「私は1人の声優です。似ていませんよ」
演:美山加恋
概要
飛電インテリジェンスが開発した声優型女性ヒューマギア。声優事務所「メニースワンプ」に所属。
大人から子供までどころか、動物の鳴き声など様々な声を演じることが可能。
社長の多澤青次(演:おかやまはじめ)には我が子のように可愛がられており、人気声優を目指している。
活躍
第5話
人気アニメ「パフューマン剣」のモブ声優として起用され、社長の青次と共に原作者である石墨超一郎に挨拶に向かった。
第6話
アフレコでは老人・若い女性・猫を演じ分ける技能を披露するも、外で待ち構えていた不破諫より3年前に病死した社長の娘・すみれとそっくりな容姿であること、それが人工知能特別法第6条「本人に無許可で、酷似した容姿の人工知能搭載人型ロボットを作成及び使用してはならない」に抵触することを告げられる。
その場は飛電或人の説得と、或人のプログライズキーを狙うオニコマギアの襲撃で切り抜けることができたが、戦闘の中で一部部品が破損。
この時点でどうやら自我に目覚めていたらしく迅に狙われるも、多澤社長の「セイネは私の子供なんだ」との言葉に迅が動揺して動きを止めたことでこちらも難を逃れた。
その後問題なく再起動には成功したが、直後から多澤社長を「パパ」と呼ぶ、唐突に誕生日を祝い始めるなど「娘」としての行動を見せ始める。
その場は多澤社長に戒められるも、或人には二人の関係性を悟られてしまった。
その後は或人の計らいにより、飛電への返却前に社長の念願だった「劇場版パフューマン剣」のゲストヒロイン公開オーディションを受けることになる。
だが自らの運命を悟っていたのか、その最中に「パパ、大好きだよ。また会おうね、天国で」と「娘」としてのメッセージを発し始めた。
さらに会場に現れた迅によりゼツメライザーを取りつけられ、「親子」の在り方の迷いから一転してゼツメライザーを引き剥がそうとした迅を振り切りガエルマギアへと変貌。同じく滅亡迅雷.netに接続させられた迅が変身した仮面ライダー迅と共にゼロワンを追い詰め、駆けつけた仮面ライダーバルキリーをも苦戦させるが、最後はバルキリー・ライトニングホーネットの「サンダーライトニングブラストフィーバー」で撃破された。
戦いの後、上記の理由から故人に似せて発注されていたセイネの姿をした2号機を送る事は出来ない為、多澤にはセイネの声を再現した非人間型のAIが送られた。
因みに、彼女の存在は違法である為ヒューマギアプログライズキーは存在しないかと思われたが、総集編の「超お仕事大戦」では彼女のプログライズキー自体は存在していることが判明している。
物語上の役割
「家族」としてのヒューマギア
劇中描写から推測するに、多澤社長は外では「社長と所属声優」として振る舞い、二人きりの時は「父と娘」として会話するようセイネにラーニングさせていた様子。トリロバイトマギアに襲われた損傷による一時的障害が発生した時のセイネの台詞で或人は、多澤社長の彼女への愛情の深さを知った。そしてセイネも飛電への返却処分が決まった後、公開オーディションの壇上で多澤社長への感謝と別れの言葉を述べるという、完全に自我が芽生えたと思える行動を取っていた。
ヒューマギアと人類の共存の、一つの理想のモデルケースであろう。
一方で、彼女の存在は劇中で不破が発言しているように、「故人への冒涜」とも取れる行為であると同時に、「個人が生きている姿を永遠に残す」という意味では、一つの不老不死や死者蘇生を実現しているとも言え、また、上記の二回目の死への絶望から暴走したと考えた場合、彼女は劇中で初めて登場した死への恐怖を覚えたヒューマギア(AI)と言う事にもなる。
これはつまり、ヒューマギアがただの道具ではなく、一つの生命を持った存在であるとも言えるのだが、それに対する一般的な感想は、「廃棄すべき暴走した道具」であり、物と命の境界線と言うかつての医療系ライダーとは別の形の生命倫理が描かれることになった。
公式サイトでは「実在する人物にそっくりなAIロボを作成する事の何が問題か」を問いかける事が背景にあったと述べられている。
そして彼女と多澤社長の関係は、敵側であり無邪気にヒューマギアをマギア化するだけの印象だけだった迅にも影響を与えた。
前回滅から言われた「息子」という言葉が頭から離れず、「セイネは私の子供なんだ」との多澤社長の言葉に動揺。多澤社長とセイネとのやり取りの中でゼツメライズさせる事に戸惑ったり、自分が取り付けてしまったゼツメライザーを必死に剥がそうとするという今までになかった描写を生み出す等、物語の重要な場面を演出するのに一役買ったキャラクターともいえる。
なぜセイネが迅の制止を振り切ってまでマギア化したかは作中では明かされなかったが、直前の悲痛なメッセージを考えると、多澤や他の人間を恨んでの行動ではなく、「多澤すみれ」としての2回目の死・父親と2回も引き離されることへの絶望から自暴自棄になりマギア化したのではないかという推測もできる。
ラストシーンの賛否
第6話のラストは、「心の支えを欲するのは人として当たり前のことである」「AIには人を支える力がある」という前向きな形ながらも、娘のAIをヒューマギアとは別の形で受け取る=多澤社長が娘の死を未だ受け入れられないまま物語が終わるという、しこりを残す形のラストになった。
このラストには視聴者からも賛否両論であり、声だけでも多澤社長とセイネが一緒になってよかった、意見や、(上述の通り法律違反ではあるが)今までの暴走したヒューマギアと同じく2号機の姿を見たかったという意見も多い。
逆に上述の通り、多澤社長が娘の幻影を最後まで追いかけているように見えて現実を受け止めていないのが辛い、心が壊れ、精神を病んでしまったのではという意見や、多澤社長の気持ちも理解した上で自分が責任をもって処分しようとしても失敗し、結果的に自分の判断ミスで更に辛い結果になってしまった或人の苦悩を心配する声もある。
このように第6話は、ゼロワン特有のスピーディーさと、重くシリアスな作風に加え、全く新しいベクトルでの命の意味についての問題の投げかけや、ゼロワンの本筋に関わる重要な展開と、(視聴者にとって)非常に印象に残る物となった。上記の賛否両論も、裏を返せばゼロワンの演出や脚本の良さ故のものと見ることもできる。
余談
名前のモチーフは声優の花澤香菜氏と思われる。
美山氏とは子役出身、声優活動後も女優活動を継続して行うなど共通点も多い。
事務所社長の多澤青次の名前も多澤→大沢事務所、青次→青二プロダクションといずれも声優事務所の捩りと思われる。
演じる美山氏は本作が仮面ライダーシリーズ初出演となり、ニチアサキッズタイム枠としては『キラキラ☆プリキュアアラモード』の宇佐美いちか / キュアホイップ役で出演していた。
関連項目
プラスティック・メモリーズ…多澤社長と同じような使い方をしている、人間の家族として代用されているアンドロイドが多数登場している。
アーサー・フレック...同じく、声だけのAIスピーカーを残されている事から、多澤社長は彼の様に現実を受け入れずに自らの妄想の中でまだ娘がいると思っている危険な状態の可能性がある。
鉄腕アトム…セイネ同様に死者の身代わりとして創造されたロボットの元祖。ただし、こちらは紆余曲折を経て死者の身代わりから脱却している(ただ、よりにもよって創造主に身代わりであることを否定されるのであるが…)。なお、『ゼロワン』本編では後の話にてその創造主を演じた俳優が出演していたりする。