ボアザン星人
ぼあざんせいじん
『超電磁マシーンボルテスV』に登場する地球外知的生命体。ボアザン星を本土とする帝政国家「ボアザン帝国」を形成する。
ボアザン星人の社会は貴族優位主義となっており、角の有無によって貴族と労奴に分けられる極端な階級差別の文化が浸透している。
本編開始時は黄金城に君臨する皇帝ズ・ザンバジルが国家の頂点に立ち、
「高貴なボアザン文化を宇宙に広める」「角のない異星人は労奴にも劣る下等生物であり、ボアザン貴族の支配下に置かれることで幸福に生きられる」という大義名分を掲げて宇宙の各地に侵略の魔の手を伸ばしており、地球人も「それなりの科学力を持つ乳類」「犬や猫と同レベル」とみなしている。それゆえド・ズールが「地球人には愛情の概念がある」と報告した際には一笑に付している。
地球征服軍戦力として戦闘指揮艦スカールーク、獣士、鎧獣士を、ボアザン星防衛の戦力として巨大人工衛星ソドムとゴモラ、攻撃司令艦ザンタル、そして守護神ゴードルを所有する。
一見盤石に見える貴族優位主義社会だが、実際には他の惑星への侵略を良しとしない和平派や貴族による理不尽な差別に不満や憎悪を抱く労奴が少なからず存在し、大きな火種を抱えていた。
最終的にはボルテスチームがボアザン星に突入した際に、反攻の機会をうかがっていた和平派および労奴達によるクーデターが勃発。逃げ惑うか、命乞いするしか術のなかった貴族階級は全員拘束される。なお、アニメ劇中では貴族達による前述の醜態に労奴達が怒りも失せる程に呆れ返るエピソードがあり、暴行・虐殺の類は少なくとも画面上には描かれなかった。
独り黄金城に残ったザンバジルは、支配者の誇りをかなぐり捨て又甥で元地球征服軍司令のハイネルに責任を擦り付けて見苦しく命乞いをした為、貴族の誇りを汚す醜態に憤ったハイネルに誅殺される。
その後ハイネルは黄金城の崩壊に巻き込まれて死亡。貴族制度は完全に崩壊した。
最終的に剛健太郎ことラ・ゴールが中心となって再建に着手している。
なお、ボアザンとはフランス語で「隣人」という意味。
本星
第35~39話登場。
皇帝の勅命を伝えるべく地球に飛来した。ラ・ゴールを捕獲した後、ハイネルを解任してベルガンと共に本星へ帰還。
詳細は該当記事を参照。
地球侵略軍
- ド・ズール
ハイネルの側近の一人で、短身痩躯の老人。角は額に1本。
兵器や要塞、獣士の製造を担当する科学者。ベルガンとは設定上従兄弟、または兄弟の関係。
実はザンバジルがハイネルを失脚させるために送り込んだスパイで、ハイネルは薄々感づいており、第22話で暗殺に失敗してハイネルに最後通告を突きつけられる。進退窮まったズールは、ボルテスチームに投降するふりをして地底城に彼らを招き、ハイネルと相討ちさせようと企むが、ハイネルは最初から裏切り者を赦すつもりはなかった上に計画も既に見抜かれていたため、逆に待ち構えていたハイネル達に処刑される。この時のハイネルの怒りは凄まじく、ド・ズールに関係するものは写真・遺品に至るまでことごとく処分された。
和平派
- ラ・ゴール
CV:二瓶秀雄 (若い頃は水島裕)
剛三兄弟の父・剛健太郎の本名。
詳細は健太郎の記事を参照。
ボアザン星の英雄で、「大将軍」と言われたほどの人物。
ネタバレ防止のためか、第28話までは剛博士の事は地球人名で対話していた。
詳細は該当記事を参照。
- ドイル将軍
CV:加藤精三
地球で剛博士と共にソーラーバードの開発に携わっていた労奴軍の指揮官。ダンゲ将軍同様に元貴族なのかは不明。
第37話でソーラーバードを操縦して地球の危機を救い、続く第38話ではソーラーバードとビッグファルコンを合体させ、ボアザン星まで一行を案内した。
第39話についに本星に到着。労奴達に帰還の知らせをしたことでついに労奴達の反乱が成功した。
- ロザリア
CV:横沢啓子
ラ・ゴールの最初の妻。角がないことを知ってもなお夫を愛した。ザンバジルの謀略によってラ・ゴールが追放されると離縁させられた上に地方へと送られ、身籠っていた子を難産の末に生むが、それが祟ってまもなく死去した。
ラ・ゴールから柄に白鳩の紋章が入った短剣を与えらており、この短剣が最終回で物語の鍵となる。
その他
- 突撃兵士
ボアザン星の兵士。
側頭部に角を付けたフルフェイスの兜を被っているが素顔は不明。尻尾があることから星人とは違う種族と思われるが詳細も不明。
頭脳を獣士に移植されることもある。
- ギルオン
CV:黒部鉄(現:屋良有作)
第29話に登場した剣闘士。奴隷の両親の下に生まれたため、本人は角があっても差別される階級であり、剣闘士となる。自分が殺した相手でも戦った者への尊厳を忘れない武人。
鎧獣士に改造されて、ダンゲ将軍の捕獲を命令されるも、健一からダンゲの死を知らされた後も正々堂々とボルテスチームに挑むが敗北、健一が自分達もボアザンの血を引く者で争うことの愚かしさを説かれて撤退した。
当初の処分は敵前逃亡罪で鎧獣士の資格剥奪を言い渡されただけであったが、死者の尊厳を重んじる性格から死んだダンゲの遺体を持ち帰らなかったことについてハイネルに抗弁したため死刑宣告を受け、ダンゲの部下として戦いたいかったと死に際してダンゲを賛美しつつ、鎧獣士ザルザによって銃殺される。死後残骸はビッグファルコンへの当てつけでザルザにばらまかれた。
彼の処刑にはカザリーンやジャンギャルも思うところがあった模様。
侵略用の巨大サイボーグ兵器。
基本的に侵略する星の生物を巨大化・生体改造したもので、突撃兵士や剣闘士の頭脳を移植しており、突撃兵士にとってはこの獣士になる事はかなりの名誉であるらしい。
その為か、中には自分の意思を持ち、会話するなど高い知能を持った獣士も存在する。
獣士に代わる新兵器。
獣士と違い、機械部分が大幅に増えかなりメカっぽくなっている。
装甲材に超強化合金マキシンガルを使用しており、従来の獣士とは比較にならない防御力を誇り、戦闘力自体も向上している。投入当初はパワーアップ前のボルテスVの通常武器は愚か、作中では理論上防ぐ術がないはずの必殺技Vの字斬りすら通用しないなど、圧倒的な強さを見せ付けた。
マキシンガル合金は超電磁加重砲で劣化してしまうため、Vの字斬りの前に超電磁加重砲=超電磁ボールを放つ必要がある(第31話のダイアンドのみ戦闘中に装甲がはがされたため、従来のVの字斬りで倒された)。
- ボアザン円盤
斥候、輸送、戦闘の役目を持つボアザン軍の円盤。回転のこぎりのような形状でサイズはボルテスの2倍以上。
ズールによると、以前から調査や地底城建設用の奴隷確保のために地球送り込まれ、それを地球人がUFOを目撃したと騒いでいたとのこと。
ボルテスチームでなくても撃墜は可能で、岡長官たち防衛軍と度々攻防を繰り広げていた。
- 地底城
孤島の地底にあるボアザン軍の地球前線基地。
見掛けは西洋の古城のようだが、緊急の際には要塞モードに変形する。
グルルとベルガンによって兵士の大半を連れていかれた上に獣士製造工場などの設備が爆破されて進退窮まったため、カザリーンは塔にある脱出用宇宙船で強引にハイネルを脱出させた。
- スカールーク
巨大な骸骨状の外見に西洋の城塞型の艦橋がついたボアザン軍の戦闘指揮艦。ワープ航行能力を持つ。
名前の由来は骸骨(スカール)と城(ルーク)。
主にジャンギャルが前線指揮に使用しているが、ハイネルらも第1話でこれで地球まで赴任しており、ド・ズールも口からドリルを展開してボルテスと戦ったことがある。
目の部分は搭載した獣士の出撃口となっている。
第37話においてベルガンが地底城から引き揚げる際に爆破されてしまう。
ボアザン星にはボアザネリア菌という風土病を引き起こす細菌があり、地球人には重病だが星人は生まれつき抗体を持っており、これが侵略軍側にとって剛三兄弟がボアザンの血を引くことの証明となった。
概要でも述べたが、ボアザン星人には角が有る者と角が無い者がいて、前者が「貴族」とされる。
角が有る貴族の夫婦からは、一定確率で角が無い子どもが生まれることもある。その場合、子ども本人はもとより、生んだ両親も角を折られ、貴族社会を追われ、これまでの隣人たちから苦役を課される身分、すなわち「労奴」とされる。つまり、労奴と貴族は異なる種族などではなく、角が有る者の子孫同士ということになる。
一方、労奴の夫婦から角が有る子どもが生まれることもある。前述したとおり、労奴もまた角が有る貴族の子孫であり、その遺伝子には角を生やす因子が潜在しているため、十分に起こりえる事である。ボアザン星人は角が有ることを尊ぶため、そういう子どもは貴族に取り立てられる……などといった事は無く、どれだけ能力があろうとも両親同様に労奴として扱われる。
これらのことから、ボアザン星人が振りかざす高貴なボアザン文化とは、「角を尊ぶ価値観」と「血筋を尊ぶ価値観」が相互に矛盾した歪な文化、ということがわかる。
スーパーロボット大戦
大体の作品で他の異星人組織と提携して地球に攻めてくることが多いが、ベガ星連合軍やゼ・バルマリィ帝国など、星間国家と同時参戦した場合は同盟という名の従属を強いられるケースが多い。(『J』では角が無いグラドスや木連を猿扱いしていたが)
現在の所、貴族制崩壊まで描かれたのは『第3次α』だけで(『R』では4年後を描いたエピローグで地球と和議が結ばれたことが判明、『L』では本編終了後で一切登場しない)、大抵は地底城攻略までしか描かれない。
超電磁大戦シリーズ
『超電磁大戦ビクトリーファイブ』では地球、キャンベル星、バーム星との和平条約が結ばれた。
実は、三千年前の段階でボアザン星人は広域の宇宙航行を確立させており、当時は星間国家だったバーム星人と銀河の覇権を争っていた。それから、何らかの事情があって技術も勢力も衰退し、数ある惑星国家の一つに落ち着いたらしい。
また、氷河期に封印された大将軍ガルーダ(オリジナル)が、現代に復活した後「銀河辺境にて、角を生やしたボアザン貴族が栄えている」と発言していた。ボアザン文明はそれほどまでに長い歴史を有しているのか、それとも彼が復活してから直ぐに現代の宇宙情勢を調べたのかは不明。
エリオス帝国:長浜ロマンロボシリーズにおける、主人公の父親が其処の皇族出身である帝国繋がり。中盤から、本項目の「角が無いこと」を「クローンであること」に置き換えた腐敗国家だという事実が明らかになる。しかも、クローンは奴隷にも劣る物体(生体部品)扱いされており、労奴が貴族から一応は同胞扱いされるボアザン帝国がまだマシに思えるほどである。
百鬼帝国:角の生えた人々による帝国繋がり。地球人(と言っても鬼、一種のミュータントだが)の勢力だが「スーパーロボット大戦A」では共闘までしている。
神聖ブリタニア帝国:「コードギアス」シリーズに登場する皇帝を絶対的な国家元首とする帝政国家で、他国への植民地支配を進めている。「スーパーロボット大戦」シリーズではボルテスチームから「ボアザン帝国と同質」と評されている。
ミスルギ皇国:本項目の「角」を「マナ(魔力)」に置き換えた腐敗国家。
有尾人一族ジャシンカ帝国:こちらは、本項目の「角」を「尻尾の数が多い」に置き換えた『科学戦隊ダイナマン』の悪の地底帝国。
ハルケギニア:ライトノベル『ゼロの使い魔』の舞台となる異世界。本項目における「角」を「魔法」に置き換えた文化が根付いており、その魔法によって文明が発展している。
グーテン星:こちらは、本項目の「角」を「鼻が長い」に置き換えた異星人の国。「鼻が低い」同胞のことは優しく扱うが、そうする事で自分の優しさに自分で酔いしれており「劣る存在」だと見なしている点はボアザン帝国と変わりない。
インヒューマンズ:アメリカのMARVELコミックの諸作品に登場する超人種族。その王国『アティラン』では本項目の『角』を『特殊能力』に置き換えた差別的な思想が根付いている。