概要
ユーラシア大陸西方にルーツを持つ人種。主にヨーロッパから中東、中央アジア、インドにかけて分布しているコーカソイドのうち、ヨーロッパの西方や北方に住む諸民族、あるいはこの地に起源を持ちアメリカ合衆国等に子孫として生きる肌の白い人々をくくった名称。
現代においては生物学的分類とはされず、文化的、社会的、政治的背景のもと定義される便宜的な呼称として扱われる。
例えばコーカソイドとされる民族のうちペルシアやインド亜大陸に住むアーリア系、トルコ等に住むテュルク系の人々も肌が白い傾向にあるが「白人」とは呼ばれない。北アフリカ系のベルベル人の人々や、アラブ系の人々にもいる白い肌の人々のケースでも同様である。
大航海時代には、地球上のあらゆる地域が大英帝国などの西洋列強諸国による進出(侵略)を受け、特に北アメリカ大陸やオーストラリア大陸(オセアニア)の殆どの地域では原住民が虐殺され白人文化圏に変えられ、生き残った数少ない原住民はその後ひどい差別を受けた。
また、アフリカ大陸や東南アジアの殆どの地域においても白人によって原住民の黒人や東南アジア人が支配され奴隷化され、豊臣秀吉がキリスト教禁教をするまで奴隷商人が日本にも襲来していた。が、日本国内でも奴隷の売買がなされ、秀吉も島津氏による(同じ日本人の)奴隷売買を禁じるお触れを出す一方、自身が侵攻した朝鮮半島出身の奴隷については取引を許す等、世界史的に奴隷制自体は珍しいものではない。アフリカでも同じ黒人が他勢力・他部族の同人種の人々を白人に奴隷として売っている。
欧州一帯のみならず、考古学・言語学的な観点で源流を辿れば血脈としては近いという学説もあり、ユーラシア大陸の中央から西側の様々な血統が入り混じっている。
テンプレートなイメージとして「金髪碧眼」が想像されやすい一方、金髪碧眼は劣性遺伝によるマイナー因子であり、むしろ髪は黒髪から茶髪程度、目の色も茶色が大数を占める。
白人と美
日本人と比べ背が高くて脚が長く、顔の彫りが深くて目が大きく、二重が多くて鼻が細く高い。髪や眼の色が多様で、髪は金髪・茶髪・赤髪・黒髪など、眼は青や緑(碧眼)・茶・黒など様々である。金髪碧眼や美白童顔の白人女性は、日本では美の象徴となることが多い。
実際、現在美人と称される人々は目が大きく、鼻幅が細い、正面顔が小さいなどの傾向にあり、その類の顔付きが多いハーフが日本では人気であるが、そもそもハーフの顔つきは白人の骨格が優性して遺伝している事や白人の方がアジア人より目の面積が一回り大きい傾向にある事などが判明していたりする。
また、美人の代名詞とされる「ヴィーナス」はローマ文明を経由して白人の諸民族にも信仰が広がり、キリスト教化後も表現されてきた女神であるが、白人のイメージが強い形で描写されてきた。
理由はよくわかっていない。俗説がいろいろあるが、戦前においてこうした議論は骨相学など白人至上主義の立場から発信されたため、戦後になると科学的にはこうした美意識は白人社会が優位であるために社会的に構築されたものとして、そのような自然科学的事実は存在しないとされ、ときには「日本人が差別主義者だからファション雑誌に白人が多い」という理由まで付けられるなど、議論自体が禁止されている。このため研究は俗説に頼るしかなく全く進んでいない。
しかし、20世紀後半からは東アジア人も影響力を増してきており、歴史的にはモンゴル帝国が世界の支配者であったし、日本だって高度経済成長からバブル期にかけてジャパン・アズ・ナンバーワン、21世紀初頭には華僑・漢民族が最先端分野のかなりを担っているが、社会科学の予想のように人気が出てはいない。
個々の人気はあるとはいえ、歴史上の圧倒的な積み重ねを持つ「ヴィーナス」を有してはいない。時々「キワモノ」的にブームになるスターが出るが、それでしぼんでしまうことが多い。アニメにしても白人に近い絵だと白人のアニメファンから言われる事がある(後述)。K-POPも音楽性での評価であり、アジア人へのヘイトクライム(釣り眼ポーズ等)は時として激しいものがある。
例えば中国系で男性ではジャッキー・チェン、女性ではチャン・ツィイーのような世界的スターが出てはいるが、白人向け市場の大きさとそれによる白人俳優の優遇により非白人スターの数はより少なめである。
テコ入れとして、2020年9月にアカデミー賞運営側が作品スタッフやキャストに一定数の有色人種を入れる事を求めている。ただ、絶対に満たさなくてはならないのは四項目のうちの少なくとも二つ、であり割と条件は緩めである(米アカデミー賞、作品賞に「多様性」の条件設置へ)。
逆に、西欧・北欧の諸民族や東アジアほど影響力のない、東欧・南米などの地域の白人系美男美女も、東アジアで人気を集めている。彼等彼女らも風貌的には西洋の白人に近い(南米には白人の血を引く人々も多い)。冷戦時代には政治的に対立していた東欧のオリンピック選手などですら、西側アジアで人気を集めていた。「美を感じる(男性が女性にする場合は多分に性欲の部分も入る)」というのはかなりプリミティブな情動であるため、わざわざ社会的な力だの位置だのの判断を先に挟むという理由もないためであろう(性欲等が入り込む余地の無い風景に対する認識についても、殆どの人は美しいと感じる際にわざわざ光のスペクトルだのを意識はしないものである)。
上述の「白人を美しい、とする見方が白人社会が優位であるために社会的に構築されたもの」の「白人」の箇所が別の○○人に置き換わる日は、しばらく(百年単位で)は来ないと思われる。
ただ、それは多くの西洋出羽守が言うように「アジア人が遅れている連中だから」ではなく、以下の理由による。
- 各「ヴィーナス」といった古典美術は十数年や数十年程度では生まれないか、少なくとも蓄積されない。
- 生身の人間を「美の化身」扱いする事は、男性から女性への性欲・性的興味の要素も入り込むため、当人に大きな負担を与える。そのため「コンプライアンス」や「ポリティカル・コネクトネス」の観点から、現代において許容されない。かつてマリリン・モンローにされたような扱いは白人の俳優・モデルに対しても大っぴらには容認されないだろう。
- 男性が審査員や観客として入るような「美人コンテスト」自体、参加者の内面や教養面に重きを置く方向に舵を切るか、コンテスト自体を廃止する流れになっている。
世界史的な視点
古代ギリシャ文明の発達以降、文明先端国だった古代エジプトや古代ペルシャ等の大勢力と鎬を削って文化を発展させたが、ローマ帝国の衰退後数百年にわたり停滞する。
その後都合に寄ってコーカソイドや白人にされたりされなかったりするアラブ人がイスラム教文明を興し、イスラム文明の研究成果を学んだヨーロッパ人がイスラムにかわって科学を発展させる。ヨーロッパ・ルネッサンスと経て、文化を他地域より飛躍させ先進性を持つようになる。
これに宗教的背景を求める声もあり(学者・科学者が敬虔な信徒である例はニュートン等のように実際にある)、逆に宗教を科学の敵扱いする言説もあるが、キリスト教徒やイスラム教徒が引き継いだ、ギリシャ・ローマの学問は多神教の背景を持っている。アジア圏のヒンドゥー教の神観も、アブラハムの宗教の神のような「天地を主宰する神」の要素を持つ。
一神教が生まれた地域と重なる古代メソポタミアでも天文学や数学などは発達しており、学問や科学の発達じたいを特定の宗教観に帰し、一概に断言するのは困難だろう。
西欧では学問・政治の分野において、自由や独立の概念をいち早く発達させる一方、中世の封建的な観念も捨て切れず慣習的に残している。
各国の王家やその有り様がまさにそうであり、西洋社会でも表向きは通っている建前と「王家という伝統に求められる事」が衝突する事例も見られる。
例えばノルウェーのメッテ=マリット王太子妃の場合、少女時代に麻薬パーティーに参加した過去があり、父親は麻薬常習者で刑務所に居る事がマスコミにすっぱ抜かれて大きな非難を浴びた。
彼女自身は荒んだ生活を改め猛勉強して国内トップのオスロ大学に入っているし、そもそも親の罪は子の罪ではない。
が、世論はいちどは否定側に回ったのである。彼女は国民にむけて改めて謝罪し、大きな支持を勝ち取っている。
その後群雄割拠と大航海の時代を過ごし、競争するように西欧が世界中を征服してまわり、キリスト教布教を名目とした植民地化と大量殺戮を繰り返した後、幾度の戦争と二度の世界大戦、冷戦を経て西欧と北米が白人文明の大半を制し、残るはロシアと南米の一部というような状況である。
日本はもともと海外文化を受け入れる風土があったので、文化は取り込むが体制は拒否するという状況を維持していたものの、敗戦により征服されその後はかなり西洋化した。
西欧・北米は現代の国際社会で、度重なる戦争と外交戦略を経て長らく優位を保っており、国際社会でのスタンダードはおおよそ英米白色人種文化を基盤としているが、民主主義を掲げる傍らで、優位性の誇示や差別観が抜けきらない歪な精神構造を有する者もいる。イスラム圏に関しては十字軍以来1000年に渡る激しい遺恨があり、イスラム圏では赤十字マークが赤新月マークに置き換えられたりしている。
一方でアフリカ大陸や南北アメリカ等で行った植民地支配や異民族の文化破壊について自覚的に振り返り、オリエンタリズム批判など非白人の意見を取り入れた上で異文化の保全策を模索してきた歴史もある。
かつて「未開」として扱われていた民族を取材したテレビ番組が欧米で作られる際にも、少なくともNHKが放映権を買ってくるような番組では上から目線や蔑視は視線は戒められている。
それでも上から目線が抜けきっていない事例も出てくるが、それは白人に限ったことではない。一応の人権教育が義務教育でなされ、各種ハラスメント講習が職場などでされるようになった日本社会でも出る例を見てもそれは明らかである。
思想
宗教的にはキリスト教信仰者が多い。かつては北欧神話、ケルト神話、ギリシャ神話、ローマ神話などに基づく多神教の勢力圏であったが、ローマ帝国がキリスト教の政治利用を始めたことを皮切りに土着信仰を徹底排斥した結果、宗教における勢力図が塗り替えられる事になった。
白人の信仰はキリスト教が最多である。ローマ・カトリック教会、(ビザンツ→ロシア)正教会、近世に登場したプロテスタント諸派の三つの流れのいずれかに属していることが多い。
20世紀中盤、聖書学の発達などが原因となり、白人のあいだでもキリスト教が絶対の真理という通念は徐々に失われていっている。
「聖書は絶対でない」という前提のもと神学・信仰を構築するリベラル派、自由主義神学やそもそも信じない無神論や無宗教の割合が急増している。白人の研究者が基礎を築いた聖書学は他民族・他人種の研究者や研究翻訳を生み、キリスト教のリベラル化と無宗教の勢力増大は白人以外にも広がりを見せている。
伝統的キリスト教は、聖書や宗教的伝統を真理とし、聖書や聖人、神学者たちの記述を元に明文化された「正しさ(正義)」を提示する。
そしてここから生まれたリベラリズムたちもまた自身の主張を明文化する事で行動を行っている。
伝統的キリスト教の特徴は仏教やヒンドゥー教にも当てはまる点があるのだが(日蓮など)、日本においてはこのノリが希薄化している事もあり、キリスト教などの一神教文化による影響と認識されやすい。
「明文化された正しさ」が意識的に求められる背景として、移民を含む異民族・異人種との衝突の表面化のしやすさ、同性愛者などのマイノリティ当事者の可視化の過程といった様々な条件が複合的に組み合わさった結果であると言える。
この事は「ハラスメント」や「コンプライアンス」といった差別や加害を戒める単語の多くが英語である事にも現れている。
キリスト教やそのカウンターとしての「新しい価値観」の、人種・民族を問わない性格から白人が持つ保守傾向やリベラル傾向を同じ場所に住む異人種・異民族の人々も共有している事も多い。
黒色人種や黄色人種に比べると、精神面で脆いのもこういった思想による歴史が影響されているとされる。
白人は強いショックを受けると、すぐ気を失ったり、自分を見失うというのは、そうすれば神様に助けてもらえるという潜在意識から来る行動とも言われている(もちろん、気の弱い性格なら誰でもそうなりがちであるが)。
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