⚠以下、漫画『アンデッドアンラック』の第144話前後・原作漫画17巻の前半に関する重大なネタバレを含みます。これから単行本・アニメを楽しみにしている方は閲覧注意⚠
概要
戸塚慶文の漫画『アンデッドアンラック』で描かれる試合・一幕(チャプター)。
物語は加速し、主人公一行にとって重要な過程、嘗ての仲間を襲う悲劇を否定し、世界へ立ち向かう同志を抜擢するために動く。
そして此度、救出対象となるボクシング世界王者のために、最後で最高の一戦へ挑むのだった。
此処では便宜に第144話の前後も併合して指示・解説する。
主要用語・人物
主用語
否定者(ひていしゃ)
人知れず世界の理を否定する超能力者になった者。別称に「器」とも言われる人間たち。
自己か他、何かルールを一つ否定する異能が発現(移行)し、これは悲劇を伴って宿る。
因みに、公式英訳では【NEGATOR(ニゲイタァ:否定する人】と、本作らしさを意識した翻訳表記がされている。
課題(クエスト)
主人公勢力の組織・UNION(ユニオン)が戦力増強などのため挑む、世界を舞台に課せられる試練。
「課題(クエスト)」には『否定者の捕獲』といった直接戦力へなり得る内容もある。
組織(ユニオン)の情報収集により、今次の課題「不可避の否定者を捕獲」から組織力を発揮し、着々と成功(サクセス)するための接触が進められており、今宵の拳闘試合が成立した。
殆どは「器」にとって最高と感じる局面で否定の業が付与される併合性(くるしみ)であり、これは創造主-神-が発起する不幸な事象。
だが、これは否定の業が発現(移行)した瞬間へ対抗策を講じれば阻止も不可能ではないと、世界の経験者は確信している。
世界の理「ループ」
神が直接に行使する、世界規模で「破壊と創造の循環(ループ)」を齎す不条理。
主人公達は、全ての悲劇を否定するため(100回目の)前世界から(101回目の)今世界へループし、再度の仲間集めといった行動をしてきた。
幾つかある「ループ」の理屈に、同じ様な人・事が存在・発生する不変性がある。つまりループを越えた者(2人)は、世界情勢の経験を得られた知識・素材を活かし、今の世界で起こるであろう悲劇や課題などの攻略へ挑んでいる。
主人物
VOID VOLKS(ボイド ボルクス)
主人公勢力の組織・UNION(ユニオン)で主戦力だったアメリカ人男性。
今世界(ループ)でも、ボクシングヘビー級世界王者として活躍している。(再)登場時点では、まだ否定能力「UNAVOIDABLE-不可避-」が未発現の状態。
突然に名乗り出た詳細不明な挑戦者や、彼?を受け入れる周囲の不可解な反応はあるが、数舜の邂逅で理解した強者との巡り合わせを避けず、今宵の試合へ臨むVOID(ボイド)だったが…。
FUKO IZUMO(フーコ イズモ)
VOID VOLKSが対戦するはずだった選手に変わり名乗り出た挑戦者。赤いニット帽を被り、超長髪の若い日本人。
何故か周囲は男と認識されている女性。これらは、今世界(ループ)で主人公勢力の組織・UNION(ユニオン)を率いるFUKO(フーコ)の算段であり、ループを越えた経験値から、今次の課題対象者であり前衛の組織否定者だったVOID(ボイド)へ接触するための仕掛け。そして彼を襲うであろう悲劇を否定するために、自身が対戦者(チャレンジャー)として拳闘の舞台へ登壇しに動く。
FUKO(フーコ)のセコンド達
現時点でFUKO(フーコ)が抜擢してきた仲間、ニコ・イチコ・ジーナの3名(なお、前世界よりも若い年齢で集めた味方)。
科学者の男女と、不変否定者の少女が介添人(セコンド)として現UNIONのボス・FUKO(フーコ)をサポートする。そのために、高度な科学力で周囲の記憶改変をして不信感なく試合編成を進めたりなど、下準備を行ってきた。
Chapter【Next Ring】
物語は加速し、全ての悲劇を否定するため主人公達は次の世界へ渡航(ループ)していた。
101回目の世界(ループ)、これを最後に神との決着、最高の物語を迎えるために、戦力でもある仲間集めなどへ動いていた。
現UNIONのボス、ループを越えた出雲風子は課題「不可避の否定者を捕獲」を遂行するため、嘗ての組織否定者・ボイド=ボルクスに起きる悲劇を否定し、仲間へ抜擢するため動いた工程で成立させた舞台。
そんな世界の命運が掛かってるとは知らないボクシング世界王者・ボイドは、彼の理想「強者との殴り合いが出来る幸運」を避けない、単純だが最高を感じる瞬間のため、不可解なアレコレを承知して今回の試合へ臨んでいた。
【1999.1.31】
奇妙な成り行きから実現した闘技場(リング)、遂に試合開始のコングが鳴り響く。
ROUND1
143話・前半。
今宵、ボクシングヘビー級世界王者・ボイド=ボルクスの対戦者は、数日前に突如として現れたニット帽の若者。戦い本番の今は、長すぎる髪を束ねて気合い十分の意気込み。
彼女-何故か周囲からは男性と認識されてるが-とは初対面だったボイド。だが出会った時に一度だけ殴り合って理解した、今までの強者とは違う強さを持った挑戦者。所々で不可思議な言動やら、周囲は不自然とも思ってない認識のズレやらはあるが、関係ない。
ボイド=ボルクスにとって重要なのは「強い奴と殴り合える幸運」を避けない事だった。だからこそ、不可解な事は避けて、相手が俺(ボイド)と戦いを望んでいる事を避けないでいたから成立した今舞台(ベストマッチ)。
闘いのコングが鳴る前後から、自己の感性(センス)で察していた挑戦者(チャレンジャー)の隠れた強さ。
数打の攻防から、相手は拳法の類を使う格闘者と察知、圧倒的な体格差がある自分の重い拳や連打(ラッシュ)に辛うじて対応できる程の老練者と体感するボイド。
それと拳闘(ボクシング)とは別の何かを待ってるかのような不可解を承知しつつ、ボイドの流儀「強者との殴り合い」が成っている今に充実感も得られつつある所で第一試合終了(ゴング)となった。
まだ互いに全力ではない
もっと!! もっとだ!!
最高の試合(もの)にしたい!!
ROUND2
143話・後半。
第二試合。互いに先ほどよりも実力を発揮していく試合展開。
挑戦者は更に磨いてきた打拳を放ち、巧みな動きで世界王者に対抗、
世界王者は鍛えあげた拳骨の連撃(ラッシュ)を放ち、階級の差違をものともしない挑戦者へ称賛、
拳で語り、言葉で突いてくる相手の意思「俺(ボイド)と最高の試合をしたい」から、ボイドは戦いの最高潮が来るかという瞬間を察していた・・・ハズだった。突如として否応ない違和感-ボイド本人は不感なまま黒い影みたいな存在へ浸食される描写-がゾゾっと湧く。
【UNAVOIDABLE -不可避-】
何故か相手は回避行動を取らない不自然な挙動
それは拳が命中する刹那の事だが、玄人の拳闘者(ボイド)は瞬時に多くの考えがよぎっていた。
「なんで無防備な姿勢で動かない」「このまま拳が当たれば致命傷は避けられねえんだぞ」「もしかして、この一撃で終わるのか」「まるで邪魔者が入ったみたいな感じ」、そして強く感じた事は【忌避すべき不名誉な決着への予感】であった。
だが退避する。
重症-下手すれば死傷も-は避けられない強拳のはずだった。それでも挑戦者は、確実に大きな負傷を受けているが立っている。まるで見えない手で衝撃を和らげたかのような不自然な対応。明らかに〝何か〟が起きている。それも自他に。
だから分かる。
依然として〝何か〟の邪魔者は介入しているが、それでも真っ向から俺(ボイド)を避けずに挑んで来る対戦者。
まだ 俺と闘ってくれるのか
闘いの舞台上で対峙する者同士だけには分かる、試合は〈Next Stage(別次元)〉へ動き始めていた。
【Negator Boxing(否定者ボクシング)】
144話・前半。
危うく殺試合(デスマッチ)となる未来を否定して、更にこの瞬間を『最高の試合(Wicked Ring))』にしようと対戦者が動いてることを悟るボイド=ボルクス。
そして自他に在る〝何か〟も交えた試合展開への急変。
『 どんな力に目覚めても 』
『 この試合 最高のものにしてみせます 』
挑戦者は乱れた超長髪を不自然に大振りしながら打撃、その直後に世界王者は靴紐が破れたり床に落ちたワセリン(軟膏)で滑ったりの不運が来て顔面パンチをもろに受け、
世界王者は否応ない違和感【相手は回避行動をせず反撃に徹する動作】から拳闘の領域(せかい)を越えた何かが起きてると察し、更に挑戦者が超長髪を大仰に振りながらの回転連打(デンプシーロール)を受けながら〝何か〟の存在を実感していく、
拳で語り、言葉で突いてくる対戦者から徐々に理解していくボイド。
きっと今夜の試合(リング)が最後なのだろう
もう真っ当なボクシングは不可能なのだろう
そうした普遍の世界が逃避するような現実への哀愁……
だが終わりじゃない。
対戦者から伝われてくる真実。今は分からないが、次の舞台(リング)が待っていると、拳と〝何か〟が交錯する刹那で〝次〟を心で理解していく。
No.144【Next Ring】
144話・後半。
「 お前のプライドは ただ人を避けねぇだけか? 」
「 違うだろ? 」
「 困難も避けるな 」
「 歯ァくいしばって越えてみろ 」
「 そしたら向こうから来るさ 」
「 避けようと思っても避けれねぇ 」
「 幸運がな 」
第二試合の中盤以降から、超近距離の殴り合いが激しさを増し、いつ決着となっても不思議ではない、畢竟の境地へ至ろうかという白熱を帯びていた。
それは苦しい展開というより、挑戦者と世界王者は何処か楽しさを、幸運(グッドラック)を感じてるかのような試合。
拳で語り、言葉で突き、まだ不明だが〝次がある〟の予感に心を震わせるボイド=ボルクス。
まだ!! あるんだな!!
俺がいていい世界が…!!
対戦者は避けずに、否定せずに、強く応える。
結果からして、ボイド=ボルクスは【試合には勝ったが、勝負には負け】という避けようのない決着となった。それでも、もうボクシングの世界へ悔いはないと実感する、最後に最高で最強の戦いが出来たことへ満足だった。
そして戦いの余韻が冷めやらぬ内に、またしても立て続けに起こる不可思議現象やら、思わず敵に見えた奴(あんだコレ)を殴ってみるやらと、わけがわからない事だらけ。
だが分かる。
次のリングはここなんだろ
ボイド=ボルクスは、円卓Ⅲ席へ不善に座り、次の戦場〈Next Ring〉へ参上しに動くのだった。
試合後の一幕・小話
続く145話。
小さな体躯をした謎の生物によって瞬間移動(ワープ)して「円卓の間」へ降り立つボイド=ボルクス。超常存在とは無縁の世界を生きてきた彼は、目の前で起きる不思議現象や交わされる専門用語で、傍目からは難解な話題と感じられるが、持ち前の人間性もあってか本質を的確に捉え話の大筋を理解する理知的な一面をみせた。敢えて言い表せば、小難しい話だと避けずに真実を捉えられる切れ者といった感じか。
因みに本編幕間で、円卓座席の小話もあった。
前話の最後で不遜な様相で着席していたボイド。これは円卓の席が、彼にとって小さかったのも理由であった。
着席者へ対し座席が小さい・狭い場合の対処法が、大先輩・ジーナちゃんより明かされた。といっても簡単な事で、着席者が頭の中で「大きくなぁれ」と念じれば、座する者にとって丁度良い採寸へ〈ググ〉っと席(イス)が自動調整される不思議仕様になっていたのだった。
備考
ボイドの回帰
原作やアニメ版を視てきた方たちはご存知、物語に初登場時のボイド=ボルクスは早々に退場、かつ短い活躍場面では不敬な態度が顕著な、不健全な印象の強い無頼漢だった。
その後、組織の面々による会話や古代遺物(アーティファクト)に宿る「世界の記憶」などから、仲間として心強い男でもあったと判明していく。
そして物語制作で3周年、年次直後の本編では【円卓のⅢ席】へ関する(本稿の)今回の章節が連載、主要人物にそれまで深堀-そこはかとなく触れる程度であった-が3年も避けられていた、原作3話目(アニメ2話目)で退場した男・ボイド=ボルクスが物語の表舞台(リング)へ上がる展開となっていた。
強化服として顕現
ループを越えて(再)登場したボイドが仲間に加入した後の章節にて、こちらも再び登場、彼の専用強化服が再着用される戦局も描かれる。その際、公式𝕏️(前代・Twitter)のおまけ漫画にて、物語初期に視掛けていた専用装備の名称【Next ring(ネクスト リング)】が判明する。
(再)登場したボイドの回帰となった劇中の副題と同じであり、彼が次の戦場へ臨む意志を暗に感じ取れる命名であった。
関連項目
ボイドの強化服〝Next ring(ネクスト リング)〟