概要
日本国有鉄道(国鉄)が所有した特急型車両である。昼夜兼業電車の始祖にあたる形式となる。
581系は現在に至るまで世界初の実用化された寝台・座席両用電車である(1998年新製・営業運転開始の285系電車は一部除いて寝台専用)。新製当時は高度経済成長期で特急列車増発が続いていたが、車両増備に収容する車両基地能力が追い付かないことやより効率的な運用を図る目的から開発された。
1967年10月ダイヤ改正で新大阪~博多間の寝台急行「海星」を格上げして誕生した寝台特急「月光」と日豊本線幸崎電化に伴って電車化、新大阪~大分間単独運転に変更された特急「みどり」に投入された。運行開始の際一番に充当された列車にちなみ、「月光形」と呼ばれる。
東北から南九州にかけて幅広く用いられたが、山陽新幹線の全線開通東北新幹線開業に伴う夜行列車の廃止、さらに設備の陳腐化もあり余剰車が出るようになり、1984年から1985年にかけて近郊形電車の715系に改造されて電動車は形式消滅した。
583系と何が違うの?
電動車に搭載されている主変圧器が対応している電源と先頭車の構造、これくらいである。
581系は元々西日本地域の特別急行列車への投入を主軸にした形式で、直流・交流60Hz電源のみ対応していた。そのため、581系の電動車は50Hz交流電化区間には入線出来なかった(接客設備の電源のみ必要な付随車は入線可能)。
しかし、東北本線全線電化で特急イメージアップを狙って、新型電車として導入された581系に3電源(直流・交流50/60Hz)に対応した変圧器を組合わせた車両を設計した。これが583系である。
また、581系は先頭車に乗車客向け諸設備や空気圧縮機(補機)を搭載しており乗務員室直後に機器室がある(トップ画参照)。そのため、機器室がない583系先頭車と比べ、1ボックス分、定員が寝台6人/座席8人少ない(ただし、クハネ583補機のうち、電動発電機は床下装荷とされたため、冬の東北地方での運用に際し故障を起こすこともあった)。また、架線電源に関わらず車上変圧器で直流電源に直され、補機類に流されるため、走行に関わらない付随車の形式は基本的に581系として製造されている。かつてはクハネ581・583とでは席数の他、電源容量にも差異があったが(581:150kVA・583:210kVA)、後年の載せ替えで581形式でも210kVAの電源(場所は従来通り床上の機器室)を積むようになり、座席数以外の差異がなくなっている。
※583系は東北方面への特急投入のため、耐寒耐雪設備強化も行われていた。後に北陸方面を走行する「しらさぎ」に581系が投入された際、581系の一部にも追加で施されたため、この面では両形式区別は曖昧となる
製造テーブル
新造形式
形式 | 製造両数 | 備考 |
---|---|---|
クハネ581 | 46両 | 補機搭載先頭車両 |
モハネ581 | 12両 | パンタなし中間車 |
モハネ580 | 12両 | パンタ付中間車 |
サハネ581 | 57両 | 中間付随車 |
サシ581 | 35両 | 食堂車 |
改造形式
形式 | 改造両数 | 備考 |
---|---|---|
サロネ581 | 6両 | A寝台車 |
クハ419 | 6両 | 北陸の月光顔 |
クハ418 | 9両 | 北陸の食パン |
クハ715-0 | 10両 | 月光顔 |
クハ715-100 | 12両 | 食パン |
クハ715-1000 | 15両 | 東北の月光顔 |
クハ715-1100 | 15両 | 東北の食パン |
クハ714 | 2両 | サハネ581改造。クハ715-0番台不足の補填 |
モハ714 | 12両 | パンタなし中間電動車 |
モハ715 | 12両 | パンタ搭載中間電動車 |
※東北の715系と419系は50Hz区間の走行があるため電動車は583系のモハネユニットから改造
581系が充当された列車
夜行特急列車
愛称(※は臨時列車) | 走行区間 |
---|---|
月光 | 新大阪 - 博多間→岡山 - 博多・西鹿児島(現・鹿児島中央間 |
明星 | 新大阪 - 熊本間 |
金星 | 名古屋 - 博多間 |
きりしま | 京都 - 西鹿児島(現・鹿児島中央)間 |
なは | 新大阪 - 西鹿児島(現・鹿児島中央)間 |
彗星 | 新大阪 - 大分・宮崎間 |
※夕月 | 岡山 - 宮崎間 |
※日本海 | 大阪 - 青森間 |
夜行急行列車
昼行特急列車
愛称 | 走行区間 |
---|---|
みどり | 新大 - 大分間 |
つばめ | 名古屋 - 熊本間 |
はと | 新大阪 - 博多間 |
しおじ | 新大阪 - 下関間 |
有明 | 門司港・博多 - 西鹿児島(現・鹿児島中央)間 |
しらさぎ | 名古屋 - 富山間 |
雷鳥 | 大阪 - 金沢・富山間 |
にちりん | 博多 - 宮崎間 |
昼行急行列車
余談
- サロ581は形式こそ581であるが、登場は583系登場と同時。というのも、東北への特急には一等車の連結が必要と判断されたためで、それまでは581系は二等車と食堂車のみの連結となっていた。
- 581/583系最後の定期運用であった急行「きたぐに」。JR東日本最後の定期運用列車であった急行「津軽」が廃止されてからもかなり長く残っていたうえ、6編成60両あった向日町運転所専用編成も最後まで残ったのはクハネ581を先頭とした3編成30両。2編成だけ片側にクハネ583を従えた編成があったがそちらは一足先にお役御免となっていた。
- 583系と共通事項であるが、動力車偶数形式(モハネ580・582)は屋上機器の兼ね合いで屋根が大きく削られた部分があり、この部分は3段寝台を構成出来ず下・中段のみである。とくにここの「中段」はA寝台上段並かそれ以上に空頭があるにもかかわらず、B寝台料金で販売され、事情を知っている者の人気区画であった。寝台定員が削がれることになってしまうため、当初パンタグラフは1基搭載案もあったが、勾配区間での高速走行で離線が激しく難があるとされ(勿論電気的にも2基使っている直流区間での話)大振りな菱形パンタグラフを2基積んでいる。
- 昼間の座席車運用と両立する目的でプルマン型寝台を3段に構成。この構成自体も独特ではあるが、この中上段に上がるための梯子もまた独特の作りとなった。
これまでのプルマン型寝台は全て優等車両であったため、2段寝台であり、梯子は上段客が使うのみである。しかしこれまでのプルマン用梯子では途中で横にそれるという使い方はしていないため、581・583系ではこれに対応して中段高さで1度片方の枠がすぼまり外枠が連続していない新設計のはしごを用いている。