概要
1967年3月12日放送。実相寺昭雄監督による『ウルトラマン』第6回監督作品。
テーマは、宇宙に追放された怪獣たちが安らかに眠る「怪獣墓場」と、科学特捜隊及びウルトラマンによる怪獣への贖罪。
あらすじ
ある日、宇宙ビートルでパトロールを行っていたアラシ隊員とイデ隊員は、ウルトラゾーンにかつて科特隊とウルトラマンによって倒され、宇宙に追放された怪獣たちの霊が漂う異空間を目撃する。
その光景を見たアラシ隊員はこの異空間を「怪獣墓場」と命名。それと同時に、2人は地球では見たことのない、全身が骸骨のような姿の怪獣を発見した。
フジ隊員「話を聞いてみると可哀想ね。姿かたちがあたしたちと違い、力がありすぎるっていうだけで宇宙へ追放されてしまったんだから……」
ムラマツキャップ「そういえばずいぶんやっつけたなぁ、ウルトラマンの力を借りて……」
アラシ隊員「奴らはウルトラマンに力いっぱい放り出されて、無重力地帯まですっ飛んでいき、そこで永久に宇宙の孤児となってるんですよ」
科特隊はイデ隊員の提案で怪獣の霊を弔うために針供養ならぬ怪獣供養を行うことを決定。
一方、この話を聞いて重い顔のハヤタは本部の外へ飛び出してしまう。
ハヤタ……もといウルトラマンは今まで倒してきた怪獣たちに謝罪の言葉を投げかける。
「許してくれ……地球の平和のため、やむなくお前たちと戦ったのだ。オレを許してくれ……」
ハヤタはベーターカプセルをそっと点火し、ウルトラマンに変身。地上に立つウルトラマンは晴天の空を見上げた。
「心ならずも葬った、数々の怪獣たちに対し、ウルトラマンは恐らく、心の中で詫びていたに違いない」 <ナレーション>
そしてその翌日、科特隊本部にて怪獣供養が仏式でしめやかに行われた。
科特隊の隊員は心から怪獣たちの冥福を祈りつつ、それぞれが苦しかった怪獣との戦いをひとつひとつ思い浮かべた。
一方その頃、ロケットセンターでは日本最初の月ロケットが打ち上げられようとしていた。
打ち上げは成功したものの、ほどなくして宇宙研究所のパラポナアンテナが月ロケットにしがみつき落下する怪獣の姿をキャッチ。この怪獣こそ、怪獣墓場で発見された怪獣・シーボーズであった。
怪獣出現の連絡を受けた科特隊は、怪獣供養を中断し全員出動。
街をうろつくシーボーズに対し科特隊はジェットビートルでロケット弾攻撃を仕掛けるが、シーボーズは街を破壊したり反撃したりすることはしなかった。
寂しそうに歩きながら近くにあった高層ビルによじ登り、屋上で空に向かって悲しげな咆哮をあげるシーボーズ。
アラシ隊員「奴は、宇宙に向かって仲間を呼んでるんだ!」
イデ隊員「だけど……それにしちゃ悲しそうな声だな……」
フジ隊員はシーボーズが宇宙に帰りたがっているのではないかと考え、攻撃せずに様子を見ることを提案。やがて科特隊が見守る中で、シーボーズが高層ビルから飛び降りた。
しかし、翼も生えていないシーボーズは地面に墜落。悲しげにゆっくり進み続けるシーボーズは誰もいない夕闇の荒野で科特隊からの攻撃に晒され、再び空に咆哮した。
それを見た科特隊は、ロケットにシーボーズを乗せて宇宙に帰す作戦を試み、ロケットセンターへ相談に向かう。
ロケットセンターに向かったムラマツキャップは、月ロケット2号の使用を博士に打診。博士自身もシーボーズを地球に連れてきてしまったことに責任を感じていたため、シーボーズ輸送作戦は執り行われる運びとなる。
その夜、科特隊の目にはシーボーズが昼間よりも喜んでいるように見えた。
イデ隊員「奴が漂っていた無重力地帯は、いつでも夜だった。きっと奴は今、あの怪獣墓場にいるようなつもりなんだろう」
アラシ隊員「だけど……真っ暗な墓場に帰りたいなんて、信じられないな……」
フジ隊員「違うわ!怪獣墓場だけが静かにいられる場所なのよ。そうだわ……きっとどの星へ行っても、地球と同じように攻撃されるに違いないわ。だから、怪獣たちが心から落ち着いていられる場所は、墓場だけに違いないわ」
明朝、作戦は始まった。
ジェットビートル2機から発射した特殊ワイヤーを、ロケット基地周辺に誘導されてきたシーボーズの手首に固定。そのまま月ロケット2号まで連れて行き、シーボーズを括りつけて発射しようとしたが、秒読みしている間にシーボーズが暴れた勢いでロケットが倒れ失敗に終わる。
基地から飛び出したハヤタはウルトラマンに変身してシーボーズと戦闘を開始。
戦いの末にウルトラマンはシーボーズを持ち上げ、空へ飛び上がったが、戦いに時間をかけすぎてしまいカラータイマーが激しく点滅。ウルトラマンは輸送を断念し、シーボーズは再び地上に落下してしまった。
科特隊の隊員たちに救出されたハヤタは、ウルトラマンの形にした月ロケットでシーボーズを宇宙に帰還させることを提案する。
翌日「ウルトラマンロケット」は完成。
一方、とぼとぼと荒野をぶらつくシーボーズ。そこへ二機のジェットビートルが到来するが、シーボーズの手がハヤタのビートルに直撃してしまう。
墜落する機体の中でハヤタは三度目の変身を敢行、嫌がり駄々をこねるシーボーズをロケット基地まで連れて行き、どうにかロケットに乗せた。
ウルトラマンが先導のために飛び上がった後、秒読みなしにウルトラマンロケット発射!
ウルトラマンロケットを抱えたシーボーズは無事に宇宙のウルトラゾーンへ。亡霊怪獣シーボーズは怪獣墓場へ帰ることができた。
数日後。科特隊本部から宇宙ビートルが宇宙パトロールに飛び立つ。
ウルトラゾーンの怪獣墓場には、相変わらず安らかに眠る怪獣たち……そして、シーボーズの姿があった。
「戦いが終わった。科学特捜隊にはいつものような静かな日が帰った。それは、パトロールに明け、パトロールに暮れる、退屈な……しかし平和な毎日であった。
『怪獣墓場』……どこへ行っても嫌われる怪獣たちにとって、平和で静かな毎日は、墓場にしか無いのだろうか。
『怪獣墓場』……それは、広大な宇宙の中の、奇妙なる伝説の一つではないだろうか……」<ナレーション>
余談
実相寺監督と特撮班の衝突
本話の出来栄えについて実相寺昭雄監督は複数の著書で特撮班への不満を述べている。怪獣への鎮魂というテーマにシリアスに取り組むつもりだった実相寺は、コミカルなシーボーズの動きに「言うも愚かしい感じに仕上がってしまった」、「日頃無茶ばかり言う自分への嫌がらせではないか」と毒づいていた。
自伝的小説「星の林に月の舟」をもとにしたドラマ『ウルトラマンをつくった男たち』でも実相寺をモデルにした主人公吉良平治はシーボーズの演出を巡って特殊技術の高田(高野宏一がモデルだが作中の描写は有川貞昌に近い)と激しく対立している。
しかし平成ウルトラシリーズを経て実相寺は考えを改め、人間味のある動きでよかったと語っている。
カットシーン
脚本上に存在したがカットされたシーンがいくつか存在する。
- 月ロケットが海に墜落し、シーボーズが海から上陸する。
- ウルトラマンロケットをフジ隊員が近隣の女性たちと協力して作り上げる。
- 完成したウルトラマンロケットは予想より大きかったのか風に揺れてしまい、イデ隊員が「ちょっと寸法違ったんじゃないかな」とツッコミを入れる。
回想シーンの怪獣たち
怪獣墓場の亡霊、怪獣供養の際の遺影、回想シーンで登場した怪獣たちは以下の通り。
合計14体。
怪獣墓場の亡霊の描写はテレスドンのみ着ぐるみ、他はミニチュアを使用しているという。
怪獣「酒場」
「怪獣墓場」へのオマージュをこめて、2014年から打倒ウルトラマンに燃える怪獣たちが集まる酒場「怪獣酒場」が営業中。
怪獣供養
劇中の怪獣供養を執り行った僧侶は石川隆昭、その隣で木魚を叩いている住職は光学撮影の中野稔である。
『ウルトラマン』の放送から数年が経った1973年4月22日に円谷プロ主催で今は亡き二子玉川園で実際に怪獣供養が行われた。と言うのも初代社長である円谷英二が亡くなって以降、円谷一も夭折し撮影中に事故が続いたのでお祓いすべきではないかと言う声が出たので怪獣供養祭が開催されたという。
怪獣供養祭には当時放送中だったウルトラマンタロウを始めとするウルトラ六兄弟だけでなく同じ円谷プロの特撮ヒーローであるミラーマン、ファイヤーマン、ジャンボーグA、トリプルファイター、レッドマンが参列した。