で、概説は?
『メタルギアソリッド3』(以下MGS3)において、主人公のスネークが動植物にまつわる話題でよく通信相手のパラメディックに投げかける質問。
MGS3では動植物を捕獲(キャプチャー)して腹を満たすシステムが実装されている。これに絡んでお遊び要素やフレーバーの要領で視聴できるのが、パラメディックの動植物の解説である。
趣味性とウィットに富んだやり取りは言うまでもなく、致死性の毒を口にしても食中毒で済むスネークの胃袋の強靭さも見どころ。
MAD動画などの各種動画でCV:大塚明夫の「ウマすぎる!!」で印象に残る音声素材は、実食時の最高評価が下されたときの台詞である。
で、捕獲ってなんだ?
のちの世に伝説の傭兵と謳われる男、スネークは、隠密行動でジャングルの中の敵地に単独潜入する特殊任務を帯びたCIAの工作員である。潜入の痕跡を残してはならないため武器も装備もほとんど持たされず、戦い続けるためには物資を敵軍から奪ったりジャングルの自然を利用する現地調達を強いられる。生き延びるのに不可欠な食糧でさえも、その例外ではなかった。
スネークがフィールドでさまざまな行動を起こすのに必要なスタミナは、時間とともに最大値が減少していく。端的に言えば腹が減るので、回復するには何らかの食料を現地調達し、食べる必要がある。ここで出てくるのが「捕獲」と書いて「キャプチャー」と読む、本作の特徴的なシステムである。
ジャングルの中で蛇やネズミ、キノコにカエルに蝙蝠などなど、食うのが一般的とは思えないものまで貪欲に、実にサバイバル感溢れる動植物を捕獲し口にして空腹を凌いでいかねばならない。
敵兵からレーションや即席ラーメンなど普通の食べ物を奪うことも可能だが、これらは敵兵と接触したり、補給処などに潜入するなどリスクを伴う。ちなみにソ連製レーションはスネークの口に合わなかったらしく「不味過ぎる」のだとか。
こうして我らがスネークは、豊富なサバイバル経験と旺盛な食欲から、任務を通して食えそうなものは片っ端からキャプチャーして食っていく(というかプレイヤーに食わされる)事になったのである。
ここでプレイヤーに強烈な印象を残した台詞こそ、「で、味は?」だった。
無線通信で主に動植物の話題になった際、スネークはやたらと「それで、食えるのか?」「で、味は?」など、パラメディックの解説や雑学そっちのけで食えるのか、美味いのかを確かめようとし、「食用じゃない」「有毒だ」と言われたモノにすら「食ったらウマいかもしれないだろう?」と文字通り食らいついていく。
スネークは決してゲテモノ食い趣味や変人美食家という訳ではないが、過酷な任務の中で食事が密かな楽しみの一つであることと、「どうせ食うならうまい方がいい」という理由で、ついつい食に強い興味を向けてしまうのである。
こうしたゲーム中の描写から彼は「命をかけてまで何でも食おうとする悪食」というイメージが広まり、「で、味は?」も、それを象徴するセリフとして認知されるようになった。
スネークは食べ応えを重視しているようで、ガラヴァのような大きな木の実や、大型の動物を食べると喜び、スタミナ回復も大きい傾向がある。
低難易度なら初期増備に持たせてもらえるカロリーメイトや上記の即席ラーメンなど、近代的な味わいのものも普通に美味いと感じるらしく高評価を出す。
逆に不味いと述べた食料でも5回ほど食べさせると舌が慣れるのか、はたまた味の楽しみ方を覚えたのか評価が1段階アップし、回復量も増す。
発光菌のオロシャヒカリダケを食べたらなぜか機材用バッテリーが回復してたなんて珍事が起きることも。
キャプチャーメニュー画面から食事を実行すると、特に描写もなく大蛇や大型魚さえ即座に食ってしまうほか、ある武器を使うとその場で瞬時に完食するので、「生で齧ってるんじゃないか?」と思われたりするが、蛇や魚は丸焼きにして食べているシーンもあるので、省略されているだけで調理はしているのだろう…と思いたい。
食材に関するパラメディックの資料や知識は割と当てにならないことでも有名。
日本食について外国人らしい勘違いをしているのはまだ可愛い方で、ウラルツキヨタケの話題になった際、スネークからの「シイタケに似てるってことは食べられるんだろうな」という問いに「味まで似ているかは保証出来ないけどね」とは言いつつ食べられると答えてしまい、食べたスネークが食中毒になるという実害も起きている。
「パラメディックめ…毒じゃないか!」と憤り、資料の信憑性を疑う彼に対しては「大丈夫よ、きっと。今回はたまたま間違ってただけで……」としどろもどろになっていた。
評価全般を見るに元々キノコが好きではないのに、そうまでして食べようとしたスネークも大概だが…。
EVAとの会話では「スシ」にも多少興味を示した様子だが、おそらく気に入る事であろう。
スネーク「スシバーではカエルが出るんだろう?」
EVA「でるわけないでしょ!」
で、用例は?
(「で、味は?」が入っている台詞を選抜)
用例①:アミメニシキヘビ
パラメディック「アミメニシキヘビは、世界最長と言われる蛇よ。大きいものは10mにもなるっていうわ。毒こそ持っていないけど、とても危険な蛇だから注意して」
(中略)
スネーク「わかった。で、味は?」
パラメディック「え?」
スネーク「味」
パラメディック「食べる気なのね?」
スネーク「当然だろう」
パラメディック「共食い」
(後略)
用例②:マルーンシャーク
パラメディック「マルーンシャークは主に東南アジアの方で見られる魚よ。シャークといってもサメじゃなくてコイの仲間」
(中略)
スネーク「なるほど。で、味は?」
パラメディック「資料によれば……そこそこ美味しいみたいよ。ただ、油っぽくて小骨が多いとか」
スネーク「大丈夫だ。そんな小さなことは気にしない」
パラメディック「でしょうね」
用例③:ベニスズメ
パラメディック「ベニスズメは中国南部から東南アジア原産の小鳥よ。今は繁殖期だから、オスはとても綺麗な赤色をしているはずね」
(中略)
スネーク「なるほど。で、味は?」
パラメディック「え、なに?」
スネーク「味」
パラメディック「あなた……そんなカワイイ小鳥まで食べる気なの?」
スネーク「そうだが」
パラメディック「……」
スネーク「どうかしたか?」
パラメディック「いいえ」
スネーク「そうか。で? どうなんだ?」
パラメディック「さあね!」
用例④:オオアナコンダ
パラメディック「オオアナコンダは大きな蛇だけど麻酔銃で眠らせれば生け捕りにも出来るはずよ」
スネーク「わかった。で、味は?」
パラメディック「聞くと思った」
スネーク「期待に応えられてよかった。で?」
パラメディック「資料によれば、美味しいらしいけど……」
スネーク「それは楽しみだ」
パラメディック「……」
用例⑤:エゾテングダケ
パラメディック「エゾテングダケはタマゴテングダケに似た、その地方特有のキノコよ。地面に生えていると思うけど、毒を持っているから捕獲(キャプチャー)しても食べないようにして。もし食べてしまったらすぐにサバイバルビュアーの『CURE』で解毒剤を飲むのよ」
(中略)
パラメディック「食べたら、吐き気に腹痛、下痢などの症状が出た後、最後には肝臓や腎臓がスポンジ状に壊死して死にいたると言われているわ」
スネーク「それは恐ろしいな」
パラメディック「でしょう?」
スネーク「ああ。で、味は?」
パラメディック「は?」
スネーク「味……」
パラメディック「聞いてなかったの? エゾテングダケは毒――」
スネーク「聞いてたさ。だが食ったらウマいかもしれないだろう?」
パラメディック「……勝手にして」
(食べる)
スネーク「……毒だ!くそっ…」
で、問題点は?
有毒だと言われてなお食っているスネークは論外だが、そうでなくても野生動植物の無闇な生食は危険である。
自然界の土や水の中、そして野生動物の体内には寄生虫や病原体などが潜んでいる危険性があり、特にゲーム中で食べる機会の多い川魚はこうしたリスクが高い。あくまでゲームの演出なので真似しないように。
野草やキノコ類もまた、山に慣れた人ですら誤食による重大な食中毒事故がたびたび起きている。
キノコの生食自体、マッシュルーム(ハラタケ)のサラダがあるぐらいで珍しい食べ方なのだが、そもそも火を通そうが危険性の変わらない毒キノコも多い。
MGS3に出てくるキノコ類は全て創作されたものなのだが、上記のテングダケ科などは典型的な毒キノコであり、含まれるイボテン酸は強力なうま味成分でありながら強烈な神経毒というとんでもないもので、古代の向精神薬やハエ殺虫薬などに使われた歴史すらある。命と健康が惜しいなら絶対に口にすべきではない。
また、ウラルツキヨタケは架空種だが、実在しロシアにも生えるツキヨタケも食べると酷い下痢などを起こし、少数とはいえ死亡例が報告されている危険な毒キノコである。
しかも、よくある誤食の理由はゲーム内と同じ「シイタケに似ていたから」という鑑定ミスで、こうした鑑定ミスは毒キノコの食中毒事故に多く見られる原因でもある。
一応「ツキヨ(月夜)」という名前通り、夜になると発光し、昼間でも縦に割いて黒いシミがあればツキヨタケだと判別できるのだが、これは若い菌に限った特徴であり、光っていなくても、黒いシミがなくても、老いたツキヨタケという危険性がある。
食用のニリンソウなどに似ている猛毒のトリカブトや、ニラと間違えて食べる事故が後を絶たないスイセンなど、野草も迂闊に手を出して良いものではない。
スネークのノリで「食ったら美味いかもしれないだろう!?」が普通に命に関わるのが野生動植物の生食という行為なのである。
直接の毒性ではないが、梯子の登り降りをしてる最中に睡眠性のある「スパーッツァ」を食べさせると、どんな低さでも転落してスネークは死ぬ。
麻酔ハンカチの材料にできるぐらい強力なので、むしろ納得の威力だが、気化させたものを吸うだけでも昏倒させられるあたりヤバいキノコである。ちなみにこちらもパラメディックからロクな説明を受けておらず、食べて眠ってしまったことで初めて効果を知った。
使い方次第では、比較的安全な場所で食べてワザと眠らせ、睡眠による自然治癒に利用できたりもするのだが。
で、他の余談は?
- 隠し要素としてとあるUMAを捕獲することが可能なのだが、「押すなよ!絶対に押すなよ!」の如く仲間からの忠告を無視して食べてしまうこともできる。味についてはスネーク曰く「ウマすぎる!!」、つまり最高評価が飛び出す。
- 外部作品の『大乱闘スマッシュブラザーズX』へ出演した際、操作キャラとしてスネークが登場したが、その際にこのセリフも使用されている。
- アイテムである「たべもの」を食べた時、一定確率で「うますぎる!」または「もっと食わせろ!」と言う。なお豆知識として、たべものは相手の攻撃でダウンしているときにも食べられる。(お行儀が)悪すぎる!
ちなみに父親と違い、野生植物とか野生生物ではない正真正銘の料理である為そりゃうますぎるだろう。
で、他にやってる奴は?
むらびと…同じく食えるものなら何でも食べるゲームキャラ。しかも美味の最高評価のエフェクトすらある(とびだせどうぶつの森)。毒ではないが、一般的に食べるにはアク抜きが必要なタケノコを生でボリボリ食べる、一時的に巨大化する「ゆうめいなキノコ」を平気で食べるなど、鋼の味覚とメンタルと食欲を兼ね備えている。ちなみに「ゆうめいなキノコ」であるが、その外観の元ネタといえるベニテングタケに非常にそっくりだったりする。
その割に釣ったり潜ったりで採った海産物には手を付けなかったのだが、「あつまれどうぶつの森」では満を持して一部の海産物を料理して食べる事ができるようになったうえ、食事の力だけで木を丸ごと掘り起こすような物凄い力を発揮するようになった。
カービィ…もはやゲーム業界で最も有名な健啖家。ネイキッド・スネーク以上の底なしの歩く食欲。吸い込めるものならブロックだろうが岩だろうが何でも吸い込む(飲み込む)ピンクの悪魔。実際にオタコンから恐れられている。ただし、毛虫だけはダメである。
……もしかして→カービィ何食ったお前
リンク…ブレスオブザワイルドではサバイバル要素が実装され、魔物の一部だろうが機械の部品だろうが石だろうが宝石だろうが取り合えず煮て食う異次元の健啖家となっている。
で、関連イラストは?
何かを捕獲していたり調理したり食べたりしているイラストに付けられる事が多い。
あと、味の想像もつかない架空の食べ物が出てくるイラストとか。
それ…喰えるのか?
悪食っぷりはどっこいどっこいである(余談だがあちらのアニメにはスネークと少佐の中の人が出演している)。