「TVじゃ見れない、新しいウルトラマン!」(『1』より)
「最強の敵は、ウルトラマンだ。」(『2』より)
誘導分岐
ウルトラマンゼアスとはウルトラマンシリーズの作品であり、劇中に登場するヒーローである。
キャラクターとしてのウルトラマンゼアスについての詳しい解説はこちらで。
概要
元々は出光興産のCMキャラクターとして生まれたウルトラマンである。
2作にわたる劇場版作品のみで構成されるシリーズであり、テレビシリーズは制作されていない。
劇場版のみで進行したウルトラマンシリーズは、ほとんどゼアスが唯一といってよい(『ウルトラマンUSA』は海外ではテレビシリーズ作品として放映された為)。
第1作は『ウルトラマンシリーズ 30周年記念映画 ウルトラマン ワンダフルワールド』の一編として公開され、『蘇れ!ウルトラマン』とアニメ作品『ウルトラマンカンパニー』が同時上映された。
なお、当作はCMでのみ「蒼き星永遠なれ」という副題が付いていた。
出光興産に加えて、1作目の制作にはフジテレビが深くかかわっており、とんねるずの2人を防衛チームの幹部に起用したり、さらには主人公に、とんねるずの当時のマネージャー、つまり全くの素人である関口正晴氏を起用するなど、お祭り・コメディ的様相が強かった。
しかし、物語が進むにつれて、半人前で臆病な若者であったゼアスが一人前の戦士へと近づいていく、正統派の成長物語となった。
『2』は90年代当時の格闘ブームを反映し、K-1創立者である石井和義氏(当時は正道会館の館長であった)協力の元、『1』と比べてシリアスな物語に仕上がった。さらに角田信朗氏やアンディ・フグ氏も出演しているのが特徴である(デアゴスティーニ/2009〜2011)『トピックインフォメーション SERIESEX6「ウルトラマンゼアス」SHEET02』より)。
どこか『ウルトラマンレオ』を彷彿とさせる作風であり、同作には森次晃嗣氏もMYDOの隊長役で出演しているが、師匠役ではない(ここ重要)。
上述の制作経緯からか、夜間上映では同時上映作品が『最強への道〜WELCOME TO THE K zone』となっている。
出光興産との関わりは根強く、MYDOの本部は『出光リテール販売(株)神奈川カンパニー セルフ東百合ヶ丘SS』にてロケが行われ(MYDOの隊員達も表向きはガソスタ店員である)、出光興産のCMでは往年のウルトラ怪獣とゼアスが激闘を繰り広げ、主題歌CD「ウルトラまいどCD」は出光興産のガソリンスタンドでの給油やMYDOカードへの入会で入手できた。後年には初代ウルトラマンがCM出演したり、2007年頃に後述する『ウルトラ出光人』なるキャラクターが制作されるなど出光と円谷のタイアップは続いた。
とんねるず側もタイアップを積極的に行なっており、『とんねるずのみなさんのおかげです』では『仮面ノリダー』のノリでパロディコントも行われた。そちらでは木梨憲武氏と関口正晴氏の役割が逆転している他、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウまでのウルトラ兄弟が客演しているなど見所も盛り沢山であった。本家から星見透も登場。
映像面では、デジタル編集の導入で、ウルトラマンや戦闘機の飛行シーンの大部分がCGになり、光線も従来のオプチカル合成ではなくデジタル合成で処理された。
1997年には続編『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』が公開。同時上映は『ウルトラニャン 星空から舞い降りたふしぎネコ』。
1998年公開予定で『ウルトラマンゼアス3』も企画されていたが、企画書提出時点で『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』の製作がすでに決定していたため、お蔵入りとなった。この為、ベンゼン星人側との明確な決着が描かれないまま現在に至る未完のシリーズとなった(レディベンゼン星人のその後と思われる姿が『大怪獣バトルウルトラアドベンチャーNEO』に登場する形で補完は行われている)。
ゼアスはこのほか、出光のCMや、円谷プロ主催のキャラクターショーには出演しているものの、制作経緯の都合上、権利が複雑に絡み合っているため、フィギュアなどの制作回数は少ない。映像ソフト化も独特でビデオが独立してリリースされたが、DVDとBlu-rayは2作同時収録となっている(Blu-rayの発売は2016年12月22日)。
とはいえ、キャラクターの露出自体はそれなりに多く、単独でゲーム化もされた他、イベントでは同じく外部媒体で活躍したウルトラマンナイスとコンビを組んでいる。
現在の出光のイメージキャラクターの役割は、ウルトラ出光人こと、ウルトラマンHotto・Motto・Kittoの3人が受け継いでいる(一部の出光のスタンドでは今でもゼアスの垂れ幕や旗を使っている所もまだある)。
本作に登場するウルトラマン(ゼアスとシャドー)は杉浦千里氏が担当しているが、惜しくも2001年に逝去した。
また、女性ウルトラマンが登場する案も存在していたという(出典:『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』(デアゴスティーニ/2009〜2011)『トピックインフォメーション SERIESEX6「ウルトラマンゼアス」SHEET02』より)。
世界観に関して
ゼアスの出身が光の国ではなく、ピカリの国であったり、必殺技がスペシウム光線ではなく「スぺシュッシュラ光線」だったりと初代『ウルトラマン』のパロディ的側面が強い作風だが、黄金のウルトラマン像が作られたり、ゼットンファイナルビーム(ゼットンブレイカー)を元にゼットン光線砲が作られるなど初代ウルトラマンが認知されている世界が舞台である事は確か(『2』では前隊長・副隊長らがセブンのモノマネをやっており、セブンも認知されているかのような印象を受ける)。
ゼアス自身も初代ウルトラマンとは遠い親戚関係にあるという設定である。
しかしながら、世界観の詳細は依然として不明な点が多く、『ウルトラマン全戦士超ファイル』(小学館、2020、P8)によればゼアスの出身はM78スペースとも受け取れる記載がなされている(無論、本作の世界=M78スペースというわけではないので注意)。
あらすじ
ウルトラマンゼアス
地球上からあらゆる紛争が消え、人類の敵が、自ら引き起こした環境汚染と、地球外からの侵略者のみとなった時代。
Z95星雲ピカリの国からやってきた若者・ウルトラマンゼアスは、朝日勝人という青年となって、超宇宙防衛機構Mydoの見習いになった。
しかし、気が弱くてどんくさく、さらに重度の潔癖症である彼は、ゼアスに変身する前も後もいまいち活躍できないままであった。
そこへある日、地球を木端微塵に破壊しようと企むベンゼン星人が襲来する。
ゼアスは、心優しい同僚・透や、自分に憧れる少年たちのために、潔癖症を克服してベンゼン星人を倒そうと奮闘する。
ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影
一人前に成長したかに見えたゼアスだったが、謎の敵・ウルトラマンシャドーの襲撃を受け、惨敗。その圧倒的な強さがトラウマになって戦えなくなり、心の弱さを露呈してしまう。
シャドーは、レディベンゼン星人の手先だった。人々の希望であったゼアスの心を折ったレディベンゼン星人は、人類を絶望させ、地球侵略を進めていく。
ゼアスは、「心を鍛えよ」という父の助言を受け、しゃにむに空手の道場の門を叩き、師範代の指導の下、一人前の戦士の心を手に入れるための特訓を開始する。
登場人物
超宇宙防衛機構Mydo
“Mysterious Yonder Defense Organization”。その名前の由来は、出光のMydoカード。
高度な科学技術と強力な武装を持った防衛隊だが、人類同士の紛争がなくなった社会においては露骨に基地を構えられないため、出光のガソリンスタンドに偽装している。というか普段は隊員皆、ガソリンスタンドの店員として働いている(はっきり言ってメカの発進の際に目立ちすぎて基地の存在はバレバレであるが)
技術力は他のウルトラシリーズの防衛チームと比べてもかなり高いが、劇中では一度も勝っていない。
また、基地や隊員のユニフォームは赤を基調としたシンプルなデザインだが、戦闘機スカイフィッシュなどのデザインがかなり悪趣味。
本作品の主人公でウルトラマンゼアスの人間形態。心優しいが気が弱く、潔癖症の青年。
1作目ではMydoの見習い隊員で、隊長や先輩に呆れられつつもしごかれていたが、ベンゼン星人との戦いの中で潔癖症を克服する。
2作目では、冒頭でウルトラマンシャドーに完敗を喫したショックで一時はMydoからも逃げ出してしまうが、必死の特訓の末に、本当の自信と強い心を手に入れる。
大河内神平
とんねるず石橋貴明が演じる、1作目時点でのMydoの隊長。エキセントリックで粗暴な振る舞いをするが、人望はある。その後昇格し隊を離れ、2作目ではカメオ出演にとどまった。
小中井仏吉
とんねるず木梨憲武が演じる、1作目時点でのMydoの副隊長。大河内とは対照的に神経質で臆病。彼と共に昇格した。
星見透
Mydoの紅一点。優秀な隊員で、フルートが得意な心優しい女性でもあり、勝人のことを誰よりも心配している。彼の正体にはおぼろげながら気付いており、いつも彼の強さを信じている。
武村岩太
デーブ大久保演じる巨漢の隊員。射撃の名手にして発明の達人と、アラシ隊員とイデ隊員を合わせたような男。
ミドリ
Mydoの作戦参謀とそのための高度演算処理を担当する、超高性能AI。名前のとおり女性型の、明るい人格の持ち主だが、ローポリの不気味な顔をしている。あと、よく間違える。
薩摩萬(さつまばん)
昇格した大河内隊長の代わりに来た、2作目での新隊長。かつてのMAC隊長モロボシ・ダンを想起させる、というよりそのままモロボシ・ダンな男。聡明で厳格だが、まともすぎて影が薄い。カプセル怪獣を懐かしんでいる。また作品終盤、ゼアスの正体に完全に気付く。
数学(かずまなぶ)
昇格した小中井副隊長の代わりに来た、2作目での新副隊長。理数系・オタクのステレオタイプを具現化したような奇妙な男で、何の抵抗もなくミドリにハッキングしたりする。
その他の人々
ガードマン
ハヤタ・シンにそっくりな、日本銀行の警備員。1作目では日本銀行が保管している金塊が溶ける様子を目撃してしまう。
2作目では私服で登場し、スプーンをまるでベーターカプセルのように掲げるも、やはり心の奥底では絶望してしまっていたらしく、シャドーに連れ去られる。
釣り人
ムラマツキャップそっくりな老人。1作目でコッテンポッペの黄金吸収のとばっちりを受け、湖で釣りを楽しんでいたところで巨大な渦巻きに遭遇する。
2作目時点で故人であるかのような描き方がされた(中の人が亡くなったため)。
写真家
イデ隊員そっくりな男。1作目で、金閣寺の金箔が溶け去る様子を目撃する。
2作目で、釣り人の息子であるらしいことが判明する。
レポーター
アラシ隊員、あるいはフルハシ隊員に似た顔の、異常に口の悪い男。Mydoのセンスを毛嫌いしている。
主婦
フジ隊員そっくりな女性。Mydoのオーバーテクノロジーを頻繁に目撃するが、その証拠を押さえられずにいつも悩んでいる。
正道会館師範
2作目に登場する、どこからどう見ても角田信朗な空手家。
勝人の訪問を突然受けるが、彼の中に眠る優れた素質・実力と、その発揮を阻害している弱い心を見抜き、彼の心を鍛えるための特訓法を伝授する。
師範代
2作目に登場する、どこからどう見てもアンディ・フグな空手家。
勝人の前で必殺のかかと落としを見せた。これが、ゼアスが後に新必殺技を編み出す手助けとなった。
アンディ・フグ氏は2001年に逝去し、最初で最後に出演した特撮作品となった。
星見勇気
透の弟で、ゼアスに憧れる少年。正道会館で空手を習っている。
ゼアスに強い憧れと期待を抱く分、2作目冒頭で彼が負けたまま姿を消してからは、ゼアスに強い怒りをぶつける。
彼のその姿勢が、勝人が必死の特訓を乗り越えシャドーへのリベンジへと挑むための強力な燃料となった。
ニュースキャスター
2作目にて、ゼアスの敗北やその復活をテレビで報じていたキャスター。郷秀樹によく似ており、ウルトラマンが帰ってきたことを執拗にアピールする。
登場怪獣
慢性ガス過多症宇宙人 ベンゼン星人
1作目の敵。地球上では鹿賀丈史そっくりの「悪神亜久馬」という男性に変身している。
“破壊”に異常な美学と執着を持っており、座右の銘は「破壊こそ芸術の極致」。ゼアスと地球を木端微塵に破壊することに心血を注ぐ。
妖艶宇宙女王レディベンゼン星人
2作目の敵で、ベンゼン星人の妻。地球上では神田うのそっくりの「影美」という女性に変身している。
ゼアスの敗北を人類に見せつけ、彼らを極限まで絶望させて支配するという陰湿な侵略を行う。
絶望した人間をマインドコントロールし拉致する技術を持っており、影美道場なる施設で彼らを私兵へと育成している。
吸金爆獣 コッテンポッペ
ベンゼン星人が、持病のガス過多症の特効薬となる金を集めるために地球に連れてきた宇宙怪獣。
「コッテンポッペ」の名称はビードロの音に似た咆哮からMydoで名付けられたもので、星人からは「ゴルドルボムルス」と呼ばれていた。
爆獣の名の通り、体全体が強力な爆弾で、もし爆発すると地球すらももろとも消し飛ばしてしまうほどの威力。
宇宙戦闘ロボット ウルトラマンシャドー
ウルトラマンゼアスの前に現れた黒いウルトラマン。その正体はレディベンゼン星人が作り上げた対ゼアス用ロボット。
基本的な容姿はゼアスに似ているが、黒を基調とした体に黄色のラインが走っているという毒々しいデザイン。また、目や頭部の形状も刺々しい。
ゼアスが平手にしている部分(飛行時や、光線発射時)では拳を握っており、攻撃的な印象を見る者に与える。
必殺技は、赤い光が特徴的なシャドリウム光線と、拳のメリケンを相手に向かって飛ばすシャドーメリケンパンチ。
特に後者は、ゼアスの右目にクリーンヒットし、彼のトラウマとなってしまった。
シャドリウム光線は、影美がシャドーに送信しているエネルギーの量を増大することで、スペシュッシュラ光線を上回る威力にまでパワーアップできる。
2作目冒頭で圧倒的な戦闘力でゼアスを打ち倒す。その後、希望を失った人々を洗脳光線とテレポート能力で拉致した。
終盤では、特訓を経たゼアスに追い詰められる。
Zカプセル光獣 ミラクロン
戦意喪失していたゼアスに、彼の父がくれたカプセル怪獣。ミクラスそっくりの呑気な顔をしている。
念力で相手を投げ飛ばす力を持っている。
Sカプセル影獣 ダークラー
レディベンゼン星人のカプセル怪獣。ゼアスのミラクロンに対抗してシャドーが出した。
もともとは、ベンゼン星の衛星に住んでいる怪獣で、ベンゼン星人たちのペット怪獣らしい。
その他情報
脚本:長坂秀佳/監督:中島信也
『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』
脚本:斎藤和典/監督:小中和哉
主題歌/イメージソング
- シュワッチ! ウルトラマンゼアス ~ウルトラマンゼアスのテーマ~
作詞:じんましんや/作曲:ジェイムス下地/歌:とんねるず
- 孤独のバラード ~ベンゼン星人のテーマ~
作詞:秋元康/作曲:ジェイムス下地/歌:鹿賀丈史
余談
平成に公開された作品では初の純国産ウルトラマンだが、海外組同様、いわゆる『平成ウルトラマン』にはカウントされる事は少なく、第1号はM78スペースの派生ではなくなった『ウルトラマンティガ』として扱われる事が多い。
『新世紀ウルトラマン伝説』でも特殊な立ち位置にあり、ダンスする際にはM78スペース&派生組に、タイトルロゴを紹介するシーンでは『ウルトラマンG』から『ウルトラマンコスモス』までの平成に制作された作品の括りに、冒頭や戦闘シーンでは他媒体組(ビデオ・CM・アニメ・劇場版限定で活躍したウルトラマン)に入れられていた。
関連タグ
ウルトラマンティガ:同じく30周年記念作品…なのだが、セットで登場する機会に乏しい(『ウルトラマン超闘士鎧伝』のダブル主役ではあった)。