アーチャー(フラグメンツ)
あーらしゅ
いいさ、お前は間違っちゃいない
プロフィール
概要
『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』に登場するアーチャークラスのサーヴァント。
マスターはエルザ・西条。サーヴァント階位は第三位。
褐色の肌に赤い大弓を携えた青年。遥か東方の地で、大勢の命を救った大英雄。
『Fate/Grand Order』では、メインストーリー第1部第6章『神聖円卓領域 キャメロット』の主要キャラクターとして登場する。
なお、『蒼銀のフラグメンツ』本編での真名判明に先駆け、『Grand Order』に彼が登場したことで真名が公開される形となった。
真名
西アジアでの神代最後の王とも呼ばれるマヌーチェフル王の戦士として、六十年に渡るペルシャ・トゥルク間の戦争を終結させた。両国の民に平穏と安寧を与えた救世の勇者。
異名は、アーラシュ・カマンガー。英語表記すればアーラシュ・ザ・アーチャー。他にも「迅い矢のアーラシュ」というのもあり、こちらの方が記述としては多い。
西アジア世界に於いて弓兵とはすなわち平穏をもたらせしアーラシュをこそ指し示す。
現代でも彼は西アジアの人々に愛されている。
伝説において、アーラシュは究極の一矢によってペルシャとトゥランの両国に「国境」を作った。大地を割ったのである。その射程距離、実に2500km。人にあらざる絶技と引き替えに、彼は、五体四散して命を失ったという――
生前の彼は「神秘の残滓」を掻き集めて生まれた、いわば「神代最後の幻想的英雄」。
それゆえにあらゆる困難を全て捩じ伏せ、何もかもを己独りで達成してしまう、まさに超人だった。
だが同時に“己だけで何をも成し遂げられる”という、自身曰く「驕り」が生まれてしまったという。
その驕りから、何を為すにしても“独り”であることを、彼は選んだ。龍の子の末裔である王に仕え、いかなる難局をもたった一人で乗り越え、全て終わらせていった。
同時にそれは自分にとって彼らが「守るべきもの」だったためであり、「守るために戦う」自分とは寄り添い合うことはできないと痛切に感じていたからでもある。己が最期の一瞬に至るまで――
この生き方を悔いてこそいないが、かつての自分と同じように独りで抱え込んで身を滅ぼしそうな者を見ると、その生き方の息苦しさ・孤独を知るが故に、人柄もあって一言言わずにはいられない模様。
人類史を取り戻そうとするマスターに対して、アーラシュは全力を以て応えるだろう。人々を救う英雄として在ったことを、人々のためにすべてを懸けたことを、今も、彼は忘れていない。
人物
一人称は「俺」。
気さくでサッパリとした青年。
敵を滅ぼすのではなく、戦いを終わらせ人々を救う為に生命を費やした、正に大英雄と呼ぶに相応しい人物。一般人を巻き込むことを嫌って広範囲攻撃の使用を避けるなど、聖杯戦争でもその在り方は変わらず、マスターにも善を成すことを求める。
面倒見の良い兄貴肌で、親しみやすく頼りがいのある人物であり、居酒屋でエルザとビールを飲んだり騎乗スキルが無いのにバイクを乗りこなす姿は普通の好青年そのもの。基本的に人格者で気のいいアニキだが、尺度や思考が神代末期のそこから抜けておらず、ごく稀にだが自分基準でとんでもないことをやらかすことがある。またかなり感覚的な人物で、豪快な言行も多い快男児。
召喚された時代・場所の基本知識を聖杯から与えられている筈だが、現代にカルチャーショックを受けており、車を『鉄の箱』、電車を『鉄の竜』と称する。
全てを見透かす「千里眼」の持ち主でもあり、エルザが元より抱えていた心の闇も沙条愛歌との接触以降、彼女からの干渉で精神を蝕まれている事も知っていたが、あくまで彼女の決断を尊重する姿勢を貫いた。そしてライダーとの決戦で宝具を解放し、マスターとセイバーの正しさを信じながら散っていった。
ある理由から、独りで何かを抱え込もうとする人間に敏感であり、そうして思いつめる者には彼なりに叱咤激励を飛ばすことがある。
能力
長射程・大威力・高精度・超速連射が売りの、真っ当な弓兵らしい戦法を使う正道アーチャー。
弓矢作成スキルにより瞬時に生成した山をも削り取る威力の矢を、視認できないほどの超遠距離から同時に数十発も標的に当て、空を埋め尽くすほどの矢の雨を降らせることが可能。その威力は、並の対軍宝具では破壊できない太陽王の神殿の外壁をも破壊する(ただしこれはセイバーの『風王結界』によるサポート時の話である)。
間合いが東京都内全土を覆い尽くして余りある程とあるが、東京の中心から円で東京を覆うと半径約50㎞となるので、宝具無しでも50㎞くらい離れたところから狙撃出来ることになる(ドクターが「だいたい10や20キロくらいの距離、彼にとって準備運動みたいなもんだよ」と言っていることから23区内という意味ではないと思われる)。エミヤが4km(新都内全てが間合い、隣街は無理とのこと)、アルケイデスが20㎞(ただしこれが最大射程かは不明)と考えると別格の射程範囲。
保有スキル
対魔力(C) | 詠唱が二節以下の魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法のような大掛かりな魔術は防げない。 |
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単独行動(C) | マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクCならば、マスターを失っても1日間現界可能。 |
頑健(EX) | 神代の名残を色濃く有したアーラシュは、生まれついての特別な頑健さを有する。戦場であっても傷を受けず、生来より病を受けたことさえない、というアーラシュの逸話がスキルとなったもの。耐久パラメーターをランクアップさせ、攻撃を受けた際のダメージを減少させる。複合スキルであり、対毒スキルの能力も含まれている。 |
千里眼(A) | 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。Aランク以上でこのスキルを有しているアーラシュは、一種の未来視(未来の予測)や読心さえ可能としている。 |
弓矢作成(A) | 『FGO』で追加。女神アールマティから授かった智慧たる「弓」の設計者であり作成者でもある彼は、材料さえあればたちまち弓と矢を作成する。弓には物質的な材料が必要だが、矢であれば自らの魔力を削ることで作成可能。これにより、アーラシュは無数の矢を断続的に放つことが可能となる。 |
流星一条(ステラ)
- ランク:B++→A
- 種別:対軍宝具
- レンジ:1~99
- 最大捕捉:900人
「陽のいと聖なる主よ」
「あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ」
「我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ」
「さあ、月と星を創りしものよ」
「我が行い、我が最期、我が成しうる “聖なる献身(スプンタ・アールマティ)”を見よ」
「この渾身の一射を放ちし後に、我が強靭の五体、即座に砕け散るであろう!」
「――『流星一条(ステラ)』アアアアアァァァァァッ!!」
文字通り「大地を割る」極大射程遠距離攻撃。
純粋なエネルギー総量は対城宝具にも及び、その射程は2500km。
彼の宝具はその性質から、一点集中ではなく広域に効果を発揮するため対軍に分類される。
正確には“その範囲の広さから対国宝具”に相当し、“その威力は対城宝具”に匹敵するとされている。
だが、一度きりしか使えない。
宝具を発射すれば最後、伝承になぞらえて彼の肉体は瞬く間に四散五裂する。
一度の現界に、その一度だけを代償として放たれる宝具。
ある意味二重の壊れた幻想(ブロークンファンタズム)である。
詳細は該当記事を参照。
他作品での活躍
Fate/Grand Order
最初期から実装されているサーヴァント。レアリティは☆1。
メインシナリオでは第1部6章『神聖円卓領域 キャメロット』にて味方のはぐれサーヴァントとして登場。難民と迫害された山の民が寄り添う東の山村で、呪腕のハサンと共に彼らを聖都軍や荒野の魔物達から守るために戦っていた。また、ある旅人の導き手として彼なりの助言を送っている。
前半では伝承に違わない三面六臂の大活躍をしてくれる。ただ、あまりに親しみやすいので難民の少年から本物のアーラシュとは思われなかったり、彼基準の移動方法として「アーラシュ空を飛ぶ事件」をやらかしたりと、相も変わらず自由気ままでお茶目な大英雄だったりする。
そして一番の見せ場はやはり……
また、同時実装された彼の幕間の物語『孤独な戦士、獅子の如く勇敢な彼』では、彼とのマンツーマン戦闘訓練を通じて、普段飄々としている彼が心に秘めた物に触れることが出来る。
物語開始時点のチュートリアルでも三騎士代表として、セイバー、ランサーと共に登場。何故、彼だけ冬木の聖杯戦争とは異なる世界観である『Prototype』世界のサーヴァントであるかは不明(『stay night』で登場するアーチャーはエミヤかギルガメッシュである)。
なお、これに関してはある特異点が絡んでいるとの考察も……
また、オジマンディアスの幕間の物語にて、蒼銀のフラグメンツの舞台となった1991年のみならず、1999年に関して言及している事から、『Prototype』の時代に召喚された7騎の黒化英霊の内の一体はアーラシュである事が確定している(それまではこの7騎の黒化英霊に関する情報はぼかされていた)。
尚、『世界の命運を賭けて戦うのは三度目または四度目』、『マスター運が毎回良いことを実感している』、『前回のマスターは女』だったという気になる発言を残している。
普通に考えればこれまでの戦いとは『蒼銀→proto→FGO』の事で、女マスターに関してはマスター=エルザ・西条という事になるのだろうが、それでは『四度目』の発言とは噛み合わない為、彼女以外にも女性のマスターがいたとも取れる(マスター運の話からして黒化時代のマスターである沙条愛歌は省いているものと思われる)。
ゲーム上での性能
最大HP | 7122(LV60) |
---|---|
最大ATK | 5816(LV60) |
コマンドカード | Arts:2/Quick:1/Buster:2 |
宝具カード | Buster |
スキル1 | 頑健(EX)/自身の防御力&毒状態耐性UP(共に3T) |
スキル2 | 千里眼(A)/自身のスター発生率UP(3T) |
スキル3 | 弓矢作成(A)/自身のNPを20~30%増やす+自身のHPを1000~3000回復 |
宝具 | 敵全体に超強力な攻撃〈オーバーチャージで威力UP〉&自身に即死効果を付与【デメリット】 |
宝具で敵陣を蹴散らしつつ、退場して後続へ繋げる先陣特攻を旨とする特殊なサーヴァント。
「弓矢作成」とアペンドスキル「魔力充填」が共にLV10ならば合計50%となるので、開幕ブッパもしやすくなる。
なお、宝具を挟むとBuster&Braveチェインが成立するが、その宝具の性質上Extra Attackが発生しない(一部の例外を除く)。
欠点はやはり☆1ゆえのステータスの低さ。基本的に活躍するのは、序盤や種火集め・修練場・各種フリークエストといった周回クエストに限られがちで、特に高火力持ちなボス戦だと宝具を撃つ前に集中砲火を受けて倒される危険性が高くなるため、彼の立場は苦しい。
だが、「オーバーチャージで威力が上がる超強力な全体攻撃」は目を引くものがあり、戦闘開始と同時にバフ付与やNPチャージを行い即座に宝具を発動する、といった戦法をとるマスターも多い。
また、低ステータスについては「聖杯転臨」でレベル上限を引き上げれば解消出来るが、このシステムに必須となる聖杯の数はかなり限られているため、どこまで上げるかは各々マスター達の判断が問われる。
とはいえ、新たなサーヴァントや概念礼装が実装される度に運用法が考察されており、レアリティと強さが必ずしも直結しないことを体現する『FGO』におけるジョーカーの一人として、初心者から熟練マスターまで(いろんな意味で)愛されている。
そして、彼の絆礼装はその名も「聖なる献身」。自身がやられたときに残された味方全体のHPを5000回復し、更に弱体状態も全て解除してしまうという効果で、単純に回復系として見ても他の礼装によるテコ入れ無しでも5000という破格の回復量を誇り、大凡の逆境を乗り切るだけの希望となる。回復量強化系の効果と合わせると瀕死から完全回復も夢ではない。
当然『流星一条』のデメリットで即死してもこの効果は発動するので、タイミングにもよるが彼の伝説を局所的ではあるが完全再現することも不可能ではない。
2020年12月には『神聖円卓領域 キャメロット』劇場版前編の公開に合わせてバトルモーションが変更された。
流星、雨の如く
2017年の『ネロ祭再び』の「【超高難易度】第三演技 流星、雨の如く」の相手として登場。これまでの超高難易度と違い、彼の宝具を受けきることが重要である。
と言うのも、初手の時点で530万オーバーの体力、三回ガッツ、状態解除耐性UP、スタンや魅了などの行動不能無効、そのどれもが解除不能と、まともな手段で削るのは不可能である。
おまけに宝具には無敵貫通、宝具威力UPに加え、3発目を撃ち終えた次のターンに特殊スキル「一条の光」でガッツとチャージMAXによる4発目のステラが即座に飛んでくるのである。
合計5回のステラが飛んでくるという、プレイヤーが考案してきたステラチャレンジが身に降りかかるという恐怖のクエストである。
攻略するには、宝具を凌ぐガッツスキル、そのガッツを通常攻撃から守る回避・無敵スキルを有するクー・フーリンや天の杯などをうまく活用する、或いはマシュやブーディカ、アステリオスの宝具による多重バフ・デバフでの無力化などが考案されている。
2021年には復刻で再登場したが、こちらでは無敵貫通すら防げる対粛正防御が付与できるアルトリア・キャスターが登場した事で大幅に難易度が下がった。
バリエーション
黒化英霊
沙条愛歌によって『Fate/Prototype』時代の聖杯戦争に黒化状態で召喚された姿。
黒化されている所為で命令には逆らう事は出来ず、本心から彼女に従っているわけではない様子。
矢の雨を降らせる能力がある事が判明しているが、これが『流星一条』の雨を降らせるものなのかは不明。
オジマンディアスと共に同じ弓兵たる英雄王を相手に戦う事が示唆されている。無辜の民を傷つける事しか出来ない黒化アーラシュの苦しみを断てるのは彼しかいないだろう。
先述した通り、『FGO』では99年の聖杯戦争の一部について知る事が出来る。
関連人物
生前
最高神アフラ・マズダーのもと世界を管理する七善神『アムシャ・スプンタ』の一柱。その名は『真心尽くし』を意味するという慈愛と豊穣の大地母神。Fateにおいてはアーラシュに弓矢の作成技術を授けたとされる。
マヌーチェフル
アーラシュが仕えていた王であり神代最後の王。120年間王位に就き亡くなる。タバリーによると在位20年頃にモーセが予言の力でエジプトのファラオ(ラムセス2世とは記述されていない)を圧倒している話を耳にしている。
アフラスィヤーブ
アーラシュの物語に登場するトゥランの王。イランとトゥランの戦争は基本的にこの人が発端。
アーラシュの詠唱の元ネタ。ペルシャナンバーワンの大英雄。アーラシュの死後、しばらくして再び起こったトゥランとの戦争に参加している。
カーリン
アーラシュと共に戦争に参加した軍事指揮官。カーリンが不在の際には代行としてアーラシュが軍事指揮をとっている。
Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
契約したマスター。
一緒に居酒屋でビールを嗜んだりバイクでツーリングをしたりと良好な関係を築いていた。
子を喪った母である彼女の苦しみにも感づいており、言葉に出さずとも気遣いを見せている。
同じ聖杯戦争で競い合ったエジプトの太陽王。
同じ時代を生きたため、彼の名声はアーラシュにも聞こえていた。
そしてライダーからしても、アーラシュは彼がほぼ唯一尊敬の意を示す大英雄である。実際に『FGO』第1部最終章で共闘した際には、それまでやる気が無かったライダーが彼の参戦を知った途端にかつて見たことがないほどにノリノリになった。
概念礼装「黄金の翼」ではスペースオペラ的パロディで共演している。
双方はメインシナリオ第1部6章でも登場しているが、こちらはシナリオ上ニアピン状態となり、完全な共演とまではいかなかった。
同じ聖杯戦争で競い合った聖剣の騎士王。
『FGO』における旧セイバーの体験クエストにて、マスターが彼に会った話をすると『蒼銀』での事を覚えているのか嬉々としていたり、追加されたマイルーム会話ではさらっと彼女について揶揄うように聞いてくる茶目っ気を見せている。
後に旧セイバーの幕間で、他のメンバーと共に彼がカルデアに馴染もうとしない真意を確かめる手伝いをする。
同じ聖杯戦争で競い合ったハサンの少女。『FGO』第1部6章でも共闘している。
戦いを通して彼女が抱える危うさに気づいており、カルデアでも気にかけている。
一方で『毒が効かない』ことに対する一連のやり取りについてはちょっとうんざり気味。
同じ聖杯戦争で競い合った錬金術師。
こちらは逆に向こうから避けているようだが、果たしてその真意は如何に……
同じ聖杯戦争で競い合ったバーサーカー(『FGO』ではアサシンクラス)。
彼自身が抱え込む『業』に気づいているのか、何処か憐れむような目を向けている。
Fate/Grand Order
この世界で契約したマスター。
初見で気が合いそうだと判断しており、先達者として守ろうとする。
第1部6章で共闘した青年剣士。
彼の正体と内に抱えるものを見透かし、生前の自分と重なる部分を見たのか、助言を送っている。
第1部6章で共闘したエジプトの女王。
メジェド様の格好の方には流石のアーラシュも苦笑していた。
第1部6章で共闘したハサンの一人。
カルデアに召喚された折には記憶こそなかったが、どこか懐かしさを感じていた。
『Fate/Apocrypha』コラボイベント『Apocrypha/Inheritance of Glory』にてアーラシュの弓の腕を評価した人物。伝説的な逸話を持つケイローン自身をも凌ぐと言及している。エジプトのみならず、ギリシャにもアーラシュの名声が届いている事がわかる。
追加されたマイルーム会話で言及。ご存知ランサーの旦那。
アーラシュの方は一度逢ってみたいと思っていた様で、彼女と一緒に飲みに誘っている。
追加されたマイルーム会話で言及。
実装している4人のうち若い方と面識がある。
別側面が何人もいるのは流石のアーラシュもビックリだったらしい。
同じく日本ではマイナー過ぎる英雄。ただし、アーラシュは海外ではかなりの知名度を誇る一方で、マンドリカルドは中ボスかつ本国wikiでもあまり取り上げられないという扱いの差がある。
余談
ニッチな歴史マニアが潜在する『Fateシリーズ』ファンをして、「誰だお前は!?」と言わしめた御仁。
なにせ日本語版Wikipediaにすら、Fateで取り上げられるまで記事がなかったという、日本での知名度でいえば歴代一位のマイナーアーチャー。
日本で召喚されていたら、間違いなく知名度補正“0”である。
『蒼銀のフラグメンツ』の文章担当である桜井光氏も、執筆に際して下調べにかなり苦労したという。
ただ「日本では」という但し書きを付けるほどであって、イランではかなり著名な人物。
特にイスラム圏では、歴史に語り継がれるべき伝説の存在として、文化圏の各所に足跡を残している。ただし、古代ペルシア神話・歴史・伝説の集大成であるイラン最大の民族叙事詩「シャー・ナーメ」にアーラシュの話が載っていない。最もイラン神話に触れるきっかけになる「シャー・ナーメ」に数回名前が出てくる程度なので文化圏以外で言えばロスタムやフェリドゥーンよりは圧倒的に認知されづらいと思われる。とはいえ、言及のされ方は「名誉ある3つの矢のうちの1つ」という具合に言及されると必ず評価が高い。例えるなら、話の端にちょいちょい出てくる実はめちゃくちゃ凄い人といったところ。
- アーラシュはかなり古くから存在する英雄ではあるが、エフサーン・ヤルシャターの「Dāstānhā-yeĪrān- eBāstān」で注目されるまではペルシャ文学界から失われていたとされる無銘の英雄である。彼が人気になったのは20世紀頃からであり、それまで短い言及くらいでしか登場しない。今の知名度は20世紀に書かれた「Āraŝ-e Kamāngīr」が教科書に載ったり、1961年に彼の名の文芸雑誌が創刊されたりしたことが要因と思われる。
ちなみに、勘違いされがちであるが、アーラシュはあくまで中東における弓兵の代名詞であって「語源」ではない。ペルシャ語における弓兵(Kaman-gir)は弓を意味する「Kaman」と掴むを意味する「Gir」が組み合わさってできた単語と言われている。
ペルシア語ではこのように「名詞or形容詞」+「動詞の現在分詞形」で「~をする者」や「~をするような(人、もの)」という意味の複合名詞を作ることがよくあるんだとか。因みにKaman-girの正式な読み方はカマーンギール、『Fateシリーズ』では英語読みでカマンガーとなっている(カエサルを英語読みでシーザーとしているようなもの)。
- 根本的に古い文献には「アーラシェ・カマーンギール(射手のアーラシュ)」という呼び名自体存在せず、全てアーラシュ・シェーバーティールなどといった「速い矢のアーラシュ」という呼び名しか出てこない。アーラシェ・カマーンギールという呼び名は19世紀以降の論文または1959年に書かれた「Āraŝ-e Kamāngīr」くらいでしか確認出来ないため、比較的最近に出来た異名と思われる。
ビジュアル面や言動については、デビュー作での活躍がまだ少ないため、『FGO』で具体的に作り込まれたという経緯も持っている。
作中でアーサーがアーラシュをトリスタンと重ねているのは、トリスタンが同作でのアーチャーの候補だった名残り。ボツにしたのはアーサー王とその臣下を同じ聖杯戦争で戦わせるのは『Fate/Zero』のランスロット卿とネタ被りしてしまうためとの事。
アーチャーのサーヴァントはファンから○○茶と呼ばれることがあるが、宝具の特性から彼には「宝死茶(ほうじちゃ)」なる愛称が付けられた。ちなみに公認。
『ぐだぐだオーダー』では謎のアーチャーということで「ナゾ茶」とも呼ばれていた。
一説ではアーラシュは戦いを生き残り、弓兵達を育成したという話もあれば、人ならざる力で矢を放ったからではなく矢を放つと同時に寿命が尽きて亡くなる話もある(このときのアーラシュは老人である)などいくつかパターンが存在する。しかし、様々なパターンはあるが、その全ては境界を決めるために矢を放つシーンの詳細が変わっているだけであり、武勇伝としては境界を定める一射しか存在しない。イランとトゥランの講和取り決めのシーン以外でアーラシュが登場するのは希少。
「善を成せ」というゾロアスター教の善悪二元論的な言い回しや「陽のいと聖なる主(アフラ・マズダー)」への祈りなどを口にしていることからFate時空においてはゾロアスター教を信仰している可能性が高い。原典ではゾロアスター教を信仰している直接的な描写はないが、そもそも彼が登場する作品の1つが「アヴェスター」という聖典であるうえに、登場人物がゾロアスター教を信仰してるのはイランの物語ではありがちなので(ダレイオスなどもゾロアスター教を信仰している)、アーラシュがゾロアスター教だったとしてもそれ程おかしくはない。
「戦争を終わらせた英雄」となっているが、伝説上においてはアーラシュが矢を射つ前から和平を結ぶことはどの話のパターンでも確定している。イメージ的には「拮抗していて終わらないイランとトゥランの戦争をアーラシュが大地を割って境界線を引いて無理矢理終わらせた」というのを想像してしまいがちだが、実際はイランはトゥランに大敗しており、イラン側は無数の軍勢に包囲されタバリスタンで10年間籠城している。
そして、トゥラン側の王であるアフラスィヤーブが10年間も攻城戦をしていることにうんざりして講和を持ちかけるという話。和平の条件がイランにとって不利なのは、トゥラン側が圧勝している状況での講和であるため。更に言えばこの条件を指定したのはイラン側の王であるマヌーチェフルである(物語によってアフラスィヤーブが指定するが)。なので、正確に言えば、戦争を終わらせたのはアフラスィヤーブ、条件を指定したのはマヌーチェフル、戦争終了の儀式を行ったのがアーラシュという立ち位置。原典的に言えばアーラシュのおかげで戦争が終わったという意味ではなく『終戦が決まり、その戦争の締め括りを担当した』というニュアンスでの戦争を終わらせた英雄といったところか。
関連タグ
Fate/Prototype蒼銀のフラグメンツ Fate/GrandOrder
フムス:『Grand Order』の好きなことのマイルームボイスで彼が勧めるひよこ豆のペーストのこと。⇒日本エスニック協会によるフムス紹介(作り方も掲載されている)
『FGO』のバレンタインイベントで彼にチョコレートをあげるとお返しにひよこ豆のペーストを用意してくれる。