概要
前作『3年奇面組』が完結した翌週から高校に舞台を移して連載を開始したシリーズ第2弾。
1980年代の『週刊少年ジャンプ』を象徴する漫画の1つに数えられ、連載中盤の1985年に前作のエピソードを混合、改変しつつ製作された全89話のアニメ版(テレビ版86話+劇場版3話)と共に絶大な人気に支えられ続ける新沢基栄最大の長編作品。全20巻。
また、2003年(現金及びCRデジパチ版。権利物は2004年)にマルホン工業でパチンコ化された。
構成
前作終盤で合併した『一応高校』(いちおうこうこう)で繰り広げられる高校生活を主軸とし、大別して名物集団同士の競り合いをクラブ活動に置き換えた『クラブ挑戦シリーズ』、パラレルワールド『ちょっとSFシリーズ』を発展させたアナザーストーリー、特定人物に焦点を当てたスポットストーリー、学校内外のイベント参加シリーズの4パターンで構成される。
逸話
タイムワープについて
可能な限り正確に現実時間と作中時間を寄り添わせ、必ず1年が過ぎる事で出演者全員の年齢を1歳重ねる「現実時間との同期」を執筆当初からの信念としており、作品表現に必要な世相や流行、季節を除く現実世界の時系列を極力持ち込まない事で細かな時間経過に縛られない自由な展開を描く漫画界の風潮、特に当時のギャグ漫画方面からすれば極めて稀な手法の性質上、奇面組の確実な進級を前提に連載開始から3年後の1985年3月、即ち現実世界の卒業式シーズンに奇面組一同の卒業を以って完結する段取りを整えていたものの、3年目を迎えても作品の人気に未だ衰えぬ勢いを見た編集部が新沢の申し出を保留した上で続投を打診した結果、「作品世界に介入した作者自身がタイムマシンを使って作中時間を操作する」という苦肉の策を敢行し、時間軸の違う1984年をもう一度過ごし直す強引な辻褄合わせで一応の決着を見た。
ところが、これに続いて頑なに断っていたアニメ化の依頼を承諾した一件から潮時を見失う泥沼に陥り、持病の慢性腰痛の悪性進行、アシスタントを務めた佐藤正の漫画家デビューに伴う独立が重なって締め切りに追い立てられるようになり、遂には締め切りに間に合わず2週連続で原稿を落とす異例の事態を重く見た編集部がようやく集英社上層部に事情を説明し、合議の上で脱稿分の穴埋めを条件に完結の確約に漕ぎ着けた。強権を行使して新沢の嘆願を上層部に通さず保留した編集部の姿勢に端を発し、当初の予定を大幅に上回る約2年半の続投を余儀無くされた新沢は、後にこの迷走期について「何度も(ストーリーの)同じ年度を繰り返すことになって正直つらかった」と当時の苦境を吐露している。
結末について
最終話の結末に対して大多数の読者から寄せられた「夢オチ」の批評には、一貫して否定的な態度を示している。
『帰ってきたハイスクール!奇面組』執筆当時のインタビュー記事では、読者の反応について「最後は(空想なのか、正夢なのか)どっちとも取れるように描いたつもりだったが、悪いふうにしか取られなかった。」と自身の暗喩と読者の解釈の間に生じた意識のズレに対する反省を込めた回答を示し、後年に発刊される各種復刻版コミックでは問題の初版ページに対して敢えて加筆を行ったものに差し替えられた。
しかし、この譲歩に至っても依然として不満の声を荒げる読者は多く、2002年刊行の関連書籍『奇面組解体全書』中のインタビュー記事で「夢オチで片付けられるのは心外」の前置きに続いて「話が終わってもみんなの中でイメージが生き続けて欲しいという思いを込めて第1話に繋がる形にした」「アニメ第1話に関わった時に作った冒頭部分のシナリオが映像化されたものを見てループを閃いた」と語り、展開の経緯について並々ならぬこだわりを持って筆を執った事実を明らかにすると同時に、初めて否定派の読者に明確な対立姿勢を表した。
主要人物
前作から出演する主要人物については『3年奇面組』に譲り、以下は本作の主要出演者の記載に限定する。
同級生
本来は『応生高校』(おうせいこうこう)に進学する予定だった他中学出身者であり、やはり奇面組と長い付き合いを保つこととなる個性的な面々。後に物月珠美は真実一郎と、織田魔利は二階胴面一と恋愛関係を育む。
その他生徒
立場は下級生、転校生、留年生と様々だが、奇面組に劣らない強烈な個性を発揮する。
教員
常識外れの奇面組に翻弄されつつ時に厳しく、時に優しく接する教職員。
名前 | 読み | 教科 | 声優 |
---|---|---|---|
若人蘭 | わかと らん | 英語 | 柴田由美子 |
事代作吾 | じだい さくご | 体育 | 田中秀幸 |
陸奥五郎 | むつ ごろう | 生物 | 佐藤正治 |
日条左半次 | にちじょう さはんじ | 全教科(主に体育) | なし |
青空春夫 | あおぞら はるお | なし(主事) | 戸谷公次 |
家族
一堂家
一堂零の祖父である清列が「習い事と日記が3日と続かないと評判だった」と一堂啄石の過去を語る場面があり、即ち啄石は善院直利(後の一堂直利)と結婚する遙か前から善院家と知古の関係を持ち、さらに言えば一堂家が善院家と同郷の近所同士であった可能性を濃厚に示している。
また、『帰ってきたハイスクール!奇面組』によると一堂家に迎えられたラッシーは2代目以降に当たり、当時3歳の初代ラッシーは当時7歳の零の窮地を救ったものの拾われずにそのまま別れている。
冷越家
家庭を顧みない博打狂が仇となって妻と弟夫婦に絶縁され、幼い冷越豪を置いて10年近く全国を放浪した風太郎が出演。
名前 | 読み | 間柄 | 声優 |
---|---|---|---|
冷越風太郎 | れいえつ ぷうたろう | 父 | なし |
出瀬家
銭湯『がんばりまっし湯』を経営する千田郎と質代、7歳下の清が出演。
なお、『帰ってきたハイスクール!奇面組』では千田郎の名前が誤植によって千四郎となっている。
大間家
ケーキ専門店『ケーキの大間』を経営する九と母、田舎に住む父方の祖父の翁が出演。
後年にアニメ版がDVD化された折、母に時代(じよ)の名前が付与された。
名前 | 読み | 間柄 | 声優 |
---|---|---|---|
大間九 | だいま きゅう | 父 | 納谷六朗 |
大間時代 | だいま じよ | 母 | 中野聖子 |
大間翁 | だいま おう | 祖父 | なし |
物星家
本屋『物星書店』を経営する母が出演。
後に『帰ってきたハイスクール!奇面組』で母の名前が日和(ひより)と判明し、さらに父の座男(ざお)が加わった。
名前 | 読み | 間柄 | 声優 |
---|---|---|---|
物星日和 | ものほし ひより | 母 | 梨羽雪子 |
春曲家
子煩悩を除けば真面目な常識人夫婦と思いきや、鈍の並外れた基礎運動能力の低さはこの両親の遺伝であり、アニメ版では鈍同様に「きゃ・しゃ・にゃ」が強く現れる滑舌の持ち主となった。
音成家
専業主婦の見栄子、7歳下の健一、チンパンジーのチータが出演。
一堂家の隣人でありながら物語中盤でようやく出演を果たし、以降は事ある毎に家族ぐるみで一堂家と見苦しい見栄の張り合いを繰り広げる。父の存在は不明。
名前 | 読み | 間柄 | 声優 |
---|---|---|---|
音成見栄子 | おとなり みえこ | 母 | 中野聖子 |
音成健一 | おとなり けんいち | 弟 | 金丸淳一 |
チータ | ちーた | ペット | 不明 |
雲童家
自宅常駐の丈、一応高校女子バレーボール部主将の命が出演。
丈は千田郎と同じく主要人物の家族中最年長の50歳だが、双子の命と雲童塊を一流スポーツマンに育て上げる一心で無理を重ねたためか体の節々に故障を抱える身となり、依然衰えぬ気概に反して往時の運動能力はほぼ失われている。母の存在は不明。
その他出演者
- 天下泰平(てんか たいへい)
一応町町内会長。声優は筈見純。
白髪の総髪と立派な髭がトレードマークだが、歯も加えて全て人工品。一応町で開催されるイベントの主催者と総合司会を兼任する一方、暴力的な柔道で怖れられる『音小野高』(おとこのこう)柔道部顧問も務めている。
- 千飼統作(せんがい とうさく)
将来は漫画家を志す一応高校の生徒であり、3年時の零たちの同級生。
すでにプロ並みの技術を修得している反面で肝心のオリジナリティーに問題を抱え、何度も出版社に持ち込みを続けているが全て落選に終わっている。縁あって『ハイスケール!御面組』の作者である新鱈と出会い、自身の新作『北東の県』について模写一辺倒の厳しい指摘を受けつつも器用さを高く評価され、後日に新鱈の仕事場を訪れた折に泣き付かれて高校生とアシスタントの2足の草鞋生活を始める。
- 新鱈墓栄(しんだら はかえい)
作中に登場する新沢の分身の1つで、最も自身の姿を茶化したキャラクター。
人気漫画雑誌『週刊少年ジャンボ』で連載されている事自体が不思議なC級漫画『ハイスケール!御面組』の作者。当時から他作流用を常套手段とし、千飼をアシスタントに迎えてからは「顔スタンプ作戦」(千飼に顔以外の全てを描かせ、新鱈が各キャラクターを象った顔スタンプを押して作画を完了させる)も編み出した上、少しでも自身の作品に似た点があると知るや億面も無く出版社に流用抗議の電話を入れるという極めつけのダメ漫画家。
- 生井気奈子(なまい きなこ)
ナンシーをも凌ぐ175cmの長身と眼力鋭い平行四辺形の四白眼を持つ新入生。
零に一目惚れをした日から恋のライバルである唯を引き離すべく腐れ縁の累と共に様々な作戦を実行に移しては尽く失敗し、遂に女子バレーボール部に入部して近場から嫌がらせを行おうと試みたが逆に周囲のペースに乗せられてしまい、気が付けばそのままアタッカーに抜擢されてしまった。
- 意地川累(いじがわ るい)
ふて腐れた顔と瓶底メガネが特徴的な新入生。
ヒガミ根性に染まりきった凄まじいひねくれ者であり、人気者の地位を徹底的に貶める悪知恵は一級品。唯を邪魔に感じる腐れ縁の気奈子に協力するが何一つ成功せず、やはり気奈子同様にあれよあれよという間にレシーバーとして主戦力に抜擢されてしまった。