漫画
週刊少年キングで1970年35号から1972年26号まで連載された漫画作品。
前年に連載された『エースの条件』(原作:花登筺 作画:水島新司)の主人公・堂島剛が野球指導者となり、活躍する姿を描く。
あらすじ
夏の甲子園を完全試合で制した大阪・朝陽高校エースの堂島剛にはプロ野球団の注目が集まったが、金に目がくらんだ父を悲しみ、堂島は自ら選手生命を絶つ。
昭和45年夏、堂島は町工場で働いていたが、高校の恩師ネギ監督の勧めで愛媛県の山中にある猪猿村の学校で人間離れしたワイルドな生徒たちに野球を指導することになる。
醜い派閥争いを続ける大人たちを他所に、生徒たちは野球を通じて心を通わせていく。
登場人物
堂島剛
かつての朝陽高校のエース。町工場で働いていたがネギ監督の紹介で猪猿村へ向かう。
堂島の父
刑務所から戻ってからは真面目に働いていたが、プロ野球スカウトの札束攻勢と接待酒におかしくなる。堂島が利き手に割れたビール瓶を突き立て自ら選手生命を絶つのを見て正気にかえる。3年前に病死。
さち子
堂島の妹。堂島の同僚・中川と結婚し、家を出て行った。
ネギ監督
朝陽高校時代の堂島の恩師。戦争で利き腕を失っており、自らの体験から堂島も野球がやりたくなっている頃合いと見て、猪猿村の学校での野球部コーチの話を持ちかける。
木下永治
堂島と同世代の高松・海南工業高校のエースだったが、怪我により甲子園での対戦は幻と終わった。
ダム見学で大学の学友たちと猪猿村を訪れ、堂島と再会。支援を約束する。
田崎学院長
新興宗教系のモラール学院の学院長。
堂島の甲子園での活躍に強く印象付けられ、野球部監督に招きたいと思っている。
猪猿村の人達
猪猿村は愛媛県の山奥にありダム建設が進められていたが、作業員が博打の末殺人を犯す、アル中で死亡するなどで問題となり、現在工事は中断中。
村内はダム派、村派、山派に分かれて対立。あまりの無法地帯ぶりに県民から忌避されている。
岩城校長
ネギ監督の旧制中学時代の恩師。分教場に務める傍ら、猪猿村の高校就学年齢の子たちの教育のため私塾を開き、野球を教えるため堂島を招く。
野球部は小森善兵衛に潰されるが、メンバーは自主的に練習を重ね「アパッチ野球軍」を名乗る。
千恵子
岩城校長の孫娘で私塾の講師。初登場時は材木とハッパに強姦される寸前だったが、その後も態度は堂々としている。
生徒たちに分け隔てない愛情を注ぐが、「祖父がこの村の学校にきたときはアパッチどころかアフリカの土人以下だったらしいわ」「アパッチなみになったのは祖父の努力のあらわれとおもうの」など酷い言い様である。
堂島に心惹かれてゆく。
村長(松崎太一郎)
小森善兵衛のコネで長らく村長の座にあったが、村に生協を作ろうとして小森と決裂し、村長選で落選した。
小森善兵衛
村唯一の商店であるよろず屋を経営する実力者。
村長選挙に出馬し汚い手段を駆使して当選。野球部の活動を前村長の放漫財政叩きのシンボルとして妨害して潰す。自分の息のかかった野球部を作ろうとしたが失敗。
網走
カウボーイハットに革ベスト、足元はブーツで腹にはサラシという独特のファッションで、ナイフ投げの名人。
ことあるごとに堂島を「おい若けえの!」と呼び恫喝していたが、堂島は自分より素質は優れていると感じ、野球部のエースに据えた。
ハッパ
サード。
仇名は父親がダイナマイト管理者であることから。
キレやすい性格で何度も少年院送りになっていた。
飯場から持ち出したダイナマイトでグラウンド造りに邪魔な岩を爆砕して校舎も吹き飛ばし、責任を追及されたが、堂島に庇われ、その後は彼に従うようになる。
大学
ショート。
寺の住職の息子で、唯一ノーマルな学生風の恰好をしている。
少年野球をしていた過去がばれ、強引に野球部に入れられた。遠足に来た小学生に負けたのは野球ルールの無知が敗因と指摘し、堂島から野球部のコーチに指名される。
マリ
ダム技師長の娘で東京出身。
チームには参加しないものの、堂島には好意的。
材木
仇名は木こりをしている事から。
父は行方不明で、病気の母を抱え家計を支えている。
身長2メートルを超える巨漢で怪力の持ち主。頭は良くない。
モンキー
センター。
仇名は猿に育てられた事から。
オケラ
仇名は常に金に困っている事から。
長身で常に上半身裸で、賭けで取った工事現場用ヘルメットを被っている。
家は小森善兵衛の実質的な小作人のため立場が弱く、小森の圧力で一度アパッチ野球軍を脱退した。
コケラ
ショート。
仇名はオケラの弟である事から。
まだ中学生。
父が小森善兵衛の圧力でオケラをアパッチ野球軍から脱退させたため、反発した母がアパッチ野球軍に入れた。
モグラ
ライト。
仇名はモグラを思わせる無口で陰気な性格から。
母を落石で亡くしたトラウマで飛んでくるボールが怖くて捕れなかったが、特訓で克服。
家は小森善兵衛の実質的な小作人のため立場が弱く、小森の圧力で一度アパッチ野球軍を脱退した。
ダニ
セカンド。
仇名は不潔でダニがわいている事から。
食いついたら離れないしぶといバッティングとド根性が持ち味。
家は村長の実質的な小作人。
コウモリ
レフト。
小森善兵衛の息子。
仇名は苗字の「小森」と、分のいい方に味方する性格から。
父親の命令でアパッチ野球軍を妨害し、別の野球部を立ち上げようとするが失敗。しかし、わだかまりなくアパッチ野球軍に迎えられたため、父とは一線を画する。
花子(松崎花子)
レフト。
村長の娘で、生徒たちのまとめ役。主にマネージャーとして活動。
当初は村長の娘なのをかさにきた態度だったが、次第に堂島に心酔し野球部の活動に打ち込む。
ダイコン(だい子)
ライト。
仇名は大根足であることから。
小柄でムチムチした身体で顔は不細工。着物に草履という恰好で試合にも出場していた。
恋多き乙女だが、後にハッパと良い仲となる。主にマネージャーとして活動。
テレビアニメ
NET(現・テレビ朝日)系列等で1971年10月6日から1972年3月29日まで放送。アニメオリジナルエピソードが多い。非常に荒々しい線で描かれている。
主題歌は「俺たちゃ裸がユニホーム」(OP)、「飯場育ちの発破ムシムシ」(ED)など原作者の花登筺が作詞した、インパクトが強い歌詞で有名。
なお、現存するOPとEDのフィルムには、プロデューサー・制作とも「NET」はクレジットされておらず、しかもその部分のテロップのフォントが他の部分と違っている。恐らくこれは他局での再放送用で、本放送時には「NET」のクレジットがあったものと思われる。
キャスト
堂島剛:野田圭一
千恵子:坪井章子
岩城校長:富田耕生
ネギ監督:緑川稔
村長:永井一郎
網走:柴田秀勝
ザイモク:北川国彦
モンキー:大竹宏
ハッパ:田中亮一
ダニ:野島昭生
コーモリ:はせさん治
ダイガク:森功至
花子:桜井妙子
ダイコン:山本圭子
マリ:山口奈々
スタッフ
製作担当:原徹
企画:飯島敬
原作:花登筺、梅本さちお
脚本:花登筺、梅谷卓司
音楽:はっとりこういち
プロデューサー:宮崎慎一(NET)
効果:大平紀義
選曲:宮下滋
現像:東映化学
制作:NET(現・テレビ朝日)、東映動画(現・東映アニメーション)
宮城地区での放送
宮城県では、本放送は当時NNNとANNのクロスネット局だった宮城テレビ(現・ミヤギテレビ)で放送されていたが、1975年にはこの年開局したばかりの東日本放送、1977年にFNN系列の仙台放送、1980年にJNN系列の東北放送でも放送されており、宮城県の民放4局すべてで放送実績がある。
余談
- 差別的表現・描写が作中に多々含まれることなどから復刻は困難とされてきたが、2005年(平成17年)には原作の漫画が復刊した。現在、復刻版がコミックパークでオンデマンド販売されている。
- 2002年、限定生産でアニメのDVD-BOXが発売された。
- 漫画連載開始から早い時点でアニメの企画が立ち上がり、打ち切りも早かったため、アニメ、コミックス、雑誌連載で最終回が違っている。→ 参照:【幻の最終回】アパッチ野球軍、三種類の結末