「この風は・・・奴らが来る!」
演:玉山鉄二
概要
物語中盤より登場する6人目のガオレンジャーでガオウルフのパートナー。
外見上はセミロングの黒髪と端正な顔立ちが目を引く青年であるが、ガオの巫女ことテトムや先代のガオの戦士達と同年代、即ち1000年前(平安時代)の人間であり、正確な年齢はテトムより年上の1062歳であることが作中でも言及されている。
登場当初は白を基調とした装束に身を固めていたが、ガオシルバーへの初変身の後、ガオイエローこと鷲尾岳から手渡される形でガオレンジャーが用意していた専用のガオジャケットを受け取り、以降は最終決戦に至るまでこれを着用している。
オルグの発する波動を「風」として感じ取ることができる特性を持ち、これによりオルグの居場所や出現を探知できる他、それを活用して姿を消したオルグに対処することも可能である。
現代のガオレンジャーがそうであるように彼もまた本来の名を捨てガオの戦士としての呼び名を通しており、作中では1000年前の呼び名であった「シロガネ」、もしくは現代になって新たに付けられた「シルバー」のいずれかで呼ばれることが殆どである。
登場までの経緯
初出はQuest21における、ガオレッドこと獅子走の回想シーンである。
この少し前の新月の夜に、一人の青年が野良の仔犬と沐浴しているところを走が目撃しており、この時連れていた仔犬が狼鬼の連れていたそれと同じ「狼犬」であったことから、にわかに持ち上がりつつあった「狼鬼が元は人間ではないか」との疑念を色濃くすることにも繋がった。
果たしてその疑念は見事的中し、程なくしてガオゴッドの介入により、新月の夜に走が目にした青年こそが、他ならぬ狼鬼の正体───月麿であったこと、そして彼がかつてのガオの戦士の一人であったことが明らかになる。
「邪なる力よ! 我が体内に入るがいい! 邪気、降臨!!」
1000年前の戦いにおいて、当時のオルグの頭領であった百鬼丸を討滅すべく、それに対抗でき得る力を求めた月麿は「闇狼の面」を介して邪気をその身に取り込み、死闘の末に百鬼丸の討滅を成し遂げるに至った。
しかしその代償として、自身は邪気に乗っ取られる形で狼鬼へと変貌を遂げてしまう。月麿は正気を失う前に仲間である先代のガオの戦士達に自らの封印を頼み込み、結果現代に至るまで狼鬼の姿で封印されたまま長い眠りについていたのであった。
ウラの策略で現代に蘇った際には、正気とともに月麿としての記憶の殆ども失ってしまっており、封印されたことへの憎しみに突き動かされ、狼鬼として幾度となくガオレンジャーと刃を交えてきたシロガネであったが、事実を知ったガオレンジャーはシロガネの救出に目的をシフト。
さらに一連の事情を把握したテトムが「闇狼の面が取り込んだ邪気はガオの宝珠を通じてパワーアニマルに伝わり、魔獣化させた」という経緯から面に宿る千年の邪気とシロガネを繋いでいるのが魔獣化した3体のパワーアニマルであるという事実に思い至る。
これを受けて降臨したガオキングストライカーの猛攻でガオハンターが無力化されてパワーアニマル共々闇狼の面から解き放たれ、ようやく本来の姿と記憶を取り戻すに至った。
人物
見た目に違わぬ冷静沈着さと(おそらくは狼鬼にも影響を与えたであろう)一匹狼的な気質が同居している。とっつき難い部分もない訳ではない。後にVSで共闘したシュリケンジャーからも「You are キザ」と評されたことがあり、対する月麿もすかさず「お前もな」と言い返している。
一方でガオの戦士としての使命を果たそうと奔走したり、ガオディアスとのわだかまりを解こうとしたくだりのように時として内に秘めた熱さを垣間見せることもあった。
特に一匹狼的な気質については、上記した経緯故に現代のガオレンジャーや一般の人々(後者は洗脳時)に狼鬼として危害を加えたことへの強い自責の念も手伝い、闇狼の面からの解放直後は顕著なものとなっていた。そのため元の姿に戻ってなお、ガオレンジャーに心を開くことができないまま、自らにまつわる因縁の一切合切を独り抱え込み、自分の命を顧みない作戦に走ることも少なくなかった。
ウラや千年の邪気との因縁に完全な終止符を打った後も、やはり単独行動が多いものの、それ故にオルグによる策略から一人難を逃れ、事態を打開する役割を担うことも少なくはない。
また行動を共にしないながらもガオレンジャーともある程度は打ち解けていったようで物語後半から終盤にかけては祝勝パーティーでメンバーとノリノリではしゃいだり、平安時代に嗜んだカルタに本気になったり、冴に旅に誘われて赤面するなど(どこか天然ボケなところも交えつつ)くだけた部分を見せることも増えている。
「1000年」といった耳で聞いた数字そのものは理解できてもビリヤードの玉に書かれたそれ=アラビア数字が読めないという平安時代の人間ならではのギャップを見せることも。
どことなくナイーブかつ不器用な一面もあるようでガオレンジャーが月麿と打ち解けようとカラオケパーティーを開催した際には、当初こそ素気ない態度で断ったものの再度誘われた際には快諾しようと思い直し、それから諸事情で連絡が途絶えると「もう誘ってくれないのか・・・?」と気落ちする一幕も見られた。
そうした一面、それに1000年もの時代の差に起因したカルチャーショックでなかなか現代に馴染めないのも月麿にとっては悩みの一つであったが、自らの戦闘スタイルにも近いビリヤードに興じるのは彼にとって心が落ち着くようで作中でもとあるプールバーに足繁く通い、顔なじみとなったマスターからも度々レクチャーを受けている。
これ以外にも和歌や横笛を嗜んでいることも明らかにされており、中でも後者はかなりの腕前である。前述したガオディアスとの因縁はこれに絡んだものであり、現代においてようやく和解した後もテトムが歌うのに合わせて毎日天空島へと足を運ぶ羽目になったり、そのテトムの歌声と合わせてガオレンジャーの危機を救うきっかけとなったこともある。
前述の通り、同じ1000年前の人間としてテトムと近しい様子や物語終盤ではガオホワイトこと大河冴とも接近しつつある描写も見られたもののオルグとの戦いに終止符を打った後はテトムから促される形で現代の世界にて生きていくことを選択。仲間達とも別れ独り放浪の旅に出る。
OV『忍風戦隊ハリケンジャーVSガオレンジャー』ではその放浪の旅の最中、砂漠にて前述した「風」を感じ取り、ガオレンジャーとハリケンジャーの元に再び駆け付けている。
備考
- 演者である玉山鉄二氏は、本作への出演当時はまだ俳優デビューから間もない頃であったが、本作への出演によって一躍注目を集める格好となり、獅子走役の金子昇氏と共にその後のイケメンヒーローブームの火付け役となった。後の名優のどこか初々しさが残る演技は必見である。
- ガオシルバーこと月麿の存在は、後年のシリーズ作品にも少なからぬ影響を与える格好となった。特に2013年放送の『獣電戦隊キョウリュウジャー』に登場するキョウリュウゴールドこと空蝉丸は、ガオシルバーをモデルとしたキャラクターであることを、同作メインライターの三条陸が明らかにしている。ゴールドのパートナーであるプテライデンオーに悪役としての形態が存在することがあらかじめ決定していたことから、その登場を自然な形とする意図を込めて「過去の時代の戦士である空蝉丸が敵幹部の一人であるドゴルドに囚われていた」という月麿(ガオシルバー)と狼鬼の関係性を彷彿とさせる設定が考案されたという。
- 追加戦士としては初めてOP映像で初期メンバーと同等のクレジット紹介を受けている(彼以前までは、テロップのみのクレジット表記であった)。
関連タグ
大浦飛馬:『ザ・ハイスクールヒーローズ』の登場人物の一人。当初は敵怪人として登場しながらも、紆余曲折を経て銀色のヒーローとなったという点で、月麿との共通項を有する。