概要
『HUGっと!プリキュア』第21話ラストで起こった衝撃の展開。
覚醒したばかりの追加キュアであるキュアマシェリとキュアアムールの奮闘によって怪物オシマイダーは浄化されたが、戦闘の最中、えみるの愛用していたエレキギターが壊されてしまう。
えみるは起こってしまったことは仕方がないとしながらも「もっと強い浄化アイテムがあれば悲しい結末にはならなかった」と嘆き「キュアエール・キュアアンジュ・キュアエトワールの持つ浄化アイテム・メロディソードを自分たちも欲しい」と懇願しだした。
しかし、メロディソードはタイムパラドックスを発生させるレベルの想定外事象により発生したものであって、どうすればその現象を再現できるのかはエール達プリキュアもその後見人であるハリハム・ハリーも分からず匙を投げる始末。
皆が諦めるしかない絶望的な状況にはぐたんは何かを思いつき、自らが内包するアスパワワを解放して空から何かを呼び寄せた。
すると… その時不思議な事が起こった。
初代の主人公・キュアブラックとキュアホワイトが空から降ってきたのだ。
何が起こったのか分からないまま呆然となるプリキュア一同だが、それ以上に困惑したのは当時の視聴者であったに違いないだろう。
この展開は全く予告もネタバレ情報すらも流布されていなかったのだから、まさに「ぶっちゃけありえない」である。
そしてこの放送が終了してから数時間後、東映アニメーションからの公式プレスリリースとして次話にて初代主人公・キュアブラックとキュアホワイトがゲスト出演することが各種WEBメディアで公式に告知された。
その後
第22話ではえみルーの「新たな力が欲しい」と言う望みがなぎほのがどう関わっていくのかが描写される。
予想外の事態に困惑するエール達だったが、マシェリは「もしやメロディソードを授けにきてくださった天の使いでは」と都合良く解釈し、2人へ「ください」とタカる。まさに恐れを知らない。
↑(視聴者間で)このような厳しいご指導が入るのかと緊張が一瞬走ったが、どちらかというとブラックの方がパニックに陥っており、場が混乱して全く収拾がつかなくなる。人間、時には冷静になると負けな状況もあるのだ……。
だが、アムールはアンドロイドとしての分析能力で「その姿、100%の確率でプリキュアです」と回答する。
エール「ふたりが……プリキュア?」
ブラック「んー…… ふたり、は? アハハハ」
ブラックもホワイトもここへどうも突然連れてこられたらしい。
それをやらかしたはぐたんは何か答えることはなくいつものように無邪気に笑うだけ。
赤ん坊を問い詰めるわけにも行かず、両者はとりあえず流れを身に任せることに。
そして、ビューティーハリーになぎさとほのかを招待し、たこ焼きとポップコーンを振舞いながら互いに自己紹介。
はな・さあや・ほまれがなぎさとほのかと交流を深める中、えみるとルールーは少しややこしいことになっていた。
ルールーはギターを守れなかった責任を感じてえみるに謝ろうとするが、当のえみるが「もう終わったことだから平気なのです!」と笑顔で返したことでルールーが逆に「それはおかしい」とマジレスしてしまったのだ。
「壊れたから終わりなのですか? (第20話で兄にギターを許可された時) ギターを諦めなくてよかったと喜んでいたのはえみるではなかったですか? 理解不能です。わたしにもわかるように説明を」
この言い分には流石にえみるもカチンときて「ルールーには言いたくないのです!」と怒鳴ってしまう。
その言葉を浴びせられたルールーは哀しそうな表情を浮かべ、気まずくなったえみるは部屋を飛び出してしまった。
残されたルールーははな達に「なぜえみるはウソをつくのか」と疑問をぶつける。
はな達はえみるはルールーが好きだから「優しいウソ」をついているんだと言って互いを思っていることは確かなのだからあまり気にする必要はないと楽観的に言ったが、外野で聞いていたなぎさとほのかは少し異なる考えを持っていて、ちょっとしたお節介をすることに。
ほのかはルールーに「相手の思いを気にしすぎるばかりでなく、あなたが本当にしたいことをちゃんとやるべきよ」とアドバイスし、なぎさはえみるに「無理してウソつくくらいなら、喧嘩したっていいじゃない」とさらに直接的に忠告した。
「本音をぶっちゃけられるって、親友だからこそでしょ?」
それから数時間後、えみるとルールーは公園で互いに決闘するかのように向き合い自分たちの思いをそれぞれ腹を割って話し合った。
えみるはわざわざ言葉にしないと何もわかってくれないルールーに対する苛立ちをぶつけ、ルールーは「嘘をつかれる方が傷つく」と反論。
アンドロイドである彼女にとって「理解不能」なことは看過できない。
言葉にすれば分かることなら、言葉にすることこそ信頼の証であるはずなのだ。
最初の方は少し険悪な雰囲気だったが、売り言葉に買い言葉を重ねる中でえみるは「言いたくなかった本音」を口にしてしまう。
えみるだってエレキギターが壊れて死ぬほど悲しいけど、大丈夫でいないとルールーを傷つけてしまう。
だから無理してでも平気なふりをしていたけど、エレキギターを無理して守ろうとしてルールーが傷ついたりしなくてよかったという気持ちは偽りなきものだ。ギターに代わりはあるが、ルールーに代わりはないのだから。
それを聞いたルールーは、アンドロイドである自分が傷つくと思って無理をすること自体が非効率的だと呆れ果てるも「自分だってえみるが大切だから平気じゃないなら無理せずに頼って欲しい」と本音をぶつける。
こうして互いの本音を再確認したえみるとルールーは、少し照れながらも改めて仲直りを果たしその証としてお互いハンドメイドの贈り物をする。
そんな様子をなぎさとほのかははな達と一緒に物陰から見ていたのだが、「わたしたちもあったっけ、こんなこと」となぎさが苦笑まじりにほのかに語りかけると初代8話の回想シーンが浮かび上がる。
だが、そこへ仕事も恋も全て奪われ後がなくなったパップルが最後の戦いを挑んでくる。
自らオシマイダー化して自身の中にある絶望を糧にプリキュア5人を圧倒し、満身創痍に追い込む。
まさに絶体絶命な中、とどめを刺そうとしたパップルの頭上からふたりはプリキュアがやって来た…!
「闇の力のしもべ達よ!」「とっととおウチに帰りなさい!」
14年ぶりに名乗りバンクシーンが地上波で再展開し、ブラックとホワイトの猛反撃が始まる。
初代作でも節目の戦いでしか見せなかった「ダダダダダダダダ……!」「ハァーッ!」のコンボを惜しげもなく炸裂させる。
むしろ、初代作を覚えている人にとってはこの擬音だけでいかに激しい戦いぶりだったのかを想像できるかもしれない。
その暴虐と紙一重の圧倒的な戦闘力でパップルを押し返し、驚異的な大ダメージを与えた。
しかし、自らの絶望に囚われたパップルは瀕死状態でも立ち上がり、自らの苦悩を吐き捨てながら自分自身を苛む。
それらはオシマイダー化させられたチャラリートの様子を彷彿とさせるものであった。
この場にいるプリキュアが更なる攻撃を加えてパップルにトドメを刺すことも可能であったのかもしれない。しかし、それはこの場にいるプリキュアの誰もが望むものではなかった。
本作においてキュアエールがプリキュアの剣による断罪を否定したように。
「伝説の戦士とは全てを力でねじ伏せる最強な者ではないのか?」という問いを真っ向から否定することこそが、初代プリキュアであるブラックとホワイトが打ち立てた伝説の本質・全てのプリキュアに受け継がれている「黄金の精神」である。
そして、パップルとの因縁が多いアムールとマシェリは彼女を救いたいと思い立ち「ここはわたしたちに任せて欲しい」とブラックとホワイトのエールを背中にパップルを苦しみから解放しようと試みる。
そして、パップルの心に語りかける新たなふたりのプリキュアは自分たちの新たな武器を生み出すこととなる。
戦闘終了後、初期の目的であったマシェリ&アムールの新しいアイテムが手に入ったことではぐたんが不思議な力でゲートを開き、なぎさとほのかは吸い込まれ、なぎさは「こんなのばっかり〜 ありえな〜い!」と愚痴を言いつつ消えていった。
ロクなお別れの挨拶もできなかったのははな達もちょっと残念だったようだが、4ヶ月後の映画での再会が決まっているので……。
今話はその映画の宣伝の意味合いもあるようで、エンディングは映画で使われるプリキュアオールスターズ総登場の『DANZEN!ふたりはプリキュア~唯一無二の光たち~』の特別CG映像が使われ、さらに次回予告終了後に映画の予告編も流れた。
…と思いきや、TVでも4ヶ月後に仲間や後輩を引き連れて初代プリキュアは『はぐプリ』チームと再会することになる。(→TV版プリキュアオールスターズ)
余談
コスチュームについて
キュアブラックとキュアホワイトのコスチュームはオールスターズ映画出演時と同じくMaxHeart準拠。残念ながらキュアエールとへそキュアコンビ結成とはならなかった。
タグ名の由来
美墨なぎさ役の本名陽子は仮面ライダーBLACKに出演経験があるためこのタグがつけられた。
今回の脚本は
今回の脚本は成田良美で本作では第15話に続いて2回目の起用。
成田はプリキュア初期作にも関わっていたこともあってか、なぎさの描き方がオールスターズ映画で見られる「先輩然」とした威風堂々とした感じよりも、TV放映当時の「想定外なことに弱くパニックをすぐ起こし、単純で状況に流されやすい」というキャラづけに近くなっていた。はな達も先輩としては扱っていない(名前呼びするシーンではさん付けしている)
また、「ぶっちゃけありえない」をなぎさに言わせないなどは、放映当時のキャラ設定に忠実だったと言えるだろう。一方で「ぶっちゃけ」という単語を正しい言葉の使い方としてなぎさに言わせている(上述したえみるとの会話のところを参照)
本作はプリキュアシリーズの中でも各話で扱われる情報量の多さが特徴だが、今回の話は特に顕著で、ツインラブギターの誕生、パップルの退場など重要イベントがてんこ盛りである。その上で初代プリキュアとのコラボを盛り込んでいる。
逆に言えば今回の本筋はあくまで『ハグプリ』の物語を進めることであって、初代を目立たせることではなかった。初代参戦の位置付けはあくまで助っ人であり、初代のことを知らない小さいお友達でも話に十分ついていけるように作られている。
一方で今回初代が参戦した意味は「初代の第8話」に全て集約されており、この話を覚えていると今回の話での1つ1つの台詞や演出への解釈が大幅に深まる。しかし第8話の詳細は語られず一瞬の回想シーンで気づけるかどうかであるため、この辺りは逆にコアなファン層に向けた仕掛けと言えるだろう。
理想のプリキュア像について
えみるはプリキュア事を人々から愛されるヒーローの様に思っているフシがあるが、それはあくまで本作基準であり初代の二人(及び鷲尾天時代のプリキュア)はこの基準に当てはまらない点がいくつもある。
例:
- プリキュアが伝説の戦士として祀り上げられているのは異世界の妖精たちであり、一般人には殆ど認知されてない。
- こちらにおける人間界ではプリキュアの言葉自体出てくるのが稀。
- 自分達がプリキュアの力によって人間界で人助けしている作中での印象は薄い。(そもそも戦闘が一般人に目撃されにくい)
最も当時はまだ作品の雰囲気が明確に固まっていない為、ある意味仕方がないのかもしれない。そういう意味では、後に共演がフィーチャーされたキラキラ☆プリキュアアラモードとフレッシュプリキュア!は作品同士の相性が良いとも言える。
因みに次回作スター☆トゥインクルプリキュアに至っては、こちらでは描かれなかった敵キャラ以外の負の部分も強調され更には、事情を知らない第三者にとってはプリキュアも悪者扱いされると言う考えさせられる回がある。そして遂には恐れていた事が・・・。