化するタイプのスタンドでない限り、スタンド自体に干渉できるのはスタンドのみ。
- スタンドにはその持ち主である「本体」がいる。
- 殆どは人間だが、人間以外の生物、さらには植物や無機物が本体となる場合もある。
- スタンドは1人につき1体(1種類)である。外見上複数体存在する場合もある。
- スタンドと本体のダメージは連動する。物質と同化するタイプや自動操縦型の場合はこの限りではないが、スタンドへの攻撃によって本体が負傷・絶命させられる場合が多い。
- 本体が死ぬ・気絶するなどで無力化されればスタンドも消滅する事が多い。
- スタンドは1体につき1つ特殊能力を持つ。能力は本体の精神的才能に基づき、精神が成長すればスタンドも成長・変化する場合がある。
- 自動操縦型を除き、スタンドのパワーと射程距離は基本的に反比例する。力の強いスタンドは本体から遠いほどパワーが落ちる他、離れることができる距離にも限界が近い
上記はあくまでも原則であり例外も存在する。それらについては後述する。
公式による分類
・『JOJO A-GOGO!』
外観による分類
- 人型、非・人型 × 生命自然事物型、人工機械型
- その他(ヴィジョンが無いもの)
能力による分類
- 射程距離による分類 近距離 / 遠距離 / (遠隔自動操縦)
- 能力の属性 戦闘タイプ / (汎用タイプ) / 非戦闘タイプ
分類外のスタンド 姿や名称がわからないもの / メディアミックスに登場したもの
・『JOJOVELLER』
- ヴィジョン 生物タイプ / 非生物タイプ / その他
- 能力 近接タイプ / 遠隔タイプ / 現象タイプ
本体との関係
定義2の通り、例外を除いてスタンドには本体が存在する。
スタンドの制御には精神の強さとある程度の攻撃性が要求され、不十分な場合スタンドは暴走し、持ち主自身を害することになってしまう。
⇒空条ホリィのスタンド(名称無し)や、スーパーフライなど。
また、本体の精神が怒りや恐怖で不安定な状態になっている場合、本来の性質が十全に発揮されなかったり、無意識的にスタンド能力が表面化してしまうこともある。
⇒クレイジー・ダイヤモンドやザ・ハンド、アニメ版のホワイト・アルバムなど。
極めて稀に、本体の死後もスタンドだけが存在し続けることがある。これが関与した場合、1人のスタンド使いが脅かされている間2つのスタンドの共存が成立する場合もある。
- アヌビス神:本体は500年前の刀鍛冶であり、刀に憑依したスタンドのみが現存する。また、誤って憑依されてしまったポルナレフがスタンド使いだった事で、シルバーチャリオッツ+アヌビス神という2つのスタンドが共存した。
- チープ・トリック:最初の被害者が本体だったが、本体の背中を誰かが見た場合、本体を殺害し見た人物の背中に再び本体として憑りつく。憑りついた者がスタンド使いの場合、本体が2つのスタンドを背負う事になる。
- ノトーリアス・B・I・G:本体の死亡に伴い、怨みの力で発動する。周囲の動く物を自動的に攻撃する。
- シルバー・チャリオッツ・レクイエム:シルバーチャリオッツの進化系だが、本体のポルナレフが(肉体的に)死亡したため制御が効かなくなり、能力を垂れ流しつつ自身の持つ「スタンドの矢」を狙うものを執拗に攻撃する暴走状態に陥った。
- ホワイトスネイクのDISC:スタンドをDISCという形で抜き取った物で、能力を失った本体の死後も存在し続ける。これを適性がある者に与える事で、同能力を持つスタンド使いを生み出す事が出来る。
制御する本体が存在しないスタンドも登場。
- オータム・リーブス:カツアゲロードのいちょうの落ち葉に隠れているスタンド
定義3の通り、例外を除き本体の制御下にあるスタンドは本体と一蓮托生の関係にある。
スタンドか本体のどちらか一方が傷つくと連動してもう一方も傷つく。スタンドによっては傷が本体にあまり影響しないものもある。いずれも後述する。
能力と血縁関係
定義4の通りスタンドには1体につき1つ特殊能力を持っている。
「炎を生み出し操る」、「触れたものを修復する」、「過去を再現する」など、その種類は多岐に渡る。
スタンドの才能は遺伝したり、スタンドの目覚めが血縁者に影響を与えたりする。
第3部では、ジョセフとその娘ホリィのスタンドが共に植物の形であり、先祖であるジョナサンの肉体を持つDIOも植物の様なスタンドを使用していた(原作では説明は無かったが、画集でジョナサンの肉体を持つためと解説された)。ダービー兄弟の能力が共に「勝負に敗けた相手の魂を抜き取る能力」であるなど、血縁者はスタンドにどこか似通った要素を持っている場合もある。
第4部では「どんな能力を持つかは本体の精神の才能による」という説明がなされており、以降は他人であっても能力に類似点が見られたり、血縁者でも全く能力が異なったりするようになった。
⇒前者は物体を消滅させる(効果音は共に「ガオン!」)クリームとザ・ハンドなど。後者はジョセフ仗助親子や虹村兄弟が該当する。また第4部には本体が鼠(血縁は不明)だが、外見も能力も全く同じスタンドラットが二体登場した例もある。
外見
外見も生物的なもの、機械的なもの、不定形のものなど様々である。以下は一例。
- 人間型:基本的にスタンドが傷つけばそのまま本体の同じ箇所も傷つく。特殊能力の他、ラッシュに代表されるような格闘戦を行うものが多い。⇒スタープラチナ、ザ・ワールドなど。
- 中には「手で触れること」で特殊能力を発動させるタイプも。⇒ザ・ハンド、キラークイーン、ゴールド・エクスペリエンスなど。
- 人間以外の生物、人工物型:形状によって本体にダメージがフィードバックされたりされなかったりとまちまち。⇒ハーミット・パープル(イバラ)、タワーオブグレー(クワガタムシ)、ラット(砲台)など。
- 物質同化型:現実に存在する物質・物体と同化しているタイプ。そのためスタンド使い以外にも見えるし触れる事もできる。⇒ホウィール・オブ・フォーチュン(自動車)、アクアネックレス(水)、ラブ・デラックス(本体の髪の毛)など。
- 道具型:道具の形をしているタイプ。基本的に本体が直接操る。⇒エンペラー(拳銃・銃弾)、ビーチ・ボーイ(釣竿)など。
- 群体型:「複数の像を持つ1種類のスタンド」として存在するタイプ。数が多ければ多いほどスタンド1体あたりのダメージフィードバックは小さいが、数が減らされるほど瀕死に近づくということでもある。四方八方から攻撃できたり一度に多くの状況を把握できたりと強力。ちなみに「恥知らずのパープルヘイズ」では「スピードワゴン財団の調査によると、このタイプのスタンドを持つ人間は精神面に欠陥がある」という設定になっている。⇒バッド・カンパニー、ハーヴェスト、セックス・ピストルズなど。
- 無像型:スタンド像を持たず、能力だけが存在するタイプ。⇒アクトン・ベイビー、ボヘミアン・ラプソディーなど。
- 装着型:本体がスーツのようにスタンドを纏うタイプ。⇒ホワイト・アルバム、オアシスなど。
- その他:分類が難しい特殊なタイプ。⇒ザ・フール(砂そのもの)、ジャスティス(霧そのもの)、サン(太陽)、ミラグロマン(人型と群体型に近い呪物が混在)など。
パワー分類
外見や能力とは関係無い、スタンドの戦闘力に基づいた分類。
- 近距離パワー型:岩や壁などを破壊できるパワーを持ち、スピードにも優れる場合が多い。パワフルな戦闘を行えるが、基本的に本体から数m程度しか離れられない。故に本体も常にスタンドと動き回らなければならず、それなりの運動能力が求められる。また、先述の外見部類の中では人型である事が多く、且つ主人公やラスボス等の最重要人物が有しているのは大抵このタイプ。⇒スタープラチナ、ザ・ワールド、クレイジー・ダイヤモンド、ストーン・フリーなど。
- 一見してこのカテゴリーに入るが、スタンドパワーが特殊能力の方に割かれて、単純な格闘能力はそれほど高くないスタンドも存在する。⇒エコーズACT3やキラークイーン、マン・イン・ザ・ミラー、ザ・グレイトフル・デッドなど。
- 遠隔操作型:スタンドそれ自体のパワーは低く、スピードや精密動作性も低い事が多いが、代わりに長い射程距離を持ち、十数m程度のスタンドから数百㎞まで影響を及ぼせるスタンドもある。これにより相手に気付かせず奇襲をかける戦法が可能。本体と視聴覚を共有している場合も多く、偵察にも向いている。⇒ハイエロファントグリーン、ハーミット・パープル、ゲブ神、ラバーズなど(ハーミット・パープルは人型かつ射程Dなので本来は遠隔操作型とは言えないが、作中でハイエロファントグリーンと同等の距離まで茨が伸びていた事から実質的にここに該当する)。
- 遠隔自動操縦型:前述の2種類に比べて特に例外的なスタンドばかりで、長所として本体との距離に関係無く破壊力抜群の攻撃を行える点、スタンドへのダメージが本体へフィードバックしない点が挙げられる。その分短所として、一定の条件を満たした対象物を無差別に攻撃する事しかできず、本体の細かい指示は受け付けない点や、感覚を共有できないので本体がスタンドの周囲の状況を把握できない点が挙げられる。良くも悪くも本体とのリンクが薄いタイプと言える。⇒シアーハートアタック、ブラック・サバスなど。
パラメータ
スタンドの基本的な能力は、A(超スゴイ)~E(超ニガテ)の5段階表記で示される(性質によっては「なし(場合によっては測定不可能)」や「∞」といった表記も見られる)。
評価項目は「破壊力」「スピード」「射程距離」「持続力」「精密動作性」「成長性」の6つ。
ただしスタンドの強さは各々の特殊能力によるところが大きく、作中でも「スタンドは適材適所」と言われている通り、評価が高いからと言ってどんな敵や状況にも対応しうるとは限らない。
- 破壊力:単純な攻撃力。パンチなどで起こせる破壊だけで、スタンドそのものの特殊能力で起こせる破壊は含まれない(ザ・ハンドやクリーム、C-MOONなど)。
- スピード:スタンドの動作速度。移動速度や、能力発動に必要な速度。本体が操る能力である以上は、本体の限界を超えて行動できるスタンドは存在しない。
- 射程距離:本体から離れてスタンドが発動できる限界距離。作中の描写を見るに、Eが2m以下、Dが数m程度、Cが十数m程度、Bが数十m程度、Aが100m以上、といった基準になると思われる。
- 持続力:スタンド能力を発生させ続けられる時間。これが低いと長期戦で苦労する。
- 精密動作性:いかに正確かつ器用な動作ができるかを表す。遠隔自動操縦型は精密動作性を犠牲に破壊力と射程距離を両立させたタイプと言える。
- 成長性:スタンド能力の伸び代。戦闘力とはあまり関係ないが、本体の精神力によってスタンド能力も成長することが推察される。作中ではポルナレフが「理由あって10年修業した」と発言しており、セト神の攻撃で心身ともに若返った際にはスタンド能力も明確に弱体化する描写がある。
なお、パラメータが大雑把でいい加減な事は、ファンの間でも当たり前のように認知されている。
それどころか、「作中の描写とパラメータを見比べて考察できる」「この能力ならこんな描写も可能なのでは」等、幅広い想像が可能であるという点で好評ですらある。
スタンドの自我・意思
エコーズACT3やゴールド・エクスペリエンス・レクイエムなどのように自我や意思を持ったり、ミスタのピストルズといった本体やスタンド使いとコミュニケーションをとるものもいる。
殆どの場合は鳴き声的なもの、システム的に単純な言語を繰り返して発する(ブラック・サバスやシアー・ハート・アタックなど)くらいで、基本的に無口。
しかしながら、本体の制御下にない状態で「スタンド本来の性格」が存在する描写もあり、描写されていないだけで自我を持っている可能性もある(フーゴに制御されていないパープル・ヘイズは、「キレイ好きだが知能が低い」という一面を見せている)。
戦闘中にスタンド能力に覚醒した場合(特に非戦闘員の場合)スタンドが自らの存在や能力を本体に説明するというケースがあり、この場合はその後も性格的な個性が他のスタンドに比べて描写される場面がやや多い傾向がある。
スタンドの名前
第3部ではタロットカードやエジプトの神々のカード(エジプト9栄神)の暗示に基づいていたが、第4部以降のスタンド名は洋楽由来のものが多い(尤も、第1部からすでに人名や語句に洋楽由来のネーミングが多かったわけだが)。
初期のスタンドは日本語表記にカタカナルビが多かったが、連載が続くとカナ名のみで呼ばれることがほとんどになった。
スタンド使いの暗黙の了解
スタンド能力を一般人に無闇に見せびらかしたり、その存在を世に知らしめようとするようなスタンド使いはほぼおらず、その為に劇中においてスタンド能力は不可思議な現象といった程度の認知しかされていない。
これはスタンドというものが使い手の深層心理や本性を反映したものであるがためである。人は誰しも、自分の心の内は隠したがるものである。そのため、基本的にスタンド使いがスタンドを見せ合うのは敵として対峙したときくらいである。そのスタンスは3部から最新の部の登場人物である東方憲助が言及するに至るまで今なお一貫するルールとなっている。
また、この深層心理が能力形成にも影響する為、例えばハイウェイ・スターは本体の願望と恐怖心を反映する能力を得て発現し、そう言った忌避感や倫理観が全くと言って良いほど無いチョコラータのグリーン・デイは、ジョジョ史上でも屈指の凶悪な能力を持ち、ローマの街の人々に甚大な被害を出している。
各部における傾向
1部2部 スタンドは登場しないが、戦闘力は既にインフレしている
3部 シンプルで強力なスタンドが多い
4部 3部よりも複雑化し、戦闘とは関係ないスタンドも増えてくる
5部 洗練されてくる。スタンドパラメータも導入された
6部 かなり複雑化する
7部 再びシンプルになる。人型ヴィジョンが格闘を行うタイプは少ない
8部 人型ヴィジョンが再び増えるが格闘シーンは少なめ、自動操縦型のスタンドが多い
奇しくもラスボスのスタンドは各部の傾向を総括するものになっている。
3部…シンプルかつ強力な「時間停止」
4部…戦闘向けの能力ではあるが、本質は本体の望みを反映し戦闘自体を避けることにある
5部…強力なことは違いないが詳細までは説明しづらい凝った能力
6部…スタンドのルールの一つを崩し、敵側では初の形態変化まで発生させた
7部…「平行世界の移動」というシンプルかつ強い能力で、単体で戦えるスタンドがほぼいない中で最初から人型かつ格闘可能というアドバンテージを持つ
8部…初期から多く出てきた自動操縦型の集大成ともいえるスペック