概説
CV:石川由依
『Fate/Grand Order』の登場人物。
二部六章「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ」の重要人物。
妖精歴(ここでは紀元前などと同じ意味)4000年頃から女王歴になるまで活動していた人物で、ブリテン島に滲み出す数多の厄災を調伏して何度も妖精たちを救い、現在の異聞帯ブリテン島の形成に大きな役割を果たしている。
その多大な功績から、妖精達からは「英雄」や「救世主」といった称号で呼ばれる。
ただし、どのような人物であったかは大部分が失伝しており、カルデア一行の来訪から2017年前、妖精暦の終焉に起きた「大厄災」を退散させたまでの概歴しか分かっておらず、多くが謎に包まれている。
登場
ところが二部六章後編「断章5」にて、モルガンの「水鏡の術」による偶発的事故で妖精暦の終わりにレイシフトしてしまったマシュ・キリエライトが生前のトネリコと邂逅。
その姿、立ち振る舞い、大まかな性格はアルトリア・キャスターの第二再臨とそっくり瓜二つ。
ビジュアル面では杖の形状と胸のリボンの色(黒)、帽子の柄など衣装の細かいデザインで差があるが、その人柄も含めて一見して両者が同一人物に見えるほどよく似ている。
2人の関係は言わば「トネリコが先輩でアルトリア・キャスターが後輩」であり、両名に血縁があるとは明示されていない。
ちなみに、六章後編CMの冒頭で空想樹を背景に振り返っているのは、アルトリア・キャスターではなくこのトネリコである。
マシュが出会ったのは、妖精暦が終わりに近付き、人間の騎士ウーサーとのブリテン島統一事業も終盤に差し掛かった時期にあたる。
トネリコの従者として知られる伝説の戦士「黒騎士エクター」と、その相棒であるハベトロットにそっくりな妖精「妖精騎士トトロット」と共に、ブリテン島の各所を遍歴していた。
マシュと出会ったことで、彼女を元いた時代に送り返す方法を探す目的も兼ねてブリテン中の遺跡を探索していくことになる。
また、この時ブリテン島の統一を果たして戴冠するウーサーは北の妖精たちの長と深い関係を結ぶ約束もしており、いずれはこの島を二人と共に末永く見守っていくはずだった。
しかし、マシュとの邂逅から、妖精暦が終わって女王暦が始まったことを知ると、自分の統制事業が最終的に破綻することに勘づき、また、マシュにみだりに女王暦の出来事を話してタイムパラドックスが発生しないよう釘を刺している。
途中でマシュの協力のもと、長年存在と実体が不明だった島の真ん中の大穴の調査にあたり、穴の底である地下7,000mの位置で、かつて死んだはずのケルトの神ケルヌンノスが眠っていることを特定する。
その後、残る統制事業と遺跡探索を終了させ、自らの夢の結末に立ち会った後、レイシフトが一方通行であることを逆手に取り、オークニーの岬でマシュにアドバイスを送る。
「貴女には戦う理由はありますが、戦う意思が希薄でした」
・・・・・・・・・
「他人を、世界を傷つける力からそれは良くないものだと無意識に逃げていた」
・・・・・・・・・・・・
「でも、人は誰でも他人を傷つける自由があり、また責任を持っている」
「人間は『善いこと』をしたいのではありません。『善い明日の』のために最善を選び続ける生き物です」
「……そして。その選択には、たとえどれほどの人々が救われようと、正解はないのです」
「正解がない以上、貴女は貴女の意思で、守るものと、倒すものを決めなくてはいけない」
「貴女はこれから沢山の心を知るでしょう」
「理解しようとする心/諦めなない、放棄しない」
「受け入れようとする心/挫けない、憎まない」
「はね除けようとする心/汚されない、流されない」
「……でも、どんなに素晴らしい人間でも、『争わない』という心はない」
「『戦い』はどんな心にもある。どうかそれを忌避しないで」
「貴女の胸の空白が、自分だけの『戦う理由』に埋められた時─────」
「英霊ギャラハッドは再び、貴女にすべてを託すでしょう」
マシュ「─────争いのない、心はない─────それが、どんなものであれ─────」
・・・
「そう。目覚めた時には忘れているだろうけど、その時がきたら思い出すようにしておくね。」
「私のように違うものに変わるのか、貴女のままで新しく成長するのか」
「そればかりは、私にも先読みできないことだけど」
その後彼女を魔術でコールドスリープさせ、彼女を2000年以上眠らせるという方法で元の時代へと送り返した。
正体と摩滅
別れの前、最後にトネリコはマシュに本名を明かす。
「さようなら、確定した未来から来た勇敢な騎士。その功績に免じて、私も秘密を明かしましょう」
「救世主トネリコはただの偽名。オークニーが滅びた時、義母がつけてくれた名称です」
「私の真名(な)はモルガン。」
「このブリテンを救う使命をもって、星の内海から流れ着いた楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)」
「そして、汎人類史においてはアーサー王の仇敵として世界(ブリテン)を滅ぼした魔女」
「遥かな未来において。貴方たちカルデアが倒すべき、異聞帯の王の名です」
彼女の真名はモルガン。
トネリコという名は、オークニー滅亡時に雨の氏族である義母から与えられたもの。
マシュたちカルデア一行が立ち向かうブリテン異聞帯の王、冷酷な妖精国の女王その人であった。
これについてはクリプターのベリル・ガットの回想で、事の真相が判明している。
まずブリテン異聞帯に到着したベリルは、異聞帯にてクリプター権限で英霊召喚を実行し「汎人類史のモルガン」を呼び寄せ、その場は一旦後回しにし寝入ってしまった。
するとモルガンは、その間に異聞帯のおおよその事情を把握してその惨状に嘆くと同時に、「邪魔する者が誰もいないこの世界なら、今こそ自分が望むブリテンが手に入る」と確信し、自身を召喚したカルデアの召喚術式を解析すると、そこから逆算してレイシフト技術を模倣し、滅亡の分岐点である妖精暦4000年までレイシフトした。
ただし、模倣魔術とは言えレイシフト先が特異点でない上に肉体を持たないサーヴァントである以上、コフィンも無しで行えば仮に成功した場合でも霊基の損耗と消滅は避けられなかった。それでもレイシフトを敢行したのは、自分という情報体を受け取れる存在、すなわち「異聞帯のモルガン」が存在していたため(ベリルはこれをメールとアカウントに例えている)。そして目論見通り「楽園の妖精」として雨の氏族に匿われていた「異聞帯のモルガン」に、自分が持つ記憶の全て(汎人類史のモルガンの人生・座から得た汎人類史の知識・カルデアのレイシフト技術を含めた英霊召喚の方法・空想樹及び異星の神に関する情報など…)を伝達し、消滅した(この時点でベリルとは事実上サーヴァント契約が切れている)。
本来の時間軸のトネリコこと「異聞帯のモルガン」は、「楽園の妖精」を疎んだ妖精たちに殺されているため、二千年前における大厄災を回避できず、ブリテンは滅んでいる。
だが、この試みによって「異聞帯のモルガン」は妖精たちに殺される未来を回避し、妖精國の成り立ちそのものを根本から変質させる形で存続させただけでなく、汎人類史のモルガンが持っていた知識と『ブリテンへの執着と渇欲、並びに人間への不信と嫌悪感』をそのまま引き継ぐようになった。
その結果本来の歴史から道筋が逸れた、タイムパラドックスとも言える現象が起きたため、その巻き添えでベリルは消え、瓜二つで記憶なども引き継いでいる状態ながらも「汎人類史から来たベリル・ガット」とは違う存在として再生させている。
つまりマシュが出会ったのは、女王として君臨する前の「汎人類史のモルガンの情報をもった異聞帯のモルガン」であり、現代でカルデアや反乱軍に立ちはだかる悪しき女王と完全に同一人物。
一応前編配信の時点でも、「汎人類史の知識を持っている」のに加えて「異聞帯の存在なのに汎人類史のアルトリアに対しては汎人類史のモルガン当人のように振る舞う」など、伏線は張られていた。
お人好しで冒険好きなトネリコと、現代のモルガンではあまりに性格がかけ離れているが、本来の彼女はアルトリア・キャスターと同じ楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)と呼ばれる、星の内海「アヴァロン」からブリテンの妖精たちの罪を雪ぐべく遣わされた抑止力に近い存在である。 。(この当時は汎人類史において『湖の妖精』としての名である「ヴィヴィアン」を名乗っていたが、記憶上書きによる変質で捨て去ってしまった)
だが、汎人類史のモルガンの記憶を得た彼女は、楽園の妖精としての任務を放棄し、モルガンの悲願である「自分のブリテン国の建国」のために、これから襲い来る災厄を払うために賢人グリムをカルデア召喚術式で呼び出し、魔術の師事を受けた。
異聞帯の彼女は、人間の両親から生まれた汎人類史の彼女と違って純粋な妖精であり「妖精眼」を持つ。
救世主として活躍していた頃は杖だけでなく、楽園から一緒に流れてきた「選定の槍」も戦闘において使っていたが、こちらは繰り返される彼女の絶望に汚染されて魔槍に堕ち、使用者の命を吸い取るようになってしまったために封印された……のだが、後に開放され、異聞帯のパーシヴァルが使用する事となる。
また汎人類史とは異なり、別人とはいえウーサーを憎むどころかむしろ好意的であり、彼が「妖精と人間が共存する国ブリテンの王」になれるよう積極的にバックアップをするほどに仲が良かった模様。
二人は彼女の仲間たちから「ウーサーがトネリコに惚れているのが明らかすぎて、北の妖精たちの長が可哀想。だから王妃はお前のほうがふさわしい」といわれるほど非常に仲睦まじかったようで、最終的にウーサーの戴冠式を控えた頃には「王妃となるのは北の妖精たちの長でなくトネリコ」ということになった模様。
以後は、災厄と1000年に一度の大災厄が迫る日まで、「棺」と呼ばれるコフィンを模倣した魔術礼装に入って眠りについていた。
しかし、トネリコこと異聞帯のモルガンの心境と野望はとても哀しいものであった。
元々彼女は雨の氏族の王妃に拾われ、王女として大切に育てられ、その中で妖精たちをも救う道を志すようになった。
だが実は妖精達には、異聞帯の現状と成り立ち、それに伴う自分たちが抱えた罪から聖剣を創る事で島ごと全てを滅ぼし、同時に妖精の罪を自覚させ清算させる役割も兼ねた「楽園の妖精」を、全てが暴かれ叱責を受ける事を恐れた故に無意識の内から忌み嫌う特性が備わっていた。
それは雨の氏族もまた同じであり、モルガンを恐れて必要最低限の接触しかしなかった。けれども彼女が自分達の所為で幼くして重い使命を背負わされてしまった事への同情と憐れみ、やがて芽生えた家族としての情から、それ以上にモルガンを慈しみ、深い愛を注いだ。
しかしモルガンが16歳になった時、雨の氏族は彼女を匿ったことで鏡の氏族を除いた他の妖精たちに滅ぼされ、養父母である国王夫妻は勿論のこと、姉妹同然の仲であった本来の王女もモルガンを逃がす為に身代わりとなって処刑された。
記録上書きによって今度は運良く生き延びトネリコと名を変えた彼女は、「巡礼の旅」の傍ら人間や妖精間の様々な問題解決に奔走したが、憂いが晴れてひとたびブリテンが平和を取り戻すたびに、その特性により救ったはずの妖精たちに邪魔者として迫害され、その度に「棺」に自らを封印しては再起の時を待ち続けた。
すべては自身(と自身を育てた雨の氏族)が理想とするブリテン建国の野望の為。そして汎人類史のモルガンが生前果たせなかった悲願を果たし、誰もが笑って暮らせる理想郷を作り出す為であった。
しかし現実はどこまでも非情で残酷であり、どれだけ厄災を鎮めようと、どれだけ民族や種族同士の戦争に割り入ってブリテンの危機を救おうと、結局ブリテンの妖精たちは、自分たちが救われると楽園の妖精であるモルガンを「次の敵」と看做し、その功績の簒奪を目論んでは迫害を繰り返した。
モルガンは雨の氏族滅亡の経緯などもあってそれ以外の妖精は大嫌いであったが、妖精國ブリテンを成立させるためには、国民に該当する妖精たちが必要だということをよく理解しており、そのために何度も救おうとした。救いたかったのだ。
だが、救いたいはずのモノたちはどこまでも自らの悪性を自覚せず、自分たちの危機には救世主に泣き付き、ひとたび危機が去ると、ある時は救世主の力が自分たちに向くことを恐れ、ある時はその力に魅入られて名声を奪おうとし、またある時は土壇場で「救世主は気に食わない」、「平和な世界は退屈だから飽きてしまった」(だから要らないので捨てちゃおう)という身勝手な思いつきによって手の平をひっくり返し、昨日までの恩義を平気でドブに捨てて襲い掛かってきた。
かれらは人より遥かに強く、死生観すら異なる "生命" だが、それ故他の "生物" のような「社会性」を本能レベルで必要とせず、多少の例外はいるが種全体としては、決して過去も未来も省みない刹那主義的な在り方から離れようとしなかった。
この歴史が剪定事象になったのも当然であり、汎人類史での妖精たち本来の在り方である「閉鎖的な個々の領域で細々と楽しくのんびり暮らす」生き方の方が、誰にとっても良かったのである。
かつて地球を襲った大災害の末、彼らを救おうとした神と人の子を殺して世界と霊長の座を自分達のものにまでしたが、その発展の先が人の子を生きたまま解体して道具(玩具)となる『劣化コピー』を生み出し(コレが異聞帯の妖精を蝕む、「身に覚えのない罪悪感」として先祖代々から今日まで残された『呪い』の正体である)、面倒事や嫌な事は彼らを含めた他の誰かに押し付けて自分たちはただ気ままに遊ぶだけの、一方的な搾取(模倣)による大量生産と消費・廃棄を繰り返すだけの悪循環仕様に行き着いてしまい、さらにそこから人間の文明や社会構造に加え、“思考” や “感情” までも面白半分に模倣してしまった事により自我が膨れ上がった結果、妖精の本質たる短絡さと身勝手さ(気まぐれの度合い)が、傍から見れば自己中心的そのものな擁護しようのない醜悪の極みにまで堕ちた上、本来あるべき秩序まで完全崩壊してしまっていた。ベリルがカルデアや為政者達の努力を無駄と嗤うのも無理からぬ事だった。
マシュが邂逅したトネリコ(モルガン)は、この時既に繰り返された裏切りによって妖精たちへの愛想を尽かし、心が完全に壊れる一歩手前まで追い詰められつつあった。
そこへ追い討ちをかけるように、ブリテン統一事業に反感を持っていた妖精たちによってウーサーと円卓軍が毒殺され、その罪をトネリコに擦り付けて処刑しようと襲いかかって来た事で、とうとう怒りと憎悪が溢れだし精神が崩壊してしまう。
彼女にはもはや、発狂する以外の選択肢が残っていなかったのだ……
そしてウーサーと自らを売った妖精に整形と記憶操作の魔術を施し、スケープゴートに仕立てて処刑させ、トネリコは表舞台から姿を消したのだった。
女王として
かくして、妖精暦の終わりに大災厄によって滅びたブリテンにて、彼女は空想樹内の魔力を媒体にすることで死んだ妖精たちを復活させ、(この事から、妖精國は彼曰く特異点化した異聞帯になっていた)新たな妖精國を一から作り上げた後に女王の座に就くことで、「モルガン」として「力と恐怖」による支配をブリテンに布く為政者として君臨し、やがて空想樹を失ってなお彼女によって存続させられた世界は、異聞帯ではなく異聞世界へと変わり果てることになる。
とはいえ、モルガンの支配内容はある程度は妖精國を優しく設定し、笑いや発展を許し、存続するようにしたものでもあった。
力と恐怖による支配であり、存在税が払えなければ命すら奪われ、零れ落ちる者も多数いるが、他方でモルガンに従ってさえいれば、妖精たちもそれなりに平穏で楽しい暮らしを享受すること自体はできるようになっていたのである。
「彼女のため」というが、それはただ一人自分を慕ってくれていた愛する『娘』のことか、はたまた自分に情報を与えて散った汎人類史のモルガンのことか…
統治者としても好き嫌いでは動かず、支配に必要なものなら公正に許容する。
「この上なく無様に滅びよ」と敵対する汎人類史のカルデアたちにさえ、厄災撃退の功績は功績として認めて褒賞を与え、女王として自分でも法を守る姿勢は持っていた。
自分のブリテンがアーサー王(汎人類史の世界)以上の国だと知らしめる為と、自分の積年の努力と苦しみは無駄じゃなかったと報われたかった為なのか、異世界の「お客様」に自らの世界を見せることに憧れていた節もあり、汎人類史出身のスプリガン(素性を隠しているが、妖精眼で知っていた可能性が高い)やカルデアに対しても、明確な反乱を起こすまで粛清しようとはしなかった。
他方、幾多の裏切りの中で、唯一彼女を顧みてくれたバーヴァン・シーや、トネリコ時代の数少ない信頼する仲間の次代にあたる妖精たちは、もはや妖精を信用できなくなってしまっていた彼女にとって例外中の例外であり、何かと目をかけたり愛情を注いでいたりもしているが、その接し方は言葉ではなく態度で示す(しかしその態度が非常にわかりにくいため誤解されやすい)という、一言多い上に一言足りないといった様子であり、スプリガン曰く、その行動は「(妖精でなく)不器用な人間の親のよう」であったらしい。
トネリコ時代の性格や言動は決してそのようなものではなかったため、恐らくはセイバーのアルトリアの様に、周りから求められた「救世主トネリコとしての理想的な姿」を長らく演じ続けるうちに感情が無くなった(モルガンからすれば救世主など、ブリテンを手にするまでの虚像であるため、妖精への失望と重なって内心嫌気がさしていたのは容易に想像出来る)か、或いはアルトリア・キャスターの様に、周りを信じられなくなった事で感情を隠しすぎて、出したい本音すらまともに出せなくなってしまったのかもしれない……
そして、モルガンなりに妖精たちの抱える滅亡にもつながるような諸問題に
- 厄災の原因となりうる者に対し、ギフトを与えることで縛りつつ強力な部下とした
- 大穴に眠る厄災に対して、強力な武装を準備し、復活したとしても撃滅できる体制を整えていた
- 自分に万一のことがあった場合でも自分の支配を引き継げるよう、王の氏族と密約を交わしていた
などの手を打っていた。
大厄災が生じた時点でも、モルガンのこうした対策が生きていれば、大厄災に対抗して妖精國が存続できる可能性は十分にあったのである。
支配の綻びから破滅へ
モルガンとしては存在税を取るなど、妖精たちに嫌われるのも無理もない状況にありながら、それを力で抑えつけつつ、自らも統治者としては公正に振舞ってきた。
その力は、本編でも自らの分身を大量に生み出して多数の氏族やカルデア勢力、円卓軍などが組んだ反乱軍を単騎で圧倒してしまうと言う反則じみたものを見せており、妖精たちが反逆した所で打倒など到底望めなかった。
だが、当然そんなモルガンの存在税を取る・娘とはいえ妖精騎士トリスタンの暴虐を容認すると言った行為は妖精たちのヘイトを貯めていった。
そればかりか目をかけている相手からも、不器用な愛情表現がたたって孤立していく。
忠臣であったはずのウッドワスからも、オーロラに吹き込まれた虚言から敵対されてしまい、さらにモース化が進行し、怒りで我を忘れている所為で自己判断が鈍っていたため、彼をこれ以上苦しめない為にも半ば介錯として殺さざるを得なくなってしまった。
娘のバーヴァン・シーは、ベリルからの煽りと無茶ぶりを遠因とするコンプレックスを刺激されて暴走、モルガンに見捨てられたくないあまりに失意の庭を使ってしまい、戦いなど全くできない状態になっていた。
残った妖精騎士もまた、この時点で妖精の本質を知らないバーゲストは国民に対する価値観の相違、メリュジーヌはオーロラへの恋慕を優先事項にしている事から、モルガンの指示など聞かなくなっていた。
モルガン自身の強大な力も、スプリガンが愛娘を人質に取るという自身の弱点を適確についた事により、その直後にオーロラの口車に乗せられたキャメロットの妖精たちが反逆を起こしたことで封じられ、今までの鬱憤を晴らすかの如く殺されてしまった。
傷ついた身体にものを投げつけられ、手足を踏みつけられ、動かなくなるまで殴られた末に剣で滅茶苦茶に切り刻まれた惨たらしい最期であったという。(この惨状には流石のスプリガンですら「火の付き方が予想以上」と引いていた)
しかもよくよく聞けば、皆はみな一方的に虐げられ蔑ろにされた理不尽さに憤っていると云うよりも、我儘を窘められた事に腹が立って癇癪を起こし、ただひたすら泣き喚いて暴れる子供じみた罵倒でモルガンを責め詰っており、自分達の行動を棚に上げた末の逆恨みと分かるそのあんまりな罵詈雑言の数々から、彼らにとって統治者もまた、やりたくない事を押し付ける為の都合のいいただのお飾り(道具)としか思われていない現実を改めて全マスターに突き付け、同時に妖精達への怒りを一層に増幅させたのだった。
更にモルガンの死後まで想定した準備も、オーロラやムリアンの身勝手な振舞いと悪意の塊でしかない言動によってほとんどが無力化されてしまった。
唯一、モルガンの残した武装を起動させて最大規模の厄災を退けることには成功したが、大厄災の結末はモルガンの支配体制が決して単なる恐怖支配でなく、彼女なりに考えられたものであることを裏付けることになった。
そもそもモルガンの方法以外で、妖精國を統治・存続できた可能性は疑わしい。
妖精たちの刹那的で我が儘な有り様がどうやっても直らないなら、もう力で押さえつける以外の方法は残されておらず、おまけに少しでも隙を見せれば、トネリコの時と同じように大切なものを手にかけられ、全て失ってしまう恐れが常にあった。
そうなる位なら自分一人の力で全部なんとかするしかなかった。そして皮肉にも、トネリコ時代に培った努力によって「楽園の妖精」を超える以上の、そこまで出来るに匹敵する力量と能力が十二分に備わっていた。モルガンには『自分を信じる』しか道は残されていなかったのだ。(この部分もまたセイバーのアルトリア(妹)と通じる所がある。決定的な違いとしてはモルガンの過剰な自己過信に対し、アルトリアは過剰な責任と使命を感じたが故に、彼女の助けになりたいという周りの意志を置き去りにしてしまった点だろう)
つまり「モルガンのせいでブリテンがおかしくなった」のではなく、「本来なら滅亡する以外の道しかない世界だったブリテンを、モルガンが問題点が残る形ながらも一応の形で存続させていた」のが真相である。
また前置きとして、モルガンは大厄災と呪いがケルヌンノスの仕業だという事実を、トネリコとして活躍していた当初は全く把握出来ておらず、『水鏡』を使って過去の世界に追い払うのが精一杯であった。
そこへ女王暦から飛ばされたデミ・サーヴァントのマシュがやって来た事で初めて一連の事態を詳細まで察し、妖精國とブリテンを存続させる万全の対策が練られたのである。
だが、上述する通りその「対策」さえも、妖精たちが気まぐれと我儘によって全て丸潰ししてしまい、結果として妖精國は無残に崩壊していった。
モルガンが妖精の憎悪を集めて殺されたのは、確かに自らの統治の因果ともいえる。
しかし、このブリテン島という国と、そこで暮らしていた民衆(妖精)の性質が、そんな方法でなければ統治できないほど「詰んでしまった世界」であったことの証左ともいえる。
また少し言い方は悪いが、大切な娘(バーヴァン・シー)と妖精國(ブリテン)を天秤にかけ『窮地においてはどちらか片方を最優先する』と完全に取り決めていたならば、自分の生命ごと両方を一遍に失うという悲劇は免れたかもしれない……
モルガンの最期について、2部6章の脚本を書いた奈須きのこはこのように語っている。
「どれほどの理由、愛情、努力があったとしても、冬の女王として君臨した以上、それ以外はなかったのです。」
その後、妖精國でのモルガンの記録が座に持ち込まれたことで、彼女の過去もまた英霊として召喚される可能性を得た。
詳細は水妃モルガンを参照。
関連人物
この時代に飛ばされて来たマシュを「初代妖精騎士」として、共に旅をした仲。
ウーサー死後にコールドスリープで後世に送り返すが、その時には時間遡行による歴史の矛盾を避けるべく、自らのマシュに関する記憶も消してしまった。
後にモルガンとしてそのことを思い出したかのような台詞がある。マシュもトネリコを強く信頼しているが、トネリコに当惑されるほど、彼女を見る目は悲しみを帯びていた。
共に巡礼の旅をした戦友の一人。
最後まで共に戦ったが、後にトネリコや仲間達と別れることになる。それでも尚、二人の信頼や絆が壊れることはなく、彼女はトネリコをずっと心配し想っていた。
共に巡礼の旅をした戦友の一人で戦いを通して親友となった妖精。
彼はトネリコとの戦いに敗れたことで巡礼の仲間になり、やがて彼女とウーサーの仲に対して複雑な気持ちを抱くようになったが、その想いを告げずに戦死。
そして後に、彼の次代(子ども)に当たるウッドワスはモルガン(女王となったトネリコ)の忠臣となった。
共に巡礼の旅をした戦友の一人。
旅の果てに別れることになるが、何の因果か後に彼女と同じ姿をした妖精の面倒を見ることになる。
トトロット達と同じ旅の仲間であり戦友の一人。
後にウーサーは「円卓」を結成して人間初の統一王になった。しかし、戴冠式で妖精の手により毒殺されてしまい、トネリコはこれを機に決定的に妖精を見限った。
二人の関係は、本人達としては「恋人」と言う訳ではなかったようだが、互いに同じ誓いを立てており非常に仲が良かった。所謂、友達以上恋人未満の関係だったようだ。
汎人類史の自身から受け継いだ記録を参考にトネリコが召喚した英霊で魔術の師匠となる。
かつて北の妖精を率い、南の妖精と戦争をした女王。
仲裁に入ったトネリコと戦って敗れ、兵を引いた。
後に女王となったトネリコ(モルガン)と密約を交わし、妖精國の次代を担う者として生み出したのが娘のノクナレアである。
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