概要
二十四節気の第10。北半球では、一年のうちで昼が最も長く、夜が最も短い日。
現在の暦ではだいたい6月22日頃だが、年によって少しずつ日付が違う(2012年は6月21日、2013年は6月21日、2014年は6月21日、2015年は6月22日)。
夏至の風習
国内
日本では唯一の夏至祭として二見興玉神社の禊が知られている。また、「冬至にかぼちゃを食べる」ほど知られてはいないが、「夏至に特定の食べ物を口にする習慣」が残っている地域がある。
しかし、昭和30年代頃までは、稲の冷害や水の確保、また稲刈り期に台風を避ける為などの様々な理由で6月後半の田植えが一般的で、夏至はまさに田植えシーズンまっさかりであった。それゆえに、冬至と比べると全国的に「夏至に何かを食べる風習」が残りづらかったものと考えられる。
したがって、各地に夏至の時期の食べ物として残っている風習も、「夏至の習慣」というより、「田植えの時期の習慣」「田植えが終わったから食べる習慣」と言った方が正確かもしれない。
ただし関東や奈良に伝わる小麦餅に関しては、元々は中国民間の夏至の儀式だったものが日本に伝わったものである。
大阪の一部
夏至から半夏生(夏至から11日目)までの間にタコを食す習慣がある。これは田植えをした後に、「タコの足の様に深く、しっかりと沢山の稲が根付いて欲しい」と願う気持ちからの風習といわれている。
昔は小麦と稲の二毛作をしている農家が多く、田植えの時期には収穫したての小麦があった。奈良の農村では、この小麦ともち米を混ぜてついた「半夏生餅」を作り、豊作を願った。
愛知県の一部
特産品であるイチジクを軽く焼き、田楽味噌を塗って食べる風習がある。
関東地方
小麦餅を焼いて、神様に供えたり、田植えを手伝ってくれた方々に配り、感謝の気持ちを伝えていた。
焼き鯖を食べる。重労働であった田植えを乗り切る為に、栄養のあるサバを食べて体力を蓄えるという風習があり、現在でも半夏生にサバを食べる習慣が残っている。
海外
北半球
北半球では歴史的に、夏至といえば「性欲をかき立てる日」とされてきた。夏至は収穫を迎える夏の始まりを告げる日でもあり、植物にとっても人類にとっても、繁殖と結びつくのは自然なことかもしれない。
スウェーデンの民俗学者によると、同国では夏至を祝う「ミッドサマー」の祝日から9カ月後に生まれる子どもが多いという。
スウェーデン
メイポールと呼ばれる柱(男性器のシンボルとする説もある)を囲んでダンスを踊り、ニシン料理とウォッカで夏至を祝うしきたりがある。
また、かつては未婚女性が夏至の日に塩辛いものを食べたり、さまざまな種類の花を集めて枕の下に入れて眠ったりすると、未来の夫の夢を見るという伝承があった。
多神教の夏至の風習がキリスト教に取り込まれて「聖ヨハネの日」と名前は変わったが、北部ではまだ多くの村で、昔ながらの祭事が受け継がれている。
祭事の1つとして、未婚女性が自分の持ち物を容器に入れてイチジクの木の下に置いておくと、夏至の魔法がかかって将来の夫の夢を見るという伝承がある。
翌日は村の女性たちが集まって順番に容器の中の持ち物を取り出し、予言話に花を咲かせる。ただし現代では女性たちが下品な冗談をかわす口実になっているようだ。
その後男性も参加して、交替でたき火を飛び越す行事がある。3回うまく飛び越せれば願いがかなうと言われ、この行事でカップルが誕生することもあるという。
東欧の夏至は、スラブ民族の祝日「イワン・クパラの日」に当たる。「クパラ」は「キューピッド」と同じ語源を持つ言葉。ポーランド観光局によれば、この夜は人々が恋に落ちるという言い伝えがあり、かつては若い未婚女性が川に浮かべた花輪を、対岸に陣取った未婚男性がつかまえる行事が行われていた。
手をつないだカップルがかがり火の間をくぐり抜けるイベントもあった。言い伝えによれば、ずっと手を離さなかったカップルは永遠に愛が続くという。
ストーンヘンジでの夏至祭りがおこなわれる。毎年数千人が集まるこのイベントは、ドルイド教の祭りに由来するとも言われる。ドルイド教の夏至祭りには、男性神と女性神を表す太陽と地球との出会い祝う意味が込められているという。
中国では夏至祭の文化は端午と習合して消えてしまったとされる。その名残で揚子江沿いでは角黍といわれる粽を食べる風習があった。
北京では「夏至の麺、当時の餃子」と言われ、この時期に麺類を食べる。南京では麺の他エンドウ羊羹を食べる風習があり、中には麺でなくワンタンを食べる地方もある。湘南地方では茹で卵をそのまま食べたり棗を加えたスープ「吃夏至蛋」にして食べる風習がある。そして先述の通り小麦で作った「夏至餅」の風習も残っている。
韓国では江原道を中心に、夏至にジャガイモを食べる風習が存在する。そのほかニンニクの醤油漬けを食べる風習がある。近年ではこの時期に栄養を取るとして参鶏湯を食べる人も多い。夏至祭に当たるものとして、かつてはこの時期になるまで雨が降らなければ雨乞いの儀式を行うことになっていた。