概要
歴代カプコンの2D対戦格闘ゲームが集結する対戦格闘ゲーム。通称『カプジャム』。カプコンが開発・発売し、2004年にアーケード版が稼働した。使用基板はナムコ製のPS2互換基板であるSYSTEM246。海外版タイトルは『Capcom Fighting Evolution』。
「異なる格闘ゲームのシステム同士が戦ったらどうなるか?」という発想の元、実験的な試みがなされた作品。
「ストリートファイターⅡ」、「ストリートファイターⅢ」、「ストリートファイターZERO」、「ヴァンパイア」、「ウォーザード」の5作品の2D格ゲーから各4人のキャラクターとオリジナルキャラクターのイングリッドが参加。(その他にボスキャラがいる)
それぞれのキャラクターは、出身ゲームを(極力)再現したゲージシステムを持って闘う。(イングリッドは上記5つと異なる、オリジナルのゲージシステムを持っている。)
ゲームルールには、ゲーム開始時に2人のキャラクターを選び、毎ラウンドが終了したときに、次のラウンドで使用するキャラクターを決めることができる「スイッチタッグシステム」を使用。実際の試合自体は1対1ではありながら、相手のキャラクターの相性に合わせて自分の使用キャラクターを決められるので、ラウンド終了の時点で駆け引きが発生する。
闘劇05の競技タイトルにも選ばれ、ジェダ・かりん・アナカリス・ユリアンが「4強」として猛威を振るった。
上記の一部強キャラのみ研究された本作だが、大会終了後にゲーセンから一斉に姿を消したため、下位キャラの攻略やテクニックの研究が進む前に遊ばれなくなった。
登場キャラクター
ストリートファイターⅡ枠
ヴァンパイアシリーズ枠
ストリートファイターZERO枠
ウォーザード枠
ストリートファイターⅢ枠
本作オリジナル
ボスキャラクター※
※:家庭用のみプレイヤーキャラとして使用可能。
評価点
ウォーザードのキャラクターが使用できる。
原作以外にウォーザードのキャラクターを使用できるのは本作のみである。
(デフォルメや他社制作の格ゲーを除く)
イングリッドの復活参戦
当初の初登場作品が日の目を見ることなく開発中止となったため、事実上の没キャラとなる筈だったイングリッドが真の意味で世に出ることになった作品。
彼女は結局本作の後も登場の機会は非常に少ないのだが、Pixiv上で投稿された作品も多く、彼女のキャラ人気の高さが窺えるが、本作が無ければ没のまま消えていったおそれもある。
ミッドナイトブリス
デミトリはこの技のせいで他の作品に出演する機会が少なかったが、本作はカプコンキャラオンリーの作品の為、問題なく使える。
特にアレックス、ユン、ヌール、神人豪鬼は中々評判が良く、フィギュア化もされている。
一方でザンギエフのブリス化は見た目がチェブラーシカながらも、公式に「ザンギュラちゃん」と名付けられ、例の誤植ネタが拾われたという稀有な形にもなっている。
問題点
登場キャラが少ない
しかも半分以上がストリートファイターシリーズのキャラであるため、偏りが激しい。
しかし、ストリートファイターもそれぞれのシリーズ毎にシステムは大きく違うため使用感などは大きく異なる。
また「それぞれのタイトルから4人ずつ」というのも守っているため、決してストリートファイターのみが優遇されているわけではない。
寧ろタイトル毎の人数で考えればパイロンを含めたヴァンパイアが最も多い(神人豪鬼はストリートファイターというよりもカプエス2から参戦であるため)。
また、ケンやサガット、ガロン、モリガン等の人気キャラの多くが背景行きになっている点に関してもただでさえ少ない枠を人気があるからと波動昇竜キャラで埋めてしまうと面白味が少なくなるという難点がある。
カプコン格闘ゲームの顔であるリュウを外せないことや、ミッドナイトブリスを入れるためには外せないデミトリを考えるとケンやモリガンであろうと選出外になってしまっても致し方無かったのかもしれない。
ウォーザードキャラの人選
レオやムクロ以外の原作における残りの主人公であるタオやタバサを外し、敵キャラにしても人気の高いブレイドではなく、知名度が低いハウザーやヌールを出しており、人選ミスとの意見が多い。
しかしながら原作ウォーザードは1996年12月に稼働した割に家庭用移植が全く無いという致命的なまでに知名度が低い作品であったという問題点があった。
そのためウォーザードなんか知らないというプレイヤーへのアピールとしてのインパクトを考えた際に、まず他の格闘ゲームではプレイアブルキャラになんかならないだろう強烈なインパクトのあるハウザー等はそういうウォーザードを知らない層に対するアピールと考えればそこまでおかしい人選ではない。
逆に原作をプレイしたことのある層に対してもたった4人分しかない出場枠を主人公組の4人だけで埋めてしまうというのは面白味も何も無い人選であるとも言える。そのため原作をプレイしたことのある人へのアピールとして原作でのCPU専用キャラの中からプレイアブルキャラを選出するというのもそこまでおかしい人選ではないだろう(実際登場枠に関しては主人公組と元CPU専用キャラで2:2と半々となっている)。
ヌールに関してはPixivにおいても投稿作品の90%以上が本作でミッドナイトブリスされた姿での姿が描かれており、タオやタバサよりも投稿作品数が多い等、本作稼働後の人気では決して彼女達と比べて劣るわけでもなく、結果的にではあるが彼女達と比べて大きな間違いと言える程の人選では無かったと思われる。
ちなみにブレイドに関してはいくら人気があるキャラと言えど、原作のエンディングにて明確に死亡してしまう描写があるキャラであるために登場させづらかったのでは?という可能性がある。
余談だが、原作ウォーザードは本作稼働からさらに18年の時が経った2022年6月に発売された「カプコン ファイティング コレクション」にてようやく稼働から25年の月日を経て家庭用移植となったわけだがあくまで移植であり、ハウザーとヌールが使用できるという意味ではいまだ本作独自の魅力となっている。
参戦作品やキャラに関して
マーヴルとのVSシリーズに出ていたストライダー飛竜、ジン・サオトメ、ロックマン、神崎隼人、キャプテンコマンドー、ジル・バレンタイン、カプエス2に出ていた鑑恭介といったキャラクター達が未登場となった事に関しても批判が出た。
これはあくまで「格ゲーからの参戦」が条件となっている為、飛竜、ロックマン、キャプテン、ジルに関しては「彼等のデビュー作は元々格ゲーではない」等の理由もあり、当然である。
また、ジンに関しては「彼以外のパイロット達のドット絵やパターン等が存在していない」「サイバーボッツのメインはあくまでV.A.である」等の理由が考えられ、仮にボッツから参戦させるとなればジン以外のパイロット達のドットを新たに作成しなければならなくなるため、かなり手間がかかるといえる。
ハヤト、恭介に関してはそれぞれのデビュー作品であるスターグラディエイターやジャスティス学園は元々3D格闘ゲームであり、本作のコンセプトが「2D格闘ゲーム同士の共演」としている以上は無理な注文である。
よってこの2作品からキャラクターを出すとなれば、彼等以外のスタグラキャラやジャス学キャラのドットを新しく用意しなければならなくなるため、その手間すらも惜しまれたといえる。
その他マッスルボマーからの参戦も一切なかったが、これに関しては原哲夫をキャラクターデザインに起用していた事を考えると権利関係で難しかったと言える。
プレイヤー好みにシステムが変更出来ない。
例えばスト2のキャラをヴァンパイアのシステムで使う等はできない、など。
少し前に稼働したカプコン VS. SNK 2が6つのシステムからプレイヤーが選べたこともあり、本作に対する大きな不満の要因であった。
しかしもし仮に自由に選択できたとしたら、それは本作の「異なる格闘ゲームのシステム同士が戦ったらどうなるか?」というコンセプトそのものを自分達で否定することになってしまう。
神人豪鬼の存在
神人豪鬼は本来、カプエス2に登場したキャラで、ルガールによって暗黒パワーを注入されてしまったことで豪鬼の体内で殺意の波動と暗黒パワーが暴走し、誕生した存在だったが、SNKが関わっていない本作での設定は不明。
「普通の豪鬼(真豪鬼)を出せばよかったのでは?」という意見もある。
メタなことを言うと、カプエス2での神人豪鬼のデータをほぼそのまま流用しただけのキャラであるため神人豪鬼名称にしたの可能性が高い。
それでも瞬獄殺フィニッシュでの背景の文字を「神人」から「天」にする。おなじく豪鬼の背中に浮き出る文字を「神人」から「天」にするといったちょっとした手間をかけるだけで真豪鬼だと言い張ることもできた可能性はあるが、その手間ですら惜しんだのだろうか。
しかし、本作のコンセプトと合わせて考えるとこの神人豪鬼は「カプエス2のシステム代表」として参戦したボスであるとも言えるため、設定その他を一切無視して「カプエス2のキャラである神人豪鬼」を敢えて真豪鬼へと変更することなくそのまま出したという可能性もある。
逆にそういう見方で考えると、例え演出上の文字だけだったとしても手を入れて別のキャラ(真豪鬼)にしてしまうというのは「カプエス2のキャラ」として出したとは言えなくなってしまうため、開発コンセプトからずれてしまうので真豪鬼へ変更させずに出したというのは正解だったのかもしれない。
そもそも本作はストーリーなんて無いお祭り作品なので設定も何も無いのだが……
イングリッドの弱さ
イングリッドは本来は本作よりも前に稼働する筈だった「CAPCOM FIGHTING ALL STARS」という作品で登場するオリジナルキャラになる予定だったが、そちらが開発中止となったために雑誌(アルカディア等)その他で発表されてその可憐な容姿で人気が出ていたが作品ごと没となり、お蔵入りになってしまったという過去がある。
そんなイングリッドが本作で初登場するということは本作の大きな目玉のひとつとして紹介されて、専用のテーマソングまで引っ提げての華々しいデビューとなったのだが、蓋を開けてみるとほぼ全ての技があり過ぎて使いづらく、低火力紙装甲、コンボ火力すらも低いということで最弱キャラ候補扱いされる羽目になってしまい、キャラとしての人気はさておき、使用キャラとしての人気は低いという状態になってしまった。
なお、本作は(PC用のフリーの格闘ゲームエンジンであるMUGENという例外中の例外を除いて考えると)イングリッドを大画面で使用できる唯一の格闘ゲームであり、そういう意味では価値がある。
他に彼女が使用できる格闘ゲームはPSP用ゲームソフト「ストリートファイターZERO3↑↑」だけである。PSP用作品故の画像の粗さも原因ではあろうが、後に「ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション」等にもPSP版のZERO3↑↑ではない無印のZERO3の移植という形になっており、格闘ゲームとしてイングリッドが使用できるのは本作とZERO3↑↑のみだけと非常に希少な作品になっている。
エンディング
コミック調となっており、全員共通の曲と共にコマがせり上がって来る物となっている。
しかし、台詞が一切ないため、やや薄味にも感じる。
パイロンのエンディングはケンを筆頭に、ダルシム、ナッシュ、タオ、レイレイ、ビクトル、オルバス、バレッタ、ダッドリー、ショーンといった本作にプレイヤーキャラクターとして参戦出来なかったキャラクター達がパイロンに挑んでおり、自虐にすら思えてくる。
余談
D.D.とルークは、イングリッドとは違い、このまま闇に埋もれてしまうのでは思われていたが、オトレンジャーでまさかの復活を果たした。
今ではイングリッドのオマケ程度の扱いではあるが、あのまま見捨てられなかっただけ、良しとしておこう。
また、元祖ストリートファイター枠としてサガット、イーグル、烈が参戦候補に挙がっていたがお流れになったそうである。
このうちイーグルはカプエス2からドットを流用し、サガット(傷なし)、烈は新たにドットが作成されている。
しかし、もし彼等の参戦が実現していたら現状よりも更にストリートファイター勢の偏りが増していたため、非参戦はやむなしといえる。