演:成宮寛貴
杉下さん、ここ俺の概要なんスけど?
※名前の漢字は、「享」であって「亨」ではない。
『相棒』シリーズにおける、三代目の相棒。あだ名は『カイト』。
あの無機質な右京ですら「カイト君」と呼び、
歴代の相棒達にはなかった優しい対応もしている。
言動はやや荒っぽく、勝気で奔放な青年。
一方、不正を嫌う正義感も秘め、僅かなことにも気付けるほどの観察力に優れている。
刑事としての能力は全体的に優れているが、それとは裏腹に勉学は苦手な模様。
「Barter(バーター)」を「バター」と読んだり、数学者に出された数学問題をすぐに投げ出し、渡された紙を紙飛行機にして飛ばしたりしている。
だが、Season11の第17話では岩月と右京に混じってペラペラな英語を披露している。
幼少時、親の意向でピアノを習っており、その際に絶対音感を会得しており、その音によって撃たれた銃の形状が違う事を指摘した。しかし、享が初登場したエピソード以外で発揮されることはなかった(所謂ご都合主義)。
幽霊などのオカルト系は苦手らしく、異様なまでに怖がることも。
ある事件で記憶喪失に陥り、大人しい性格に変わっていた。その後、謎の幽霊の力で記憶を取り戻したものの、最後まで幽霊と認めなかった程。
また、上述の記憶喪失回も含めて亀山薫同様事件に巻き込まれやすい体質なようで、散々な目にも遭う事もしばしば(集団暴行、階段から落下し骨折、指名手配される、犯人に騙されるなど)。
コーラを愛飲している模様。
上着の下にジレベストを着用するスタイルが多く、たまに上着ごと腕捲りをしている。
ファッションセンスに関しては、同年代の男性からもかなりの高評価を得ていた。
経歴
刑事という職業に純粋な憧れを持っていた為、中根署管轄の交番勤務をすることになり、
後に署長推薦の選抜試験に合格して、ようやく念願の同署刑事課捜査一係の刑事になった。
しかし、警視庁入庁前は父・峯秋さんと同じ警察に行くのを避けるため就職活動をして内定も取ったが、警察官志望の思いが強く、内定を辞退した過去がある。
香港国際領事館で起きた拳銃暴発事故の後に右京と出会い、その際に「隠蔽」と言う単語から右京に事件のことを悟られ、右京と共に事件の真相を探るために香港へ向かう。
その最中に起きた、領事館占拠事件の裏で起きた総領事殺害事件を共に解決。
その後、右京が峯秋に直接、彼を特命係に指名し、息子は刑事に向いていないと思っている峯秋の思惑と相まって特命係へと異動になった。
勿論本人の意思とは無関係な為、「指名料取るぞ!!」とかなり反発していたが、少しずつ信頼を寄せるようになった。
人間関係
CAの笛吹悦子と交際中で、互いの自宅に行き来したり、料理やマッサージをするなど、関係性は良好。なお、悦子の方が年上で、彼女とは合コンで知り合い、恋仲に発展したと思われる。
峯秋とは冷戦状態で、親の七光りなどの力を一切借りずに刑事になったことを自負している為、
「パパの力で刑事になった」などと言われると憤慨するなど反骨精神が強く獰猛な一面もあるが、峯秋を侮辱されるのはさすがにいい気はしないらしい。また、父親のコネを利用して政界の大物から話を聞き出す機会を作り出したり、峯秋に直談判して犯人グループの拠点への応援を要請したりと、父親との関係をうまく捜査に利用したこともある(伊丹さん曰く「親父パワー」)。
本人は「2人とも海外にいる」と話していたが、兄は後に正式に登場した際に財務省の官僚という設定になっており、当初の設定と食い違いが生じてしまっている。なお、母親は今のところ登場していない。
捜査一課配属を目指していることから、亀山や神戸に比べて、一課との間に敵対意識がないため、右京と捜査して得た情報を捜査一課に話したり、逆に捜査一課から得た情報を右京に話すことも多い。
芹沢くんからは愛着を持たれていたが、話が進むにつれ、捜査一課の面々が面倒な人々であると悟りつつある。
余談
ちなみに、右京が甲斐を相棒として自ら指名したと大河内監察官から聞かされた際、
元相棒・神戸尊は腰を抜かすほどの衝撃を受けたらしい。
なお、神戸と甲斐は、一度劇場版で顔を合わせているため面識がある。
右京との別れ ※S-13-最終回のネタバレ注意!
そんな彼もSeason13の最終話にて特命係を去る事になったのだが、この顛末は文字通り「衝撃の結末」を劇中の登場人物やリアルタイムに視聴していた視聴者達に突きつける形となってしまった。
父・甲斐峯秋との確執、妊娠と同時に白血病と診断され、緊急入院した恋人の笛吹悦子のこともあり、一体どういった『卒業回』になるのだろうと多くのファンは期待を胸にしていた。
しかし…待ち受けていたのは誰もが予想しない衝撃のラストであった。
予兆
Season13の最終回に関する話で、最終回放送の直近になって、各メディアにこんな発言が出ている(以下は発言を要約したもの)。
「元々成宮君はシーズン12で卒業する予定でしたが、僕の方から1シーズン延長して貰える様に打診したんです」(杉下右京役・水谷豊氏のコメント)
「あの最終回は多分、杉下さんじゃなかったら泣いてたかもしれませんね」(甲斐享役・成宮寛貴氏のコメント)
特に享役の成宮氏のコメントに違和感を覚えたファンが多く、しばらくして「カイト君の事だし、殉職か不祥事やらかしてクビになるオチくらいしか浮かばない」と悲壮感を抱くファン達がちらほら出始めたという(なお、当初の予定ではSeason12最終話の被弾シーンで殉職するという設定だったらしい)。皮肉な事に、その予感は最悪の形で的中してしまうことになったのであった。
なんと、それは自身が起こした不祥事により懲戒免職となってしまったのである。
この一件では上司である右京も「案件に直接関与したわけではないが、上司の監督責任」として、半ば強制的に無期限の停職処分になり、特命係は「事実上の凍結状態」にされてしまった。
そして逮捕へー。
表向きは警視庁の警察官として勤務しながら、裏では法の網を潜り抜けてのうのうと暮らす悪人に対して次々と私刑行為を行う、"ダークナイト"と呼ばれる犯罪者だったことが、Season13最終話にて(唐突に)判明する。
2年前、親友である梶祐一郎の妹が通り魔によって惨殺されるという事件が起こるが、被疑者は当時規制の対象外だった薬物(所謂危険ドラッグ)を使用していたため罪に問うことができず、無罪放免となった。
そのことに納得がいかなかった梶は、被疑者に自らの手で報復を加えることを画策するが、甲斐はそれを止めるため、また、怒りに身を任せた行動がどれだけ愚かなことかを知らしめるために、梶の代わりに被疑者を襲撃し、重傷を負わせた(これは、彼が犯人を殺害しかねないほどの激しい憎悪の念に囚われていたことから、先に殺さない程度に復讐を行うことで殺人を阻止するという目的もあった)。この事件は当時ちょっとしたニュースになったようだが、被害者の上記の経歴などから、世間では被害者に同情する声は少なく、むしろ襲撃者を称賛する声が多かった模様。
甲斐は、これを機に「法の裁きを受けることのない悪人を次々と襲撃する」という事件を起こしていくようになり、(なお、いずれのケースも負傷させるだけに留め、死に至らしめたことは一度もなかった)いつしか世間からは「ダークナイト」と呼ばれるようになる。
しかしそれにより、ダークナイト信奉者による模倣犯が現れてしまい、本家のように死に至らしめない程度に痛めつける事ができず、結果的に被害者が殺害される事態にまで発展してしまう。この事件がきっかけで右京に甲斐がダークナイトだと気づかせる事となった。
なぜ私刑行為を続けたのかは、本人も「わからない」としているものの、大河内監察官は「世間からの喝采を浴びたことに対する優越感」、父親の峯秋さんは「優れた捜査能力を持つ右京への劣等感や嫉妬心から、このような私刑行為を繰り返した」と分析している。
ただ、元々あまり他者から自身を認めてもらえず、内心不満を募らせていた経歴を持っていることを考えると、最初の犯行を機に、自身でもそれまで募らせていたフラストレーションを抑えられなくなり、犯行を繰り返し続けるようになってしまったと考えられなくも無い。
結果と代償
右京の手により一連の事件の真相が暴かれた後、傷害容疑で逮捕され、警察からも懲戒免職の処分を受けた。これにより、犯罪に手を染めたことで特命係を去った初の人物となってしまった。
また、右京はこの一件の監督責任を問われ、次のSeason14第1話で復職するまで無期限の停職処分を受けてしまい、特命係も一時活動停止に追い込まれた。
停職処分後の右京の海外渡航(※)、警察官として許されない罪を犯し逮捕されてしまった甲斐、
そして妊娠の喜びも束の間、白血病に見舞われた上に、恋人を逮捕される形で失ってしまった悦子…
このSeason13の最終回は、歴代シリーズの中でも非常に後味の悪い形で幕を閉じる結末となったのだった。
※Season14にて、この時の右京は渡英してスコットランドヤードの捜査協力を行っていたことが判明している。また、この際に後に特命係と大きく絡むことになる南井十とも知り合っており、右京の停職処分およびそれに伴う渡英は後の展開にも間接的ながら影響を与えている。
後味の悪さ以外にも、それまで享が犯行を重ねていたことを示唆する伏線のようなものが一切なく、唐突かつ強引に「甲斐享は犯罪者であった」という展開に持ち込んでしまったこともファンの間では到底納得のいくものではなく、放送直後はファンの間で内容について様々な賛否両論が巻き起こった。
pixivにおいてもこの結末に納得できず、今回の話そのものを夢オチにする絵師が後を絶たない(ちなみにこのタグ自体の普及率は低く、甲斐享のタグでネタバレ(注意)のタグを付け加えていたり、キャプション追記やワンクッションを置くことの方が多い)。その一方で、右京の無力さに注目し、新シリーズでは新たな一面が見られるのではないかと考える者もいた。
制作側にも相当な批判やクレームが届いたようで、Season13の放送終了から半年が経った2015年9月、テレビ朝日の西新総合編成局長は「相棒独特の世界がもともとある中での衝撃的なラストシーンだったことは間違いないと思う」と述べた上で、「本当、いろいろな視聴者の方から、本当にたくさんのご意見があった。それを受け止めて、次の作品に生かしていくということですね。難しいですね」と語っている。
製作側は、Season14から新相棒の冠城亘を登場させることで展開の一新を図ったものの、この時のダメージは現在でも完全に拭い去れてはおらず、視聴率も2桁台こそキープできてはいるものの、平均で20%越えが当たり前だったSeason13以前と比べると15~17%台と低迷を続けている。
更なるショック
享の再登場を望む声が多かったが、演者であった成宮寛貴氏が薬物使用疑惑の件を機に、2016年12月9日付けで芸能界から引退してしまった。
だが、それから数日後のS-12-13にて「右京の友達」が再放送される事になり、現在も不定期で彼のエピソードが放送されている。
しかし、彼が引退していなければ、Season15の最終回にて甲斐が再登場する予定だったらしい…。
その最終回の内容はseason13で初登場した社美彌子に関する伏線回収のエピソードで、その時起こった事件の当事者だった彼にも出番を与えるつもりだったと思われる。
そして…
Season15の最終回にて、冠城亘が事件の過去を振り返る回想シーンにて甲斐が再登場し、さらにエンディングで出演者として成宮寛貴と名前も表示された。
ファンの間では「相棒」のお蔵入りも心配されていただけに、
「ありがとう…成宮くん出た…涙出た…」、
「やっぱり成宮くんは周りの人達に信頼されてるし愛されてるんだ」、
「相棒でまた甲斐享くんが画面に映る日が来ようとは」
とファンには嬉しいショックが巻き起こった。
その後も時々父親である甲斐峯秋の逮捕された息子への想いなどの回想にて少しずつ登場している。
Season15からレギュラー入りをした青木年男も警察官の父親と確執を持つなど享と一部共通する境遇にあり、そんな彼を「ろくでなしの出来損ない」と評するも「ある種特別な関係性」ゆえに複雑な想いを抱いている衣笠藤治といった、甲斐親子の関係性を思わせるようなキャラクターも生まれている。
また、右京の相棒でありながら歪んだ正義に染まり、犯罪者に墜ちるというダークナイトとしての立ち位置に関しても後に登場したある人物で再利用されることとなった。
(ただしこちらは動機はともかく、再登場する度に大勢の死者を出しているシリーズ屈指の巨悪である。あるいは甲斐が再登場する機会があれば何かの形で絡む予定だったのかもしれない。)
そして、Season22の第10話(元日スペシャル)にて恋人の悦子が再登場。
悦子の白血病は父から提供された骨髄を移植したことで完治しており、享との間に身籠った長男の笛吹結平(演:森優理斗)も無事出産して、峯秋や享の兄である秋徳も助けも借りながらしっかり育て上げていたことが明らかとなった。
一方で、ダークナイト事件により既に悪名が世間一般に知れ渡ってしまっていたこともあり、享は悦子と正式な婚姻関係を結ぶことを拒否し続けているようで(所謂事実婚。結平が母親の姓を名乗っているのもそのため)、峯秋も孫にショックを与えてしまうことを恐れて、父の詳細について話していなかった模様。
しかし、同エピソードにおいて、悦子が享の経歴をネタに脅迫された上に危うく殺されかける事態になる。特命係によってその計画は破綻したが、主犯の女(演:美村里江)が開き直って悦子と享の関係を洗いざらい検察に話すことを仄めかしたため、峯秋はせめてマスコミを通して父親の所業が結平に伝わるのだけは避けたいとして、近いうちにすべてを話すつもりであることを特命係に伝えている。
関連項目
正義中毒 - 享の場合、これに当てはまる。
三浦ショック - ある衝撃的な理由で退職に追い込まれた刑事繋がり。
真下正義 - 父親が警察官僚繋がり。怪我や事件に巻き込まれやすい部分も共通しているが、こちらは甲斐親子ほどの険悪な関係にはなっていない。
犯人はヤス - 本件とよく似た、『ポートピア連続殺人事件』の有名なネタ。
バットマン - パニッシャー(MARVEL)、ゴーストライダー、ルナティック - 犯罪者に私刑行為を行っているキャラクター。このうち、バットマンは「ダークナイト」の元ネタになったと思われる(同名の映画シリーズが公開されているため)。
トゥーフェイス - バットマンに登場するキャラクター。劇場版の設定では「強い正義感を持つが、それ故に手段を選ばない独善的な面も大きい」人物として描写されており、キャラクターモチーフの一つとなっていると予想される。
高橋健一(キングオブコメディ) - 相棒と組む以前から相棒の知らない場所で連続犯罪を繰り返していた実在人物(こちらは制服泥棒)。
その相棒は会見で「メンバーに泥棒がいたんですね。」と自虐ネタにしていた。
逮捕されたのがちょうどSeason13終了と同年だったのもあって甲斐享を連想した視聴者も多かった模様。
水原一平 - 相棒の知らない所で犯罪を繰り返していた実在人物。一度は名声を手に入れたにもかかわらず、その事件により容疑者として転落してしまった点も共通する。
井納ひかり - 日本テレビで放送されたドラマ、『○○妻』の主人公。
日頃忙しいニュースキャスターの夫を陰ながら支える元看護師の良妻…に見せかけて、実は婚約していない契約妻。
ある事情で自分には妻になる資格はないと拒み続けたが、最終回で晴れてゴールイン。
ようやく順風満帆な生活が送れると思った矢先、夫が不良達に絡まれ、彼を守ろうとして階段から転落してしまう。その後、病院に運ばれ、電話越しで愛を誓うも、そのまま帰らぬ人となった。
事前にそのような振りや伏線もなかった上、その回はダークナイトの放送回と同日の一時間後だった為、2連続で突然すぎる結末に唖然とした視聴者もいたらしい。
エミリー・オブライエン - ルパン三世長編シリーズである天使の策略に登場する新人捜査官。
ドジで失敗する事も多いが、そのやる気だけは銭形警部に認められ、一人前の捜査官に育て上げようと目にかけていた。
しかし、実は女性だけで構成された反米系のテロ組織、ブラッディエンジェルスの首領、スパイダー・エミリーであった事が発覚する。上司の信頼を裏切り、悪事を重ねていた者繋がり。
伊達一義 - フジテレビで放送されたドラマ、『ジョーカー許されざる捜査官』の主人公。
こちらも警察官でありながら、法で裁けなかった犯罪者を裁いている。彼の場合は麻酔銃で眠らせた後に何処かの孤島へ連れていき、私設刑務所で終身刑を与えるという形を取っている。
谷村正義 − 『龍が如く』に登場する中の人繋がりで同じく警察官。
こちらも警察官として勤務しながら裏で悪事を重ねているものの、こちらの場合は違法風俗店から賄賂をとるという形である。
高遠遙一 - 『金田一少年の事件簿』に登場する最凶最悪の殺人鬼。
享の中の人がかつて演じていた事もあり、ドラマを見ていて彼を連想する視聴者もいたと言う。