1965年4月7日生まれ。東京都出身。
愛称は靖子にゃん(名付け親は東映の武部直美プロデューサー)。
概要
正統派で人間臭く熱いヒーロー像を描くことに定評がある。
元々シナリオ作成術を持つ会社員だったが、ある日たまたま特撮番組のある話を見て特撮に興味を持ち、どうすれば関われるのかわからなかったため企画書をメールで送り、たまたま当時のプロデューサーに目にとまり、毎週台本が送られてくるようになる。
その後本格的に勉強することを決意し、改めてシナリオライター養成学校に入学。特捜ロボジャンパーソンでデビュー、メタルヒーローをメインに新人の脚本家粛清の被害にあいかけたなど色々あったが、星獣戦隊ギンガマンでメインライターを任される。
仕事を共にすることの多い井上敏樹などと比べると、伏線をきっちり回収するほうであり、物語終盤に思わぬどんでん返しを用意していることが多い。
一転して重くシリアスな展開になることもあり、"黒靖子"とも評される。烈車戦隊トッキュウジャーでは序盤では珍しくコミカルだったため「珍しい」と言われていたが、終盤はやはりシリアス展開になっていた。
また上記の通り伏線回収することで定評があるが、その結果として描写や設定がかなり難解になる事も多い。特に時間物である『未来戦隊タイムレンジャー』の設定は非常に複雑。
同じ時間物である『仮面ライダー電王』では、公式HPに設定解説コーナーを用意するほど難解な設定を用意し、「わからない人はわからないままでも、イマジン達で楽しめるようにする」と言う開き直りまで見せている(HPを担当したのは当時のメインプロデューサーである白倉伸一郎)。
ヒーローのパワーアップアイテムにも物語上でも深い意味を持たせることが多く、シリーズ内でもかなり特殊な扱いになることも多い。
キャラクター同士の関係性を深く濃く描く傾向にあり、そういった人物同士の台詞回しも人気の一因。
あまりにキャラや設定を細かく描くため、サブ脚本家が描くと違和感が出てしまうことも(例として、『タイムレンジャー』では「未来では、地球人だって宇宙人という認識があるので、『異星人』を『宇宙人』と呼ぶのは差別的である」という設定が描かれたにも関わらず、後のサブ脚本回ではその未来人達が何度も『宇宙人』と発言している)。
メインライターを務めた『電王』や『仮面ライダーOOO』で他のライターが脚本を執筆した際には、「ダイアログ監修」「脚本協力」といったかたちでクレジットされている。
彼女の担当する特撮作品では「主役を特別な立場に置き、主役と他のキャラとの関係を中心にして描く」と言う手法を多く取り入れている(「1人の現代人と4人の未来人」を描いた『タイムレンジャー』や、「殿と家臣たち」を描いた『侍戦隊シンケンジャー』が顕著)。
彼女が描く戦隊は「戦うのを使命・宿命」としているものが多いが、その上で自分の意思で戦っているということが強調される。
「ヒーローに守られるヒロイン」と言う物を好まない傾向にあり、可愛いヒロインよりも、強気・勝ち気なヒロインが多い(『タイム』のタイムピンク/ユウリや『電王』のハナ/コハナなど)。
ただ、その結果ヒロインの描写が薄くなってしまう事もあり、女性より男性が目立つ傾向+先述した深い関係性が合わさって「やおい的な脚本」と評されてしまう事も。
キャラをしっかり掴めないと話を書けないため、クロスオーバーが苦手」といった弱点もある(『シンケンジャーVSゴーオンジャー』のゴーオンジャー側、『電キバ』のキバ側など)。
なお、彼女がメインライターを務めた戦隊には「赤が二人」という法則がある。
- 『ギンガマン』:リョウマ(ギンガレッド)とヒュウガ(当初のギンガレッド、後に黒騎士)
- 『タイムレンジャー』:タイムレッドとタイムファイヤー(+リュウヤ版タイムレッド)
- 『シンケンジャー』:シンケンレッドが当主と影武者
- 『ゴーバスターズ』:レッドバスターとダークバスター
- 『トッキュウジャー』:トッキュウ1号とこどもトッキュウ1号(同一人物だがVシネにてまさかの共闘)
更に赤い戦士は終盤までのストーリーに欠かせないキャラとなる。
他にもメインライターを務めた仮面ライダーには「望み」や「欲望」が物語に大きく関わっている。
- 『龍騎』:登場するライダー達は自分の望みを叶えるために戦う
- 『電王』:同作の怪人「イマジン」は、契約者の望みを(腕づくで)叶えることで実体化する
- 『OOO』:作品のテーマが欲望
- 『アマゾンズ』:生きるモノ全てが抱く「生きたい」という願い
さらには、彼女が特撮の劇場版作品には電王を除いても「タイムトラベル」「過去や未来の人物」が物語に大きく関わっていることが多い。
- 『シンケンジャー』:夏の劇場版は、300年前の初代当主が使った封印のディスクを手に入れるというストーリーという内容となっている。
- 『OOO』:脚本監修を務めたノブナガの欲望では現代に蘇った織田信長が重要人物として描かれ、夏の劇場版では現代と過去の空間が入れ替わると同時に仮面ライダーが将軍様と共闘したり、MOVIE大戦MEGAMAXでは未来から来た仮面ライダーが登場する。
特撮に比べるとアニメでの仕事においては特撮ほど高い評価を得られておらず(それ以前から評価の高い作品自体は存在する)、あまり知られる機会に恵まれていなかったが、近年では『ジョジョの奇妙な冒険』や『進撃の巨人』にて高い評価を得ている。
特に『牙狼』シリーズを題材にしたオリジナルアニメ『炎の刻印』は、「自立どころか女傑の域に達しているアダルトなヒロイン」「一人の少年が背負うには重すぎる十字架」「それを乗り越えた先に待つ怒涛の展開」と、上記作風の真髄と呼ぶべきシナリオが展開され好評を博した。
ちなみに先述した井上敏樹は、平成ライダーシリーズにおいて小林と人気を二分する脚本家で、ファン同士の対立が激しいが、当人たちは公私ともに仲が良いという。
逆に両澤千晶とは不仲であった、と言う噂がある。『GEAR戦士電童』の執筆の際に対立したとされるが、いろいろな説がありソース不明。ただ、電童を降板したのは事実。
また、香村純子は小林の脚本家デビューに関するとある有名な逸話を知り、小林靖子に出来た事なら自分にもできるはずと思った事が脚本家を目指したきっかけである。
作品リスト
特撮
『星獣戦隊ギンガマン』1998-1999年
『未来戦隊タイムレンジャー』2000-2001年
『仮面ライダー龍騎』2002-2003年
『美少女戦士セーラームーン(実写ドラマ版)』2003-2004年
『仮面ライダー電王』2007-2008年
『侍戦隊シンケンジャー』2009-2010年
『仮面ライダーOOO』2010-2011年
『特命戦隊ゴーバスターズ』2012-2013年
『烈車戦隊トッキュウジャー』2014年-2015年
『仮面ライダーアマゾンズ』2016年
『仮面ライダーアマゾンズ season2』2017年
『刀剣乱舞』2019年
アニメ
『DINOZAURS : THE SERIES』2000年
『あぃまぃみぃ!ストロベリー・エッグ』2001年
『ごくせん』2004年
『灼眼のシャナ』2005-2006年
『夢使い』2006年
『ウィッチブレイド』2006年
『CLAYMORE』2007年
『BLASSREITER』2008年 - シリーズ構成は虚淵玄
『キャシャーンSins』2008-2009年
『TRIGUN Badlands Rumble』2010年
『劇場版 ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH』2011年
『ジョジョの奇妙な冒険』2012-2013年, 2014-2015年, 2016年,2018年
『進撃の巨人』2013年,2017-2019年
『牙狼 DIVINE FLAME』2016年
『賭ケグルイ』2017年
『どろろ』2019年
ゲーム
『ワンダーグラビティー ピノと重力使い』2019年