概要
2016年頃のTwitterにて、「教習所でリアルおそ松さんに会った」という体験談形式の漫画を投稿した人物に対し、なんJ民が揶揄して名付けた語。
「嘘松さん」とも呼ばれている。対義語は「本当松」。
元の"お話"は以下のような流れ。
- 仮免テストの為に教習所にいたところ、コスプレ並みのおそ松くんルックなイケメン青年を目撃
- そしてとなりに座り、どこからともなく流れる「森のくまさん」。テスト開始のチャイムかと焦る投稿者だが、音の主は青年の着メロだった(会話の内容から、電話の相手は幼い弟だった模様)。
- 青年が立ったあとに子ども靴下が落ちていたので渡したところ、なぜか唐突に自分語り。曰く弟が大勢いて、自分(青年)を行かせまいと荷物に自分たちの宝物を忍ばせてイタズラしているらしい。
- しかしそんな弟たちにもデレデレで語る青年に、投稿者は興奮のあまり「ガチおそ松くんじゃねえかあああ」と鼻血ブーのリアクション。あと仮免受かったそうな。
当人は事実だと主張しているものの、偶然にしては妙に話ができすぎてる事、「後日フォローされてメッセージが来た」と言っていながら彼のアカウントやメッセージがない事などからウソだろうと断定されている(加えてこの人は「俺の隣になれて光栄だろ?というクラスメイトに冷ややかな目をしていたらそれがクセになったとコクられたが振った(要約)」というだいぶ香ばしいツイートをしていたため、余計ウソっぽい)。
あまりの破壊力にネット中が沸き立ち、一つの時代を築いた「嘘松」だが、件のツイ主や、同時期の同業者(仮)たちは人知れずTwitterを去り、供給元のなくなった嘘松ブームも自然と収束していった。そして後述のような意味合いの変化もあり、令和の嘘松界隈は新たな局面を迎えることとなる。
しかし有志によってこの系統の嘘松も今なお(細々と)生産されており、完全に絶えてしまったわけではないようだ。
使われるようになった経緯
元々なんJ発祥なので、なんJ用語wikiで詳しく解説されており、これによればもともとはツイート内で言及されている「おそ松のような人物」そのものを指すものであった。
当初は「架空松」と呼ばれていたが、スレッド内の会話やまとめサイトなどへの転載を経るうちに意味や対象の混同が起こり、さらには(『おそ松さん』のキャラクターをアイコンにしている)別のアカウントによる同じようなフォーマットのツイートが複数発掘されたことから、こうした傾向を持つツイートや投稿者をまとめて「嘘松」と呼称するようになった。
『「嘘」の「おそ松」』、縮めて「嘘松」と変遷したものだが、語感の良さからそれまでの「架空松」や「創作実話」に代わってよく使われるようになった。
特徴
単純に「嘘が含まれるツイート」というだけでなく、「又聞きや自分だけが見聞きした話など、確実性に欠ける内容」「体験談、目撃談ではあるが、妙に具体的な会話内容や、詳細な周囲の様子が語られる」「ツイート内に自画自賛や特定の事象への賛美・批判などが含まれる」「オチが必ずある」といった特徴が見られる。
ニコニコ大百科の同記事では、以下のような特徴が挙げられている。
- 知り合いの話、盗み聞き、(自分が)第三者
- 登場人物による対話形式、自身の心の中のツッコミ
- 周りのリアクション(拍手喝采、思わず握手した、一同感動など)
- 事後のオチ(何かに目覚めた、爆笑しながら何かを殴るなど)
この語が生まれる以前(『おそ松さん』放送以前)から「自作のフィクションを実際に見聞きした話と称して語る行為」あるいは「実在したとされる人物を用いて自己の主張を語る手法」は「創作実話」と一部では呼ばれていた。
創作実話で頻繁に用いられた「マックの女子高生」「聞いた話なんだけど」などは「ばっちゃが言ってた」と同様の扱いを受けるに至っている。
インターネット上、特にTwitterなどのSNSでは、普通ではありえないような大げさな表現が比喩的に用いられる傾向にある(例:「5億年ぶりに○○した」、「爆発四散した」、「○○吹いた」など)ため、ときに「嘘松」に類似する文章になっていることもある。しかし「嘘松」は大げさな表現だけでなく、ツイート自体が実話を謳っており、かつストーリー仕立てになっている場合を指すため、単に過剰な言い回しというだけで嘘松だと決めつけるのは誤用である。
現在は特に『おそ松さん』に限らず、荒唐無稽な内容の「創作実話」系ツイート全般やその発信者を揶揄する目的で用いられるようになっている。特に、腐女子(※ここでは、本来の定義であるBLを愛好する女性というよりは、オタクの女性ユーザー全般というニュアンスである)のSNS等の投稿について使われる例が目立つ。
傾向
根源にあるのは、炎上商法も厭わぬ過大な承認欲求、または匿名化に伴うモラルや危機感の消失と言われ、真っ赤な大嘘をつく事への罪悪感やリスクマネジメントを著しく欠いている点は共通している。
投稿には時事ネタを取り入れたものが多く見られる。
これは世間の興味を惹きつけやすく、話題化し拡散させるのが容易であるためと考えられる。直近では2020年の新型コロナウイルス流行に乗じたものが粗製乱造され、悪質なデマと共に流行している。特にワクチンの有用性などに関する悪質なデマについては、反ワクチン、新型コロナウイルス感染症などの項目も参照のこと。
「特定班」のような、炎上の渦中にある人物や犯罪者の個人情報を特定し書き連ねる行為については、そもそもその是非が問題視されているものではあるが、騒ぎに乗じて虚偽の情報を「特定した」と流布するような例も確認されている。
補足
あまりに見え透いた嘘をついた場合などは非難を浴びせられることがあり、他人に害を与える実例も確認されている。最悪のパターンではアカウント閉鎖に追い込まれたり、逮捕される例も出ている。
- 声優の田村ゆかりは、何ら接点のない女性が投稿した「田村ゆかりが仕事をサボってサッカー観戦しており、そこに親戚が遭遇して会話した」という嘘松を目にしたことで以降Twitterに嫌気が差し、アカウントを停止した。
- 2016年に起きた熊本地震の際、「動物園から猛獣が脱走した」という嘘の書き込みを投稿した人物は、偽計業務妨害で逮捕されている。
- また2022年には静岡県で台風15号が原因の水害が発生したことに関連して「ドローンで撮影された静岡県の水害の様子」として画像生成AIを使用したフェイク画像を投稿した人物がおり、県などが注意喚起する事態となった。
- しかし、犯人は炎上し謝罪を厳命されてなお反省の色なく視聴者を挑発し、その後もAIを利用したフェイク画像を複数回投稿している。
- Twitter上には、嘘松と見られるツイートを晒し上げる専用のアカウントもあり、「嘘松ソムリエ」なる人々が「痛々しさ」や「(嘘としての)完成度」を評価して遊んでいるようだ。
- 『おそ松さん』という作品が風評被害を受けていると感じ、「嘘松」という表現自体に否定的な人もいる。
- 発端となったエピソードでも悪いのはおそ松さんの名前を出して嘘をついたツイ主であり、以降おそ松さんとは無関係なのに「嘘の話=嘘松」呼ばわりされるようになった『おそ松さん』は完全にとばっちりである。
テンプレート
嘘松には下記のようなフレーズが頻繁に用いられる。
- 「聞いた話なんだけど」
- 「寝ぼけてたんだけど」
- 「外国人の友達が言ってたんだけど」
- 「~って話、する?(したっけ?)」
- 「それでは聞いてください」
- 「現場からは以上です」
- 「拍手喝采/一同感動」
- 「お互い握手した」
- 「スタンディングオベーション」
- 「何かに目覚めそうになった」
- 「実はアレ、私です」
定番のシチュエーションは以下である。
- 鋭い洞察を披露する幼児(あと公共交通機関の中というのがセット)
- 都合のいいタイミングで颯爽と現れクレーマーを撃退していったイケメン・美人・外国人
- マックやスタバで遭遇した女子高生・サラリーマンの会話
- 日本を礼賛する外国人の友達、 日本を批判する外国人の友達
- 萌えミリに理解のある元帝国軍人 ※一応、明治から戦時中にかけて大日本帝国と称してはいた
- 幼稚園や学校で子供がしたとされる巧妙な会話
- キレると手が付けられなくなるという危険人物アピール(記憶がなくなる、笑いながらボコる等)
- 若い頃の有名スポーツ選手に勝ったなど、過去の経歴を利用した自慢
- その他、自分の株を上げるような武勇伝
- ドラマチックな恋愛話
- 意識高い体験談
例文
【元のお話】
長年連れ添った老夫婦の片方が先立ってしまった。
無理に遺骨を持って飛行機に乗ろうとしたら、
CA(添乗員)さんが座席を設けてくれるという粋なはからいをしてくれた。
【嘘松風に変換】
知りあいから聞いた話なんだけど
奥さんのお葬式後に遺骨を実家に運んでる途中
乗務員が「隣の席を開けております。お連れ様はどちらですか?」って言って
奥さんの分の飲み物も用意してくれて他の乗客みんなで拍手喝采した。
類語
嘘松さん:別表記。
嘘松ジャパン:スカッとジャパンのことを指すが、扱っている内容が「嘘松」的であるとしてTwitterでは「嘘松ジャパン」と呼称される。
創作実話:原型。
お気持ち表明:同じ用途で用いられることもあるスラング。
関連タグ
白ハゲ漫画:体験談形式に乗じた個人の主張のアピールなど、類似性が見られる。