ディクタス
でぃくたす
父サンクタスは、ジョッケクルブ賞(フランスダービー、芝2400m)やパリ大賞典(芝3000m)を制覇したフランスのステイヤー。ディクタス以外の産駒に、日本で種牡馬として成功したサンシー(ハギノトップレディの父、ダイイチルビーやツインターボの母父)がいる。
母父ワーデンは1953年のワシントンDCインターナショナル(芝2400m)の勝ち馬。
「Dictus」はラテン語で「お告げ」の意味であり、父「Sanctus」(「聖なるかな」、聖歌などで3度唱えて神への祈りを捧げる語句)からの連想である。
日本輸入まで
1969年にフランスでデビュー。父・母父とも上記勝ち鞍の通り明らかに長距離を意識した配合であり、その通り中長距離を中心に使われるがなかなか安定した結果が出なかった。
その原因は体質ではなく、気性が激しく、長距離で我慢のきかないディクタスの気質によるものだったといわれる。
そこで、距離を詰めてマイル戦線に出してみたところ、1971年(4歳)にG3・エヴリ賞で重賞初制覇。さらに同年ジャック・ル・マロワ賞(芝1600m)でG1初制覇を挙げた。
(馬の気性から血統背景とは異なる距離に出走させて成功する例はままあり、日本ではサクラバクシンオーなどが有名である。)
その勢いを駆り、イギリスのG2・クイーンエリザベス2世ステークスで、この時8戦8勝と破竹の勢いで連勝を続けていたイギリスのアイドルホースブリガディアジェラードに挑む。同馬のあまりの強さを恐れて、このレースにはたったの3頭しか出走せず、ブリガディアジェラードに8馬身差をつけられての2着が、ディクタスの最後のレースとなった。
主な産駒
1978年生:パリカラキ(アーリントンハンデキャップ)※フランス時代の産駒
1979年生:ザラテア(オークツリー招待ステークス) ※フランス時代の産駒
1982年生:スクラムダイナ(朝日杯3歳ステークス)
1985年生:サッカーボーイ(阪神3歳ステークス、マイルチャンピオンシップ)
活躍産駒にはマイル~中距離を主戦場とし、末脚のキレを武器に差し~追い込みで勝負するタイプが多かった。1987年の最優秀3歳牡馬・1988年の最優秀スプリンターを受賞したサッカーボーイが代表産駒といえるが、父ディクタス以上の大変な暴れ馬でもあった。サッカーボーイは種牡馬入り後ナリタトップロード(菊花賞、阪神大賞典2連覇)やヒシミラクル(菊花賞、天皇賞春、宝塚記念)を輩出したことから、やはり本来の血統的には長距離向きであったらしい。
ナリタトップロードは早逝、ヒシミラクルも種付け頭数は伸びず、父系は絶えてしまっている。
主なブルードメアサイアー産駒
1988年生:フレイズ(ブリーダーズカップ・ターフなど)父ストロベリーロード
1994年生:ステイゴールド(香港ヴァーズなど)父サンデーサイレンス
2001年生:レクレドール(ローズステークス、クイーンカップ)父サンデーサイレンス
フランスに残した産駒からは、自身もG1を制したザラテアが重賞6勝のフレイズの母となっている。
日本では、繁殖牝馬となった娘たちの中でもゴールデンサッシュの功績が大きい。生涯で19頭を出産という、確認できる限りJRAの最多出産タイ記録の強き母であり、その中からステイゴールドとレクレドールの2頭の重賞馬が出ている。
ステイゴールドは父サンデーサイレンス・母父ディクタスという血統の通り筋金入りの暴れ馬であったが、体質は大変に頑健で現役50戦を走り、引退レースで初GⅠを獲得した人気馬であった。種牡馬としてもオルフェーヴル・ゴールドシップほか多数の活躍馬を輩出しており、母系を介してではあるがディクタスの血は今後も広く血統表に残っていくだろう。