※本誌を未読の方は閲覧する際、ご注意ください。重大なネタバレを含んだ記事となっています。
概要
呪いの王・両面宿儺の生前の姿、および完全体の状態。
これまでの宿儺は、自身の器である虎杖悠仁と全く同じ容姿となっていたが、受肉する前……生前は厳つい顔つきに筋骨隆々な巨漢の姿であった。
特筆すべきなのはその異形さで、顔の右側は歪に変形しており、まるで仮面が張りついているようにも見える。さらに四本の腕と腹の口を持ち、まるで伝説の両面宿儺を現した存在となっている。
この姿は渋谷事変編真っ最中のセンターカラーで初めてお披露目され、後に死滅回游編における仙台結界の戦いが終結した直後の烏鷺亨子の回想で改めて登場。
そして人外魔境新宿決戦編にて、ついにその姿を現す。
※記事では「生前宿儺」だが、pixivやSNSでは「御形宿儺」または「御形様」と一部の読者から呼ばれている。
活躍
※ここから先、単行本未収録のネタバレ注意!!
「贅沢者め」
人外魔境新宿決戦にて、現代最強の術師・五条悟との決闘を制した宿儺だったが、呪いの王である彼もまた大きなダメージを負っていた。
「無量空処」で脳に負荷が掛かった事で領域展開は使用不可に陥り、傷を癒す反転術式も出力が落ち、失った左目と左手の修復すら困難となる。
しかしこれは同時に、虎杖達にとって絶好の機会であった。
五条に続く二番手は雷神・鹿紫雲一。
同時に、戦場に駆け付けた裏梅から宿儺は万が最期に構築した雷の呪具「神武解」を受け取るも、呪力特性による電撃耐性を持つ鹿紫雲には効果が薄く、さらに命を代償に超人的な力を得る術式「幻獣琥珀」を解放された事で、ほぼ一方的に攻撃を叩き込まれる。
五条が命懸けで残した傷に、鹿紫雲が死力を尽くして繰り出す怒濤の連撃。
かの呪いの王も、徐々に追い詰められていき……
宿儺には反転術式以外に一度きりのみ
肉体を修復する術がある
それは意図的に中断していた
受肉による変身の
再開である
顕現する 真の御形。
変身直後、鹿紫雲を圧倒した宿儺の元へ、虎杖と日車が現れる。
日車は、宿儺の術式「御廚子」を没収するために領域「誅伏賜死」を展開する……が、
「俺がいつ なにしたかなど どうでもいい」
「さっさと終わらせろ」
弁明する気など更々なかった宿儺の言により、あっさりと死刑の判決が下る。
有罪となった者を必ず殺す「処刑人の剣」が日車の手に握られ、援護する虎杖を筆頭に脹相、日下部、猪野も参戦するのだったが、彼らは本来術式を没収した上で臨むはずだったのに没収の対象は宿儺が所持していた呪具「神武解」であった。
宿儺は呪具を失うも、五条戦の後遺症など微塵も感じさせない凶悪な術式と凄まじい身体能力で多勢相手に立ち回る。
術師として覚醒して二ヶ月弱ながらも、宿儺の斬撃を展延で中和しつつ、呪いの王に近いレベルでの運用を見せる日車。果敢に立ち向かうその才能の原石に魅せられた宿儺だが、彼を容赦なく弄んでから日車を倒す。
宿儺は日車から事切れる寸前に「処刑人の剣」を託された虎杖によって斬りつけられるも、術式は終了していて効果は無かった。
直後、羂索の保険で、天元と人類の超重複同化の発動権を手に入れた宿儺は、次いで強力な一撃と共に現着した乙骨と「リカ」、そして虎杖を迎え撃つ。
「しっかり踠き抗えよ」
「俺を殺さねば お前らが助けたい人間は全員死ぬぞ」
リカ「誰に言ってンだ!!」
「出たな 女王」
乙骨の領域「真贋相愛」で3vs1の戦いを繰り広げ、乙骨の多彩な術式行使と虎杖の「魂を捉える打撃」により弱体化を余儀なくされる宿儺は、再び追い詰められていく。
五条を倒した「世界を断つ斬撃」を使おうにも、リカと乙骨の奮戦で即座に腕と口を攻撃され、掌印と呪詞を封じられる。
さらに、受肉体にとって天敵である天使の術式「邪去侮の梯子」が乙骨によって最大出力で放たれ、無防備となった宿儺の胸に虎杖の拳が直撃する。
虎杖「起きろ 伏黒」
虎杖の「魂を捉える打撃」で伏黒の魂を叩き起こし、宿儺を引き剥がすという二人の作戦が成功───したかに思われたが。
伏黒「いいんだ」
「もう いいんだ」
最愛の姉を自身の術式で殺してしまった伏黒の魂には、すでに生きる意志など失せていた。
その隙を突いて宿儺は「解」を放ち、乙骨の体は真っ二つに、虎杖とリカもまた無慈悲に切り裂く。
この窮地を脱し、崩れ落ちる二人と領域に勝利を確信して嗤う。
しかし直後、領域の崩壊に気を取られた宿儺は、背後から真希によって貫かれた。
心臓を破壊した呪具「釈魂刀」の効果により、宿儺は常に高度な反転術式と呪力操作を余儀なくされるも、難なく戦闘を続行。
呪術において対極に位置する両者の戦いが繰り広げられる。
「分かっているのか?」
「オマエの存在自体が術師を否定している!!」
自身とは正反対の呪いである真希の存在に、高揚した宿儺はなんと「黒閃」を放つ。
「黒閃」によって真希すら退けた宿儺は、意を決して立ち塞がる日下部との戦いに興じる。
数々の強者から一級最強と推される日下部がシン・陰流の技術を活用して奮闘するも、無慈悲に斬って退けた。
連戦を経た宿儺は、ついに戦闘不能となった者を回収していた憂憂にも手を伸ばすが、間一髪のところで彼を助けたミゲルとラルゥの相手をする事になる。
そこへ再起した虎杖と脹相、自力で復帰した真希も加わり、ついに宿儺の腕を後一本にまで削られた。
これまでの彼らの積み重ねが実を結ぼうとしたところで、再び宿儺は「黒閃」を繰り出す。さらに三度、四度と立て続けに「黒閃」を出し、術式の威力と共に調子を上げていく。
だが、いかにボルテージを上げようとも、虎杖の「魂を捉える打撃」を喰らえば肉体の支配力や呪力出力の低下は免れない。
そして、ここに来て虎杖が術式を使用。脹相から受け取った「百斂」による血の塊を借り受けての「穿血」を至近距離で放たれ、これを回避して振り払った宿儺は、虎杖から「黒閃」の予感を察知。
対応しようと身構えた、その瞬間。
「なんだ!? あの術師から目が離せない!!」
ラルゥの術式「心身掌握」によって心を鷲掴みされ、宿儺の意識は強制的にラルゥに引っ張られる。
結果、虎杖の強烈な「黒閃」を無防備な状態で叩き込まれた。
「黒閃」による潜在能力の解放で覚醒した虎杖は、「赤血操術」だけでなく「御廚子」も使用。しかし虎杖の「御廚子」は、宿儺の術式と比べて威力が低く、全体的にお粗末な精度だった。
しかし、宿儺が真に厄介だと感じたのは「黒閃」の方。虎杖は当然のごとく「黒閃」を連発し始めた。「黒閃」を畳み掛ける虎杖に、宿儺は徐々に苛立ちを覚え始め、六度目の「黒閃」を喰らったところで、その怒りは頂点に達した。
「小僧ぉっ!!」
これまで人を弄んで楽しんでいた宿儺は、一転して激情のままに迎撃しようとするも、虎杖が尊敬する術師の形見が挟まれて視界を遮られる。
その一瞬に。
猪野「ブチかませ」
虎杖「黒 閃」
虎杖悠仁の七度目の「黒閃」が背中に打ち込まれる。
本来は「黒閃」による覚醒で、反転術式の出力を取り戻して全ての腕を再生させ、宿儺は高専術師を蹂躙するつもりだった。
しかし虎杖の「黒閃」と共に「魂を捉える打撃」を七度も叩き込まれた事で、反転術式の出力復活の契機を完全に逃す。
だが…
「領域展開『伏魔御廚子』」
王の領域は黒い火花と共に
主の元へ回帰していた
「黒閃」を経た事で、失われていた鏖殺の領域が復活する。
掌印などの条件変更や即席の縛り、不確定要素を含みながらも再び効果範囲に存在する全てを斬り刻む神業の領域を構築する宿儺。しかし、今の疲弊状態では99秒の維持が限界だった。
その99秒間、「簡易領域」で必死に耐え凌ごうとして結局剥がされて「捌」の斬撃に襲われた虎杖に宿儺は斬撃を止める。
耐えきった、彼が安堵して顔を上げた───その時。
「竈(カミノ)」
「開(フーガ)」
王は万死の炎を手中で燃え盛らせていた。
ついに明かされる「竈」の正体。その真髄は領域により粉塵化した物質を爆薬に変え、炎で領域内全てを焼き尽くすというものだった。
その業火を領域内に炸裂させ、宿儺は高専術師を一掃した……筈だったが、自らを守るために犠牲となった脹相の死に報いるために立ち上がる虎杖と、左腕と術式仕様を新調して現れた東堂に対し、術式の焼き切れた現状で彼らの十八番である殴り合いの土俵へと強制的に引き下ろされてしまうことになる。
術式を改良した東堂と虎杖の猛攻や不義遊戯での知略戦で段々と追い詰められていき、入れ替えの予測を読み違えた末に虎杖の黒閃を喰らってしまう。
一撃を入れ絶叫する虎杖を前に術式の回復した宿儺は再度領域を展開しようとした─────────その時。
宿儺は見た。
手ずから葬った、最強の亡霊を。
能力
ついに真の姿を見せた呪いの王・両面宿儺。その姿は、術式効果のX線を利用して解析した鹿紫雲曰く「完全無欠」
術式や領域展開の発動に必要な掌印を結んでいても問題なく拳や武具を振るえる四本の腕。心肺に負担を掛けず、呪詞の詠唱を絶え間なく続けられる腹の口。呪術師として大きな優位性を得ながらも、異形の肉体は一切の身体機能を損なっていない。一つの時代では確かに最強であった鹿紫雲は同じ強者として、この姿の宿儺に「美しい」と感服していた。
この肉体性能に加え、持ち前の呪術への深い理解力と知識量、一度見た技術を我が物にする学習能力、無類の呪力出力と呪力総量も併せ持つ。
また、渋谷や仙台での戦いでも見せたが、覚醒した真希同様、空を蹴って空中での移動すらも自在。
これらの能力と下述の呪具を駆使し、過去には藤原北家直属の「日月星進隊」と「五虚将」を殲滅し、天使含む安倍家の精鋭と菅原家与党で編成された「涅漆鎮撫隊」を退けた。
現代では『幻獣琥珀』により人の域を越えた鹿紫雲を体術で圧倒し、天与呪縛のフィジカルギフテッドに匹敵する虎杖が追いつけないほどの走力を見せつける。まさに呪いの王。
五条戦で伏黒恵の肉体のままでいた理由は、魔虚羅を利用して無下限の不可侵を突破する糸口を探すためであり、後に控えた虎杖達との連戦で疲弊した場合の「反転術式を使わない一度きりの保険(回復手段)」を取っておくためだった。
後に日車が、五条との戦いで「十種影法術」の機能を失ったと推測しているので、現在の宿儺は伏黒の術式を使えない模様。
しかし、五条戦で負ったダメージは相当深く、変身による肉体の修復を経ても結界術に必要な脳の部分が回復しておらず、領域展開が使えない。
反転術式も出力は落ちたままで、徐々に戻りつつあるものの、未だ万全の状態とは言えない模様。さらに呪力総量も、今は乙骨並にまで下がっている。
だが領域や反転術式は、複数回の「黒閃」による覚醒で、いつ回復してもおかしくない状態にある。
呪具
- 「神武解(かむとけ)」
万が「絶命の縛り」を対価に構築した、宿儺が生前所持していた呪具。五鈷杵のような形をした短剣で中心の持ち手の両側に十字の球体があるのが特徴。
対象に強力な雷撃を放つ術式効果を持ち、鹿紫雲のような耐性が無ければ防ぐ事はほぼ不可能。
名前の由来は「神解け」だと思われる。「神解け」は「霹靂」とも書き、どちらも「雷が落ちる」事を意味する。
- 「飛天(ひてん)」
1000年前の宿儺が生前所持していた槍型の呪具。
術式効果は不明。
術式「御廚子」
斬撃を放つというシンプルな術式だったが、五条悟との戦いを経て進化を遂げる。
「解(カイ)」
通常の斬撃。基本的に飛ばして相手を切断するが、連射や格子状に重ねた形で放つなど自由自在。
体表に細かい斬撃をチェンソーのように纏う事で、刃に触れないで刀を受け止める、という器用な応用法もある。手掌をかざして放つ場合が多いが、ノーモーションで放つ事も可能。
- 「世界を断つ斬撃」
「龍鱗 反発 番いの流星」
無下限呪術への適応を推し進めた魔虚羅の斬撃を手本にした、術式対象を空間・世界そのものに拡張した「解」。
世界に存在する全てを空間ごと分断する事であらゆる防御を突破し、五条の無下限による不可侵すら意味を成さない。
本来は「閻魔天の掌印」を結べば発動できる御業だった。
しかし、変身前の宿儺は片手を失って掌印が結べない状態にあったため、最初の一度だけ条件無しで使える代わりに、後の使用には複数の条件を満たさなくてはならないという縛りを科す事で五条悟を斬り伏せた。
その条件は下述の三つで、どれか一つでも欠けると「世界を断つ斬撃」は発動できない。
- 閻魔天の掌印
- 呪詞の詠唱
- 手掌による指向性の設定
「捌(ハチ)」
対象の呪力量・強度に応じて自動で最適な斬撃を繰り出し、対象を一太刀で切断する。「解」と異なり、直接触れなければ発動できない。
ただし領域では必中と化すため、触れなくても発動可能。
高専側は「捌」と零距離の「解」、そして「世界を断つ斬撃」は、簡易領域や領域展延を含めたどの手段でも防御不能と分析している。
- 蜘蛛の糸
触れた箇所を蜘蛛の巣状に切り刻む「捌」の技。
「竈(カミノ)」
高専側からは使用しない事を不気味に思われ、使われたら対応不能とされていた炎の術式。
今まで「竈」の部分は「■」と隠されていたが、今回虎杖達に向けて発動した際に明らかとなった。
使用する際は「開(フーガ)」と告げ、出現した炎を矢の如く対象に向けて放つ。
発動条件が存在し、対象に「解」と「捌」の両方を当てる必要がある。事実、渋谷の漏瑚戦と魔虚羅戦は、どちらも斬撃を浴びせた後に使用していた。
凄まじい火力を誇る「竈」の炎だが、それに対して効果範囲が狭く速度も無い(漏瑚との一騎討ちでは周辺の被害がほぼ無かった)。この欠点を補うべく、宿儺は普段から領域展開中を除く多対一での「竈」の実行禁止の縛りを科し、自身の最終奥義へと昇華している。
領域内にて行使した場合は下述の領域展開で説明。
結界術
閉じない領域等を含め、五条悟以上の実力を見せる。
- 「彌虚葛籠」
乙骨の領域に対抗する為に展開した宿儺の持つ領域対策。レジィや鹿紫雲など過去の術師が使うものと同様のもので、現在の「簡易領域」の原型。領域の結界を中和して必中効果を打ち消す事が可能。簡易領域とは違い掌印を結び続けなければ持続しない模様。
レジィが掌印を前後に動かす2モーションで発動していたのに対して、宿儺は四本の腕により1モーションで発動し、掌印を結びながら戦闘や術式の使用が可能。
- 「領域展延」
術式を付与しない領域を自らの体に纏う事で空いた容量に相手の術式を流し込み、中和する領域の応用。漏瑚や花卸のものより出力が高く、五条の不可侵を難なく突破し、(炸裂前とは言え)正面からの「赫」を中和してダメージを最小限に抑えることが可能。
五条戦では脳に損傷を受けた後も行使していたので未だ使用可能と思われるが、これも出力が低下しているかは不明。
領域展開「伏魔御廚子」
効果範囲内の悉くを細切れにする領域。
これを閉じない領域として展開する事で『逃げ道を与える』縛りを作り、効果範囲を半径200メートルに拡げる。
この効果範囲の広さや外殻が無い特性により、領域対決では相手の領域を外側から破壊する等の絶対的な優位性を誇る他、本来は展開時に領域外へ弾き出されてしまう建物等の無生物すら術式効果範囲に捉えてしまう。
呪力を帯びた物に「捌」、呪力の無い物には「解」が絶え間なく浴びせられる必中効果により、呪力ゼロの存在も必中効果対象となる。
また、平時から上述の「竈」の縛りにより、領域における「解」と「捌」の術式効果も拡張されており、粉塵化した全ての物質が「竈」と同様の爆発性の呪力を帯びる(七海建人の、破壊した対象に呪力を篭める拡張術式「瓦落瓦落」と似た効果)ようになり、無数の斬撃で粉微塵となった物はまるでサーモバリック爆薬と化す。
さらに、結界の要件を変更する事で生物以外の出入りを制限し、「伏魔御廚子」の出力を下げずに効果範囲内を密閉(爆薬の粉塵が外に流れないよう阻害し、文字通り竈を造る)。
これらの工程を踏み、最後に「竈」の炎で辺りに充満した爆薬に着火させ、領域内の生物は全て凄まじい爆風と熱、衝撃に晒されて死に至る。
新宿決戦においては、五条戦の後遺症により使用不可とされているが、いずれは反転術式の出力と共に再び使えるようになると乙骨に危惧されている。
後に乙骨の予感通り、四度の「黒閃」を経て復活。
三本の腕の損傷と「無量空処」による後遺症は依然残っているため、掌印の変更、後遺症の無い脳の部位で術式と結界術を運用など不確定要素と即席の縛りを含むが、結界術としての難易度・出力・効果範囲を落とさず展開する事に成功している。だが長時間の維持はできず、99秒で崩壊する。
この領域展開時の掌印は、五条と同じ帝釈天印。領域内のシンボルも変化しており、従来の「伏魔御廚子」では牛骨を象った寺のお堂が顕現していたが、この領域ではおどろおどろしい頭部から脊椎が伸びた呪霊のようなシンボルが顕現する。宿儺の心象の変化によるものなのか、領域の完成度が不足する事に由来するのか、はたまた虎杖の「魂を捉える打撃」の影響なのかは不明。
これだけの過程を踏んでまで『閉じない領域』に拘るのは、呪力を持たない真希も必中効果対象になるよう、結界で空間を分断せず建物等の呪力の無い無生物も捉えられるようにする必要があったから。
なお出力は落ちていないと言われているものの、それとは別に結界の精度や必中術式の効果に何らかの支障が表れているのか、虎杖達の「簡易領域」でも数秒耐えられるほどの領域となっていた。
しかし、最後に魔虚羅すら一撃で屠った、「竈」の超広範囲高威力の大爆発を引き起こさせた。
五条戦で使用していなかったのは、領域の要件変更を重ねて効果範囲を絞り続けた事で、十分な威力を発揮するための粉塵(爆薬)が確保できない、という理由から封印していた。
人物像
「存外 人間の味は多種多様で刹那的でな」
「死ぬまでの暇つぶしとして啜る分には丁度いい」
これまで宿儺は、傲岸不遜で邪悪な〝呪い〟として多くの者の前に立ちはだかってきた。
実際にその通りの人物ではあるのだが、物語が終盤に差し掛かっていくに連れて、徐々に宿儺がどのような人間なのか掘り下げられている。
実は、宿儺に具体的な目的はない。
強いて言えば、羂索の「面白いと思ったから」という動機に近く、史上最強の生物である彼にとって人生は死ぬまでの暇つぶしに過ぎない。
他者はその暇つぶしの相手で、目障りならば壊し、面白ければ遊ぶ、まるでオモチャ程度の認識。それ故に宿儺は、五条悟や鹿紫雲一のように他者を求めず、愛を下らないモノと吐き捨てる。
漏瑚に五条、鹿紫雲に呪いとしての本質や愛について愉したが、あくまで宿儺自身の所感を伝えただけで、それが本当に彼らが欲しかった答えなのかは判断できない。他人はどこまで行っても他人なのだから。
彼らが命を懸けて戦った理由も、摑みたかった理想も、宿儺にとっては真偽の分からない後付けの遺言でしかない。
しかし現在、自分の何かが変わっている事に宿儺は気づいた。
千年前から変わらず、両面宿儺は自分の身の丈で生きている。最強の彼に出来ない事は無く、阻む壁は大抵障害にすらなり得ない。
だからこそ今まで宿儺は、自分の身の丈以上の願い……理想とは無縁だった。
その事に気づかせた人物が、虎杖悠仁。
全く違う人間でありながら、一つの肉体に魂を同居した事で性根まで理解してしまった他者。
だから宿儺は知っている。
虎杖悠仁の魂が、百折不撓の理想を持っている事を。
その理想が偽りではない真実のモノである事を、他ならぬ宿儺自身が知っている。
五条悟や鹿紫雲一のような強者ではなく、よりにもよって自身が「つまらん」と蔑んだ相手に、自身は理想を嫌う人間であったと理解させられた。
それは同時に、身の丈に合わない理想を掲げる弱者は、時として意思の強さでのみ強者に比肩する事を意味し、それを宿儺も実感する羽目になった。
虫と嘲った者達が示した事実に、心底不愉快な気分を味わった呪いの王は宣言する。
「成り行きではなく 明確に今一度」
「お前たちの理想を 切り刻むことにした」
誰かの理想を否定し、圧倒的邪悪として悉くを理不尽に破壊する宿儺だが、彼がその性質を持っていたのは環境の変化ではなく生まれ持った人格だった可能性がある。
謎に満ちた出生だったが、本来は「双子で生まれる運命だった」という事を新宿決戦前に裏梅との会話で明かす。
しかし、母が飢えていた時に胎の中にいた宿儺は飢えたからではなく飢える前に双子の片割れを食らって生き延びたという。
本来、物心という名の自我すら形成されない赤子の頃なので、悪意ではなく並外れた生存本能に従って生きようとした末の結果なのかもしれないが、自身の母を「愚母」と悪しざまに呼び、片割れの命にすら手を伸ばす。
何にしても己以外は虫と見下して時に利用し、遊び、壊す対象であり、自分は生物として人間と一線を画する者という自覚はこの頃から既に有していたのだろう。
余談
- 腕の生え方
4本腕のキャラクターとして代表的なポケモンのカイリキーによく喩えられるが、厳密には腕の生え方が異なる。
あちらは肩からもう1対の腕が生えているのに対し、両面宿儺は脇からもう1対の腕が生えている構造である。
描画する際は注意されたし。