踊れ!アミーゴ!
おどれあみーご
クレヨンしんちゃんの劇場版十四作目。
メインテーマはサンバ。また、メッセージとしては、自分の自由に生きる。
しかし、本作最大の特徴は、メインテーマなどどうでもよくなる位に怖いこと。
一応、タイトルの内容自体は回収されているものの、タイトルの陽気さからは考えられないほどのホラー演出とストーリー展開から、クレしん映画屈指のトラウマ映画として有名であり、ある種のタイトル詐欺映画とも言える。
むしろ、サンバや自由に生きると言ったメインテーマなのだが、クレしん映画特有のしんのすけの下ネタやブラックジョークと言った要素は、作品の怖さを少しでも軽減し、分かりやすくハッピーエンドにする為に強引に混ぜた要素としか感じられ無いほど。
作中で「ツンデレ」という言葉がでてくるなど、劇場版ならではの監督の趣味要素が見られる他、監督自身が溺愛しているという風間君の出番が特に増えている。また、本作ではしんのすけたちのいつもの私服姿の描写が少なく、ふたば幼稚園のスモック姿での行動が非常に多く描写されている。
元々、クレしん映画は子供向け映画とは思えないほど、大人向けに作られる傾向のある映画シリーズだが、本作ではその中でも異色とも言えるほど、子供向けの内容を抑えている。
クレヨンしんちゃんのテレビアニメ版の中には、なぐられウサギを始めとして大人でも怖くなるぐらいに怖いホラー回が時たま挟まれることがある。
本作は、そんなホラー回に焦点を当てて作られたシリーズの中でも異色すぎる作品。
本作は敵勢力が圧倒的な力を奮っていた前半とギャグ展開メインの後半の展開で大きくギャップが噛み合っていない所為なのかシナリオを把握できる者は大人を含めて少ない。
その温度差やシナリオの掘り下げが足りないのか低評価をつけられることも多い(アミーゴスズキに関しても最後は和解した割には視聴者に理解及び共感されるようなところが殆ど無い)。
しかし、前半のホラー演出に関しては異様に完成度が高く、クレヨンしんちゃん的なギャグが無ければ、そのまま普通にホラー映画の名作と言っても過言では無い位に怖い。
クレヨンしんちゃんとは思えないほどおぞましい表現が多く、風間君の母親の顔が怪物に変形する、ミッチーの顔が不気味に変形するなどのシーン(下記のコンニャクローンが原因とはいえ)は、これまでのクレヨンしんちゃん映画とは思えないそのホラー演出から、多くの映画視聴者にトラウマを残した(風間君の母親の一部のシーンに至っては、あまりにグロテスクなので地上放送の際にはカットされてしまった程)。
また、本作の冒頭シーンは吉永先生が偽物にすり替わられるという衝撃的な開幕を迎えるのだが、実はこのシーンは、初見よりも二回目の方がより恐怖を感じやすくなるように伏線を張っており、いわゆる意味がわかると怖い話としての一面も備えている。
演出に関しても、『怪奇大作戦』や『遊星からの物体X』や『エクソシスト』等へのオマージュが見てとれ、とにかく、ホラーテイストとブラックユーモアを強く押し出しており、少なくとも最終決戦前までは完全なるホラー作品である。
尚、本作の舞台はしんのすけたちが住んでいる春日部のみで、広範囲にわたって展開されている例年の劇場版作品と比較すると規模が小さいが、ジャッキーが「最初に事件が起こったのはアメリカ・カリフォルニア州のサンタモナカ。次はメキシコ、カナダ…、春日部シティは6番目の町」と発言しているので、事件の中核となる「世界サンバ化計画」は世界的なものである。また、サンタモナカで起きた最初の事件(サンバ・カーニバル)はニュースで中継されており、物語序盤で野原一家がそのニュースを見るシーンがある(この時、中継映像のニュースキャスターの後ろにジャッキーの姿が映っている)。
「ニセモノが現れて、ホンモノはいつの間にか消えてしまう」というカスカベ都市伝説が園児の間で話題に。
そんな中、スーパーでみさえのニセモノに襲われたしんのすけはジャッキーと名乗る女性に助けられる。彼女は「世界サンバ化計画」の首謀者、アミーゴスズキを追う特別捜査官だった。アミーゴスズキの目的とは何か?しんのすけは消えた住民たちを助けられるのか?
アニメ版からの登場人物
映画の登場人物
ジャクリーン・フィーニー(CV:渡辺明乃)
SRI(「S:サンバの」「R:リズム」「I:いいネェ〜」の略)という組織に所属する特殊捜査官の女性で、しんのすけ達の味方。愛称は「ジャッキー」。
何故か「ツンデレ」と書かれた赤いジャージを着用しているが、性格はどちらかといえばクーデレ、およびクールビューティーに近い。
しんのすけからは「シンデレラのおねーさん」と呼ばれる。
モデルは、主題歌を担当した倖田來未。
アミーガスズキ/アミーゴスズキ(CV:田島令子(アミーガスズキ)、池田秀一(アミーゴスズキ))
今作の黒幕の女性であり、コンニャクローンを作り出して春日部の人間達をコンニャクローンにすり替えた張本人。
世界中の人間をサンバで踊らせる事を目的としている。
その正体は、コンニャクローンの技術で女性の姿(素顔はジャッキーに瓜二つ)に変装していたジャッキーの実の父親「アミーゴスズキ」だった。
チコの独断によってジャッキーが射殺された(実際は奇跡的に無傷で済んでいた)のをきっかけに正体が露見し、ジャッキーとのダンス対決を経てサンバの素晴らしさを思い出して和解する。因みに上記の思想を抱くようになった経緯は最後まで分からなかった。
チコ(CV:中江真司)
アミーガスズキの側近の覆面の男。
ジャッキーとアミーガスズキのダンス対決の最中、独断によってジャッキーを射殺しようとした事がアミーガスズキの正体の露見及び敗北の原因となった。
アミーゴスズキがこんにゃくを材料にバイオテクノロジーによって作り出したクローン人間。
人型に切ったこんにゃくを謎の液体に浸す→味噌に付けてプレスするといった手順を踏まえて特定の人物とそっくりな姿に変身できる。
知性や人格もコピーしており、本物との区別が困難。一方で本物よりもノリが良く明るく、曲を聴くと踊り出すといった相違点がある。
また、元となった材質がこんにゃく故に体組織が非常に柔らかく、物理的な打撃を受けると身体があり得ない方向に曲がってしまう。
コンニャクローンが踊るとクローンの元となった人間も無理矢理踊らされてしまう。
尻子玉を抜かれるか、アミーゴスズキが指を鳴らすと上空に飛び上がって花火のごとく爆発する。
また、SRIが製作した特殊な液体に触れると溶解する。
痛覚が存在しないのだが、「画鋲を踏んでもなんの反応も見せない」はともかく「頭に定規が突き刺さっているのを押し込んで隠す」など、常軌を逸した行動描写が見られる。
劇中では風間くんのママのコンニャクローンのみがダメージもなしに怪物のような異形な顔に変貌させている。
本作のホラー演出の完成度がやたらと高いのはほぼコイツらのせいである。
本作にチョイ役でゲスト出演したお笑い芸人。
劇中ではコンニャクローンに捕らえられた他の春日部の人間達の中に紛れ込んでいた。
オマツリ男爵と秘密の島 踊りと祭りと言う近似種をネタとした明るめな作風の漫画でありながら内容はホラー全開だったつながり。
3分ポッキリ←前作 次作→嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾!
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