分類
この舞台芸術は歌、芝居、ダンス等が一体となった演出を伴うものであり、舞台での演劇や、場合によっては映像化され映画およびテレビメディア等となったものを指す。エンタメ大国であるアメリカ合衆国で盛んな芸術表現のひとつで、ハリウッドでは現在でもミュージカル映画が制作され、「glee」のようなTVドラマも放送されており、ブロードウェイの舞台が代名詞として有名である。
一方、アニメの世界ではディズニーがこの形式を受け継いだ作品を継続して制作しており、現在日本でもっとも親しまれているのはおそらくこのディズニーのアニメ映画だろうと推測される。
なお、優れたミュージカル作品に与えられる著名な演劇賞に「トニー賞」が存在している。
概要
19世紀の終わりから20世紀のはじめにかけて作られるようになった。フランスにて行われたオペラの一種であり、歌以外の台詞(オペラの場合セリフにおいてもレチタティーヴォと呼ばれる旋律的なものを用いる)を含み、オペラの一形態であったオペラ・コミークよりオペレッタが生まれ、それがウィーンに渡り洗練されたものとなる。それがアメリカに渡った際にショー的な要素を取り入れるために踊り等が取り入れられ、この舞台芸術が完成した言われている。
オペラ等と異なる点は、この芸術は音楽を重要視するのではなく、それよりもダンスや動作などを重要視していること、幕数(場面が変化する場面)が基本的に2とオペラ等に比べ少ない(オペラの場合、正式なものであると三幕から五幕、小作品でも二幕から一幕)ことが挙げられる。
また、「歌によってドラマが進行する」のがオペラで「ドラマの結果としての感情を歌に託する」のがミュージカルという意見も存在する。
日本における状況
能や歌舞伎やは和風ミュージカルともいえ、大衆的人気を得ていたのだが、近代以降急速に廃れていき、かといって西洋式ミュージカルも定着しなかった。日本ではこの手の舞台芸術は知名度も人気も低く、ディズニーから大きな影響を受けた日本のアニメでもミュージカル要素は取り除かれている。
一般人は、ミュージカルと聞いて浮かぶものと言えば「劇団四季」か「宝塚歌劇団」を知っている程度という人が大半であろう。ミュージカルに触れるのも学校行事が大半で、自分から見に行ったことのある人は限られる。
理由はよく分かっていないが、まず大きいのは日本語と印欧言語の音の違いを修正しきれないため、必然的にチグハグしたものになってしまう点。演技についてもバタ臭い感じがあり、タモリのように「突然歌い出したりする意味がわからない」、「日本人が外国人の役を演じるのがシュール」などと、ミュージカルという形式そのものに抵抗を示す人が実は多いのかもしれない(タモリはかつて『今夜は最高!』で散々ミュージカルコントをやっており、私生活で特にミュージカルを観ているわけではないことについて適当に言い訳を考えただけという見方もある)。
また、日本は劇場やホール等の公共施設は世界的に見ても非常に潤沢な国ではあるものの、ミュージカル上演に適したものが実は少ない。それらの上演に適した劇場やホール等も、専用のものはほぼないため、ほかの演劇やイベント等との兼ね合い上、長期間の借り上げが難しい。専用の劇場等を所有している劇団に至っては、それこそ劇団四季をはじめとする非常にわずかな大手に限られる。
このように、観客のパイも上演の受け皿も少ないため、宝塚のように作品よりも劇団固有のスターに頼る形態が常態化してしまっている。
このように日本では長年マイナーな演劇ジャンルであったが、21世紀に入ると全面的に日本人向けに設計したミュージカルのローカライゼーションが起きるようになってきた。その代表例である「テニスの王子様」のミュージカル(テニミュ)は大成功を収め、独立した人気を博して以降、人気漫画やゲーム等を原作としたミュージカルが多く作られるようになった。これらは「2.5次元ミュージカル」と呼ばれ、2000年代後半以降盛んに製作されている。
また、ハリウッド映画の「レ・ミゼラブル」、ディズニーのアニメ映画「アナと雪の女王」、実写版「美女と野獣」(興行収入120億円)、「ラ・ラ・ランド」(40億円)など、ハリウッド映画という枠の上ではあるがミュージカル映画も大きな興行収入をあげている。
日本国外の状況
ミュージカルの本場と言えば、なんといってもアメリカ・ニューヨークのブロードウェイ、そしてイギリス・ロンドンのウエストエンドである。
世界中からハイレベルなキャスト・スタッフ・作品が集まり、それに伴って動くお金の額もけた違いに高いことから、公演の質が世界一高い地区であると言われている(どっちが上かはもはや好みの問題と言われる)。そのため、他国のミュージカルファンにとってこれら2地区でのミュージカル鑑賞は共通の夢であり、安からぬ旅費・観劇費を費やしてでも、観劇旅行を敢行する人が多い。
レベルが高いだけあって、この2地区の観客の目の肥え方も半端ではなく、どんな名手が手掛けた作品であろうと面白くなければあっという間にそっぽを向かれ、次の作品の上演が早々に決められる。そのためロングラン公演は非常にまれなことであり、『オペラ座の怪人』『キャッツ』『レ・ミゼラブル』など、ほんのわずかな傑作だけがその栄誉にあずかる。
ミュージカル市場や人気が世界で最も大きいのはアメリカである。ブロードウェイを擁するニューヨーク以外にも、ロサンゼルス、シカゴ、ラスベガス等の市場規模の大きい大都市がいくつもあるため、市場規模は他国の追随を許さない。
また、演劇のみならず映画においても、いわゆる「MGMミュージカル」をはじめとする作品群が一世を風靡した40~50年代以来、ミュージカルの人気は非常に高い。
このように国民が広く深くミュージカルに親しんでおり、劇場街ではなく国から「ミュージカルの本場」を選ぶとするなら、やはりアメリカであるとする意見が強い。
ウエストエンドを擁するイギリスは、実はアメリカに比べるとミュージカルの歴史はかなり浅い。巨匠キャメロン・マッキントッシュによれば、むしろ70年代頃までは「イギリス人がミュージカルとかwww」と嘲笑されることもあるほど、ミュージカル不毛の土地であった。
しかし、マッキントッシュをはじめとする才能あふれる人々の尽力によってレベルが上がり、80年代に『レ・ミゼラブル』『キャッツ』を世に送り出したことでミュージカル先進国の座に就いた。イギリスにおけるミュージカルはいまや一大産業である。
アジアでは市場規模こそ日本がトップだが、より盛んなのは韓国とフィリピンと言ってよい。
韓国ではミュージカル人気が高く、小説など他メディアでの人気作品のメディアミックスとして、ミュージカルが頻繁に製作されている。オリジナル作品も盛んに製作されているほか、日本をはじめとする海外作品のミュージカル化なども行われる。最近では、K-POPアイドル人気に当て込んだ、アイドル主演のミュージカルも多い。
フィリピンは、米英で人気を博した作品の上演がとにかく早く、またキャストのレベルが非常に高いといわれる。名作『ミスサイゴン』で主演を務め大人気を博したレア・サロンガをはじめとして、ブロードウェイやウエストエンドの第一線で活躍できるほどの実力を備えたキャストが自国内でも普通に出演しているためである。
関連イラスト
特に有名な漫画原作のミュージカル作品
※宝塚歌劇団のものは除く。
日本で有名なミュージカル作品
※この中には複数の劇団で上演されている作品も存在する。
【劇団四季系】
【東宝ミュージカル系】
【宝塚歌劇団系】
【その他】
上記以外のケースにおけるミュージカル作品
- うたう!大龍宮城(ミュージカル要素を持つ特撮魔法少女作品)
- 少女☆歌劇レヴュースタァライト(ブシロードのメディアミックス作品)
etc...