概要
背もたれを前後に動かすことで着席方向を進行方向に合わせることが出来る。初期の0系新幹線電車やリニューアル前の185系などで採用され、会社間競争が激しい東海地区、関西地区での採用が多い。
反面、関東・東北地区での採用例は非常に少ない。これは混雑の激しい首都圏では乗降の邪魔になること、ボックスシートに比べると転換装置やモケット量が多くなるなど製造コストがかかり、機構の分重量増にもつながるためである。
日本国外においても採用例は非常に少ない(ついでに回転クロスも少ない)。
比較的簡易な構造で回転クロスシートと同様に進行方向を向いて座り、前後の座席を向かい合わせにすることが可能。転向の際前後の客に一旦どいてもらう必要もない。
しかしリクライニング機構をねじ込むことが難しく、かつ背もたれの両面がクッションで中心に板など仕切るものがない構造であるため、後ろの客が行儀の悪い客だと、投げ出して組んだ脚にクッション越しで背中を押され大変不快な思いをすることもある、そうした特性から、JRで言うところの特急クラスに転換クロスシートを採用する例は少ない。特別料金を徴収するものは大半が通勤客向けの着席保証列車(○○ライナーの類)とかそういった程度のものである。
変わった例として京浜急行2100形がある。この転換クロスシートは、向かい合わせでの使用を前提にせず、シートピッチを詰めているので乗客が座席を任意に転換させることが出来ないようになっている。運行開始直後はこれを知らない乗客が強引に向かい合わせに変えようと座席を引っ張り、故障が多発したこともあり、背もたれに座席を転換させることが出来ない旨の記述がある。
なお、鉄道雑誌や旅行本では一時期転換クロス=絶対正義という一種の原理主義的論調が流行っていた。これはライターの大半が青春18きっぷ利用者が多いのが理由で、クロスシートを導入しないJR東日本はやる気がないなどという根性論丸出しの論調も見られた。
やる気でクロスが導入できるなら誰でも鉄道会社の経営ができるというものである。
また、ライター側が意図しているのかわからないが、ロングシートに対してクロスシート車のデメリットを書いている事例が少ないのも一因。実際、とある雑誌で首都圏に転換クロスシート車は必要か?と意見を募集したところ、圧倒的に要らないとの回答が占めたという。
中京・関西以外ではJR北海道(札幌都市圏)・JR九州(福岡都市圏やキハ200形)・JR四国(113系・6000系)・JR西日本の山陽地区(岡山・広島・山口)や北陸地区で転換クロスシート車が導入された。しかし、2000年代以降はJR西日本・JR四国を除く各社では新車がロングシートに切り替わり、一部は増備車や改造車でロングシートに変更された車両も現れた。やはりラッシュ時の乗降の悪さが問題視されたことは大きいだろう。
これらの事例もあってか、前述のような論調も急激に減ることになった。
ロングシートでもクロスシートでもどちらもメリット・デメリットがあり、どちらが正義であるかを押し付けてはならない。大切なのは座席にこだわらず、どのように快適に過ごす方法を見つけ出すかである。