「ブルーよ、おまえに見せてやる。身も心も焼き尽くすような、不幸を…‼」
CV:井上和彦
この記事は本編終盤以降の多大なネタバレを含みます。未試聴の方は注意。 |
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概要
ディープミラーの本体にして、幻影帝国の真の支配者である。全ての元凶たる黒幕。憎しみの神。
キュアミラージュの傷心につけ込んで洗脳しクイーンミラージュに仕立て上げ、世界に不幸を振りまいてきた張本人でもある。
正体
その正体は惑星レッドの神。
はるか昔、その惑星も地球と同じ生命体で満ち溢れていたが、巨大隕石の衝突で生命体は絶滅。
独りになったレッドはどれだけ惑星に住む生命を愛しても、大きな力の前で一瞬で消えてしまう絶望を味わい、愛を否定する「憎しみの神」へと変貌してしまった。
最終回において、ブルーの実の兄であることが判明した。地球と惑星レッドが兄弟星ということも判明。
性格
ディープミラーの状態では礼儀正しい口調だったが、その本質は邪悪かつ冷酷非情な性格。
ブルーに対して異常なまでの憎しみを抱いているが、直接ブルーを痛めつけるようなことはしない。
彼はもっと陰湿にブルーを傷つけようとしており、ブルーが愛し、育んだこの地球すべてに絶望を与えることでブルーの存在価値を否定しようとしている。
ブルーという個人を憎悪しているというより、ブルーがつかさどる「愛という概念」そのものを否定しようとしている、という方がより正しいかも知れない。
レッドの特異なところは、自らが強い憎しみの感情によって動いていることを誇りに思っていることである。「愛は憎しみの前には無力」が口癖。
憎しみを晴らそうとしているのではなく、憎しみがいかに素晴らしく美しい感情なのかということを知らしめようとしている。
そのため、憎しみの感情を隠し持っている人間に接触し、超人的な力を与えて世界の破壊者と変えてしまうことを好む。
これはブルーが「愛の感情を持つ少女に接触し、超人的な力を与えて伝説の戦士プリキュアに変えてしまう」ことと、同じことをやっていることになる。
外見
めぐみの前に初めて姿を見せた第44話では黒のVネックと赤いズボンというやたらカジュアルな装いだった。人間社会で目立たないための変装だったと思われるのだが、ラスボスの威厳など感じられないファストファッションぶりは逆に視聴者の印象に残ることになった。
一部ではユニクロからその衣装を調達したのではないかと囁かれているらしい。
第45話でブルーに対して宣戦布告するために登場した時は、金ボタンつきの洋装にマントを羽織った大仰な姿だった。どうやらこれが神としての本来の衣装な様子。
戦闘能力
イノセントフォーム状態の4人の猛攻をものともしない上、イノセントプリフィケーションも効かない。本気を出して攻撃すればイノセントフォームも解除できる。
また、プリキュア封印が可能である。
フォーエバーラブリーでやっと互角に戦えるほどの戦闘力だった。
洗脳能力
レッドは普通の人間に超人的な力を与えて、悪の戦士に変貌させることができる。レッドの加護を得た者は、自らの心の中の憎しみを高めるたびに力を増す。
具体的には、レッドが生み出す「憎しみの結晶」が反応する者のみが候補者となる。
これはブルーがプリキュアを選ぶときに「愛の結晶」が反応する者のみが候補者になるのと同じである。
もっとも、ほとんどの人間は自分が憎しみの感情を持っていることを認めたがらないので、レッドは候補者となった者の心の中に語り掛け、我慢せずに憎しみを解放させるように囁く。
レッドの言葉に陥落した者は、「憎しみの結晶」が自分の肉体と同化し、プリキュアと同等の超人的な力を得ることになる。
レッドの加護を得た者達は、自分が不幸で絶望的であることを運命として受け入れ、そこから抜け出して幸福になりたいと望むことを諦めてしまう。
しかし同時に、自分以外の者が幸福を謳歌していることに強烈な憎悪を抱くようになる。
その結果、すべての他人を自分と同じような不幸と絶望に落そうと強く望むようになるのである。
ゆえに彼等は世界に破壊と混乱を巻き起こさずにはいられない。
なお、レッドがその正体をあらわにする第43話以前の時期に洗脳された者達は、自分が誰かに洗脳されたという自覚がない。
一方、自分が悪の戦士に変貌してしまったことにも疑問を持っておらず、それ自体が洗脳の効果であるようだ。
以下に、レッドが加護を与えた者達について推測も含めて記載する。
キュアミラージュ / クイーンミラージュ
300年前、ブルーに恋心を抱いていたが失恋してしまったキュアミラージュを悪堕ちさせるが、このときはブルーが悲しみの果てにミラージュをアクシアの箱に封印することで、事なきを得た。
しかし、300年後に白雪ひめによってアクシアが開けられ、ミラージュは復活する。
ミラージュはブルースカイ王国を乗っ取り幻影帝国を作り上げ「クイーンミラージュ」と名乗るようになった。
ブルーはそれに対抗するために世界中にプリキュアを誕生させる。こうして『ハピネスチャージプリキュア!』の物語が始まることなる。
オレスキー、ナマケルダ、ホッシーワ
本作における三幹部達。彼らはレッドによって洗脳された現代人たちであったことが、最終話での増子美代の取材等により判明している。
マダム・モメールのような他の幻影帝国幹部たちも同じく洗脳された現代人だったと思われる(ただし映画版に登場したブラックファングについては正体不明)。
愛乃めぐみ
第43話にて、キュアラブリー=愛乃めぐみの活躍でクイーンミラージュの洗脳が完全に解け、ミラージュは元の姿と心を取り戻す。
この戦いで、レッドの仮の姿であるディープミラーの鏡も砕かれ、レッドはここにきて自分の本当の姿を晒して行動せざるを得なくなった。
レッドは自身の計画を打ち砕いためぐみに絶望を与えてやると復讐を決意。めぐみをミラージュの後継者として洗脳し、めぐみが守ったこの世界を、めぐみ自身が壊すように仕立て上げようとした。
第44話では、ブルーに失恋して悲しみに沈むめぐみに接触し、憎しみの結晶を埋め込む。
「お前はみんなの幸せを守ったのに、この世界でお前は幸せを得られていない」「ならば世界をお前の望むように変えるといい」と言葉巧みにラブリーを誘惑して洗脳しようとする。
後一歩で洗脳が成功したかに見えたが、誠司の呼び声で自分を支える親友や仲間の存在を思い出し、レッドの洗脳を跳ね飛ばし胸に埋め込まれた結晶を抜き出したことで洗脳は失敗に終わった。
洗脳を退けたラブリーへ「苦しむ事になる」と言うも、「私にはみんながいる」と言う彼女の言葉を受け、ミラージュの代わりにできなかった事に苦々しく思い、後悔するぞと言い残して去った。
相楽誠司 / ダーク誠司
めぐみが自身の洗脳に対抗できたのは、彼女が仲間に支えられているからと思い知らされたレッド。
ならばその絆を断ち切ってやろうとして、仲間たちの中でもめぐみに特別な思い入れを持つ誠司に目をつける。
第45話では誠司の前に姿を現し、憎しみの結晶を埋め込んで悪堕ちさせる。
ハピネスチャージプリキュアに対する最強の手駒をレッドは入手したことになった。
第46話では憎しみに取り込まれた誠司をプリキュアと戦わせる。
愛の神ブルー、そして彼が生み出したプリキュアという存在が憎いと語り、そのためにお前たちを絶望に染めると高笑いする。
そして、「誠司が憎しみに取り込まれたのはめぐみのせいだ」と暴露。めぐみの今までの態度が誠司をいかに傷つけていたかを指摘。
ついには、地球を滅ぼすために惑星レッドを召喚、そこから無数の赤いサイアークが地球に降り立った。その上、このままだと星同士が衝突してしまうため、地球全土が一瞬にして破壊と混乱に陥る。
最大の脅威だったハピネスチャージプリキュアはもはや戦意を失ったと判断したレッドは、あえてここでトドメは刺さず、地球が滅んでいくさまを見ながら絶望に沈めと勝利宣言する。
それでもまだ抗いたいならば立ち向かってこいとも挑発し、その時はさらなる絶望を与えてやろうと笑みを浮かべた。
そして、誠司とともに赤い惑星へ飛び立っていくレッド。
第47話では前回でキュアテンダー達世界中のプリキュアの叱咤激励によって仲間と共に立ち直っためぐみと誠司が再戦。誠司を助けようと頑張るキュアラブリーの努力を嘲笑い、どちらかが倒れるまで戦い合うのがお前たちの運命と言い放ち、ラブリーをさらなる絶望に落とそうとする。
しかし、ラブリーはそんなレッドの言葉をあえて肯定。
誠司の憎しみは誠司が私に本来もっていたものなのだから、その感情は認めないといけないとして、誠司の憎しみにとことんまで付き合い、戦い合うという決意を固めた。
その姿に、レッドは激しく困惑していた。
レッドの本心と末路
自分の愛した世界が滅んでしまったのに、ブルーが管轄する地球は青く美しく輝き続けている。
長き時の中でレッドは地球への憎しみをつのらせていき、地球に住む者たちにも自分が抱いている底なしの絶望を味あわせてやろうと画策する。そして、幻影帝国を設立して世界を不幸に染めようとした。
つまり、自分が不幸なのに、相手が幸福なのが気に入らないから、相手にも不幸になってもらうという憎悪や嫉妬に駆られている。
ディープミラーとして背後で帝国を操っていた当時の目的は、地球人に永遠に不幸を与え続けることだったのである。
だが第43話で帝国が崩壊し、めぐみを女王の後継者にすることにも失敗したため、レッドはすべてを「終わらせる」ことを決意した。
帝国壊滅後のレッドの最終目的は、地球もろとも自らの存在も滅ぼすこと。
侵略する側もされる側もいなくなり、愛も憎しみもすべては無に帰す。このような結末をレッドは望んでいた。
第48話では、キュアラブリーに自分のコンプレックスをぶちまけたうえで「(こんなことで地球が滅ぼされるなんて)理不尽と思うだろう? ならば俺を憎め!」と挑発している。
しかし、それでもレッドを救いたいとラブリーは譲らなかった。
レッドはそんな彼女に自分の本当の絶望を伝えるべく、ラブリーを突然抱きしめ「俺を愛するというなら、俺とともに滅んでくれ」と悲しげにつぶやいた。挑発的な言動が多いレッドだが、これは偽りない本音。
ラブリーもこのような相手には何を言っていいかわからなくなり、レッドを突き飛ばしてしまった(作中でめぐみが「困っている他人」を突き放した唯一の場面である)。
そんなラブリーの姿にレッドは自嘲的に笑い、やはり愛などでは自分は救えないと吐き捨てている。
だが、「助けを求めていない敵を助けられるのか」は、本作において愛乃めぐみという主人公に突きつけられ続けた大きなテーマでもある。
なお、「自分のため」に戦うという考え方が希薄という点はレッドとめぐみは相似しているとも言える。めぐみのモットーが「みんなの幸せは、自分の幸せ」だというならば、レッドは「自分の不幸は、みんなの不幸であるべき」というスタンス。
最終回においてフォーエバーラブリーの浄化技『プリキュア・フォーエバーハピネスシャワー』により彼女たちの思いを受けたことで、自分の地球への憎しみは失われた惑星レッドへの強い愛の裏返しだったことに気づく。あれだけ否定した愛が自分の根源にあったのだ。
そのことに愕然となった彼は戦意を完全に失うが、「再び一からやり直そう、そのためにこれからはあなたと共にいて支え続ける」と弟から説得され、その恋人と共に惑星レッド再建の為に地球から去って行った。
深い絶望と、弟が築き上げた“命溢れる美しい星、地球”への尊望と嫉妬から暴走した彼であったが、実のところ惑星レッドが滅んだ理由やその時の様子などが尺の都合で一切描かれておらず、視聴者視点ではレッドの絶望に感情移入しにくい。そのため、レッドのやっていることが絶望に囚われているというより単なる八つ当たりにしか見えなかったりもする。この記事では「惑星レッドは隕石の衝突で滅んだ」となっているが、これは放映終了後にスタッフインタビューで明かされたことである。むしろ放映当時の視聴者の考察では「惑星レッドの住民は、戦争なりなんなりで自ら滅んだ。だからレッドは人間を愛する意味を失った」という考察も語られていたくらいである。
レッドが操っていたクイーンミラージュは「フラれた腹いせ」でブルーへ憎しみを募らせていたという私怨が根源にあったが、ミラージュとブルーの内面性は一年に渡ってじっくりと描かれてきたため、二人の恋愛模様は視聴者にも理解しやすかった。それに比べるとレッドの心情に関する描写はそんなに丁寧には描かれなかったのが実際のところである。後1話分でも余裕があればレッドとブルーがまだ仲が良かった頃の兄弟の日常なども描かれて、レッドがいかにして心を曇らせていったかもわかりやすくなっていたかもしれない。
2016年3月公開のオールスターズ映画『プリキュアオールスターズみんなで歌う♪奇跡の魔法!』において歴代のラスボスと共に登場しているが、こちらは本物ではなく魔女ソルシエールがプリキュアの記憶を元に再現した複製体でピンクカルテットを捕らえるためにジャアクキングの複製体と共に自爆させた。
この為、本物は現時点ではモブ出演していないが、20周年記念映画では他作品の改心した敵組織のラスボスや幹部達と共に『Go!プリンセスプリキュア』のキュアスカーレットから『ひろがるスカイ!プリキュア』までの38人を含んだ歴代プリキュアを、同作のミラクルライトを振りながら応援したかも知れない。
余談
幻影帝国の幹部には必ずモデルあるいはモチーフが存在しているが、レッドの場合は恐らく旧約聖書に出てくるアダムとイブの子であるカインと思われる。
カインは神に寵愛される双子の弟、アベルに嫉妬し、人類初の殺人と嘘をつくという罪を犯したが、流石にレッドはブルーを殺す事はなかった。
作中では「ブルーの兄」としか明かされないが、コンプリートブック内の記述によると彼等は双子とのこと。
レッドが洗脳したキュアミラージュと相楽誠司。この二人は諸説あるがピクシブ上では一応、前者はレッドヒロイン、後者はレッドヒーローとして扱われている。
レッドがこの二人を選んだ理由は、本当に「ブルーやめぐみへの愛憎を利用できそう」だけだったのだろうか?
レッドが本編に出てくる前に公開された映画版でも、キュアラブリーに負の感情を持つ人物を裏から操る幻影帝国幹部が黒幕として出てきた。